あの、これ話すの1001回目くらいなんですけど、「重度知的障害の息子の為に夜の相手をして母親が妊娠して自殺した(噂の最終形態)」みたいなネットロアは、支援現場から見ると偏見と蔑視と無知の三位一体マリアージュなので、障害理解や支援体制に乏しかった2000年代以前ならまだしも、令和現代にはほぼ存在しないと考えて良いです。
11年間も知的障害者支援や家庭支援をしていた俺は全力でその存在を突き止めようと情報を焦りまくりましたが、その全てが「噂」「性風俗関係者の証言」「匿名掲示板の書き込み」であり、昔の俺の仕事上や実態調査でも存在が確認できませんでした。
もちろん、俺が触れられたのは障害者家庭調査や成育歴の記録、行動障害のアセスメントや相談支援内容などの「陽」の情報なんで、「裏業界の情報通が言ってた」などの「陰」の情報にはアクセスが難しいんですけど、「重度知的障害の息子の為に夜の相手をして母親が妊娠して自殺した」の一文だけで「ありえないし、あったとしても虹色のカラスが生まれる確率並みのレアケース」と断じられます。
というかこの噂、噂の性質上、伝聞を通して「露悪的に脚色の強化」がされていくので、最初聞いた時は「夜の相手をしている母親がいるらしい…」だけだったのに「妊娠したらしい…」が付け加えられ、最終的に「自殺したらしい…」まで進化してました。もうそこまで盛るなら「産まれた子が太陽に向かって手を合わせて『天上天下唯我独尊』って言って母親がショック死したらしい…」くらい盛っとけよ。多分、大衆が信じられるギリギリのラインが「母親の自殺」だったんでしょうね。
もちろん、脚色が濃くなればその分ツッコミどころも増していき、まぁそもそも
1.能力的に性交渉の概念の理解が極めて難しい重度知的障害者男性が
2.強度行動障害を抑える為の多量な向精神薬の服薬の副作用(勃起不全)が出ている状態で
3.感覚過敏などの特性があり、舌粘膜が過敏で偏食傾向などが出たりする中で
4.男性最強感度の感覚器官、亀頭粘膜を母親に生で挿入する
時点でありえないんですけど、
「母親が妊娠したらしい…」
→なんで母親は避妊具つけなかったの?
「なんか自閉症?は…なんか知覚過敏?らしいからコンドーム嫌がってつけられなかったんだって…」
→"感覚“過敏なのに亀頭粘膜を生挿入できるの?あと女性用避妊具もあるけど母親は行為前に検討しなかったの?
「…母親もなんかどっかが障害者だったらしい…」
→そのケースだと令和ならガッツリ福祉が介入しちゃうけど、母親の支援体制はどうなってたの?
「これはお前みたいな表社会の人間にはわからない闇の実態、お前が知らないだけだ」
みたいな感じで、もうスティグマの根絶が「無理」なんですよ。ガチで疲れます。
一応補足しておくと、「存在しない」とは言いません。探せば数ケースくらいは「障害のある我が子と性交した母親」はいるんじゃないですかね。だって例えば「風船で空を飛んで太平洋を横断しようとした男性がいる」という20代の人には「そんな奴おらんやろw」となる伝説も、風船おじさんの実在によって「事実」となるので。
でもそれをもってして「男性はみんな風船で太平洋を横断するらしい…」とはならないじゃないですか。社会が「障害者」を施設に隔離して世間の暗部として隔絶された状況に閉じ込めた故に、皆がこの話を信じてしまう構造があります。
あと完全に余談ですが、これ言うのも1002回目なんですけど、「旧優生保護法下で行われていた男性障害者への不妊手術は、そのほとんどが精管結紮術(いわゆるパイプカット)なので、性欲減退効果は一切ありません」でした。
これを知らずに「やはり障害者の性欲は悪…!旧優生保護法は正しかった、復活を!」とか叫ぶの、マジでバカなんでやめて下さい。
まぁ、でもそのレベルのバカはこんな長文をここまで読んで理解する訳がないので、今後もデマに踊らされバカなことを叫び続けると思います。