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カンファレンス生態系の変化と CFP の功罪

要約:

■ 1. カンファレンス再興の背景

  • コロナ後の再興:
    • 一旦縮小したテック系カンファレンスが新しい主催、新しい名前で全国的に再開
    • それ自体は歓迎すべき変化
  • 生態系の変質:
    • カンファレンスの生態系はコロナ前とは変わりつつある

■ 2. 勉強会からカンファレンス勃興への流れ

  • コロナ前の一般的な流れ:
    • 同じテーマの勉強会に人が集まりコミュニティが育つ
    • コミュニティの集大成としてカンファレンスを開催する
    • カンファレンスはコミュニティの「ハレの舞台」だった
  • 主催の実態:
    • 本業の傍らスポンサーを集めギリギリ開催を続ける状態が続いた
    • 徐々にカンファレンス自体に価値が見出された
      • スポンサーが付きやすくなった
      • 会場も借りやすくなった
      • チケットが高くても参加者が集まりやすくなった
  • コロナによる断絶:
    • この蓄積は一旦コロナで途絶えた
  • コロナ後の新規開催:
    • 勉強会の蓄積を経ずに初手で開催されるカンファレンスが増加
    • スポンサーは依然付くため名前がそれらしければ開催自体は可能
    • 初めての主催者と初めてのスタッフによる新規開催が増えた
    • 登壇者も全て公募になりがち
  • コロナ前の登壇構成:
    • コミュニティのメンバーが主体的に登壇することが多かった
    • ゆるい公募枠やLT大会枠も一部用意されていた
    • 基調講演などの大トリは主催の力量による特別ゲスト招致が多かった
    • そうした彩りがカンファレンスの特色として参加者に楽しみにされていた

■ 3. コミュニティの新陳代謝とCFP全面化

  • 新陳代謝の課題:
    • 同じメンバーの主催・登壇・参加が続くと外から出来上がった輪に見える
    • 出来上がった輪には新しい人が入りにくい
  • 放置した場合の帰結:
    • 新陳代謝がないまま全員が歳を重ねる
    • コミュニティ自体が廃れていく
  • 登壇公募の役割:
    • 新しい参加者を迎える入り口の1つとして登壇公募が機能していた
  • CFP全面化の経緯:
    • カンファレンスへの応募数がしきい値を超えるようになった
    • 声をかけなくてもある程度定員が埋まるようになった
    • 選考落ちした登壇者から「不公平だ」「選考をすべき」という声が上がった
    • コロナ前も部分的にCFPを導入するカンファレンスはあった
    • コロナ後は「CFPで募集しないのは不公平だ」という暗黙の圧力が強まった
    • 結果として「全てCFPで公募」のスタイルが増えた

■ 4. CFP選考の難しさ

  • 文書選考の限界:
    • 「登壇」というライブなものを文書だけで選ぶのは本質的に難しい
    • ボーカリスト募集を自己紹介文だけで選ぶことに似ている
    • 良く書かれたCFPでも当日壇上でどうなるかは分からない
  • ブラインド選考の内容:
    • 公平性を重視し顔も名前も参考にしない
    • 過去の登壇実績も参考にしない
    • 提出された文面だけでセッションを採択せざるを得ない
  • 「CFP大喜利」化:
    • CFPの文章力さえ高ければ登壇経験の有無を問わず通ってしまう
    • 筆者自身はCFP大喜利が得意で、提出したものはほぼ全て通っている
  • 選考委員の悩み:
    • 「公平な選考のため」という名目で選考委員が集められている
    • しかし何を基準に選べばよいか毎回悩んでいる
  • 品質担保の困難:
    • 「なんの発表か」は分かっても「どんな発表か」は分からない
    • その状態でセッションの品質を担保するのはかなり難しい
    • それ自体に問題があるかは観客の判断に委ねられる

