■ 1. 研究概要
- 東京大学などの研究チームが、半導体チップの情報処理速度を1000倍速くする素子を開発した
- 研究成果は米科学誌「サイエンス」に掲載された
- 2030年までに実用的な試作チップの開発を目指す
■ 2. 素子の技術的特徴
- 名称: 「不揮発量子スイッチング素子」
- 動作原理:
- 電気の流れではなく、電子が持つ磁石の性質(スピン)を使ってビットを表す
- タンタルとマンガンスズの2種類の素材で構成される
- タンタルに流した電気信号が、マンガンスズに微小な磁力の向きとして記録される
- 処理速度:
- 1ビットの情報を40ピコ秒(従来の1000分の1)で処理できる
- 従来技術では1ビットの記録に最短1ナノ秒を要する
- 耐久性:
- 熱が生じにくく、1000億回以上の繰り返し処理でも安定して動作する
- 既存技術で同等の処理速度を実現しようとすると、1000〜100万回程度で熱により故障する
- 応用:
- 不揮発性メモリーへの応用が可能で、エネルギーをほぼ消費せずに情報を記録できる
■ 3. 既存技術の課題と背景
- 既存のトランジスタ技術では、処理速度が一定を超えると電力消費が急増し、熱が生じる課題があった
- 既存技術の処理速度は2000年代に限界を迎えていた
- AIの普及により処理する情報量と電力需要が増加している
- IEA(国際エネルギー機関)によれば、AIの普及でデータセンターの電力需要が2030年に945テラワット時に達すると見込まれ、2024年時点の2倍以上となり日本の総電力消費を上回る見通しである
■ 4. 実用化への展望
- 小型化に応じて性能が向上する傾向があり、実用化できれば消費電力を既存技術の100分の1に削減できる可能性がある
- 例として、1時間かかっていたデータのダウンロードを1秒で処理できる可能性がある(東大・中辻知教授)
- 試作チップの開発や製造には企業との協力が重要であり、グローバルな連携による社会実装を目指す