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政治社会学者木下ちがやに訊く『なぜリベラル&左派は普通の日本人から嫌われるのか』

要約:

■ 1. 高市政権の現状

  • 高市内閣の支持率:
    • 産経・FNN合同世論調査で75.4%
    • JNN世論調査で82.0%
  • 支持基盤:
    • 国民民主党や参政党へ流れていた右派支持層を呼び戻している
    • 最大の要因は党派を超えた「女性総理」への期待
    • 共産党支持者の半分以上が高市を支持
    • 保守層とリベラル層双方の支持を獲得
  • 政権体制の不安定性:
    • 公明党が連立を離脱し維新を与党に組み入れた
    • 石破政権の主流派を追放
    • 前体制を否定する革命的な政権
    • 安倍政権は組織戦で党内を結束させていたが高市は派閥の長の経験がなく党内基盤が弱い
    • バランスを欠いた人事で内部に敵を増やしている
    • 自民党内は今後内ゲバの様相を呈する
  • 党内の力学:
    • 石破前首相が公然と高市批判を開始
    • 麻生が自分の返り咲きのために高市を支持しただけで軽視している
    • 麻生は叩き上げの高市をサラブレッドではないため好まない
    • 世間は叩き上げの女性首相を「通俗道徳」的な心情で支持
    • 高支持率に依拠して行き当たりばったりな政策を打ち出している
    • 1月解散で与党を安定化させないとズルズル後退する可能性
  • 自民党の危機:
    • 小泉純一郎は支持率を背景に選挙で勝ったが党員激減し第一次安倍政権が大コケし民主党政権交代への道を開いた
    • 第二次安倍政権は党員を増やそうとしたがネトウヨがたくさん入党
    • 高市政権は小泉政権の悪いところと第一次安倍政権の末路をミックス
    • 自民党の遺産を食いつぶしながら延命する政権
    • 自民党は高市で終わりを迎える可能性
  • 支持率のピークアウト:
    • 村山談話の継承などに対する右派の失望
    • 対中関係への発言に関するリベラル派の離脱
  • 右派票の分散:
    • 参院選で参政党と日本保守党の二つが台頭し存在感を増加
    • 自民党はこれまで中心から右側を自分のパイにし左側は社会党やリベラル政党に渡していた
    • 安倍は右を上手に掴んでいたため「北方領土は二島返還でもいい」と言っても納得されていた
    • 右側が自民以外の政党を支持する現実が発生
    • 高市が総裁選で勝ったのは右側を取り戻すため
    • 右翼の言う通りにしたら国際情勢的に孤立するしかない
    • 「存立危機事態」に関する発言が国際問題化
    • 難しい舵取りを迫られている

■ 2. 立憲民主党の衰退

  • 支持率の下落が顕著
  • 「石破辞めるな」と言ったことで支持率下落
  • 青い鳥症候群:
    • 無党派でリベラルないつか投票してくれる人という「青い鳥」を追いかけている
    • 現実分析が全くできていない
  • 都知事選での敗北:
    • 立民と共産党の支持を受けた蓮舫が小池百合子にダブルスコアで敗れ石丸伸二にも負けた
    • 立民と共産党の不人気に加えて「リベラル離れ」という分析
    • 演説会場は盛り上がっていたが30メートル離れると興味を失っていた
    • 応援する人間の熱量はすごかったが選挙は勝てない

■ 3. リベラルが嫌われる理由

  • リベラルの押し付け:
    • 社会全体ではリベラルに近い考えの人が多い
    • 大声で説教しようとしたりリベラルをこうだと規定しようとする人は嫌だという感覚が広がっている
    • 上野千鶴子が「右翼だから女性でもダメだ」と高市を批判し女性からも反感
    • 上野はリベラルな女性以外が首相になる想定をしていなかった
    • タカ派の女性が首相になる想定外の事態に戸惑いフェミニズムの問題にしてしまった
  • 左翼が嫌われる構造:
    • 勝手に設計図を書いてそれに従わせようとする
    • 「一緒に進む」「共に歩む」と言いながら勝手に理想像を描いて進む
    • 一般の人たちが感じている「通俗道徳」を認めずに「こうじゃなきゃいけない」と人を縛る
    • 多くの人が拒否反応を覚えるのは当然
  • 先鋭化の問題:
    • 震災直後の反原発運動は「反原発」という大きなイシューの上にリベラル側だけでなく保守的な人も乗っていた
    • 危機感による大同団結で寛容だった
    • それがどんどん先鋭化しモノトーンになり「自分たち以外はみんなネトウヨでファシスト」という膠着化
    • 現実には極端なネトウヨやレイシストは1%もいない
    • 『月刊正論』読者も参政党支持者も大概は普通の人
    • リベラル側や共産党支持者になってもおかしくなかった人たち
    • レッテルを貼って攻撃するのは不毛
    • 全員がイデオロギーで動いているわけではない
    • 保守的な感覚とリベラルな感覚は多くの人の中で混ざり合っている

