科学誌『Device』に掲載された論文によれば、地球に降り注ぐ太陽エネルギー135個分(*)を人工水晶に注ぎこんで、1000℃以上まで熱することに成功したそう。
なぜ画期的って、ガラス・鉄・セメント・セラミックなど、現代文明を支えているさまざまな資材を製造するのには1000℃以上の熱が必要なんです。しかし、これまでの技術では太陽熱を反射鏡などを使って集めたとしてもそこまで温度を上げられなかったため、モノをつくるための材料を得るにはどうしても化石燃料を燃やすしかありませんでした。
しかし、この新技術をもってなら、未来の産業プロセスをグリーンに変えていける可能性があります。はたして脱炭素化への大きな一歩となるでしょうか?
「多分、10年ほどの間に量子力学学習の教科書が大きく変わってくると考えている。また変わらなければならないと考えるものである。」
「その一方、そのためにはこれまでの物理学者の意識の巨大な抵抗を乗り越えねばならず、多分世代交代の中でしか進まないであろう。」
「『情報の理論』とは、量子力学の数理理論に登場する状態ベクトルや波動関数といった数学的量は実在の表現ではなく、実在についての『情報の理論』であることが鮮明になったという意味である。」
「すなわち、老舗の物理学本舗から暖簾分けしてもらって量子情報は始まった、と。ところが、新量子がコモディティ化した遠い未来では、量子情報が物理学本舗の椅子に座り、素粒子理論や超弦理論は量子情報本舗の末端の一支店に転落する下剋上が起こっているかもしれない。」
「いまやこの性質を表現するには量子力学におけるモノを『モノ』として捉えるよりもむしろ『量子情報』と呼ぶのに相応しいものであることが明確になっている。」
「将来的にはポパーがいうように『物理学は主観主義哲学の拠点』になるのかもしれない。たいていの研究者たちの意識がどう変わっていくか?これに影響するのが教科書の書き方だろう。」
佐藤文隆著『量子力学の100年』(青土社)
kikippaは、テレビの音を40Hz(1秒間に40回の振動)で変調し、“ガンマ波サウンド”に加工する。このガンマ波が、認知症の原因物質とされる脳内のアミロイドβを減少させるという。
このスピーカーを塩野義製薬と共同開発したピクシーダストテクノロジーズのプロジェクト担当者、辻未津高氏はこう解説する。
「テレビの音を40Hzで変調させてガンマ波サウンドを出す技術は世界初のものです。できるだけ聞きやすいように、テレビの音を人の声と、それ以外の背景音とに分け、背景音のほうにより強く40Hz変調をかける工夫をしています」
このメカニズムの元になっている研究は、19年に米マサチューセッツ工科大学(MIT)の神経科学者、ツァイ・リーフェイらが発表した「認知症のマウスに40Hzの刺激を与えるとアミロイドβの減少が見られた」というもの。お茶の水女子大学助教で脳科学者の毛内拡氏が言う。
「脳の活動は脳波で計測できます。たとえばリラックスしているときは、周波数が1秒間に10回(10Hz)程度のアルファ波の帯域が優位になる。
逆になにかに集中し、脳が活性化していると、高い周波数が観察されるようになり、40Hz前後の脳波、すなわちガンマ波が優位になるのです。
認知症の患者の脳波を計測すると、この40Hz前後の脳波がなかなか出てこない。そこで、40Hzの音などで脳を外部から刺激すると、脳がそれに同調し、活性化することでアミロイドβが洗い流されるとみられているのです」
MITの研究で使われたのは、「ブーン」という40Hzの刺激音。これを一日に何時間も聞き続けるのは困難だが、テレビの音であれば簡単だ。ブルブルと震えるような音に聞こえるため、最初は違和感があるが、使っているうちに慣れてくる。これなら、ながら視聴も簡単で副作用はない。