■ 5. カンファレンスの品質問題

  • 参加者の「お客様」化:
    • チケットが有料だと参加者は「お客様」として振る舞いやすくなる
    • 実態は会場代の割り勘に近い構図でも客として扱われがち
  • 参加者の負担の大きさ:
    • 休みを潰し高額なチケットを払い不便な場所まで移動している
    • そうした「客」が低品質な登壇を聞くと不満が主催へのクレームとなる
  • 「クオリティが低い」の内実:
    • 単に緊張して話せない、デモが失敗するといった話に限らない
    • 本当に話したいことがあるのか疑わしい登壇が聴衆にフラストレーションを与える
    • 大きなカンファレンス登壇という実績解除だけが目的に見える登壇も同様
    • AIでCFP大喜利を通せるようになった今、この問題は無視できなくなった
  • 評判への影響:
    • 質の低いセッションで下がるのは登壇者以上にカンファレンス自体の評判
    • 現行のCFP運用にはこれを未然に防ぐ手段がない

■ 6. CFP運用の課題

  • リードタイムの長さ:
    • 提出から本番までが半年程度のリードタイムになっている
    • 募集・選考・採択・告知の工程を考えると運用上の短縮は難しい
    • 変化の速い時代では来週の状況すら見通せない
    • 半年後に今と同じ熱量で話せるCFPを用意する難易度はかなり高い
  • テーマ選定の難しさ:
    • ツールやサービスに紐づく話は本番までにサービス終了している可能性がある
    • 仕事の事例紹介も本番時点では本人が転職しているかもしれない
    • その会社自体が存続しているかも分からない
    • 普遍的なテーマに寄ると「要はバランス」のような結論に陥りがち
  • CFP募集の乱立:
    • カンファレンスの乱立に伴いCFP募集も乱立している
    • フロントエンド分野だけでも並行して3〜4のカンファレンスがCFPを募集
    • 参加者だけでなく登壇者も奪い合いになっている
    • 同じCFPを複数のカンファレンスに使い回す例が増えている
  • タイムテーブルへの影響:
    • 結果としてタイムテーブルは「CFPが通りそうなネタ」で埋まる
    • 加えて「選考は通ったが品質が未知数なネタ」でも埋まっていく

■ 7. 「ここでしか聴けないセッション」の行方

  • 従来のブッキング:
    • 主催が「出て欲しい」と依頼して集める形が多く特に基調講演で顕著だった
    • 実績のある人物に依頼する、実績に頼ったブッキングもあった
    • 普段表舞台に出ずCFPも出さないような人を引きずり出せるかは主催の力量次第
  • ブッキングがもたらす好循環:
    • そのトークを聴きたくて人が集まり来場者の満足度が上がる
    • チケットが売れ次のスポンサー獲得につながる
    • 結果としてカンファレンスの開催自体が安定していく
  • コミュニティ経由の入れ替え:
    • CFPやLT大会での無名登壇者のトークが偶然目に留まることがある
    • 懇親会での評判をきっかけにコミュニティが成長する
    • そうしてセッションの顔ぶれが初めて入れ替わっていく
    • カンファレンスの価値はセッション自体だけでなく壇上を降りた場にもあった
  • CFP偏重の弊害:
    • ブッキングのツテがない、または公平性のためCFPのみに頼る主催は横並びで似通っていく
    • お客様化した参加者は録画とスライドで済むと判断しがちになる
    • その結果チケットが売れずドタキャンも増え開催が苦しくなる
    • 本業の傍ら開催する主催のモチベーション維持が難しくなる
    • こうした事態は既に起こり始めている

