■ 1. テックリードという役割の曖昧さ
- 人によって異なるテックリード像:
- 開発チームのリーダーやマネージャーといった役職者をテックリードと呼ぶ人がいる
- アーキテクトと同義で使う人もいる
- 認識のずれがもたらす問題:
- テックリードが何を担い、何を期待されているのかの認識が、本人を含めた組織内で噛み合っていない
- その結果、本人だけでなくチームや組織も十分なパフォーマンスを発揮しにくくなる
- 本記事の目的:
- アーキテクトとの違い、EMとの違いからテックリードとは何かを明らかにする
■ 2. テックリードとは
- 定義:
- プロジェクトやプロダクトの開発・運用において、技術面でリーダーシップを発揮する役割
- チームの一員としての立ち位置:
- 基本的にチームの一員として行動する
- 自らコードを書く
- 他メンバーとの違い:
- 技術的なビジョンを持ち、チームをその方向へ導くリーダーシップが際立つ
- 日々の技術的な選択やトレードオフを判断し、意思決定も担う
- チームの技術力向上への責任:
- チームが卓越した技術的成果を出す力を伸ばすことに責任を持つ
- メンタリング、ペアプログラミング、設計やコードのレビューを通じて人材育成に寄与する
- コミュニケーションの担い手:
- プロジェクトやプロダクトの成功に必要なコミュニケーションを担う
- チーム内だけでなく、チーム外の関係者とのコミュニケーションの接点にもなる
- 技術的文脈を誰にでも分かるよう翻訳するスキルを駆使する
- 曖昧さが残る理由:
- これらの役割や責務は、チームリーダーを含むEMの役割やアーキテクトのイメージとも重なる
■ 3. テックリードとEMの違い
- EMをテックリードと呼ぶ図式:
- ここでのEMは単一チームのマネジメントを担う存在で、「チームリーダー」と呼ぶ組織もある
- 「開発チームのリーダー = テックリード」という図式で捉える人がいる
- キャリアパス上の位置づけ:
- テックリードはIC(Individual Contributor)のキャリアパス上に位置づけられる
- EMはマネジメントのキャリアパス上に位置づけられる
- 権限の違い:
- テックリードはメンバーの評価や配置に関する権限を持たない
- EMはピープルマネジメントの責任と権限を持つ
- 本来は補完関係:
- 両者は組織的ビジョンを共有し、その実現に向けて互いに協力する
- そのなかで技術面のリーダーシップを発揮するのがテックリード
- EMは必ずしも技術的リーダーシップを担う存在である必要はない
- スコープの広がり:
- エンジニアリングマネジメントのスコープは、職位によっては複数チームに及ぶ
- 組織によっては、そのEMと補完関係にあるテックリードも単一チームを超えたスコープを担う
- 混同の背景:
- 両者を兼任するケースがよくみられるという組織編成上の理由がある
- その兼任は必ずしも意図的に設計された編成とは限らない
- 役割定義の曖昧さによる弊害:
- EMの役割定義自体が曖昧なため、兼務するEMとそうでないEMが自然発生的に混在する組織がある
- その結果、EMに対する本人と周囲の期待値が食い違い、関係者間の摩擦を生む
■ 4. テックリードとアーキテクトの違い
- 共通点と相違点:
- 技術的リーダーシップを発揮する点で両者は共通する
- 向き合う対象と責任のスコープが異なる
- リードする対象:
- テックリードはチームにおける技術的な方向づけや意思決定をリードする
- アーキテクトは特定のシステムやドメインを対象にリードする
- スコープが複数チームにまたがる場合、アーキテクトはチーム境界を越えて活躍する
- アーキテクトに求められる力:
- 担当領域の構造や制約、技術的な選択が将来に及ぼす影響を見通す力
- アーキテクトのタイプ:
- 特定領域に関する卓越した技術力を用いて活躍するタイプ
- 業務ドメインに深く精通し、その知識を技術的な課題解決に結びつけるタイプ
- アーキテクトの主導する範囲:
- 技術力や知識を基盤に、担当領域をどう進化させるかという方針づくりを主導する
- その主導はチーム境界に制約されない
- テックリードとの立ち位置の差:
- 組織によっては、コードをほとんど書かないアーキテクトもいる
- 特定の開発チームに所属しないアーキテクトもいる
- アーキテクトの役割:
- 担当領域の技術的なロードマップを描く
- 技術的側面でのイネーブラーとして、関係するチームや組織が自律して開発・運用を担えるようにする
■ 5. まとめ
- 三者に共通する点:
- テックリード、EM、アーキテクトはいずれもリーダーシップが求められる役割
- ただし、何に対してリーダーシップを発揮するかが大きく異なる
- テックリードとEMの補完関係:
- テックリードはチームにおける技術的な方向づけや意思決定をリードする
- EMは人の成長を支援し、チーム、組織、プロセスを整えることで組織を成果へ導く
- 両者が見据えるビジョンは一致する
- アーキテクトのリーダーシップ:
- 特定のシステムやドメインに向けられている
- 複数チームが依存するシステムやコンポーネント、コア技術領域に責任を持つ
- その責任は長期的な設計・実装方針、拡張性、品質に及ぶ
- 違いを理解することの効果:
- 本人や周囲が違いを理解すれば、それぞれの立ち位置が明確になる
- テックリード自身が目指すキャリアパスを意識できる
- 組織設計者は組織編成における配役を最適化しやすくなる
- 最終的な帰結:
- 各役割に対する期待と責任を揃えやすくなる
- テックリードも組織も成果を発揮するための条件が整う