今後、こうした非薬物療法も、認知症予防のスタンダードとなるかもしれない。
北斗七星の方向から約2時間おきに30秒から90秒間届く謎の電波の発信源は、地球から約1600光年離れた所にある赤色矮星(わいせい)と白色矮星の連星だと分かった。オランダ電波天文学研究所や英オックスフォード大などの国際研究チームが解明し、17日までに英天文学誌ネイチャー・アストロノミーに発表した。
周期的な電波の発信源では、強い磁場を持ち、高速回転する中性子星が「パルサー」として知られるが、その周期は長くても数秒程度。中性子星は質量が大きい恒星が寿命を迎えて超新星爆発を起こした後に残る天体で、中性子星を含む連星が電波を発信する場合もある。周期が約2時間と長く、中性子星を含まない連星が発信源である例は珍しい。
研究チームは欧州の電波望遠鏡「LOFAR」の観測データを調べ、2015年から20年にかけ、この約2時間周期の電波が届いているのを発見。米国の光学望遠鏡で観測し、まず質量が小さく低温の赤色矮星を見つけた。さらに、電波発信と同期した動きから白色矮星との連星だと突き止めた。
白色矮星は太陽に似た恒星が老化した最終段階の小さく高密度な天体。赤色矮星との共通の重心の周りをそれぞれ1周約2時間で公転している。地球から見て手前に白色矮星、奥に赤色矮星が位置する形で一直線に並ぶタイミングで、双方の磁場が絡んで生じた電波が地球に向けて発信されると考えられるという。
スパコンをぶん回して計算した宇宙創世の映像。
ガスが集まって銀河を作り、銀河が集まって銀河団を作り、超巨大ブラック・ホールがぽっぽとガスを吹く。
これ想像図じゃなくて、ガスの運動をきちんと数値計算してる。すごぎて魂が口から出そうになった。
IllustrisTNG Collaboration作。
スーパーで売られているカニが生きているので、川に逃がしてあげた――。まるで美談のように思えるかもしれないが、実は生態系に悪い影響を及ぼすおそれがあり、立ち止まって考えてほしい。環境省の担当者は、弁護士ドットコムニュースの取材に「現地の自然を壊しかねないのでやめて」と呼びかけている。
また、モクズガニの放流は違法ではないものの、専門的な知識のない人が、在来種を放流することについて「遺伝子汚染につながる」(担当者)という。
遺伝子汚染とは、地理的に隔離され、出会うことのない近縁種や異なる遺伝子系統の個体群が放流など、人の手によって出会ってしまい、交雑することで本来の遺伝子型を失ってしまうこと。
たとえば、「メダカ」という標準和名の魚は、現在は存在せず、北日本に生息するキタノメダカと、南日本に生息するミナミメダカという別種として分類されている。両種は数百万年以上前に分化したとされているが、交雑が可能だ。
そして、キタノメダカの分布地でミナミメダカ(品種改良されたメダカ含む)が発見されている地域もあり、「地域を越えた放流」が人為的におこなわれた結果であると指摘する研究もある。
在来種でも本来の生息域ではない国内の地域に、人の手により持ち運ばれた生物は国内外来種と呼ばれる。
環境省の担当者は「良かれと思って地域性を考慮せず放流したことで、両種が交雑し、遺伝子汚染が起きる可能性が指摘されている。『日本の在来種を、自然の分布域を越えて人為的に放流する問題』は、メダカ類に限らず、いろいろな生物で発生している」と強調する。
グルテンの摂取を控えると健康になるという主張に後押しされて、グルテンフリー食の人気がこの10年で急上昇している。このトレンドに減速の兆しは見られず、ドイツの調査会社スタティスタによると、世界のグルテンフリー食品市場は2032年までに140億ドル(約2兆1000億円)に達すると予測されている。しかし、グルテンを避けることは本当に健康に良いのだろうか?
