■ 1. 現代マネジメントの根底にある「軍事的世界観」
- 「戦略」「戦術」「VUCA」など日常的なビジネス用語の多くは軍事用語が起源
- 目標設定・フィードバック・人材育成研修などのマネジメント手法も戦争の文脈で発展
- 軍事的マネジメントの目標は個人を視野狭窄な歯車(ボット)にすること
- 上層部の計画を末端まで正確にインストールし効率よく遂行させる手法が現代マネジメント理論のベース
■ 2. キャリア観の「地動説的」転換
- かつては会社への滅私奉公・理不尽な異動への耐性が標準的な価値観
- 現代は「自分の人生をどうハッピーにするか」という個人の問いが根底にある
- 会社は個人の人生の構成要素の一つに過ぎないという価値観へと転換
- 旧来の「危機感を煽る」手法は現代では離職を招くだけ
- 人材流動性が高まり恐怖や危機感による統率が不可能になっている
■ 3. 「冒険的世界観」へのパラダイムシフト
- あらゆるマーケットが飽和し「何を作れば正解か」が誰にも分からない時代
- トップダウンの命令で人を機械のように動かす軍事的世界観は限界を迎えている
- これからは働くメンバーの「好奇心」や「内発的動機」を資源とした組織づくりが求められる
- 会社の事業成長と個人のキャリア・やりがいの異なるベクトルをすり合わせシナジーに変えることが現代EMの役割
■ 4. 冒険的な組織になるための四つのアプローチ
- 【1】SMARTの呪縛を解きALIVEで意味付ける(目標のマネジメント):
- SMARTの法則(Specific・Measurable・Time-bound等)は管理側には有効だが被評価者の内発的動機を高めない
- ALIVEの法則(Adaptive・Learningful・Interesting・Visionary・Experimental)で内発的動機を引き出すバランスをとる
- EMの役割は目標そのものをALIVEに変えることではなく目標をALIVEなものとして解釈できるよう「意味付け」すること
- 変化が激しい時代には「Adaptive」が特に有効でキャリアへの汎用性を対話で紐付けるとよい
- 前期の振り返りでメンバーの「興味の芽生え」をヒアリングし次期目標にストーリーテリングで紐付けることが重要
- 【2】メンバーと自分の「興味の偏り」をメタ認知する(興味のマネジメント):
- 変化が激しい時代に「3年後どうなりたいか」と聞いても「特にない」という反応が返るのがリアル
- 将来目標ではなく「現在進行形で何を面白いと思っているか」という興味を育成の手掛かりにすることが現代的
- 好奇心(瞬発的・散漫な感情)と興味(好奇心が特定対象に定着・深化した状態)は異なる
- 散漫な好奇心を興味として定着させる技術の有無が問われる「興味格差の時代」になる
- 成果を出してEMになった人は「事」への関心が強く「人」への関心が薄いため「マネジメントが罰ゲーム」と感じやすい
- 「事」寄りのEMは人間のメカニズムを工学的・システム的に捉え直すことで「人」への技術的な興味が芽生えることがある
- それでも困難な場合は「人に興味があるメンバー」を右腕として連携マネジメントを行う方法がある
- 【3】オープンクエスチョンがメンバーの主体性を削ぐ(会議のマネジメント):
- 人間の主体性・創造性が発揮される最小単位は「目の前の選択肢から選ぶこと」や「対象に点数をつけること」
- 真っ白な状態からオープンクエスチョンに答えるには高い主体性と創造性が必要
- 会議では「100点満点で何点か数字だけ書いてください」と問いかけることで全員の参加を促せる
- 数字が出揃った後に「なぜその点数か」「あと何点上げるには何が必要か」と深掘りすることで具体的な意見が引き出せる
- 1on1でも同様に「A・B・Cのうち一番面白かったのはどれ」と過去の案件から選ばせることで主体性が引き出せる
- 選択肢から選んだ理由こそがメンバーのやりたいことや今後増やしたい仕事の種
- 【4】風土に流されず独自の価値基準を意図的に作る(文化のマネジメント):
- 風土(Climate)はチームが感じる雰囲気であり文化(Culture)はその組織固有の「価値基準」
- 価値基準とは「AよりもBを大事にするという判断の集合体」
- EMが「自分のチームは何を一番大事にするか」という価値基準を定めメンバーに意図的に刷り込み続けることが必要
- 重視したい価値観を日常のルールや習慣に組み込み体現しているメンバーを称賛することでカルチャーが醸成される
- チームの価値基準をEMが意図的に構築することがメンバーの判断の迷いをなくし自律的なチームの土台となる
■ 5. 「半径5メートル」から冒険をはじめる
- 現代のEMがマネジメントに苦戦するのは個人のスキル問題ではなく軍事的マネジメント手法と現代の価値観のズレが原因
- 組織全体を変えることは難しくても自チームの「半径5メートル」であれば今すぐ変えられることは多い
- メンバーの小さな好奇心に目を向け問いの投げかけ方を変えることが次の時代のマネジメントへの第一歩