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なぜ、今「会社に戻る」のか フリーランス→正社員が2.8倍の背景

要約:

■ 1. フリーランスから正社員への転換増加の実態

  • 転職支援サービス「リクルートエージェント」の2024年4~9月の実績では、正社員への転職数が5年前比2.8倍に達した
  • 「doda」でも同期間で2.7倍に増加した
  • Hajimariの正社員転換支援実績は直近1年で250%(3.5倍)増加した
  • 一方、フリーランス人口は2024年に1303万人と10年前比40%増であり、フリーランス市場そのものは拡大している

■ 2. 正社員回帰の主な要因

  • コロナ禍の反動:
    • 2020~21年にIT需要が急増し、経験の浅い人材もフリーランスになりやすい環境が生まれた
    • 2023年以降、市場の成長鈍化や収入面の厳しさに直面した人が正社員への転換を求めるようになった
  • AIへの不安:
    • 先行きが見えないことがフリーランスの不安の源となっている

■ 3. 正社員に転換するフリーランスの4つのパターン

  • スキルが十分でないまま独立した20~30代の若手
  • ライフステージの変化で安定を求める40代
  • AIや市場の変化に敏感に反応する層
  • プロダクトや組織に深くコミットしたいと考える上流志向の層

■ 4. フリーランスの収入構造の実態

  • 高収入の可能性:
    • スキルの高いエンジニアであれば月単価90万円以上の案件もあり、年間売上が1000万円を超えるケースもある
    • Hajimariの調査では「年収1000万円は余裕で稼げる」との回答が38%に上った
  • 収入の実質的な制約:
    • 社会保険料の会社負担分、退職金、有給休暇、賞与はフリーランスが自力で賄う必要がある
    • 休めば収入がゼロになり、営業活動や請求業務も無給の労働となる
    • 会社員と同じ生活水準を維持するには1.5~2倍の売上が必要とされる
  • 収入への不満:
    • ランサーズの調査では収入に「満足している」フリーランスは32%にとどまる
    • 1人当たりの紹介案件数が減少傾向にあり、案件の奪い合いが続いている

■ 5. AIの台頭による業務・役割の変化

  • AIの影響による市場変化:
    • 生成AI関連のフリーランス案件単価は他職種比で月10万~20万円高い傾向にある
    • 要件定義や設計などの上流工程の求人はこの1年で10%増加した
    • コーディングなどの下流実装業務は単価が低下し、求人数も5%減少した
    • 米Upworkのデータでは生成AI登場後にライティングの求人が33%減少した
  • 求められる役割の変化:
    • エンジニアの役割は自らコードを書く「作り手」から、AIに指示してプロジェクトを統括する「設計者」へと移りつつある
    • 何を作るか・なぜ作るかを判断する上流工程の価値が相対的に高まっている
    • 上流の仕事をこなすには下流の経験が不可欠であり、コーディング経験がAIへの的確な指示につながる

■ 6. フリーランスのキャリア展望に対する不安の拡大

  • 日本労働組合総連合会の調査では「将来の展望がある」と回答したフリーランスの割合が2023年から2024年にかけて、20代で13.5ポイント、30代で14.7ポイント、40代で13.2ポイントそれぞれ低下した
  • フリーランスには教育・研修の機会が乏しく、先輩や仲間から学ぶ環境がほとんどない
  • 組織に属していれば、研修などを通じて上流工程への移行を図りやすい
  • AIの開発に必要な企業のデータは、情報セキュリティの観点から外部人材には開示されないケースが多く、フリーランスは重要度の低い周辺業務にとどまりやすい

■ 7. 企業側の受け入れ環境の変化

  • ジョブ型雇用やリモートワークの普及により、正社員でも柔軟な働き方が可能になった
  • GIGの調査(2025年)では、フリーランスが正社員転換時に最も重視する条件は「リモートワークやフレックス勤務の確保」(69.2%)であり、「年収・給与」(57.5%)を上回った
  • 企業向け調査では54.7%がフリーランスの正社員採用実績を持ち、73.6%が今後も積極的に採用したいと回答した
  • SOMPOホールディングスなどの大手企業がDX部門を中心にフリーランス経験者の正社員登用を進めている
  • フリーランス経験者は、スキルが明確でミスマッチが起きにくい人材として評価されている

■ 8. 今後の見通しと必要なスキル

  • フリーランス市場の二極化:
    • フリーランス市場は今後も拡大するが、AIを活用できる人とできない人の格差がさらに広がる
    • ランサーズの調査ではフリーランスのAI活用率が3割以下にとどまる
    • 2024年施行のフリーランス新法の下でも、報酬や取引条件をめぐるトラブルは後を絶たない
  • フリーランスとして活躍し続けるための要件:
    • AIを使いこなすスキルを前提として、主体性が必要とされる
    • 情報を自らキャッチアップし、能動的にコミュニケーションを取り、信頼を積み重ねることが求められる
    • AIの発達によりスキルのコモディティ化が進む中、主体性の重要性がいっそう増している

■ 9. キャリアの再設計という視点

  • フリーランスから正社員に戻ることは「後退」ではなく、AI時代に求められるスキルを身に付けるための「再設計」と捉えるべきである
  • キャリアの選択肢が広がった現在、問われているのは雇用形態ではなく、自分の市場価値をどう高め続けるかという視点である