医学的な理由でグルテンを避けなければならない人もいるが、圧倒的に多くの人は明確な理由もなくグルテンフリー食を実践している。
ほとんどの人についてはグルテンを避けるべき科学的根拠はないと、BIDMC栄養健康センターの医療ディレクターで胃腸病専門医のキアラン・ケリー氏は言う。ただし、なかにはグルテンを避けなければならない人もいる。
「セリアック病という自己免疫疾患をもつ人は、グルテンに対して免疫介在性反応を起こします」とケリー氏は説明する。「セリアック病の人がグルテンを含む食品を摂取すると小腸が損傷されてしまうので、グルテンを完全に避ける厳格なグルテンフリー食を実践しなければいけません」(参考記事:「なぜ女性は自己免疫疾患にかかりやすいのか、新たなしくみを解明」)
グルテンを摂取することで消化不良を起こすものの、セリアック病と関連する小腸の損傷は見られない非セリアック・グルテン過敏症(NCGS)の人もいるとケリー氏は言う。一方、小麦アレルギーのある人は小麦を避けるべきだが、グルテンを含む食品すべてを避ける必要はないという。
過敏性腸症候群(IBS)をもつ人は、グルテンフリー食によって消化器系の症状が改善する可能性がある。ただし、「多くの場合は、完全ではなく部分的な改善にとどまります」とケリー氏は指摘する。(参考記事:「なぜ女性の方が過敏性腸症候群になりやすいのか、男性の約2倍」)
約2000年前にヴェスヴィオ火山の噴火で亡くなった若者の脳が、非常に高温の灰の中でガラス化していたことが明らかになった。
研究者らは2020年にこのガラスを発見し、これが化石化した脳だと推測したが、どのように形成されたかは分からなかった。
現在のイタリア南部ナポリ近郊にあるヴェスヴィオ火山は、紀元79年に噴火した。その時に亡くなった約20歳の男性の頭蓋骨から、エンドウ豆ほどの大きさの黒いガラス片が見つかった。
研究者らは現在、摂氏510度もの高温の火山灰雲が脳を包み込み、その後に急速に冷却されたことで、脳がガラスに変わったと考えている。
液状の物質が固まる際に結晶化しないためには、急速に冷却される必要があるほか、周囲よりもはるかに高温でなければならない。
研究チームは、X線と電子顕微鏡を用いた画像解析により、脳が急速に冷却される前に、少なくとも510度に加熱されたと結論付けた。
この男性の身体の他の部分がガラス化したとは考えられていない。ガラス化し得るのは、液体を含む物質のみ。このため、骨はガラス化しなかった。
他の臓器などの軟組織は、ガラス化する前に熱によって破壊された可能性が高い。
そのため科学者らは、頭蓋骨が脳をある程度、保護したと考えている。
日本の調査隊が発掘を行っているトルコ中部の遺跡で、およそ4200年前の青銅器時代の地層から鉄鉱石が熱せられてできた金属や人工的に作られた鉄が見つかりました。調査隊によると、この時代にすでに人類が銅を溶かす技術を用いて鉄を作ろうと試みていたことがうかがえるということで、製鉄の起源に迫る発見として注目されています。
中近東文化センター附属アナトリア考古学研究所の大村幸弘所長が率いる調査隊は、トルコ中部にあるカマン・カレホユック遺跡で、およそ40年にわたって発掘を続けています。
遺跡の北側にあるおよそ4200年前の前期青銅器時代の地層から見つかっていた数センチほどの金属の塊について、今回、電子顕微鏡で分析したところ、このうち2つは鉄鉱石が熱せられてできたもので、別の1つは人工的に作られた鉄だと判明しました。
製鉄は現在のトルコで栄えた「鉄の帝国」とも呼ばれるヒッタイトで今からおよそ3400年前には広く行われていたとされていますが、調査隊によると、今回の発見からはそれより前の青銅器時代にすでに人類が銅を溶かす技術を用いて鉄を作ろうと試みていたことがうかがえるということで、製鉄の起源に迫るものとして注目されています。
遺跡の同じ地層からは炉の跡も10基ほど見つかっていて、これらが鉄を作るために使われていたかどうかも調べることにしています。
大村幸弘所長は「鉄を作る試みはヒッタイトよりも1000年近く古い時代から始まっていて、銅や青銅を作る技術から鉄を作ろうとしていたことがうかがえる」と話しています。
この発掘成果は、3月9日、東京国立博物館で行われる報告会で発表されます。
「鏡像生命」を作り出そうとしていた科学者が、その取り組みを中止すべきだと訴えている。
