■ 1. timesを巡る議論の前提
- timesは好きにすればよい:
- 書きたい人が書き、読みたい人が読む分には業務の邪魔にならない
- 違和感が生じる場面:
- 「timesに書いたんですが」とtimes前提で仕事の話をされるとツラい
- 議論の再燃点:
- 社内Slackのtimesで「お気持ち」を書くなという記事が起点
■ 2. 分報という起源
- times文化の始まり:
- 2015年頃の記事から広まり、元は日報に対する「分」を意味する分報
- 典型的な形式:
- 「times_氏名」のような個人チャンネルを各自が持ち、そこに随時書き込む
- 分報の意図:
- 一日の終わりにまとめる日報と異なり、リアルタイム性の高い報告を目的とする
- 今何に詰まっているか、何を調べているかをその場で流し、周囲が早く助けに入れる
- 仕組みとしての評価:
- 合理的な発想である
- 日本特有の文化:
- 海外ではrandomチャンネルを雑談用に使うことはあっても、分報のような使い方は見られない
■ 3. 社内Twitter化と意味の上書き
- 社内Twitter化した実態:
- 技術メモや作業ログもあるが、ランチの写真、仕事への愚痴、時事ネタへの感想が混ざって流れる
- 業務の詰まりどころを共有する場ではなく、お気持ちや雑感が流れる場になった
- 消極的な容認:
- 「Twitterに書かれるよりまし」という理由で受け入れられてきた
- 社外に不満を書かれて炎上するくらいなら社内に書かせておくという判断
- コロナ禍での位置付け:
- フルリモート環境下のコミュニケーション手段にカウントされていった
- 会社紹介資料での扱い:
- 分報という意味合いでの紹介はほぼなく、風通しの良さや心理的安全性の文脈で語られる
- リアルタイムの業務報告として生まれたものが社風や福利厚生の一部として扱われるようになった
- 議論が噛み合わない理由:
- この経緯で意味合いが何度も上書きされてきたため
■ 4. 業務の前提に組み込まれた瞬間の問題
- 問題の発生点:
- timesが業務の前提に組み込まれた瞬間に問題が発生する
- 若手からの苦情:
- 「timesに書いたのに会社の制度が変わらない」という不満が複数の企業で見られる
- 本人たちに悪気はなく、きちんと発信しているという感覚でいることが多い
- timesの位置付け:
- 分報として機能していないtimesは便所の落書きであり、タバコ部屋の雑談に等しい
- 正式な業務報告には値しない
- 期待の非対称性:
- タバコ部屋で愚痴を言って制度が変わらないと怒る人はいない
- timesだけがなぜか、書けば拾ってもらえる場として期待されている
- 組織側の問題:
- 正式な提案ルートが機能していない、または入社後に教えられていないという側面もある
- ただしそれによってtimesが業務報告に格上げされるわけではない
■ 5. 拾う側が払う工数
- 期待に応えるリーダーの存在:
- 複数並べたディスプレイの一枚でずっとtimesを監視しているリーダーを見たことがある
- それはマネジメントではない:
- 部下のつぶやきを常時監視し、拾い、フォローしなければ回らないなら飼育である
- 書き込めば大人が気付いて拾い上げてフォローする光景は職場より保育園に近い
- だから「園児ニア」などと揶揄される
- コストの非対称:
- 書く側は数十秒で済むが、拾う側は全部下のtimesを読み、文脈を推測し、声を掛けるか判断する工数を払う
- この非対称に無自覚なまま「書いたのに」と言われても組織としては応えようがない
■ 6. エンジニアバブルの名残
- 非対称な期待が放置された理由:
- times文化が根付いたのが各社でITエンジニアの正社員数を競っていたエンジニアバブル期だから
- 採用コストとしての正当化:
- エンジニアの機嫌を損ねないことが優先され、お気持ちを拾う工数は採用コストの一部とされた
- timesを見てフォローしてくれる上長は実質的に福利厚生だった
- 市場の変化:
- エンジニア採用は数を揃えるフェーズを終え、選別のフェーズに入った
- 今の転職市場が求めているのはコミュニケーション力や事業貢献
- 福利厚生の終了:
- お気持ちのフォローを提供し続ける理由は企業側からすでに消えている
- 上長に見せることを前提としたtimesは逆行している
- あるべき振る舞い:
- 言いたいことは自身の中でまとめ、然るべき場に建設的な議論という形で出すべき
- 課題を感じてから議論に持ち込むまでを自力でやり切れることがコミュニケーション力として評価される
- timesに書いて拾われるのを待つのはその真逆の振る舞い
■ 7. ライバルとしてのAI
- メンバー層のライバル:
- 多くのメンバー層のホワイトワーカーにとってライバルはAI
- 上長の現状:
- 先進的な企業の上長は、部下だけでなくAIが上げてくる内容の精査とフィードバックに疲れている
- AIとの比較:
- AIは文句を言わず、お気持ちも書かず、成果物だけを上げてくる
- 拾ってもらえなかったことに不満を溜めることもない
- 組織の余裕:
- お気持ちを拾ってもらう前提で働く人間を抱える余裕がどれだけ残るか疑問である
- timesを拾うことを上長に強制する働き方は組織から排除されても仕方がない
■ 8. timesの活用余地
- 人が読むのをやめる方向:
- SlackをAIで定期的に舐めさせ、お気持ちを除外して課題や詰まりどころだけをサマライズさせる
- 分報が本来目指したリアルタイムの状況把握が人間の工数を掛けずに手に入る可能性がある
- 皮肉な結論:
- timesを読むのに最も向いているのは上長ではなくAI
■ 9. 問われているのは読む工数
- 議論のすり替え:
- 必要・不要論はチャンネルを残すか消すかの話として語られがち
- 本当の論点:
- 問われているのは書く自由ではなく読む工数の方
- 前提が変わる瞬間:
- timesは好きにすればよいが、誰かに読んでもらう前提にした瞬間に無料ではなくなる
- 議論の出発点:
- その工数に見合う価値が自分の書き込みにあるのか
- 読む側の工数を組織として払い続けるのか