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PublickeyのIT業界予想2026。メモリ高騰による消極的なクラウド選択、AIエージェントを前提とした開発...

要約:

■ 1. 記事の概要と2025年の振り返り

  • 2026年1月5日に公開されたPublickeyによるIT業界予想である
  • 2025年を振り返ると生成AIに始まり生成AIに終わると言っても良いほど話題の中心のほとんどに生成AIがあった年だった
  • 2026年も生成AIが注目されることは間違いないがその位置づけは2025年とはまた少し違ったものになる
  • 生成AI以外にもIT業界には注目すべき動向がいくつも存在する

■ 2. 国際情勢とIT業界への影響

  • 2025年1月に米国大統領にドナルド・トランプ氏が就任したことはこの1年で最も大きな影響を世界の政治や経済に与えた出来事だった
  • トランプ大統領が就任直後から強引に推進した相互関税はこれまで進展してきた国際自由貿易の停滞や逆転を引き起こした
  • コンピュータ関連の製造業を含む多数のグローバルな製造業のサプライチェーンに見直しを迫るものとなった
  • ロシアによるウクライナへの侵略における和平交渉での米国の姿勢がロシア寄りであるとして欧州は米国への不信感を募らせつつある
  • 日本で高市早苗氏が首相に選ばれたことは国内の伝統的な価値感を重視するとされるいわゆる保守的な志向の高まりを反映したものと推察される
  • 1年前のIT業界予測で「高くなる国境続く円安と人手不足」として国際的な緊張の高まりとインフレが続くだろうという認識を示したがこれは1年が経過した現在も継続している

■ 3. ITと政治の関係の可視化

  • トランプ大統領の就任式にはGoogleのスンダー・ピチャイCEO・Appleのティム・クックCEO・メタのマーク・ザッカーバーグCEO・Amazon.com創業者のジェフ・ベゾス氏らが巨額の寄付を行うとともに出席することが年初に大きく報道された
  • 新たに設立されたDOGE(政府効率化省)はテスラやX/Twitterのオーナーであるイーロン・マスク氏が主導している
  • オラクル創業者のラリー・エリソン氏は影の大統領と呼ばれるほどトランプ大統領と近しい関係にあると報道されている
  • ITと政治との距離がかつてないほど近いことが可視化された一年だった
  • 米国のみならず世界中でITは各国の安全保障に関わる重要事項となりつつあることなどからもITと政治の距離はさらに近づいていくことになりそうである

■ 4. AIへの大規模投資

  • 2025年のAIの進化と普及そしてその将来性はIT業界のみならず株式市場などからも大きな注目を集めた
  • NVIDIAの時価総額は2025年7月に世界初の4兆ドル(1ドル155円換算で620兆円)を突破しアップルやマイクロソフトを抜いて時価総額世界一となった
  • 日本企業の時価総額1位はトヨタ自動車で約53兆円日本の国家予算(一般会計)は約117兆円である
  • AIブームの勝者になるべくGoogleやマイクロソフト・Amazon.com・Facebook・OpenAI・オラクル・ソフトバンクなどをはじめとする多くの企業が驚くような額の資金調達やAIデータセンターへの積極投資などを発表している
  • 2025年後半にはこれらの大規模投資は本当に将来の利益となって回収できるものなのかという疑念も一部でささやかれるようになっている
  • その疑念への答えがはっきりするのは数年後のことだと思われるがすでにオラクルの株価が急落するなどの動きが見え始めている
  • 2026年の株式市場はもしかしたらそうした予測を早くも織り込むようになるのかもしれない

■ 5. メモリ価格の高騰

  • 年末に突如始まったメモリ価格の高騰がAIデータセンターへの大規模投資が引き起こした事象として表面化した
  • 2025年12月3日に半導体メモリの製造販売大手であるマイクロンテクノロジーがコンシューマ向けブランド「Crucial」でのメモリとSSDの販売終了を発表した
  • AIデータセンター向けのメモリ需要の高まりからコンシューマ向けのメモリ不足が起きそれによってメモリ価格が高騰しているとされている
  • 価格高騰はSSDやHDDなどメモリ以外の部品にも波及している
  • 多くの日本企業が2026年4月から始まる新年度の予算を作成している時期であり来年度のPCやサーバ・ストレージの調達計画を立てているところである
  • メモリだけでなくSSDやHDDもどこまで値上がりが続くのか見通しが難しい現在この価格の不透明さはいずれ企業向けのサーバなどの調達にも影響を及ぼしそうである

■ 6. 予想1:サーバ調達価格高騰による消極的なクラウド化

  • 2025年12月末に国内の多くのBTOベンダ(マウスコンピュータ・ツクモ・ドスパラ・サイコムなど)が相次いで受注停止や値上げなどを発表した
  • メモリ価格の高騰が続くことを見越して早めにPCを調達しておこうと考えた消費者の増加によりBTOベンダの想定を大幅に上回る受注が発生した
  • メモリ価格の急上昇によるBTOベンダの仕入れ価格の急上昇などが重なったことが理由である
  • メモリ価格の高騰はこれから企業が従業員用のPCやオンプレミス用のサーバの調達にも影響するであろうことは十分に予想される
  • 特に多くのメモリを搭載するサーバの調達価格の見通しは非常に不透明にならざるを得ない
  • 予算計画を立てたとしても実際に発注してみたら予算に対して十分なサーバの台数が調達できなかったという可能性もある
  • 一方で長期で大量のサーバ調達契約をしていると思われる大手クラウドベンダの利用料金が急に上昇する可能性は低い
  • 新たにオンプレミス用のサーバを調達する際の価格の不透明さを嫌って安定的に調達できるであろうクラウドを選択する合理性が高まりそうである
  • 2026年は通常のクラウド移行に加えてこうした不透明なサーバ調達価格を理由にある意味で消極的にクラウドを選択するというシステムが増加するのではないか

