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フロッピーディスクとWindows 95と紙が頼りの米航空管制、ついに近代化へ システム老朽化でトラブル多発

空の安全を守る米国の航空管制塔で、システムの老朽化に伴うトラブルが続発している。米連邦航空局(FAA)は管制システム近代化の計画を表明し、「フロッピーディスクと紙の運航票はもうやめる」と断言した。

直近でトラブルに見舞われたのは、ニューヨークへの空の玄関口、ニューアーク・リバティ国際空港の管制塔だった。4月下旬から5月にかけて、管制システムの通信障害や画面のブラックアウトなどのトラブルが繰り返され、同空港を利用する便の欠航や遅延、行先変更が続出。対応を強いられた管制官がストレスのため次々に病欠してさらに欠航が増える悪循環に陥った。

[...]そうしたトラブルが起きるたびに指摘されてきたのが、システムの老朽化だった。米公共放送NPRによると、米国の管制塔ではフロッピーディスクや紙の運航票、さらには「Windows 95」搭載のPCが今も普通に使われており、「米国内の管制塔に足を踏み入れると、まるで20世紀にタイムスリップしたような錯覚に陥る」という。

航空管制システムの近代化を求める声は以前から噴出していた。FAAは23年の時点で、米国内の管制システムの3分の1以上について、時代遅れの機能やスペアパーツ不足などを理由に「持続不可能」と判定していた。

ただし管制システムはノンストップで稼働させ続ける必要があり、入れ替えは簡単にはできない。そうした事情から、これまでに獲得した予算はアップグレードよりも、主に現在のシステムを稼働させ続けるために使われてきたという。しかしどれだけ修理を行っても、老朽化したシステムはいずれ使用不可能になる。

アップグレードにあたってはセキュリティ対策の徹底も課題になる。もし管制システムがサイバー攻撃を受ければ甚大な影響が出る。これまでは航空機の動きを運航票で記録して、システム間のデータのやりとりにはフロッピーディスクを使っていたことから、不正侵入とは無縁だった。24年7月に米CrowdStrikeのシステム障害が世界を襲った際に、管制塔が影響を免れたのは古いシステムのおかげだったともいわれる。