■ 1. 企業概要とビジネスの特徴
- 企業理念は「資材調達ネットワークを変革する」であり、間接資材の調達工程を削減することで事業者の時間資源を創出することを目指す
- 約2,000万SKUを取り扱うB2B向けECサービスであり、モール型ECとは異なり自社で在庫を保有する
- サプライヤから顧客までのサプライチェーンをオペレーション、データ、ソフトウェアで最適化・コントロールする
- B2B商材特有の複雑性:
- 注文数量のばらつきが大きく、数十~数百単位の発注が発生する
- ロングテールの商品数が膨大であり、特殊なニーズへの対応が求められる
- 納期のセンシティブ性が高く、遅延が事業者のビジネスに大きな影響を与える
- 10年連続で約20%の事業成長を実現してきた
- テクノロジーによる競争優位性の獲得を重要な方針として位置づける
■ 2. システム課題と解決方針
- 課題の背景:
- 組織とシステムの拡大により複雑性が増し、新規取り組みに向けるリソースが不足している
- ビジネス戦略に素早く対応するための変更容易性が確保できていない
- 解決方針として「分割統治」を採用する:
- 大きな問題を小さな部分問題に分割し、個別に解決することで全体の複雑性に対処する
- モノリスアーキテクチャからマイクロサービスアーキテクチャへの移行はその手段と位置づける
- アーキテクチャ変更と同時に開発プラットフォームおよび開発プロセスを刷新する
- 組織構造も開発アジリティが高まる形に変更する
■ 3. ドメインモデリングとアーキテクチャへの取り組み
- 組織再編の実施:
- 逆コンウェイ戦略に基づき、2023年春にドメインに合わせた組織グループの分割を実施した
- 2023年12月にはすべてのソースコードをいずれかのドメインに整理し、実行環境の分離を完了した
- ドメインモデリングの進め方:
- AWSのソリューションアーキテクトのサポートを受けながら実施した
- イベントストーミングを活用し、ビジネス側とシステム側の共通のビジネスモデルとユビキタス言語を獲得する
- ドメイン境界に沿ってデータベースを分割し、他ドメインからアクセスするAPIを順次開発する
- イベントドリブンアーキテクチャの採用:
- ドメイン間の疎結合化を促進するために導入を進めている
- 業務イベントを抽出し、その事実情報を他ドメインに伝播させて処理する
- イベントストーミングによる発注ドメインの分析事例:
- 発注点の算出とサプライヤー発注が密結合になっており、変更容易性が確保できていなかった
- モデリング作業を通じて需要予測・在庫配置に関わる計算と発注コントロールの責務を分離すべきと判明した
- ヘキサゴナルアーキテクチャを採用し、業務ロジックをドメイン内に閉じ込めて変更容易性を維持する
- テンプレートリポジトリの整備:
- CI/CDパイプライン、オブザーバビリティ、共通ライブラリを含む
- 新規開発の立ち上げを高速化し、スキーマファースト開発や分散トレーシングなどのプラクティスを標準化する
■ 4. 商品検索体験向上への取り組み
- データ駆動による検索精度向上:
- 商品情報に存在しない通称語(例: 「涙目」)での検索に対し、購買データの解析から意図を把握するアプローチを採用する
- 6〜7億の商品カタログデータから属性データを作成し、言語処理解析により約7割を自動抽出する
- パーソナライゼーションの推進:
- 顧客の検索履歴や購買履歴に基づき、カテゴリの上位表示を最適化する
- 直前の閲覧・購買行動を含むリアルタイムデータを活用したパーソナライズ化を進めている
- 検索結果画面のコンポーネントごとにアルゴリズムによる最適化を行い、ABテストで継続的改善を行う
■ 5. Tech組織の体制と取り組み
- Tech Visionの策定:
- 「常に事業者に選ばれる世界で唯一の顧客価値を提供するため、データとテクノロジーを徹底的に活用する」と定義する
- 組織規模が120名を超えた2021年ごろから価値観の統一が課題となり、策定に至った
- 5つのTech Principle:
- 守→破→離: 世の中の「型」を学んだうえで、自分たちに合う形で改善する
- 思考を言語化して伝える: 組織拡張に伴うコミュニケーションコストに対処する
- 好奇心を育み、成功に導く
- 生み出す価値を定義する
- 自律と協調の両立: 各チームが自律的に動きながら、組織全体の最適化に貢献する
- ロールの設定:
- 組織マネージャー、テックリード、プロデューサーなどの役割を明文化し、責務・権限・オーナーシップを明確化した
- 権限集中やボトルネックを解消し、スケールしやすい組織体制を実現する
- プロダクト開発とプラットフォーム開発の分離:
- プロダクト・ドメインチーム(ストリームアラインドチーム)は業務とサービスの進化に集中する
- プラットフォーム組織はテクニカルな複雑性を引き受け、イネイブリングとプラットフォームの提供を行う
- 育成の取り組み:
- コンピテンシーマトリックスを作成し、Tech PrincipleをJobグレードごとの具体的な行動指針に落とし込んだ
- 社内育成機関「MonotaRO DOJO」を設立し、ドメインモデリング、アーキテクチャ、アジャイルなど多岐にわたるコースを実施する
- 2023年中にMenuMapに基づくコースの第一回を実施した
■ 6. 今後の展望
- 在庫管理のさらなる高度化が企業理念実現の重要課題と位置づけられている
- サプライヤ(中小企業が多い)のDXを支援し、電子データによる在庫管理の普及を目指す
- サプライヤ支援まで含めることで、資材調達ネットワークとしての事業可能性が拡大すると見込む