■ 8. 初心者のチャンスは

  • CFPを巡る反論:
    • 「初心者はどこで練習するのか」「いつも同じメンツだ」という声が上がる
    • コミュニティにとって新陳代謝は重要で新しい人は歓迎されるべきとされる
  • 一発本番である必要はない:
    • 小さい勉強会の5分枠でたどたどしく発表しても誰も否定しない
    • 少人数の場で場数を踏みながら登壇を学んでからでも遅くはない
  • 登壇を通じて学ぶべき実務知識:
    • 事前の接続テストが必要なこと
    • デモ失敗に備えた録画の用意が必要なこと
    • 想定以上に緊張し話す内容を忘れてしまうこと
    • 時間超過が主催や他の登壇者の迷惑になること
    • 自分がウケると思う内容と実際の評価が一致しないことがあること
    • 短い発表の裏に多くの人の労力がかかっていること
  • 一発ぶっつけ登壇の限界:
    • AI生成のCFP大喜利だけで通った数百人規模での初登壇が満足のいくものになる可能性は低い
  • 本質的な問題の所在:
    • 問題はCFP公募が誰にでも開かれているかどうかではない
    • 登壇者が育つ場が失われたままカンファレンスだけが勃興していることにある
  • 品質担保の必要性:
    • 全てが初心者の練習セッションになれば人が集まらなくなる恐れがある
    • ネガティブなイメージが付く可能性もある
    • 人が集まらなければ赤字になりスポンサーも付かないかもしれない
    • その責任を取る準備ができた状態で新しいカンファレンスが立つとは思えない
    • 健全に続けるには登壇者の質をある程度担保する必要がある
    • 本来それを担っていたのが「コミュニティを育てる場」としての勉強会だった

■ 9. 勉強会のシュリンク

  • タイパの悪さ:
    • 少人数の勉強会に業後の時間を割くのはタイパが悪いと見なされがち
    • カンファレンスは休みが業務扱いになりチケットも会社申請できる場合がある
    • 参加側にとってカンファレンスの方がタイパが良い
  • 主催側の負担:
    • 人も集まりにくく場所の確保も難しく主催自身も忙しい
    • それでも続けたい人たちによってコミュニティが形成されてきた
    • コミュニティ形成は地味でタイパの悪い作業
  • 観光客的発想への警鐘:
    • ハレの場だけに注目し楽しみたいという発想は観光客の発想に近い
  • お客様化によるトラブル:
    • 「金を払っているのだから」という態度に起因するトラブルが後を絶たない
      • 協賛企業提供のピザを提供前に食い荒らして帰る参加者がいる
      • 懇親会でマルチまがいの勧誘行為をする参加者がいる
      • 女性参加者につきまとう参加者がいる
      • 受付でスタッフを恫喝する参加者がいる
    • コミュニティが機能していた頃、参加者はお客様ではなく主体的な一員だった
  • 筆者の対応方針:
    • 有料イベントや懇親会をやらないのはコストを削り継続可能にするため
  • 筆者の今年の実践:
    • 今年はカンファレンス開催を控え小さい勉強会の毎月開催を再開した
      • 1月 #tpac_study
      • 2月 Web技術年末試験2024
      • 3月 #temporal_study
      • 4月 #縦書き_study
      • 5月 #rich_text_editor_study
      • 6月 #webfont_study
    • 7月は初心者歓迎でLTのみを行う会を開催した
    • そこで飛び入りで「LTとは何か」というLTを行った
    • 最近こうしたLTができる場が再び増え始めている
    • 月1回の勉強会と半年に1回程度のLT会を続けたいと考えている
    • 続けられるかどうかは毎回終わるたびに分からないと感じている