「鏡像微生物」は、生物の体内に入り込んだとしても、免疫システムに認識されないため、重大な病原体になる可能性がある。
鏡像生物学は、地球上の生命が持つ基本的な特性、すなわち分子の向きを逆転させることを研究する分野だ。
「鏡像生命」を創造することは、科学における最大級の突破口となる可能性を秘めているが、その取り組みを中止すべきだと訴える研究者もいる。
現在「鏡像微生物」は存在しない。しかし、もしそれが製造され、実験室から流出してしまえば、種を超えた壊滅的なパンデミックが引き起こされる可能性があると、38人の科学者が、科学誌「Science」に2024年12月12日付けで掲載された論文で警告している。
論文の筆頭著者であり、ミネソタ大学で合成生物学の研究室を率いる化学者のケイト・アダマラ(Kate Adamala)は、「我々は基本的に、完璧な生物兵器の作り方を教えているようなものだ」とBusiness Insiderに語っている。
「鏡像細胞」のリスクが明らかになるにつれ、アダマラは自身の研究室でその製造に取り組むことをやめた。この研究には複数年にわたって助成金が投じられており、それが期限切れとなったが、彼女は更新申請を行わないことにした。
現在、アダマラと他の37人の研究者は、他の科学者たちにも同様の行動を取るよう呼びかけている。
論文には、「当初、我々は鏡像細菌が重大なリスクをもたらすのかどうか、懐疑的だったが、次第に深刻な懸念を抱くようになった」と記されている。
見た目は普通の畑だが、細かく砕いた粉状の玄武岩が、土の中にたくさん含まれている。仕組みはこうだ。
植物は葉からCO2を取り込んで光合成するが、その根や、根の周りの生物は呼吸をして逆にCO2を出す。根の中でCO2濃度が高まると、土の中の水分や玄武岩と化学反応し、カルシウムイオンや重炭酸イオンなどができる。
イオンはやがて川から海に流れ込み、植物プランクトンや貝類が炭酸カルシウムに変え、海底に沈む。
つまり植物の体を通じて、大気中のCO2が回収されるのだ。
当真さんは「岩石さえあればCO2回収はどこでも起きているが、粉状の岩石を畑にまくことで、スピードが上がる」と話す。
チームの信濃卓郎教授(作物栄養学)は「工業的な回収よりも効率は悪いかもしれないが、回収に伴うエネルギーや特別な技術が不要で、農地という広大な面積を使って世界中で実施できるのが利点だ」と強調する。
彼の説く石油無機起源説は、地球が最初から貯蔵しているメタン(CH4)から地球内部の高温・高圧の環境下で放射線の作用(放射線分解や触媒として作用)等により石油が生成された、というものです。
無機起源説の学者は、生物が存在しない地層から石油が採れることや、石油にヘリウム、ウラン、水銀等が含まれていることなど、生物起源説では説明できない点を指摘しています。
実際の実験では、下図に示す大型の高圧装置を使い、メタン(または炭素と水素)を起源物質として50気圧と1200℃の条件下で重合させて、複雑な炭化水素の化合物が生成されることを確認します。
この重合とは、小さな分子が化学反応によって繰り返し結合し、高分子と呼ばれる大きな分子を形成する反応を指します。
その結果、アルカン、アルケン、芳香族炭化水素など、自然の石油に含まれる成分が生成されました。
これにより、石油が無機的に作られるという仮説が検証されています。
また、冷却速度を変えた実験では、速度が遅いほど重い炭化水素が多く生成されることが確認されました。
これは、冷却速度が遅いと、分子がゆっくりと再配置される時間が増えるため、単純な炭化水素が結合して複雑で重い液体状の炭化水素(石油に含まれる成分)が生成されると考えられています。
これらの結果から、上部マントルの環境下では複雑な炭化水素が同時に作られる可能性が示されています。
石油の無機起源説は、従来の石油資源に関する考え方を大きく変える可能性を秘めています。
生物起源説では、石油は有限の資源であり、いずれ枯渇するとされていますが、無機起源説によれば、石油は現在も地球内部から供給され続けるため、地球が存続する限り無尽蔵であるということになります。
また、無機起源説に基づく探査技術が進展すれば、従来の油田では見つけられなかった新しい油田やガス田を発見できる可能性も高まります。
これにより、エネルギー資源の安定供給が可能になり、世界のエネルギー問題に対する解決策となるかもしれません。
無機起源説はまだ議論の余地があるものの、これまでの実験結果や地質学的根拠は、この理論の正当性を裏付けるものとなっています。