■ 7. 予想2:AIエージェントを前提とした開発方法論の勃興

  • 開発チームに指示したことを文句も言わず何でも実行してくれて昼も夜も24時間365日文句も言わずにずっと働き続けることができてしかも通常の人件費よりずっと安価なメンバーを何人も採用できるとしたらそのメンバーにいつどんな作業を依頼するか
  • それによって既存のメンバーの役割や働き方はどう変わっていくべきか
  • 既存の開発手法や方法論はそのままでよいのか
  • 人間とは異なる能力と働き方とコストを備えたメンバー=AIエージェントが開発チームに迎え入れられようとしている現在これまで人間だけで構成されていることが前提であった開発方法論・メンバーの役割・働き方・コラボレーションツールなどを人間とAIエージェントの混成チームを前提としたものに最適化するべく多くの組織で試行錯誤が始まっている
  • それは以前GoogleがSRE(Site Reliability Engineering)として新しい運用エンジニアのあり方を提唱したりあるいはアジャイル開発のコミュニティからアジャイル開発宣言が発表されたりするようにどこかのベンダからあるいはどこかのコミュニティから提案されるのかもしれない
  • 2026年のAIエージェントはそれ単体や連携による能力進化だけでなくAIエージェントを前提とした新たな開発方法論や手法・コラボレーションツールなどAIエージェントを取り巻く環境との組み合わせによって進化していくものになるのではないか

■ 8. 予想3:企業などへのサイバー攻撃が続く

  • 2025年は社会的に大きな被害をもたらしたサイバー攻撃が目立つ年だった
  • 1月には警察庁が中国の関与が疑われる日本国内へのサイバー攻撃に注意喚起を公開しおもに日本の安全保障や先端技術に係る情報窃取を目的としていると説明しサイバー攻撃は国家の安全保障と深く関わっていることを広く印象づけた
  • 2月にはサンリオが不正アクセスを受けてサンリオピューロランドの新規の来場予約ができない事態を引き起こした
  • 3月には楽天証券やSBI証券を始めとした複数のネット証券においてフィッシング詐欺やマルウェアなどによると見られる証券口座の乗っ取りが多数発生したことが明らかとなって数千億円規模の被害が発生した
  • その後多くのネット証券がこの被害を補償することを発表している
  • 9月にはアサヒグループホールディングス10月にはアスクルが相次いでランサムウェアによるサイバー攻撃を受け製品出荷が停止する大きな被害を受けた
  • こうしたサイバー攻撃はAIの進化によって以前よりさらに巧妙かつ洗練されてきている一方で攻撃を受ける側の多くの組織の防御体制が十分ではないのが現状である
  • 2026年も残念ながら国家間の緊張が高まるなかで国家が関与するサイバー攻撃が減ることは考えにくくネットにつながれたシステムの上で金銭的価値の高い情報のやり取りがますます増加する中でそれら金銭的価値の取得を目的とした攻撃も減ることはない
  • 多くの人にとって身近な企業がサイバー攻撃を受け被害額の補償や長期の出荷停止など多額の被害を受けたことがテレビや新聞・雑誌などで広く報道された結果これをきっかけに以前より多くの企業や組織でセキュリティの議論が高まったとの声も聞く
  • 2026年は多くの企業にとってセキュリティ体制を見直し強化する年になってほしいと願っている

■ 9. 予想4:Rustの採用が本格的に広がる

  • Rust言語は以前から多くのITエンジニアに注目されているプログラミング言語だった
  • C言語のように低レイヤのシステムの記述を得意とし不正なメモリ領域を指すポインターなどを許容しない安全なメモリ管理やマルチスレッド実行においてデータ競合を排除した高い並列性を実現している点などの特長を備えている
  • コンパイル型の言語として安全かつ高速なネイティブバイナリを生成してくれる
  • 米政府は2024年に「将来のソフトウェアはメモリ安全になるべき」との声明を発表しそのためのプログラミング言語の1つとしてRustを挙げている
  • Rust言語はその高い注目度に対して実際の開発プロジェクトでの採用例は十分ではなかった
  • これはそもそもRust言語の得意分野が低レイヤのシステム開発という比較的ニッチでありしかもプログラミング言語の変更に保守的な領域であるという背景もある
  • 2025年にRust言語の利用は広がりを見せていた
  • これまでLinuxのカーネル開発におけるRust言語の使用は実験的な位置付けとされていたが2025年12月に東京で行われたMaintainers SummitにおいてRustの使用はもはや実験的ではないとされ正式な採用が決定された
  • マイクロソフトも2030年までに自社の主要コードベースからC/C++を全面的に排除しRustへ移行する方針を明らかにしたと報道されている
  • AWSが2025年11月にAWS LambdaがRust言語を正式にサポートしたと発表した
  • RustはこれまでAWS Lambdaでよく利用されてきたNode.js/JavaScriptやJava・.NET・Pythonなどのプログラミング言語と異なりネイティブバイナリを生成するコンパイル型言語である
  • これによりインタプリタやJITコンパイラを用いたプログラミング言語と比較して高速な起動と実行そして実行時に必要なメモリ容量が小さくて済むなどの利点がある
  • サーバレスコンピューティングにおいてこれは高速な起動および省メモリなどの効率的なコンピューティングリソースの面で非常に大きなアドバンテージである
  • AWS Lambdaという広く使われているアプリケーションプラットフォームでRust言語を用いてアプリケーションが書けるようになったということがRust言語の活用範囲を大きく広げる
  • 2026年はRust言語の高い注目度が採用事例へと積極的に移行していくことになるのではないかと期待を込めて予想する