本書で自身が述べているが、山形浩生は頭がいい。
この「頭がいい」とは、対象の本質をすばやく理解し、自分の言葉で説明できるという意味だ。「結局何が言いたいの?」という問いを常に発している人だ。
もちろん「結局何が言いたいの?」というスタンスは誰だって持っているだろう。だが彼の場合、これを徹底している。本を読むとき、頭(テーマ)と尻(結論)を先に読んで、あらましを捕まえる。推理小説でも末尾の種明かしから読むとのことだ(もったいなくない?)。
「結局何なの?」と突き詰めていくと、大したことを言っていないことに気づくという。トロツキーはスターリンの罵倒を繰り返しているだけだし、ピンチョンは思わせぶりなネタを並べるだけで無内容だし、フエンテスも反近代的な妄想をまぶしているものばかりだという。