参院選(20日投開票)で、改選数2以上の「複数区」の情勢に異変が起きている。これまで同一政党が複数の議席を狙ったり、与野党で議席を分け合ったりすることが多かったが、国民民主、参政両党の参戦で無風だった選挙区に強風が吹き始めた。改選1人区だけでなく、複数区の勝敗も選挙戦全体を大きく左右しそうだ。
■接戦に駆けつけた代表
立憲民主党の野田佳彦代表は16日、茨城県神栖市の公共施設で開かれた立民現職の会合に駆け付けた。野田氏は「1人区を中心に応援してきたが、複数区でも心配な選挙区が出てきた。その一つが茨城だ。接戦を制して何とか議席を獲得できるよう支援をお願いしたい」と呼びかけた。
茨城選挙区(改選数2)は約30年間、自民党と野党系候補が議席を分け合ってきた全国屈指の「無風区」だった。だが、立民は今回、野田氏や小川淳也幹事長、大串博志選対委員長ら党幹部が連日のように現地入りする慌てぶりだ。
「台風の目」は参政だ。同選挙区は国民民主が独自候補の擁立を見送ったため、当初は自民現職と立民現職で決まるとみられていた。だが、「日本人ファースト」や攻めの農政を掲げる参政への支持が急拡大し、見通せなくなった。立民の県連幹部は「支援者から『今回は参政に入れる』と言われた」とおびえる。
茨城と同様の状況が他の複数区でも起きている。産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)の情勢調査では、13ある複数区のうち静岡(同2)以外の選挙区で、国民民主や参政の候補が自民や公明、立民などの「指定席」を奪おうと善戦していることが分かった。
■目まぐるしく入れ替わる各党順位
例えば、福岡選挙区(同3)は自民と立民、公明の「指定席」だったが、国民民主、参政の参戦で乱戦に陥っている。報道各社の情勢調査でも各党の順位は目まぐるしく入れ替わる。13日には石破茂首相(自民総裁)が劣勢が伝えられる公明現職の応援に入った。優勢とされる自民も「参政の勢いがすごい」(県連幹部)と警戒し、新人を立てた国民民主も「先行する政党の背中が見えてきた。最後の1議席に滑り込む」(労働組合幹部)と意気込む。
全45選挙区に候補者を立てた参政の存在は選挙戦の趨勢を左右しつつあり、立民幹部は「参政が選挙区で競ってくるとは思わなかった。結局、普段の活動量がないと現職でも議席を奪われてしまう」と不安を漏らした。(永井大輔)