システムエンジニア(SE)の派遣会社に採用され、取引先で勤務した元SEの男性3人が、実務経験がないのに経歴詐称を強要されて精神的苦痛を受けたなどとして派遣会社代表らに賠償を求めた訴訟で、最高裁は、賠償を命じた東京高裁判決を不服とした代表らの上告を棄却した。原告の支援者らは「派遣会社は名前を変えながら従業員の経歴詐称を続けており、問題は終わっていない」と警鐘を鳴らしている。
男性らは、未経験者をSEとして採用するという求人広告などで、被告らが経営するSE派遣企業に入社した。
前後して、SEに必要な技術の習得を名目として、「スクール」の受講を求められ、受講料を支払ったが、SEとしての経歴を偽る「スキルシート」の作成や面接の練習をさせられたという。
男性らは、能力に見合わない多くの業務を担当させられて退職し、精神的苦痛から退職に追い込まれたとして提訴した。
令和6年7月の東京地裁判決は、未経験者を経験者と偽って派遣する代表らの事業は「詐欺行為により利益を得ようとするもの」と指摘。スクールは「詐欺を実現するための手段」で「社会的な相当性を欠く」と非難し、被告側に3人分計約516万円を支払うよう命じた。
東京高裁はおおむね地裁の判断を踏襲した上で賠償額を計約769万円に増額。最高裁も今年2月、代表らの上告を退け、高裁の判断が確定した。
原告の男性らの相談を受け付けた首都圏青年ユニオンの尾林哲矢執行委員長は、「この件は特殊な詐欺事件と思われるかもしれないが、相場賃金より高い相場を示して未経験者を募集するという点で、闇バイトと共通点がある」と指摘。「IT業界には多重下請け構造があり、派遣を受け入れた企業側のチェックにも問題がある」と述べた。
原告代理人の伊久間勇星弁護士は、「被告らはグループを組織して、一つがだめになれば新しい企業を作って活動を続けている。こうした手口は許されないという社会共通の認識を作る必要がある」と訴えている。