■ 1. AI駆動開発による工芸から農業への移行
- 開発スタイルの変化:
- 従来のソフトウェア開発は、人間が一行ずつ心を込めてコードを書く工芸的な営みだった
- 生成AIの登場により、コードを一気に大量生成できるようになった
- 農業化という見立て:
- 今後は開発の「農業化」が起きる
- 高度に進化したAI駆動開発は、大規模農業と区別がつかなくなる
■ 2. IT開発 as a 農業(DasA)
- 開発プロセスの再定義:
- これからの開発は、土壌を整え、種をまき、育つ条件をつくり、出来を見極め、良いものを収穫するプロセスになる
- これを「農業としてのIT開発(Development as an Agriculture)」略してDasAと呼ぶ
- 農業要素との対応:
- 土壌とは、コードベース、コンテキスト、ツール、パイプラインを指す
- 種とは、顧客課題、仕様、アイデアを指す
- 栽培環境とは、テスト、eval、ガードレール、観測基盤を指す
- つくるのはAIである
- 人間の役割:
- 人間の仕事は、何を育てるかを決め、育つ環境を設計し、結果を選別することになる
■ 3. 大量に植え、良いものを残す
- 生成コストと戦略の関係:
- 生成コストが下がるほど、一つの案を丁寧に編集するより、複数の候補を並行して育て良いものを選ぶ方が合理的になる
- 開発ツールの変化:
- 開発ツールは、「一つの出力を編集するUI」から「複数の候補を比較し選抜するUI」へ変わる
- バージョン管理の変化:
- バージョン管理には、コードの差分だけでなく、どのモデル、文脈、指示、評価を経て生まれたかという生成の系譜が加わる
- 生産能力の変化:
- 開発の生産能力は人の数だけでは決まらなくなる
- 丁寧に一本一本植えるのではなく、課金のパワーで解決するという、大規模農業的な性質を帯びる
■ 4. 評価・選別のボトルネック
- ボトルネックの所在:
- どんなに設計しても、出荷量を決めるのは評価、統合、レビュー、ユーザーからの反応を処理するパートである
- このパートはあまりレバレッジがきかない、なぜなら消費者はスケールしないからである
- 残るパラドックス:
- 結果として、生成量は増やせても、正しさや価値を確認する速度は無限には増やせないというパラドックスが残る
- ここにビジネスチャンスがある
■ 5. 希少になるのは選ぶ力
- 価値の移動:
- 生成能力が誰でも買えるようになるほど、競争は買いにくいものへ移る
- コモディティ化した生成物の値段はゼロに近づく
- 需要のある非生成物の価値は無限に値上がりする
- ただし、需要のない非生成物の価値はゼロである
- AI時代に価値が上がる力:
- 何をつくるべきかを定義する力
- 「良い」を判定可能な形にするeval設計
- 大量の候補から価値を見抜く目利き
- 固有のデータ、文脈、顧客理解
- 市場へ届け、反応を得るための信頼と流通
- 流通の重要性:
- 収穫物を売って流通させることも重要になる
■ 6. 開発組織は農場に近づく
- 組織に残る三つの役割:
- 土壌をつくる人:
- コンテキスト、基盤、ツール、ガードレールを整える
- 選別基準をつくる人:
- 品質、価値、安全性を評価できる仕組みにする
- 最終判断をする人:
- 数字だけでは決められない例外と、市場に出す品質を判断する
- 仕事の重心の変化:
- 純粋に実装量をこなす仕事は減り、環境設計、評価、統合、運用へ仕事が移る
- コード量やプログラム本体ではなく「環境設計」できる人材に評価が移動する
- エコシステムをつくる力を流行らせたい
■ 7. 開発者は作り手から生産者へ
- AIツール活用の位置づけ:
- AIツールを使えること自体はただの前提であり、ゲームの参加費にすぎなくなる
- 給料の差がつく力:
- 何を育てるかを決める力
- 良い状態を定義する力
- AIが働ける環境を設計する力
- 結果から価値を見抜く力
- 特定の領域を深く理解する力
- 10xエンジニアの再定義:
- 10xエンジニアの意味も変わる
- 同じ計算資源と人間の時間から、10倍の価値を収穫できる人がモテるエンジニアになる
- イケてるエンジニア・PMの条件:
- 人間の限られた注意力でレビューするに値する、最大の価値を収穫できる生産系をつくることになっていく
- これからの開発者像:
- コードを書く職人であると同時に、AIが価値を育てられる畑の環境をつくる人になることが大事である
- テック業界は大規模農業の成功事例や設計について真面目に学ぶべきである