■ 1. 情報系進学への反対
- 今から情報系に行くべきでない:
- IT・AIブームの熱狂がピークにある今だからこそ、あえて進学を止める
- 「とりあえず情報系なら一生食いっぱぐれない」「データサイエンティストが最強の職業」という認識が世を覆っている
- 理一・理二の難易度高騰:
- この5年ほど東大理一・理二の難易度が異常に高騰している
- かつては地方旧帝大の医学部より入りやすかったが、今や完全に逆転した
- 筆者の立ち位置:
- 東大情報理工の修士を出て、現在は外資系企業でAIエンジニアを務める当事者中の当事者
- 情報系・AIブームの恩恵を最も受けている立場にある
- 同時に不都合な現実と構造的リスクを察知し、東大医学部を再受験して物理層とライセンスの保険をかけた
■ 2. 消えるジュニア求人
- ジュニア層の求人削減:
- 外資系ビッグテックや日本のメガベンチャーで、新卒・若手のコーディング求人削減が静かに確実に進行している
- 開発構造の根本的変化:
- LLMをはじめとする強力なAIエージェント基盤の実務導入により、開発・生産の構造が根底から変わった
- タスクを分割しAIに的確な指示を出しレビューできるマネージャーやシニアが1人いれば足りる
- その下で下働きするジュニアエンジニアはもう20人も要らない
- 最も恐ろしいのは切られる順序:
- 「無能から切られる」のではなく「若手から切られる」という構造にこそ恐ろしさがある
- かつては先輩のコードを読み、バグ取りや簡単な実装を任されながら育つエコシステムがあった
- その「簡単な実装」こそが最もAIの得意領域になってしまった
- 未経験者が熟練者になるための梯子が、AIによって下から燃やされている
■ 3. 東大生の就活トレンドは5年遅れ
- 人気ランキングは常に5年遅れ:
- 東大生の就職先人気ランキングは、世間の最先端から常に5年遅れる
- 官僚、銀行、総合商社、コンサル、そして現在の外資ITやデータサイエンスがその系譜にあたる
- 押し寄せる頃には先行者利益が消える:
- 親や世間が「安泰で儲かるらしい」と認識し、学歴エリートが大挙して押し寄せる頃には先行者利益は狩り尽くされている
- 市場はすでに成熟化、あるいはレッドオーシャン化のフェーズに入っている
- 新設データサイエンス学部の危うさ:
- 一橋大学のSDSなど、近年雨後の筍のように新設されたデータサイエンス系学部は非常に悩ましい
- 彼らが社会に出る数年後には、データの前処理からモデル選定、基本的な可視化や分析までLLMが一瞬で終わらせる
- 「Pythonが書ける」「ちょっとデータがいじれる」程度のスキルは最も早くコモディティ化する
- 彼らが勝負しようとしている土俵は、すでに前提が崩壊しつつある
■ 4. AI時代に人間側へ残る4要素
- 物理(ハードウェア):
- AIがどれだけ賢くなっても、物理世界に干渉するにはハードウェアが要る
- 素材、半導体、ロボティクスなど手触りのある領域の価値は相対的に急騰する
- ライセンス(国家資格):
- 医師免許や弁護士資格などが該当する
- AIが99%正確な診断を下せても、法的に責任を取るための「人間のハンコ」の価値は落ちない
- むしろ参入障壁としてより強固になる
- ネットワーク:
- 「何を言うか」がAIでコモディティ化する時代には、「誰を知っているか」「誰から信頼されているか」が決定的な価値を持つ
- 権威性(ブランド):
- LVMHに代表される血縁ブランドや、宗教、天皇家などが該当する
- 「非合理」で「AIによる効率化の対極」にあるものほど代替不可能な価値を持つ
■ 5. 推奨する進路
- 物理層の強い企業群:
- 今18歳なら、あるいは進路に迷う優秀な弟がいれば、素材・半導体・ハードウェアの企業群を迷わず勧める
- 医学部:
- 物理層(手技)とライセンスを兼ね備えた進路として推奨する
- 足場の置き場所:
- 情報空間の戦いは近い将来、AI同士が争うレッドオーシャンになる
- 物理世界や法的枠組みにしっかり足場を持つキャリアがこれから最強になる
■ 6. ポジショントークという留保
- 自らのポジショントーク性:
- この文章自体が自分のポジショントークである可能性は否定しない
- 参入障壁を守るための発言という批判:
- 安全なポジションで高給を貰いながら、後進の参入を防ぐために「やめとけ」と言っているだけではないかと問われれば、完全な否定は難しい
- 先行者が後続の梯子を外すのは世の常である
- 退路確保ゆえの逆張りという批判:
- すでに東大医学部というAIに代替されない退路を確保しているから余裕をかまして逆張りできる、という批判もまったくその通りである
- それでも本物である肌寒さ:
- 毎日コードと最新モデルに向き合う中で背筋に感じている肌寒さは本物である
- その肌寒さに耐えきれず医学部という物理層の保険をかけた事実がそれを証明している
- 情報系に飛び込む若者には、この構造的リスクを真っ向から理解した上で自分のカードを選んでほしい