■ 1. 主張の骨子
- 繰り返されるエンジニア不要論:
- AIによりエンジニアが不要になるという話はここ数年何度も聞いて飽きている
- エンジニア不要論は定期的に出てくるものであり、1990年頃には既に同様の主張を聞いた
- 最低でも35年以上そうした話が続いており、もっと昔からあってもおかしくない
- 三つの主張:
- エンジニアの再定義や淘汰はあるだろうし、今後頻繁に議論されるようになる
- エンジニアそのものが不要になるAIは頭脳労働職も全部不要にするAIであり、正しくは「頭脳労働職不要論」である
- そもそもある一定ラインになると人間の方が安い
- 論点の切り分け:
- コーディングエージェントによるエンジニアの再定義や淘汰と、エンジニアそのものが不要になることは完全に別物
- 後者は非エンジニアだけでプロダクトを作れる状態を指す
■ 2. 現状のAIの実力
- 記事執筆時点の最高峰AI:
- 8/3時点で世界最高峰のAIはMythos5/Fable5である
- Opus5はベンチマークが良くても実性能はそれほど高くないベンチマーク番長にすぎない
- 非エンジニア開発の不可能性:
- Fable5を使って非エンジニアがまともなプロダクトを作りメンテナンスすることは絶対に無理
- 少しでもプロダクト開発・運用に携わった人間なら、それが無理であることは自明にわかる
- 可能な範囲の限定:
- Fable5でプロトタイピングやPoC、自分専用ツールを作る程度なら実例も山ほどある
- 内部ユーザーだとしても顧客が存在するプロダクトは無理
- 素人が作る結果:
- そこらへんのクッソショボい業務システムでも、素人がAIスロップまみれで作れば安定して動くまともなものはでき上がらない
- エンジニアが泣きながら後始末をやらされる未来が目に見えている
- 最先端ツールのバグ:
- Claude CodeやCodexはバグだらけで、いまだにOpenされ続けているissuesが大量にある
- AnthropicやOpenAIの天才たちが社内の無制限トークンを湯水のごとく使ってすらあの体たらくである
- Claude Codeの不愉快なバグは一向に治らず、CodexのSQLiteバグすら治らない
■ 3. 性能向上の見通しと必要な水準
- 次世代モデルの想定:
- OpenAIの内部コードネームAstraやAnthropicのFable5.1は8月中には出るだろう
- Opus-4.8からFable5に該当するほどの極端なジャンプアップが再び起きることはないはず
- 非エンジニアでもプロダクトをまともに開発・運用できるようになるほど大きすぎる進化ではない
- 不要論に必要なAI像:
- エンジニアが持つ勘所・経験・実績・セオリーがなくてもプロダクトを作れるAIでなければならない
- エンジニアとはユーザーが抱える問題を解決するプロフェッショナルである
- ユーザーが言語化できていないものを全部くみ取って設計に落とし込める知性が必要
- テクニック必要論の限界:
- AIの性能を引きだすためにテクニックやコツが必要と言っているレベルでは絶対に無理
- 現行AIの弱点:
- 答えがあるものは素晴らしいくらいに扱えるが、答えが明文化できていないものを扱えるほど賢くはない
- 要件定義・設計の難しさも全部吹き飛ばせるような知性への進化が必要
- 真のAGIとの距離:
- 必要とされる水準はもはや真のAGIと呼ばれるもの
- 現状では既にRSI(AIによる再帰的進化)を達成しているのではと言われている
- RSIやASIが実現されてなお、人間をそのまま代替できる真のAGIの実現は遠い
■ 4. 規制と地政学のリスク
- 政府による強制介入の前例:
- たかだかFable5ごときで、アメリカ政府が歴史上はじめてAIサービス提供に対して強制介入をした
- AGI級AIの攻撃能力:
- 非エンジニアがプロダクトを完全に作れるほどのAIの攻撃能力はFable5程度の比ではない
- ソーシャルエンジニアリングなども含め、あの手この手で攻撃できる能力を持つ
- 提供条件への疑問:
- OpenAIやAnthropicの人がそれを完全にコントロールしきれるのか
- nerfされずにリリースできるのか、値段は安く提供されるのか
- 各国の規制強化の可能性:
- アメリカ政府は今まで以上に介入するかもしれない
