■ 1. 筆者と問題意識
- 筆者はソフトウェアエンジニア/データベーススペシャリストであり、予防医療領域のスタートアップでCTO・COOを務める
- 専門はRDBMS(特にPostgreSQL)を中心としたデータモデリングおよびシステム改善
- 「誰もやらない仕事」とは、やった方がいいとわかっているのに誰も手をつけない仕事のこと
- 例: ドキュメント整備、テスト追加、CIの改善、再現性のない障害調査
- これらは優先順位リストの下に沈み続け、やがて「誰もできない仕事」になる
- 「やらないこと」を決める目的は単に業務削減だけでなく、重要な仕事に集中するための時間と意思決定できる状態の確保にある
■ 2. 組織は意思決定しない: 決めるのは人
- 仕事が前に進まない原因:
- 仕様が曖昧なまま放置されている
- 意思決定者が定まっていない
- リスクを誰も引き受けていない
- 担当者が曖昧になっている
- 「組織として決める」という表現が用いられるが、実際に決めるのは組織に紐づいた個人である
- 筆者がやめたこと: 「誰かが決めてくれるだろう」と待つこと
- 筆者が代わりに行うこと:
- 自分が決める立場なら決める
- そうでなければ、決める人が決められる状態をつくる
- 具体的な手段: 選択肢の整理、判断材料の収集、リスクの言語化、期限の設定、推奨案の提示
- 意思決定の裁量を握ることだけでなく、「決められる状態をつくること」自体が立派な仕事である
■ 3. 他人に期待することをやめた
- 「誰かが決めてくれるだろう」と待つことは、合意のない期待を相手にしている状態である
- 筆者がやめた期待の種類:
- 「きっと察してくれるだろう」
- 「そのうち誰かが拾ってくれるだろう」
- 「あの人がなんとかしてくれるだろう」
- 合意のない期待の問題点:
- 仕事が進まない
- 責任の所在が明確にならない
- 相手が何を求められているか分からない
- 期待の代わりに行うこと: 5W1Hの明確化
- 誰がやるのか、何をやるのか、いつまでにやるのか
- 何が完了条件なのか、何を決める必要があるのか、誰に決めてもらう必要があるのか
- 期待する代わりに「依頼する、明確にする、仕組みで解決する」という選択肢に切り替える
- 「分かってくれるはず」と黙っていることは相手に不親切であり、「誰かがやってくれるはず」と放置することはチームに不誠実な態度である
- 「誰もやらない仕事」の多くは悪意による放置ではなく、担当者が曖昧なだけである
■ 4. 自分に期待することをやめた
- やる気や頑張りに依存することをやめた
- 仕事の品質がやる気に左右されることはプロフェッショナルな振る舞いではない
- 仕事で重要なのは「やる気があること」ではなく「成果を出すこと」である
- 「頑張ります」に代わる具体的な仕組みづくり:
- 「次は頑張ります」→ 次に何を変えるかを決める
- 「気をつけます」→ 気をつけなくても間違えない仕組みをつくる
- 「ちゃんと見ます」→ チェックリストをつくる
- 「忘れないようにします」→ 自動化する
- 「障害を起こさないようにします」→ 検知・迅速回復の仕組みをつくる
- やる気・頑張りは個人の状態に依存するが、仕組みは再現性があり、チームや会社の資産となる
- 気合いで乗り切ると問題が隠蔽され根本解決につながらない
- 「頑張らなくても成果が出る構造をつくること」に時間を使う
■ 5. 自分を仕事の枠にはめることをやめた
- 肩書の利点:
- 役割の説明が容易になる
- 周囲の期待と自分の責任範囲を明確にしやすい
- 肩書の弊害: 「これは自分のミッションではない」という線引きにより重要な問題を見過ごすことがある
- 「誰もやらない仕事」は職種と職種のあいだに落ちていることが多く、誰かが拾わなければ前に進まない
- 岩田聡氏(任天堂)の言葉: 「これは自分でやるのが最も合理的だ」と思えれば覚悟がすぐに決まる
- 肩書は責任を説明するためのものであり、自分の可能性を制限するためのものではない
- 問題の構造を整理した上で、「自分がやることが最も合理的」と判断できれば、自分がやれば良い
■ 6. 本質の見極めと構造化による仕事の前進
- 「やらないこと」を決めることは消極的な行為ではなく、何に責任を持つかを決める最初の意思決定である
- やらないことを絞ることで、自分が向き合うべき本質的な仕事が見えてくる
- 仕事は誰かが覚悟を決めて意思決定した結果として前に進む
- 「誰もやらない仕事」を拾い、構造化し、前に進め続けることでチームが強くなり、事業が前進する
- その積み重ねがキャリアの道となり、自分にしかできない仕事につながる