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私たちはブラックホールの中に住んでいるのかもしれない、最新の研究でも示唆

要約:

■ 1. 宇宙の有限性と基本構造

  • 無限に見える宇宙: 星空を見上げると宇宙が無限に広がっているように思えるが、宇宙論研究者は宇宙は有限だと知っている
  • 特異点の存在: 宇宙論の最良のモデルは空間と時間に始まりがあったことを示しており、「特異点」と呼ばれる原子以下の点が存在した
  • ビッグバンの膨張: この高温高密度の点はビッグバンが起きたとき急速に外側へと膨張した
  • 事象の地平面: 観測可能な宇宙は「事象の地平面」と呼ばれる境界に囲まれており、宇宙は超光速で膨張しているためその先は観測不能な断崖絶壁である

■ 2. ブラックホールとの類似性

  • 共通する要素: 特異点と事象の地平面という2つの要素はブラックホールの重要な特徴でもある
  • ブラックホールの構造: ブラックホールにも事象の地平面があり、その先は何も観測できず特異点があると考えられている
  • 最近の理論: 最近のいくつかの科学論文が、宇宙全体がブラックホールの中に存在する可能性を示唆している
  • 合理的な考え: カナダ・ペリメーター理論物理学研究所の天体物理学者ニアイェシュ・アフショルディ氏は「確かに合理的な考えです。問題は細部のつじつまを合わせることです」と述べている

■ 3. 数学的基礎の共通性

  • 同じ数学的基礎: 宇宙を理解する基礎となる数学はブラックホールを説明する数学と非常に似ている
  • 一般相対性理論: どちらもアルベルト・アインシュタインの一般相対性理論に由来し、宇宙空間に存在する物体が時空の構造を曲げるという概念に基づく
  • 半径の一致: 偶然にも観測可能な宇宙の半径は、私たちの宇宙と同じ質量を持つブラックホールの半径と同じである

■ 4. ブラックホール宇宙論の歴史

  • 1970年代の提唱: 理論物理学者ラージ・クマール・パトリア氏と数学者I・J・グッドが1970年代にその詳細を最初に練り上げた
  • スモーリンの理論: 約20年後、物理学者リー・スモーリン氏がさらに一歩進んだ理論を提唱した
  • 宇宙論的自然選択: 私たちの宇宙で形成されるすべてのブラックホールは内部に新たな宇宙を生み出し、それらの宇宙は私たちの宇宙と物理法則がわずかに異なり、こうして宇宙は次々と芽吹くように生まれて変異し子宇宙を生み出す過程で「進化」する
  • 主流ではない理論: これらの理論はいずれも主流になっていないが、多くの物理学者は依然としてブラックホールと宇宙の概念的な関連性を認めている

■ 5. 正反対の存在としてのブラックホールと宇宙

  • 密接な関連: ペリメーター研究所の理論物理学者ガザル・ゲシュニスジャニ氏は「数学的には両者は密接に関連しています。両者はいわば正反対の存在です」と述べている
  • 特異点の位置: 私たちの宇宙は特異点から始まったと考えられる一方、ブラックホールは特異点で終わる
  • 始まりと終わり: 宇宙はビッグバン以前に存在した無限の密度を持つ点から始まり、対照的にブラックホールはあらゆるものが意味を成さなくなるほど押しつぶされるごみ処理場のような点で終わる

■ 6. 事象の地平面の性質

  • 後戻りできない境界: ブラックホールの事象の地平面は特異点を取り囲む球状の境界で後戻りできない地点である
  • 穏やかな天体: 大衆文化ではしばしば宇宙の掃除機のように描かれるが、実際のブラックホールは比較的穏やかな天体である
  • 軌道と脱出: 宇宙船は安定軌道に入り脱出もできるが、事象の地平面を越えてしまうともう戻ることはできない

■ 7. 宇宙の膨張と裏返ったブラックホール

  • 膨張による類似現象: 私たちの宇宙の絶え間ない膨張が、ブラックホールと同様の現象を引き起こしている
  • 遠ざかる天体: 望遠鏡で宇宙を眺めると、遠くの天体が近くの天体より速く遠ざかっていくのが見える
  • 超光速の膨張: 非常に遠く離れたところでは膨張が超光速で進行し、星や銀河は瞬く間に宇宙の地平線のかなたへと消え去る
  • 裏返ったブラックホール: まるで裏返ったブラックホールの口へと飲み込まれていくかのようである

■ 8. 表面的な関連性と同一性の違い

  • 重要な区別: ブラックホールと宇宙の表面的な関連性が必ずしも両者が同一であることを意味しないという点が重要である
  • 観測可能な結果の特定: その飛躍を成し遂げるには、物理学者はそうした考えがどのような観測可能な結果をもたらすのかを特定する必要がある
  • 実験による検証: 米バンダービルト大学の物理学者アレックス・ルプサスカ氏は「もし実験によって理論の帰結が否定されれば、その仮定は矛盾しているか間違っていると言うことができます」と述べている

■ 9. 宇宙がブラックホールの中にある場合の観測可能な結果

  • 自然な方向性: もし私たちの宇宙がブラックホールの中にあるとしたら、宇宙にある種の自然な方向性が存在するはずである
  • 銀河の回転: 銀河が特定の方向に回転していたり、宇宙を満たすビッグバンの残留熱(宇宙マイクロ波背景放射)に微妙な軸が見られたりするだろう
  • 勾配の存在: アフショルディ氏は「宇宙全体に何らかの勾配が存在するはずです。一つの方向はブラックホールの中心、もう一つは外側に向かうでしょう」と述べている

■ 10. 宇宙原理との矛盾

  • 均一な宇宙: 最良の測定によると、最も大きなスケールでは宇宙はかなり反復的であることが示されている
  • 宇宙原理: 物理学者はこれを「宇宙原理」と呼び、宇宙に特別な方向性はなくほぼどこでも同じ状態である
  • 難題の存在: ブラックホールの誕生からこうした均一性が生じる仕組みは、宇宙がブラックホールの中にあると主張する者にとって難題である
  • 混沌とした誕生: ブラックホールは死にゆく星から生まれるが、この過程は混沌としており均一とは程遠い

■ 11. 特異点の問題

  • 正反対の性質: ブラックホールの特異点の問題もあり、その無限小の点はブラックホールに飲み込まれたあらゆる存在にとって運命的な最後の瞬間であり、急速に膨張する宇宙とは正反対の性質を持つ

■ 12. 量子重力理論の必要性

  • 2つの理論の統合: これらの問題によりよく対処するには、一般相対性理論(巨大な物体に適用)と量子力学(微小な物質を対象)という20世紀に最も成功した2つの物理学理論を統合する方法を考え出す必要がある
  • 特異点の特殊性: 特異点は巨大な質量を持つ微小な点で、いずれの理論も単独では扱うことができず両者を何らかの形で統合する必要がある
  • 未確立の理論: 多くの努力にもかかわらず、両者を統一した量子重力理論はまだ確立されていない
  • 知識の限界: 同じ理由で、ブラックホールの中で何が起きているのか、あるいはビッグバン以前に何が存在したのかを正確に知ることはできない

■ 13. 探求の価値と将来の可能性

  • 意見の一致: こうした可能性を探ることは興味深く新たな発見につながるかもしれないという点で、宇宙論研究者の意見は一致している
  • 将来の発見: もしかしたら現在の宇宙モデルを見直す理由が見つかり、宇宙は本当にブラックホールの中にあると気づくかもしれない