■ 1. 概要
- 博報堂DYホールディングス(HD)は、AIボットによる広告クリック数水増し(アドフラウド)を防ぐ目的で新会社を設立し、広告配信事業を開始する
- アドフラウドとは、悪徳業者が自社サイトへ広告を出稿させ、AIボットが繰り返しクリックすることで閲覧数を水増しして広告費をだまし取る行為
- 対策として、生体認証(虹彩認証)が完了した実在ユーザーのみを対象とした広告配信を実施する
■ 2. 新会社「Ads for Humanity」の概要
- 社名: Ads for Humanity(東京・港)
- 目標: 2031年度に売上高200億円
- 虹彩認証済みユーザー: 世界約1800万人
- 社長: 森田英佑氏
- 「デジタル広告の効果はより精度が高くなるよう求められている。AIボットへの対症療法ではなく根本療法をとる」と強調
- 「生活者が欲しいと感じる情報をより適切に出していく広告の価値を取り戻せる」と表明
■ 3. 技術・提携の詳細
- OpenAI提携:
- OpenAIのサム・アルトマンCEOらが設立した米企業と2024年に提携
- 虹彩による生体認証の仕組みを活用し、広告配信実験で使ったアプリをサービスに転用
- LG電子との連携:
- ブロックチェーン上で広告の表示履歴を記録
- 改ざんによる不正請求を防止
- AIボットによる水増し以外のクリック数改ざんリスクも回避
■ 4. ビジネスモデル
- 購買行動分析などへの情報提供に同意し、広告をクリックしたユーザーにポイントを付与
- ポイントはギフト券と交換可能で、広告商品の購買促進を図る
- 広告料金は当初は通常と同程度で提供し、効果に応じて見直しを検討
- 生体認証以外にも広告視聴できる消費者の裾野を広げ、デジタル広告媒体としての価値向上を目指す
■ 5. アドフラウドの被害規模
- 世界:
- 英ジュニパーリサーチによると、2023年の損失額は842億ドル(約14兆円)で、世界のデジタル広告支出総額の22%に相当
- 2028年には1723億ドルまで拡大すると予測
- 国内:
- アドフラウド対策専門のSpider Labsによると、2025年の国内被害額は1592億円と推計
■ 6. デジタル広告市場と他社の動向
- 市場規模:
- 電通グループの調査では、2026年の世界の広告費のうちデジタル広告が69%を占める見込み
- アドフラウドを排除できなければ、広告主の離反にもつながりかねない
- 競合他社の対応:
- 電通デジタル: 不正クリックを計測・排除するサービスを導入
- サイバーエージェント: プラットフォーマーと協力し、悪質なサイトへの広告出稿を制限
- 専門家の見解:
- Spider LabsのCEO大月聡子氏: 「AIを完全に排除すると広告の波及効果が小さくなるものの、広告代理店が出稿主に責任を持つ動きとして意義がある」と評価
■ 7. 広告以外の産業におけるAIボット問題
- 音楽配信においても、AIで大量生成した楽曲をボットで再生して印税を得る不正が発生
- フランスの音楽配信サービス「Deezer」では、2025年にAI生成曲の再生回数のうち最大85%が不正と判明
- AIボット対策は広告業界にとどまらず、様々な産業で急務となっている