■ 1. 背景と課題
- 組織拡大に伴う意思決定のボトルネック:
- 開発タスクは回るが予算や採用などの経営判断はCTOに集中
- 承認待ちの発生により組織運営の停滞が発生
- 2019年頃のプロダクトチーム拡大期に課題が顕在化
■ 2. 経営チームという解決策
- 仕組みの概要:
- CTOが担っていた責務を複数チームに分割
- 各チームへ意思決定に必要な裁量を委譲
- 特定個人の承認待ちを回避し素早い意思決定を実現
- リーダー職と経営タスクの分離:
- リーダーにならずとも経営タスクへの参加を可能に
- 柔軟な参加と離脱を実現
- 個人の状況に応じた関わり方を許容
■ 3. 権限委譲の方法
- 全権委譲の方針:
- 段階的ではなく担当領域全てを委譲
- 採用チームなら採用領域全て、コンピテンシーチームなら評価基準全てを担当
- サポート体制:
- 初期は領域を知る人物が伴走
- 一定期間後にチームへ完全移行
- 迷った際の相談体制を維持
- 全権委譲の意図:
- 部分的委譲では全体感の把握が困難
- ボトルネック解消の実効性確保
■ 4. 経営チームの構成と運営
- 経営と運営の分離:
- 経営チームは「何をやるか」の設計と意思決定を担当
- 日々の実務オペレーションは担当外
- 本業である開発への影響を最小化
- チーム構成:
- 現在13チームが存在(承認、採用、新卒採用、ブランディング、コンピテンシー、kickoff-techforum、メンタルヘルス、360FB & 個人OKR、オンボーディング、構造化面接、原則、ブルー、戦略担当)
- 各チーム2〜4人のメンバーで構成
- 状況に応じて新設や統廃合を実施
- メンバーの流動性:
- 6〜12カ月に平均1〜2回のシャッフル
- 別チームへの移動や開発集中のための離脱が可能
- 掛け持ちやスカウトも許容
- 経営チーム活動は週2時間までを目安に設定
■ 5. エンジニアが兼任する理由
- 組織文化との整合性:
- ユーザベースの「34の約束」における「自己規律」の重視
- 自分たちで考え判断し行動する文化
- XPの価値観:
- 現場に近い人間による意思決定
- 小さく試してフィードバックを素早く回す考え方
- 実態に即した判断:
- 開発現場のコンテキストを深く理解した上での判断が可能
- エンジニアの実情に即した無理のない意思決定を実現
■ 6. エンジニア個人へのメリット
- 小さく始めるトレーニング:
- 正解不明な状況での意思決定力を養成
- フィードバックサイクルを速く回す考え方は開発と共通
- より高い不確実性下での判断訓練の機会
- 視座と意識の変化:
- 組織全体を考える時間の確保
- 違和感への対処意識の向上
- チームや組織全体にプラスとなる振る舞いへの意識醸成
■ 7. 事例1: 採用チーム
- 課題:
- 指名受託率の低下
- 採用基準のメンバー間でのブレ
- 解決策としてのドラフトコーチ導入:
- 組織理解が深く経験豊富なメンバーがコーチ役を担当
- 指名判断前の必須相談プロセスを追加
- 成果:
- 判断基準の学習機会の提供
- 言語化プロセスによる情報整理と判断の明確化
- メンバーの心理的負担軽減と質の向上
- 当事者としての関与:
- 課題発見から改善実施までを自ら担当
- 仕組みとしての課題解決によるやりがい
■ 8. 事例2: 構造化面接チーム
- 目的:
- 面接評価のブレ軽減
- 構造化面接アプローチの導入
- 段階的導入戦略:
- 正社員面接への導入決定
- 一次面接のみでの実施
- ひとつの設問に限定
- スピード重視の意思決定:
- 小さくリリースして早期フィードバック取得
- 定例ミーティングでの背景説明と質疑応答
- 意思決定の透明性確保:
- 背景共有による納得感の醸成
- 建設的な提案を引き出す効果
■ 9. カオスCTOによる実証
- 取り組み内容:
- 2025年1〜3月の3カ月間CTOが経営業務から離脱
- CTO業務は原則として他メンバーへ委譲
- 必須業務のみCTOが対応
- 結果:
- メンバーの反応は落ち着いており大きな問題なく進行
- 採用活動や評価基準改定などが自律的に実施
- 組織のボトルネック可視化の負荷テストとして機能
- 組織強度の実証:
- 経営チームによる自律的な経営タスク遂行を確認
■ 10. 自己組織化の追求
- 自由と責任の考え方:
- 技術選定やプロジェクト進め方への大きな裁量(自由)の付与
- 成果創出と組織健全性維持という責任とセット
- 経営チーム参加の位置付け:
- やらされる仕事ではなく自由を守るための活動
- エンジニアとしての責任を果たす重要な取り組み
- 自己組織化の定義:
- 自らの手で組織ボトルネックを解消
- 最高のパフォーマンスを発揮できる環境の自律的構築