■ 1. 記事の概要
- 2018年から2019年夏頃までの1年半フリーランスエンジニアとして活動した経験に基づく
- フリーランスになってどこかの会社で業務委託として働くスタイルは長期的にはオススメできない
- フリーランスとして業務委託で働く形態には経験が積みづらくなる構造的な力学が働いている
- 個人の努力や能力とは関係なくその構造の中にいると自然とそういう方向に引っ張られる
■ 2. フリーランス時代の振り返り
- 「経験を切り売りしていた」という感覚が強い
- お金は得られたが新しい経験はほとんど積めなかった
- 社会的な価値も全然つかなかった
- 市場価値としてはほとんど上がっていなかった
- 危機感を覚えたのでフリーランスを辞めCTOになった
■ 3. 構造的な問題1: 挑戦させてもらいづらい
- 業務委託に入ると基本的に「成功しそうなことしか任せてもらえない」状況になる
- クライアントからすれば外部の人間に失敗のリスクがある仕事を任せるのは怖い
- 正社員なら失敗しても一緒に成長していける
- 業務委託は失敗したら契約を切れば良いので確実にできることしか任せない
- 正社員は育成投資の対象になれるが業務委託はならない
- 得られにくい機会:
- 新しい技術に挑戦する機会
- 難易度の高いプロジェクトをリードする機会
- 事業の意思決定に関わる機会
- フリーランスエンジニアが「得意なことをやり続ける」状態に陥る
- 効率は良いが成長はない
■ 4. 構造的な問題2: 社会的な評価が蓄積されにくい
- 「業務委託として開発」と書いても何をどこまで任されていたのかが見えない
- 「リードエンジニアとして事業を推進」と書けばオーナーシップを持って取り組んでいたことが伝わる
- 実際にやっていた仕事の内容が同じでも肩書きと立場で見え方が変わる
- フリーランスとして働いている間その経験がどんどん「消費」されていく
- 正社員として働くとその会社での実績が積み上がり次第により大きな責任を持つポジションに就く
- フリーランスの場合いくら長く働いても「外部の人」のまま
■ 5. 構造的な問題3: マネジメントや組織の意思決定に関われない
- エンジニアとして成長するには技術力だけでは足りない
- ある程度のキャリアを積んだ後は技術以外の能力が重要となる場合が多い
- 組織としての意思決定/マネジメント経験は組織の中で責任あるポジションに就かないと身につかない
- 外部の人間に組織のコアな部分を任せることはほとんどの会社がしない
- 採用の判断/チーム編成/評価制度/組織文化の形成は全て「中の人」だけで行われる
■ 6. この構造が生まれる根本的な原因
- 企業が「企業内人的資本の最大化」を目指すから
- 企業内人的資本 = 社員のスキル・知識・経験・ノウハウの総和
- 企業内人的資本が企業の競争力の源泉になる
- 正社員に投資すればその成長は企業内に蓄積される
- 業務委託に投資しても契約が終われば企業外に流出してしまう
- 正社員を雇う場合は長期的な視点で投資する
- 業務委託を使う場合は短期的な視点で考える
- 「投資対象かどうか」の違いが全ての構造的な問題の根源
■ 7. 例外: 労働市場の需給で変わるケース
- 「需要が供給を大きく上回るスキル」を持っている場合は状況が変わる
- 希少人材の例:
- 特定の領域で日本に数人しかいない専門家
- 世界的に見ても希少な技術スタックの経験者
- 業界で名前が知られているレベルの実績がある人
- オープンソースのメインコミッターなど代替不可能な立場の人
- こういった人はフリーランスであっても立場が強い
- これは例外中の例外
- ほとんどのエンジニアは「できる人が他にもいる」領域で仕事をしている
- 「自分は希少人材だ」と思い込んでフリーランスになるが実際にはそこまで希少ではなかったケースをよく見る
- 希少人材で居続けることができるかについてもよく考えるべき
■ 8. 「即戦力」という罠
- フリーランスが求められるのは即戦力
- 即戦力として評価されるのは「今持っているスキル」
- 新しいスキルを身につける機会ではなく既存のスキルを使う機会を与えられる
- 最初は問題ないが数年経つと技術は進化する
- フリーランスは「今持っているスキル」で契約しているから新しいことを学ぶ機会が少ない
- 正社員なら会社が新しい技術の研修を受けさせてくれることもある
- 業務委託は新しいことに挑戦するコストは自分で負担するしかない
- 「即戦力」として求められ続けることで皮肉にも「戦力としての価値」が下がっていく
■ 9. 社会資本という見えない資産
- 社会資本とは人間関係や信頼関係を通じて得られる価値
- 人脈/信用/評判/実績
- 正社員として働くと社会資本は自然と蓄積される:
- 同僚との信頼関係
- 上司からの評価
- 社内での実績
- 業界内での評判
- 昇進による肩書き
- フリーランスの場合社会資本が蓄積されにくい
- 業務委託として入った会社の人との関係は契約が終われば薄れていく
- 毎回ゼロから信頼を築き直さないといけない
■ 10. 「自由」の代償
- フリーランスになる理由として多くの人が「自由」を挙げる
- 働く時間を自分で決められる/嫌な仕事を断れる/場所を選ばずに働ける
- しかしその自由には代償がある:
- 挑戦の機会を得る自由は失われる
- 成長する機会を得る自由も失われる
- 責任あるポジションに就く自由も失われる
- 表面的な自由と引き換えにキャリアの自由度を失っている
■ 11. 構造から抜け出す選択肢
- 選択肢1: 正社員に戻る
- 組織の中で責任あるポジションに就き挑戦の機会を得て社会資本を蓄積する
- フリーランスの構造的な問題を根本的に解決する方法
- 選択肢2: 自分で事業を作る
- 業務委託ではなく自分のプロダクトを持つ
- 自分が意思決定者になりリスクも責任も自分が負う
- 構造的な問題を「逆転」させる方法
- 選択肢3: 戦略的にフリーランスを使う
- 長期間続けるのではなく特定の目的のために一時的に使う
- キャリアの転換期に複数の会社を経験するため/特定のスキルを集中的に使って実績を作るため/正社員のオファーを見極めるため
- 強い意志が必要
■ 12. キャリア早期にフリーランスになる人に向けて
- 20代から30代前半はキャリアの中で最も成長が期待できる時期
- この時期に「確実にできることしか任せてもらえない」環境に身を置くのはもったいない
- 経験の価値は「複利」で効く
- 20代で得た経験は30代のキャリアに効き30代で得た経験は40代のキャリアに効く
- フリーランスで「経験の切り売り」を続けるとこの複利が効かなくなる
- 10年後/20年後のキャリアを考えた時今どんな経験を積むかは決定的に重要
■ 13. まとめ
- フリーランスエンジニアが経験を積みづらくなるのは個人の問題ではなく構造の問題
- この構造は「投資対象かどうか」という違いから生まれている
- フリーランスになること自体が悪いわけではなく目的を持って期間を区切って戦略的に使うなら問題ない
- 問題はこの構造を理解せずにフリーランスを続けること
- フリーランスを選ぶならこの構造を理解した上で選ぶこと
- 定期的に「今の自分は成長できているか」「社会資本は蓄積されているか」を問い直すこと
- 表面的な自由や短期的な収入より長期的な成長とキャリアの自由度の方が結局は大きな価値を生み出す