で、それって本当にうつ病にきくの? というのが最大の疑問点だが、少なくとも臨床試験上はどれも成果をあげているようだ。25ミリグラムのサイロシビンの単回投与とセラピーを組み合わせた実験では、深刻な副作用もなく、難治性のうつ病患者に現在提供されているどの単回治療よりも強力な抗うつ効果が得られることを示した。
具体的には、サイロシビンの投与から一週間以内にうつ病の度合いを示すスコアが半減した。臨床試験に参加した患者のうち数人は(初期の限定的な研究なので対象は12人のみ)8年以上うつ病と無縁の生活を送ることができた。著者らは続いて、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)の主流薬(日本ではレクサプロ)との比較実験を行い、こちらは患者をサイロシビン治療とSSRI治療でランダムに振り分ける二重盲検試験で実施されている。こちらもやはり、ほぼすべての指標において、サイロシビンの方がSSRIの薬よりも迅速に効果が現れ、その効果も高いことが確かめられた。*1
温室効果ガスを微細な気孔に閉じ込める粉末「COF-999」が開発されました。大気中の二酸化炭素を削減し、気候変動を押さえる効果が期待されています。
カリフォルニア大学バークレー校のオマー・ヤギー氏らが開発したCOF-999は、二酸化炭素と結合するアミンを内包しており、空気中の二酸化炭素を効率的に吸収するとのこと。
COF-999は走査型電子顕微鏡で見ると何十億もの穴が開いた小さなバスケットボールのように見えるそうで、このように多孔質のデザインにすることで表面積が増え、他の素材よりも「少なくとも10倍速い」速度で二酸化炭素を取り込むことができるといいます。
COF-999は乾燥条件下で1gあたり0.96mmol、湿度50%で1gあたり2.05mmolの二酸化炭素を吸収できる能力を持ち、特に湿度が高いほど吸収効率が向上するという特徴があります。
粉末をストローほどの大きさのステンレス鋼管に詰めて屋外に放置した実験では、410ppmから517ppmの二酸化炭素が含まれていた空気から二酸化炭素を完全に除去することに成功したとのこと。
一般的な大木は1年間で40kgもの二酸化炭素を空気中から吸い上げることができるといいますが、COF-999はわずか200g程度で同じ量の二酸化炭素を吸収できるそうです。
赤潮の発生原因の一つとされるリン酸の濃度を測る装置を、鹿児島県立国分高(霧島市)の生徒たちが開発した。発生の兆候を捉えるのに重要な装置だが、複合的な機能を持つ既製品は高額なため、機能を特化したうえで3Dプリンターを活用することにより、1台840円と低コストでの製作に成功。漁業被害を少しでも防ごうと他の原因物質に開発の幅を広げており、特許の取得や養殖場での実用化を目指している。(渡部優斗)
おぉー
SMKは11日、電子機器に使われるコイン型電池「CR2032」を代替する業界初の自立給電型コインバッテリーモジュールを開発したと発表した。周囲の環境から微小なエネルギーを得て電力に変換する技術「エナジーハーベスティング」を活用したもので、自転車アクセサリーやリモコンなどCR2032を使う機器の電池交換を不要にする。
太陽光発電と、無線通信であるブルートゥースの省電力規格「ブルートゥース・ロー・エナジー(BLE)」をモジュールとして一体化した。既存のコイン型電池ボックスに収まるコンパクト設計により、「現行の製品デザインを踏襲したい」「電池交換を不要にしたい」「通信機能を追加したい」といったニーズに対応することが可能だ。
電池や太陽光セル、通信回路、各種センサーを一体化してコイン型電池のサイズに収めている。外部アンテナによるワイヤレス給電にも対応することで、太陽光発電による充電が利用しにくい場所でも使えるようにしている。リモコンやIoTトラッカー、センサー、パソコン(PC)周辺機器、自転車アクセサリーなどCR2032が使われる用途への展開を想定する。
定格出力電圧は3.0Vプラスマイナス2%で電池容量は4mAh。量産開始時期と価格は未定。
海水には無尽蔵にウランが含まれている。これを回収して利用するのが「海水ウラン技術」だ。かつて日本は海水ウラン技術で世界をリードし、「あと一歩」まで基礎研究が進んでいた。だが2011年に発生した福島第一原子力発電所の事故の影響を受けて、研究開発が途絶えてしまった。
