■ 1. 再計画の概念
- スクラムでは、スプリントプランニングで立てた計画をもとにスプリントを進める
- 計画はその時点での仮説に過ぎず、実際の作業では想定外の複雑さ・工数が発生する
- スプリント中に計画の見直し(再計画)を行うことが重要
- 本記事が扱う再計画とは、スプリントプランニングのやり直しではなく、PBIの作業レベルでの小さな見直し
- 計画と現実のズレを単なる遅れではなく、スプリントゴール達成のリスク兆候として捉える
■ 2. 持ち越しが止まらない原因
- スプリント最終日まで「完成しない」と気づけないことが問題
- 途中で薄々気づいていても計画を見直さず次スプリントへ持ち越してしまう
- 持ち越しが続くとフィードバックが遅れ、価値の提供が滞り、チームが学ぶべきことも後ろ倒しになる
- 繰り返す中でチームが計画と現実のズレに対して鈍感になっていく
■ 3. デイリースクラムの課題
- 再計画が不十分なチームでは、デイリースクラムが「作業報告」で終わる傾向がある
- 作業が「進んでいる」ことは分かっても、完成に「近づいている」かは見えない
- 問いかけによって担当者自身も気づいていなかったズレが表面化する例:
- 「完成までの見通しはどんな感じですか?」という問いかけで、実装が当初より増えている事実が明らかになる
- デイリースクラムは報告を聞く受け身の場ではなく、チーム全員が計画と現実のズレを見つけに行く場
■ 4. 再計画が起きるチームの状態をつくる4つの観点
- 「再計画は必要なもの」という共通認識をつくる:
- 前提がないと問いかけが「監視」や「プレッシャー」に感じられる
- 「問題は人ではなくプロセスにある」という考え方が安心して問いかけられる空気の土台になる
- アプローチ:
- 考え方を言葉にして伝える(スクラムマスターなどが中心となって明示的に共有)
- チーム自身の経験(レトロスペクティブ等)から気づいてもらう
- 一度伝えて終わりにせず、繰り返し確かめることで共通認識を根づかせる
- 作業の透明性を高める:
- カンバンのステータスだけではタスクの詳細な状況(開始時期や完成見込み)は見えない
- 透明性を高める手立て:
- チャットでの状況共有(Slackなどで取り組み内容・詰まっていること・想定外を声に出す)
- タイムライン上での可視化(日単位の時間軸に作業を並べ、予定と実際を比較する)
- 透明性によって見えてくるズレの具体例:
- 「あと少しで終わる」が何日も続いている
- 作業は進んでいるように見えるが完成に近づいている感じがしない
- 調査や実装の出口が曖昧なまま進んでいる
- レビューやテスト、プロダクトオーナーへの確認が後ろに残っているのに完成に近いものとして扱われている
- 状況が担当者の頭の中に閉じていて周りが判断できない
- 想定外の作業が増えているのにスプリントの計画が見直されていない
- 気づいた違和感を会話にする:
- 違和感ははっきりした問題になる前は個人の感覚のまま流れやすい
- 具体的な問いかけの例:
- 完成までの見通しはどんな感じか
- どこが一番読めない感じか
- 「あと少し」はどのあたりまで来ているか
- このまま進めてゴールは達成できそうか
- これらの問いは管理のためではなく、担当者の状況をチームで可視化するためのもの
- 気づいたあとに動ける選択肢を持っておく:
- ズレに気づいても進め方を変えなければ再計画にならない
- 打ち手の例:
- 進め方を変える(ソロからペア・モブに切り替える)
- 専門家を頼る(他チームや社内のエキスパートにヘルプを出す)
- 優先度を変える(不確実な部分を先に着手する)
- スコープを調整する(POと会話し、PBIを分割したり届ける範囲を縮小したりする)
- 実現手段を変える(重い作り方から同じ価値をより速く実現できる別の手段へ)
- 最初の計画に固執しないことが大切
■ 5. デイリースクラムを待たない
- デイリースクラムは24時間に一度の最後のセーフティネットに過ぎない
- デイリースクラムで「時間がかかりそう」と分かるのは本当は遅すぎる
- 計画とのズレが生じたその瞬間に、その場で適応するのが理想
■ 6. 再計画に対する認識の転換
- 再計画は計画の失敗のサインではなく、チームが現実を見て学習し、より良い進め方を選び直している証拠
- 大切なのは計画通りに見せることではなく、スプリントゴールに向けて今の状況に合った最善の進め方をチームで選び続けること
- 早く気づくほど選べる打ち手が増え、最終日まで気づけなければ打ち手はほとんど残らない
- 再計画はスプリントゴールに近づくためにチームが日々行うべき活動