■ 1. 『増補改訂版 ヤフーの1on1』の概要
- 本書の位置づけ:
- 2017年の初版を2025年に増補改訂版としてリニューアルした書籍
- ヤフーにおける1on1の実践を題材に、1on1とは何かを概観する一冊
- 初版から変わらない特徴:
- 上司と部下のやり取りをマンガで紹介しており、初めて1on1に触れる人にもわかりやすい
- 1on1の導入時や相談を受けた際に「最初の一冊」としてよく紹介してきた
- 増補改訂版での追加内容:
- コロナ禍によるリモートワークの浸透を踏まえた内容
- 導入前後で感じやすい疑問に答えるFAQ
- 再読のきっかけ:
- 初版を繰り返し読む時期を過ぎ、本棚の奥にしまっていた
- 増補改訂版の刊行にたまたま気づき、復習と懐かしさから手に取った
- 本書のアップデートと自身の8年間の変化が絡み合い、多くの気づきを得た
■ 2. 目を引いた一節「「目的」よりも「効果」」
- 引用されたエピソード:
- ある1on1で、上長が部下に対し、週末に娘の彼氏が会いに来るので結婚の話かもしれないと相談をもちかけた
- 相談か雑談かも曖昧で、「1on1は部下のために行う」という原則からも逸脱している
- それでも、普段は厳しい上長の人間的な一面を見ることには意味があり、むしろ微笑ましい
- 本書の主張:
- 1on1の目的を限定してしまうのは危険
- 人と人とのコミュニケーションは、目的をはっきりさせなければできないものではない
- 何気ない雑談が問題解決のヒントになることもある
- コミュニケーションには多様な効果がありうると考えるのが自然
- 複数ある目的を、上長と部下の協働作業で即興劇のように展開していくのが理想
■ 3. 「当人の効果実感」と「目的への合致」のギャップ
- 導入相談時に必ず目的を問う理由:
- 1on1という名称は「1対1で話す」という形式しか表していない
- 目的という基準点がなければ、その形式の中でどう会話すべきか決めようがない
- 現場の上司が抱える悩み:
- 会社からは部下の成長支援を目的として1on1を行うよう言われている
- 実際には信頼関係が築けているという効果を感じている
- しかし成長支援という目的は達成できていないため、これではダメなのかと感じてしまう
- 多くの上司に共通する構図:
- 当人たちは実際の効果を感じ、うまくいっていると感じている
- 事前に通達された目的に照らすと、できていないと感じてしまう
- 8年間で育った問い:
- このギャップをどう捉えるべきかという問いが、初版に出会ってから大きくなっていた
- この問いがあったからこそ、この一節に目が留まった
■ 4. 目的は掲げつつ、効果の間口は広く
- 著者も同じ問いを認めていることへの心強さ:
- 「目的よりも効果」というフレーズから、このギャップが考えるに値する問いだと著者も認めているとわかった
- 行き詰まりの原因:
- 1on1は形式にすぎず、そこで起きることは時と場合によって多岐にわたるのが当然
- 即興芸のようなものを先行する単一の目的で適否判断するから、実践者も推進者も行き詰まる
- 目的と効果の二面性:
- 施策として導入する以上、目的を先に掲げることは必要
- 本書も目的が不要と言っているわけではない
- 目的を先行して掲げつつ、実際に生まれる効果は間口を広く認める用意をしておくことが大切
■ 5. 上司どうしで感想や悩みを共有する場
- 間口を広く認めるための方法:
- 1on1を実践する上司どうしが集まり、感想や悩みを共有し合う場をつくることを強く勧める
- 共有の場がない場合:
- 上司にとっての1on1は、会社や人事「だけ」からのメッセージで意味づけされる
- 共有の場がある場合:
- 「他の上司」という観点からの意味づけがなされる
- 会社や人事「だけ」からという偏りが和らぐ
- 上司が感じられるようになること:
- 1on1には多様な効果があること
- 目的と合致しなくても、多様な効果のうち一つでも実感できていれば、まずはOKであること
- 期待される好循環:
- 上司が1on1に前向きに取り組めるようになる
- 前向きな取り組みは、1on1の目的達成にも間違いなくプラスに働く
■ 6. 初版からのアップデートと問いの広がり
- 初版との違い:
- 「目的よりも効果」というフレーズは初版には見当たらない
- 初版では「効果の感じ方は人それぞれ」としか述べていなかった(初版P.63)
- 同期するアップデート:
- 著者が8年間で考えを深めた軌跡と、自身が8年間で育んだ問いが絡み合い、同期してアップデートできた感覚が嬉しかった
- 1on1以外への一般化:
- 「当人の内面からの効果実感」と「外部からの目的への合致」という構図は、1on1に限らずよく見られる
- 目的は大切だが、その目的が実は「する」ことを縛っていないかという問いを、1on1以外にも広げてみたい