■ 4. リベラルメディアの限界

  • 2010年代半ば頃の状況:
    • BuzzFeed JapanやHuffPostがリベラルな記事を取り上げネットでの影響力が強かった
    • 届いたのは中央線沿いの大卒の高等遊民がほとんど
    • 全国各地の働く人に届かず地域の人を包み込むような「世論の作り方」ができなかった
    • 裾野が広がらなければ先細りは必然
    • 共産党や立民やれいわ新選組が支持を減らしていることにつながっている
  • 2015年のノスタルジー:
    • 共産党と民主党の野党共闘により安倍政権に対抗する枠組みができた時期
    • 安倍政権は強かった
    • 高市や周りの右派は「安倍政権の夢よふたたび」と思っている
    • リベラルは野党共闘の夢を見ている
    • 右も左も「2015年をもう一度」というノスタルジーの中に生きている
    • モードを切り替えるべき時期
    • 立民は「中道」というだけでなく理念的にチェンジする必要
    • 立憲主義という言葉自体が響かない
  • 若い世代の投票率:
    • 20年代に入り国政選挙の投票率が上がっている
    • 若い世代は永遠に選挙に行かないと思われていたが投票率が上向き
    • 政治への関心は広がっておりReHacQのようなメディアの隆盛につながっている
    • 「政治語り」は左が欠けた形で進んでいる
  • 現在の政治やニュース系メディア:
    • 全体的に緩やかな反リベラルや親保守のマインド

■ 5. 左派衰退の要因

  • 経済問題:
    • 現実の職場や生活の中で左派が与える影響が弱くなった
    • 経済成長期の労働運動は戦えば戦うほど賃金が上がった
    • 左翼活動をすると生活がよくなるという実感があった
    • 失われた40年の中で経済成長が完全に止まり経済的領域において左派の存在意義が失われた
  • ニューヨーク市長マムダニの成功例:
    • メッセージの展開が上手かった
    • トランプから「イカれた共産主義者」と非難されたが穏健な政策を提示
    • 「教育の無償化」「家賃や食料品の価格安定化」など
    • 民主社会主義者と自称しているが選挙運動ではすべて経済の話で固めた
    • 高等教育を受けたが不安定な生活や経済的困窮をしている人たちの支持を集めた
    • 2011年のオキュパイ運動に反応していたような人たちを発掘
    • 「労働者階級と共にあるんだ」という姿勢とメッセージを出し「自分たちの代弁者なんだ」と市民に認識させた
    • 日本のリベラルは「多様性を認める人が知事になった」と喜んでいるが勝った要因はそこではない
  • 蓮舫の失敗:
    • 労働者階級との連帯を示せなかった
    • Woke左翼みたいな人たちの支持は受けたが市民には届かなかった

■ 6. 共産党の変質

  • かつての共産党:
    • 大衆政党としての側面が強かった
    • 政治だけでなく様々な文化運動に関わった
    • 映画文化への影響がすごかった
    • 山田洋次監督も共産党のシンパ
    • 『男はつらいよ』のような映画は非常に伝統的で保守的でローカルな感覚を大事にする作品
    • そういうものを共産党は抱えていた
    • 非教養層が文化に触れる機会を作り思想を広げた
    • いわさきちひろのカレンダー配布など
  • 現在の共産党:
    • 多層的な機能がどんどん弱くなった
    • SNSばかりに走ってしまった
    • Woke左翼のような「差別の再生産」に加担して自滅
    • 職場や地域のような普通の生活の中で思想は薄くていいから根をしっかり張らせることが大事
    • 共産党は戦後民主主義の縮図のような部分
    • 共産党が自滅していくのは戦後民主主義が力尽きることの象徴
    • 議会制の中で緊張感を与える存在として評価されてきた
    • 共産党が健全になるための批判が必要

■ 7. リベラル復権の方策

  • 保守とリベラルの定義:
    • 保守は「自然になるもの」
    • リベラルは「あるべきものを目指すもの」
  • リベラルの問題点:
    • 「こうあるべき」は啓蒙主義なのでどうしても上から目線になりやすい
    • 以前は「平和が大切だよね」みたいな平易な言葉で概念を共有していた
    • 現在は「マイクロアグレッション」「トーンポリシング」のような難解なカタカナ言葉を振りかざしている
    • 普通の人たちと共通言語を失っている
    • この状況はかなりマズい
  • 復権への道:
    • かつての戦後民主主義が提示していた誰でも知ってる言葉わかりやすい言葉で意識を共有できるか
    • 新しい世代の人たちに対してどういう言葉をつくれるか
    • 認識を改めることができたら左派やリベラルはまた再生する可能性

MEMO: