■ 1. 日米貿易摩擦に巻き込まれたトロン
- 貿易障壁報告書での問題視:
- 米政府が「貿易障壁年次報告書」で国産OS「TRON」を問題視
- 突如として日米貿易摩擦に巻き込まれる事態となった
- 国内からの批判:
- 日本政府の「トロン優遇」に対しては国内からも批判の声が上がっていた
■ 2. 孫正義による批判
- 批判の急先鋒:
- 当時パソコンソフト流通大手・日本ソフトバンクの社長だった現ソフトバンクグループ社長の孫正義が急先鋒
- 批判の内容:
- 日本政府はトロンにばかり肩入れし、海外のコンピューター製品を締め出そうとしていると批判を展開
- 伝記本「孫正義 起業の若き獅子」によれば、関係者にトロンの危険性を説いて回った
- 通産省幹部への進言:
- トロンが米通商代表部(USTR)の報告書でやり玉に挙げられると、これを口実に一気にトロンを潰した方がいいと通商産業省幹部に発言したとされる
■ 3. 学校向けパソコン標準仕様の断念
- 孫の思惑通りに進んだ事態:
- 報告書公表から約2か月後の1989年6月、学校向けパソコンの仕様を検討していた財団法人がトロンの標準仕様化を断念したと報じられた
- 米政府の報告書が引き金になったのは明らかだった
■ 4. 日本メーカーの撤退
- スーパー301条は不適用:
- 結局、米政府がトロンに対しスーパー301条を適用することはなかった
- メーカーの受け止めの相違:
- トロンが米政府の怒りを買ったと受け取った日本メーカーは、トロンに関わることを恐れた
- 潮が引くように「トロンパソコン」の開発から手を引いていった
- 風評被害としての性質:
- トロン自体が否定されたわけではなかったが、米国からケチがついたOSなど使えないという空気になった
- 坂村はこれを風評被害のようなものだったと述懐
■ 5. 摘まれたパソコンOSの芽
- 未確定だったOS競争:
- 当時のパソコン搭載OSはマイクロソフトのMS-DOSが主流だったが、どのOSが勝つかはまだ分からない状況だった
- 有力候補としてのトロン:
- 日本のパソコンメーカーはマイクロソフトの対抗馬となるOSを探しており、トロンはその有力候補だった
- 日米貿易摩擦に巻き込まれ、その芽は摘まれることになった
■ 6. 坂村への国際的評価
- 米政府高官からの誘い:
- 貿易摩擦を巡る騒動の後に面会した米政府高官から、日本でうまくいかなくなっているならいつでも米国に来てほしいと誘われた
- 坂村はそんなことにはなっていないと答えた
■ 7. 組み込みOSとしての成功
- 電子機器向けOSでの大成功:
- パソコン向けOSでは挫折したものの、トロンは家電など電子機器向けのOSとして大成功した
- 採用事例:
- 任天堂のゲーム機「スイッチ」、ダイキン工業のエアコン、トヨタ自動車のエンジンなどに採用
- 今や世界にある数十億台の電子機器にトロンが使われていると言われる
- 一般の人の目には触れないが、トロンは今も世界中の製品で動いている
■ 8. 日本への示唆
- グローバルでオープンな発想:
- 坂村のグローバルでオープンな発想が世界で受け入れられている
- その事実は「デジタル敗戦」を味わった日本に多くの示唆を与えている