■ 1. 発表の概要
- KyashのVPoE @konifarが2026年EMConf JPで発表したセッション
- マネージャーに役割が変わった際に提案レベルを上げるための方法を解説
- メンバーから管理職への転換後も提案レベル自体はリセットされず継続して高められる
■ 2. 提案のレベル定義
- レベル0「どうすればいいですか」:
- 提案ではなく指摘で止まっている状態
- 気づきはあるが解決策の選択肢を出せていない
- レベル1「どれにしましょうか」:
- 複数の案を整理して提示できる状態
- 実施スケジュールやリカバリプランなどPros/Consをまとめて伝える
- レベル2「自分はこれがいいと思います」:
- 選択肢の提示に加えて自分の意見と判断根拠を添えられる状態
- 評価軸を設け意思決定に必要な材料を集め思想をのせて伝える
- レベル3「これでいいですか」:
- 複数の立場の意見を考慮したうえで意思決定を促している状態
- 意思決定者が「いいと思う」「じゃあそれで」と短いやりとりで決定できる
■ 3. マネージャーにおける提案の難しさの要因
- 関わる範囲の広がり:
- 横は他部署縦は経営と関わる範囲が拡大し考慮すべき変数が増加
- 「何をどこまで考えて提案すればいいかわからない」「どこで誰と話せばいいかわからない」状態になりやすい
- 考える時間軸の広がり:
- 1年以上先を想像して正解に近づけ続けていく仕事に変わる
- 「そもそも何を提案すればいいかわからない」「不確実すぎて自信が持てない」状態になりやすい
- 取りうる選択肢の広がり:
- 正社員や業務委託の採用を含め組織体制や予算も調整しうるレバーになる
- 「どこまで選択肢を広げて考えるべきかわからない」「どこまで踏み込んで考えていいかわからない」状態になりやすい
■ 4. 適応の方針:理解と覚悟
- 役割と意思決定プロセスの理解:
- 自チームと他チームの役割目標価値観を把握する
- 物事を決め遂行されていくプロセスを理解する
- 決めてやりきる覚悟:
- 正解に近づき続けるマインドセットを持つ
- 宣言と報告軌道修正のリズムを確立する
■ 5. 組織理解のための4つのTips
- 組織図:
- 組織図と職務権限規程を知ることでどこが何の役割を担っているかが見えてくる
- 各チームのマネージャーへの1on1申し込みや食事などで直接把握するのが効率的
- 目標:
- 事業計画や各チームの目標を知ることで価値観や考慮すべきことが見えてくる
- 事業計画を経営や上長にわかるまで聞き隣接チームの目標をマネージャーに確認する
- 会議体:
- 協議と意思決定の会議体の設計を知ることでどこで誰と何を話すべきかが見えてくる
- 他マネージャーのカレンダー確認やアジェンダのAIサマリなどで把握する
- 予算:
- 予算の全体感と決定プロセスを知ることでコントロールできる選択肢が見えてくる
- 予算の考え方や決定プロセスを経理チームや経営メンバーに直接聞く
■ 6. 理解不足による失敗事例
- 失敗例①(2022年頃)組織状態を見て経営への提言:
- 当時はエンジニア含むプロダクト開発組織の立て直しが急務で経営のコミットメントが必須だと考えていた
- 当時の経営目標とのアラインや意思決定プロセスを理解しておらずただ意見をぶつけただけの提案レベル0の状態だった
- 今なら経営目標を確認してそこに到達するための建付けで整理し意思決定前の会議体で起案して組織としての意思決定をリードする
- 失敗例②(2023年頃)インフラコストの削減:
- 会社年間予算における自チームの固定費変動費を全く意識していなかった
- 2023年に250万円/月のコスト削減を実施したが予算全体を理解できていなかったためもっと早く実施できた可能性がある
- 意思決定プロセスも理解できておらず今は定例ミーティングを活用してこのような提案を気軽に上げられる環境にある
- 失敗例③(2025年頃)AIコーディングエージェントの予算確保:
- 予算を理解し意識するようになったことで本当に意義のある予算のかけ方を考えすぎた
- やってみないとわからないものに対して過度に費用対効果の説明準備をしていた
- 経営チームや経理は「予算は少なくすればいいものではない」「お試し期間と振り返りを前提に別途継続判断しましょう」とすぐに前進させてくれた
- 提案レベル2の準備に過剰な時間をかけてしまった原因は予算の意思決定プロセスへの理解不足
■ 7. マインドセットの変え方
- いきなり高い提案レベルを目指さない:
- これまでより不確実で正解のない課題に取り組んでいる事実を認識する
- 範囲時間軸選択肢が広がっているため一人ですべて考慮した提案を出せないのは当然
- レベル0から3のどこまで考えて話を持っていくかの引き出しを増やすことが大事
- 振り返りと軌道修正を前提とした提案をする:
- 正解がない提案と意思決定が増えるため振り返りと軌道修正のプロセスが重要
- 期間と振り返りタイミングやレポーティング方法もセットで提案することで提案レベル2以上がしやすくなる
- 軌道修正の話を伝えないと「後戻りのできない未来永劫にわたる意思決定」として議論されてしまう危険性がある
■ 8. 提案レベルを上げる実践方法
- 一人でいきなり高いレベルを目指さず巻き込んで意思決定するためにレベルを使いわける
- 範囲時間軸選択肢の広がりによる変化を自覚する
- 組織図目標会議体予算から組織の役割と意思決定プロセスを把握する
- 最初に持っていく提案レベルを状況に応じて使いわける
- 一発の提案でスパッと決まらない課題が多いため自己体験と他者の提案を観察する疑似体験を重ねていく