■ 1. 登壇者・会社概要
- 登壇者は株式会社リチェルカ共同創業者・取締役COOの幸田桃香氏
- 経歴はワークスアプリケーションズ(ERP営業)→FORCAS(SaaS営業)→AI inside(事業開発・代理店営業責任者)→HashPort(Web3.0事業マーケ・PR責任者)→リチェルカ(PM+PdM・コンサル・導入・開発)
- リチェルカは2022年4月設立・資本金約7億9500万円・「AIの社会実装を通じて今までの"できない"を解決する」をミッションとする
- 主要投資家はAngel Bridge・Genesia Ventures・NEW COMMERCE VENTURES
- 借入金融機関はみずほ・SMBC・りそな・商工中金・常陽銀行・北國銀行
■ 2. リチェルカのプロダクト戦略
- 「つくってばらまくSaaS」ではなく、顧客の業務に深く入り込んで課題を解くアプリケーションを開発する「レゴブロック型開発」を採用
- 開発フロー:
- 顧客Aのペインを深く把握しアプリを開発する
- 開発したモジュールを汎用化する
- 汎用化したモジュールを顧客Bの武器として展開する
- 戦略の特徴:
- エンタープライズの受発注領域に特化する
- 顧客に深く入り込むほど次プロダクトの土台が積み上がる
- 1社あたりで展開できるモジュール数(=ARR)が増加する複利構造を持つ
■ 3. PdM廃止の背景と経緯
- 創業当初(2023年〜)の開発体制は「営業→PdM→エンジニア」というリレー型であった
- PdMの役割はERPの業務フロー・ER図の整理、ユースケース作成、PRDの作成
- 従来体制の構造的問題:
- 顧客の声とプロダクトをつなぐ役割が1職種に集中する
- エンプラのペインは「深さ」が命であり、伝言ゲームによって希薄化する
- 役割分担のリレー方式は後発SaaSには遅すぎる
- 2026年にPdMを廃止し、「1人1人が製品責任者」となる体制とFDEの新設へ移行
■ 4. PdM廃止後の新組織体制
- PdMという職種名を廃止し、全員がPdM・製品/機能責任者として機能する体制に移行
- 新設・再定義された役割:
- クライアントアドバイザー: 既存プロダクトで顧客を立ち上げ、Tier管理しながらペイン抽出→開発連携を担う
- コンサル: 大型案件で顧客視点を担い、業務理解・折衝・As-Is整理を行う
- FDE(Forward Deployed Engineer): エンジニア視点で仮説検証・プロト開発・要件仕様の具体化を担う
- Application Engineer: 共通基盤の開発と各プロジェクトへの横断アサインを担う
■ 5. FDE(Forward Deployed Engineer)の定義と役割
- 定義: 「誰よりも業務を理解して、As-Is To-Beを描きながら、自分で開発し、顧客の"できない"を解決する役割」
- 必要スキル:
- ドメイン理解力
- 仮説構築力
- 実装力
- コミュニケーション力
- 他職種との差異:
- vs PdM: 顧客課題の解決に責任を持ち、1社に深く入り込む
- vs PM: 自分でコードを書き、モックを開発して語ることができる
- vs Engineer: 顧客と直接話して仮説を構築できる
- FDEが担う業務範囲: プロジェクトアサイン→顧客との要件定義→プロダクト要件仕様→仮説検証→プロト開発→Application Engineer連携
- 守備範囲が広い理由:
- 大企業と同じやり方では後発SaaSは勝てない
- リレー型の役割分担では速度が不足する
- 勝ち筋は「顧客の深いペインを爆速で形にすること」
- ペインを聞く人と作る人が同一人物であるべき
■ 6. 現場における変化
- ラストワンマイル問題:
- AIによって顧客社内でアイデアは広がっているが、組織として運用に乗せるところはほとんど進んでいない
- 個人レベルでは個人開発・プロトタイプ・PoCが可能になった
- 組織レベルでは共通AIの導入・業務オペレーションへの組込み・全社再現可能な仕組み・ROIが出るプロダクト化が進んでいない
- 「個人で作れるものと、組織で回るものは別物」であり、その差を埋めるのがFDEの仕事
- WOW問題:
- 以前はAIデモを見せるだけで顧客が驚いた
- ChatGPT・Cursor・Copilotの普及により顧客リテラシーが向上し、WOW演出だけでは価値を出せなくなった
- 現在の価値源泉は「業務を顧客以上に深く理解し、質の高いアウトプットを速く出せるかどうか」
■ 7. これから求められるスキル
- 求められるのは「営業力×コンサル力×開発力」の掛け算
- 営業力: 顧客を動かす
- コンサル力: 課題を構造化する
- 開発力: 解決策を形にする
- スキルに関する考え方:
- 全部できる必要はないが、何かが突出して強くなければ深いペインに届かない
- 営業出身・エンジニア出身・コンサル出身いずれからでも活躍できる
- 器用貧乏では深いペインに届かない
- 自分の強みを軸に、他の領域へも「越境する意志」があるかどうかが重要