■ 1. 概要
- 「女性は非正規のほうが多い」という常識が覆りつつある
- 64歳以下の現役世代では正規雇用で働く女性のほうが非正規を上回る「逆転」が発生
- 「女性=非正規」という前提で人材戦略を立てる時代ではなくなりつつある
■ 2. データで見る構造変化
- 正規雇用で働く女性の増加:
- 2025年1月には女性の正規と非正規の差が193万人だったが同年9月には50万人まで縮小
- わずか9カ月で差が4分の1以下に
- 2025年1月から9月までで正規雇用で働く女性が約87万人増加
- 年齢層別の状況:
- 65歳以上は依然として非正規労働者が多く差は拡大傾向
- 64歳以下の現役層では2025年2月以降に正規雇用が非正規雇用を継続的に上回る
- 49歳以下では明確に「正規優位」へ
- 50〜54歳/55〜64歳では依然として非正規雇用労働者が多い
- 未婚・既婚による違い:
- 未婚女性は64歳以下のいずれの年齢層でも正規が非正規を上回る
- 既婚女性は39歳以下では正規が非正規を上回るが40歳以降ではいずれも非正規が多い
- 40〜44歳の既婚女性では正規と非正規の差が急速に縮小(2025年1月に約23万人の差が同年9月には9万人まで減少)
■ 3. 逆転現象の理由
- 理由1: 出産期に女性が離職しなくなってきた
- 育児休業制度の普及や両立支援策の浸透により構造が変化
- 第1子出産後も働き続けている女性の割合は2000〜04年の27.5%から2015〜19年では69.5%へと倍増以上
- 育児休業制度を利用して継続就業した割合は2000〜04年の15.3%から2015〜19年の42.6%へと約3倍
- 「非正規から正規への転換」ではなく「辞めなくなったこと」が主因
- 理由2: 深刻な人手不足が女性の正規雇用を押し上げた
- 2010年代以降失業率は低下し有効求人倍率は上昇
- 労働市場は売り手市場へシフト
- 帝国データバンクの調査(2025年7月)では正社員の人手不足を感じている企業は50.8%
- 企業が女性を正社員として採用するインセンティブが強まった
■ 4. 女性正社員の増加を喜べない理由
- 最も正規雇用が増加しているのは医療・福祉といったケア関連産業
- 2013年1月と2025年9月を比較すると医療・福祉の産業で93万人正規雇用が増加
- 医療・福祉の中でも社会保険・社会福祉・介護事業で48万人ほど正規雇用が増加
- 女性の正規雇用増加分の多くは「ケア労働」に集中
- ケア関連産業の課題:
- 社会保険・社会福祉・介護事業で働く女性の月収は全産業平均より約7万〜8万円低い
- 正規雇用が増えても「低賃金の正規雇用」が増えている
- ケア労働は女性比率が7〜8割に達する「女性に偏った産業」
- ここの賃金が低いままである限り男女間の賃金格差が縮まりにくい構造が残り続ける
■ 5. 今後必要な取り組み
- 「正規雇用を増やすこと」に加えて「質の改善」が必要:
- ケア産業への処遇改善
- 男女で偏りの大きい産業の構造改革
- 女性の正規雇用が増えたのは社会が変わり始めたサイン
- 質の面での課題を改善することで初めて「女性の地位が本質的に高まった」と言える