■ 1. トロン搭載パソコンの試作
- 松下電器による試作機開発:
- 1987年、松下電器産業が新たなOS「TRON(トロン)」を搭載したパソコンの試作機開発に成功
- 松下電器産業は当時の社名であり、現在のパナソニックホールディングスに当たる
- 読売新聞の報道:
- 同年3月に「トロン計画前進 松下電器 国産OSパソコンを開発」との見出しで報じた
- マイクロソフトの「MS-DOS」などがOSの国際標準となっている状況を説明
- 日本メーカーはそのOSに合わせてハード、ソフトを開発している
- トロン計画の推進により、日本メーカーは国産OSによる世界的な標準化が進むことを望んでいる
- 実用化への期待の高まり:
- 試作機の登場をきっかけに、トロンはマイクロソフトに対抗する国産OSとして関係者の期待を集める
- 日本メーカーだけでなく米国メーカーもトロンパソコンを作り始めた
■ 2. 日米貿易摩擦による暗転
- 時代のうねりによる未来の暗転:
- 日米貿易摩擦という時代の大きなうねりがトロンの未来を暗転させることになる
- USTRによる名指し:
- 89年4月公表の米通商代表部(USTR)「貿易障壁年次報告書」でトロンがやり玉に挙げられた
- 米国はトロンOSを支援するための日本政府の市場介入について懸念を抱いているとされた
- トロンは日本政府から不公正に優遇されているという位置づけであった
- スーパー301条の脅威:
- 米政府が不公正貿易の是正を目的に作った制度がスーパー301条である
- 報告書で取り上げられた分野はその適用候補となり、厳しい制裁措置が発動される恐れもあった
■ 3. 坂村の受け止め
- 寝耳に水の事態:
- 坂村にとって、この指摘は寝耳に水の話であった
- 理解できないという反応:
- トロンは世界に公開しており、米国企業も自由に使える
- なぜそれが貿易摩擦の対象になるのか、わけが分からなかった
■ 4. 米政府が問題視した中身
- 中学校向けパソコンの標準仕様:
- 当時、政府は全国の中学校に大量にパソコンを導入しようとしていた
- その標準仕様がトロンに有利になっている点を米政府は問題視した
- 仕様検討の主体:
- 仕様は通商産業省と文部省が所管する財団法人が検討を進めていた
- 通商産業省は現在の経済産業省、文部省は現在の文部科学省に当たる
- 仕様がトロンに基づいた中身となることが有力視されていた
- 米側の懸念:
- この仕様では、世界的なリーダーとして認められているマイクロソフトのOSなどトロン以外のOSが事実上調達から排除される
- 米政府は日本政府が国産のトロンを支援し、米国企業をのけ者にしようとしていると考えたようだった
■ 5. 背景にあった日本経済の勢い
- バブル景気の絶頂:
- 当時の日本経済はバブル景気の絶頂期にあった
- ジャパンマネーが世界を席巻していた
- 産業面での日本優位:
- 日本勢は自動車や半導体で米国勢を圧倒していた
- 脅威とみなされた可能性:
- トロンもいずれ米国の脅威になる恐れがあるとみなされた可能性があった
■ 6. 狂い始めた歯車
- 突如標的とされたトロン:
- トロンは突如として米国から標的にされた
- この出来事をきっかけに、トロンパソコンの歯車は狂い始めていく