■ 10. CFPを無くすべきか

  • CFPの部分的活用:
    • CFPを完全に無くす必要はない
    • 初心者歓迎のLT枠を設けて受け入れる取り組みはコロナ前から存在する
    • 複数トラックのうち1トラックだけCFPに充てるような采配も一案
  • 主催の主体性:
    • 全セッションをCFP公募とブラインド選考で埋めるべきという思い込みは不要
    • 面白いと思う人物を主催が直接口説いて依頼する方がよい
    • それがカンファレンスの特色となり参加者が来場する理由になる
    • CFP経由で偶然の才能に出会える可能性も残る
    • スライド発表形式に限らずパネルディスカッションやLT大会、OST、AMAなど多様な形式を組み合わせる方がよい
  • 主催采配の難しさ:
    • CFP公募のみで作るよりも主催が采配する方がはるかに難しく手間がかかる
  • 外野の声への対応:
    • 「CFPでないのは不公平だ」という外部の意見が出ることもある
    • そうした声は継続責任を負わない観光客的なノイズである
    • コミュニティとしての主体性を持つ人たちが納得できる形を続ければよい
    • 主催はもっとわがままに「自分だからできるカンファレンス」を追求してよい
  • ノウハウ継承の断絶:
    • こうしたノウハウの継承がコロナで途絶えたことが現状につながっている

■ 11. 地方カンファレンスの事情

  • 東京との違い:
    • 地方では東京のように容易に人が集まらない場所も多い
    • それでも地域を盛り上げようと開催を続ける主催が多い
    • 車で2時間かけて集まる勉強会の例もある
  • 地方に合うモデル:
    • 地方ではハレの場としてのカンファレンスに一堂に会しコミュニティを形成するモデルの方が合っている
    • 一度集まり体感することでオンラインのやり取りも活性化する
  • 東京からの招致:
    • CFPが集まらずセッションを埋めるのが難しい場合、東京からエンジニアを招致することもある
    • 招致本人が乗り気ならどんどん行うべき
    • それによりカンファレンスがブートストラップされコミュニティが育てば問題ない
  • 批判への反応:
    • 「東京の人ばかりだ」という批判は来もしない観光客からのヤジに過ぎない
    • 表面的なノイズを気にしても良い方向に進むとは限らない
  • 招致に応じるエンジニアの姿勢:
    • 都合が合えば赴き観光もするがきちんとトークもする
    • 旅費以外の見返りは求めないことが多い
  • 筆者の申し出:
    • ツテがなく困っている場合は声をかけてくれれば紹介もできる

■ 12. 主催コミュニティと開催ノウハウ

  • 「100人の壁」:
    • 参加者が100人を超えると企業会議室での省エネ開催が難しくなる
    • 有料会場を確保するためスポンサーから資金を集める必要が生じる
    • そのために法人を立てることになる
    • 資金があれば海外ゲストの招致が可能になる
    • 配信や通訳の需要も出てくる
    • スポンサー枠やブースの用意でさらに人員とスペースが必要になる
    • こうして規模が拡大していく
  • モデルの変質:
    • 「コミュニティのコアメンバーが主催しメンバーが参加する」モデルから離れる
    • 「誰かが開催した興行に有料チケットで参加する客」のモデルへと距離が開く
  • 運営上の弊害:
    • 考えることが増え正常処理だけで精一杯になる
    • 処理できない例外がたくさん残る
    • 「台風と興行中止保険」や「法人格と個人情報」など知っていれば防げたミスで打撃を受ける主催者もいる
    • コロナ後の経験だけを基準に「カンファレンスはこうあるべき」という価値観に固まる人もいる
    • 一方で場所が借りられず勉強会開催に困っている人もいる
  • ノウハウ共有の取り組み:
    • こうした人たちが緩く情報交換し助け合うことを目的に「カンファレンス開催ノウハウ」を公開した
    • 本当に伝えたかったのは開催方法以前に「コミュニティでカンファレンスをやるとはどういうことか」という部分
    • これもコミュニティの1つの形だと筆者は考えている

■ 13. Outro

  • 最近はカンファレンスが飽和し小さい勉強会が少しずつ戻り始めている
  • タイパの悪い勉強会がテック界隈にどの程度残り続けられるかは筆者にも分からない
  • 筆者はコロナ前にコミュニティに育ててもらった最後の世代だと自認している
  • 恩返しとして時代遅れな勉強会やコミュニティ主体のカンファレンスをやりたい人がいれば協力を惜しまない