- 中国はいまのところオープンだが、世界最高峰のAIを手にしたとき規制推進側に回る可能性は決して低くない
- EUも今以上にうるさく言い始めるかもしれず、日本人は最先端AIにアクセスできなくなるかもしれない
■ 5. 人間の方が安いというコスト論
- 従量課金の負担:
- 普通の企業はサブスクではなく従量課金で使っているはず
- 非エンジニアがFable5を従量課金で使えば莫大な金額がかかる
- 実際のトークン消費額:
- Fable5をMax 20xで最大限に使えば簡単に月額100万円くらいのトークンを使うことになる
- 筆者は7月にFable5のみで95万円相当、Opus5を入れて138万円相当のトークンを消費した
- エンジニア利用の優位:
- エンジニアが適切なモデルを適切な使い方で使っていく方が安くつく
- 価格上昇の見通し:
- 今後のAIはスケーリング則を活用するために今よりさらにサイズアップし、値段も高くなる
- AnthropicやOpenAIとしては値段が高いモデルを出した方が儲かる
- Fable5並のAIが安くなる未来は来るが、非エンジニアでもプロダクトを作れるAGI級AIが安くなる時期は見えない
■ 6. オープンウェイトの現実
- 期待への反論:
- オープンウェイトなAIが出ているから大丈夫という考え方は成り立たない
- 巨大モデルの運用コスト:
- 2.8TのKimi K3はクラウドで月額1000万円、ハードウェア購入なら初期投資だけで1億円以上かかる
- そこまで投じて元を取れるのか、人間の方が安くつくのではないか
- 例外的にペイする層:
- 世界中でランサムウェアを使って金をむしり取っている連中は強烈な攻撃能力を得られるなら月額1000万円を安いと考える
- 日本企業にとっての重さ:
- 日本の普通の企業にとって月額1000万円クラスの投資は安いものではない
- 今後円安がまだまだ進行し、GPUもメモリもSSDもエネルギーも今以上に高くなる可能性がある
- 小型モデルの限界:
- DeepSeek 4 Flash 0731は思ったよりも性能が高くサイズも小さいが、Fable5クラスの賢さではない
- このクラスですら生半可な組織が運用できるものではない
- オープンウェイトの価格誤解:
- オープンウェイトのモデルは安いわけではなく、サイズが小さいから相対的に安いマシンでも動くというだけ
- DeepSeek 4 Flash 0731を公式推奨スペックで動かすなら月額200万円以上を見たほうがいい
- これらを適切に運用できるエンジニアも当然必要になる
- 運用失敗のリスク:
- 数百万円を投資しても、ちょっとしたミスで正しく運用できなくなることがある
- システム自体は動いていてもうまく活用できず、値段分の力を引きだせないこともありえる
■ 7. 淘汰の見通し
- 淘汰そのものは発生:
- AIの発達によってある種の人達が淘汰されるのは確かだろう
- 企業側の制約:
- 多くの企業はなるべくお金をかけたくない
- まともにオープンウェイトのAIを運用するノウハウも持っていない
- 中国製のAIを無条件で信用するわけにもいかない
- 組織形態の変化:
- AIコーディングを活用した少数精鋭のエンジニアリングチームができる
- エンジニアリングとそれ以外の越境が続く
- SIerの将来:
- SIerという形態も長期的には厳しいかもしれない
- ユーザー企業に少数精鋭のエンジニアリングチームが入って自社開発したほうが健全だからである
- 淘汰される人材:
- こういった変化に対応できない人材が淘汰される可能性はそれなりにある
■ 8. 真のAGI到来時のシナリオ
- 都合が良すぎる想定:
- 非エンジニアが操作してプロダクト化ができるほどの知性があるのに、頭脳労働をする人が仕事を失わないシナリオは存在しない
- 議論のスケールの誤り:
- そこまで行き着けばエンジニア不要論で収まるスケールではなく、エンジニア不要論は意味をなさない
- エンジニア不要論とはエンジニアリングに限定したAGIが安価で実現される意味だが、そんな限定的なシナリオは生じない
- ブルーカラーも例外ではない:
- 真のAGIに到達しているならロボティクスもそんなに時間がかからず行き着くところまで行く可能性が高い
- かかったとしても数年遅れくらいに収まる