さていま世界では、ウクライナ戦争を受けてエネルギー危機が勃発している。安価で安定しており、かつ有力な温暖化対策手段である原子力発電が内外で再評価されている。海水ウラン技術を確立すれば、ウランを輸入する必要がなくなり、原子力発電は事実上、無尽蔵の国産エネルギーとなる。今後の原子力発電の価値をいっそう高めるために、日本はいまこそ海水ウラン技術の研究開発への投資を再開すべきである。
「オルガノイド」とは、幹細胞から作られ実験室で育てられた臓器のレプリカだ。小さくて完全には機能しないが、これらの生きた3D構造は肝臓、腸そして非常に興味深いことに脳などの臓器の主要な特徴を模倣している。
10年ほど前には、世界最高クラスのスーパーコンピュータでさえ、脳活動のわずか1%を1秒間模倣するのに40分間かかった。これは、人間の脳がいかに強力であるかを示している。
そして現在、私たちはこれまでにない最速のスーパーコンピュータであるFrontier(フロンティア)を手に入れた。Frontierは、驚異的な1エクサFLOPSのデータを処理することができる。これは、1秒間に100京回以上の計算に相当する。しかし、その裏には、21メガワットもの電力を消費するという事実が横たわっている。
一方、人間の脳は同様のレベルの計算能力を持ちながら、わずか20ワット、つまり電球と同じくらいの電力しか消費しない。ファイナルスパークのような企業は、この驚異的な自然の効率性を利用し、生物学とAIを融合させて、よりスマートで、はるかに持続可能なテクノロジーを生み出そうとしている。
ラボで培養された16個のオルガノイドから構築されたこの生体コンピュータ(専門用語では「バイオプロセッサー」)は、間違いなく現代の驚異だ。これらの小さな神経細胞のクラスターは、従来のシリコンチップをはるかに凌駕するかたちで情報を処理し学習する。
高速計算に優れる従来のシリコンチップと異なり、これらの脳オルガノイドは音声認識、画像処理、意思決定など、適応性とパターン認識を必要とする複雑なタスクの処理に特に長けている。
シリコンチップがこれらのタスクを実行するために力任せの手法とエネルギー消費に頼っているのに対し、オルガノイドは脳本来の効率性を利用している。
たとえば、人間の脳は微妙なパターンを識別して反応する能力において比類のないものであり、音声の認識、言語の理解、視覚データの解釈を非常に容易に行うことができる。従来のAIシステムは、これらのタスクに苦労することが多く、膨大な量のトレーニングデータと電力を必要とする。一方、OIは私たちの脳が時間をかけて学習し、適応していく方法を模倣することで、はるかに少ないエネルギーで、より自然にこの種の情報を処理することができる。
さらに、システム全体が「生きている」という点は見逃せない。これらの生きたミニ脳を64個の電極に接続することで、システムはそれらの活動を正確に監視し、制御することができ、生物学とテクノロジーの間の強力なインターフェースを作り出す。システム全体は、オルガノイドが成長するために必要な栄養素を提供するマイクロ流体システムによって、生存し、機能し続けるように維持されている。
生体コンピュータは大きな可能性を秘めているが、実用化とスケールアップにはまだ大きな課題がある。
・処理速度と精度においては、従来のシリコンチップに遅れをとっている。つまり、オルガノイドは特定のAIタスクに優れている一方で、デジタルプロセッサが管理するようなあらゆる種類の計算要求を処理することはまだできない
・もう1つの課題は、これらのオルガノイドの寿命だ。その優れた能力にもかかわらず、これらのミニ脳は約100日間しか持続せず、機能的なシステムを維持するためには定期的な補充が必要となる。この制限は、複雑さを増しこのようなシステムの長期的な実用性と費用対効果に関する懸念がある
・最後にスケーリングの問題がある。ファイナルスパークのバイオプロセッサーはエキサイティングな概念実証だが、広く普及させるためには、スケールアップのためには大きな技術的課題が残っている。オルガノイドの一貫性と信頼性を確保すること、そして既存のデジタルインフラストラクチャと統合することは、この技術がその潜在能力を最大限に発揮するために対処しなければならない課題だ。
南アフリカの地下に広がる20億年前の地層から、生きているとみられる微生物を採取することに東京大学の研究チームが成功しました。
「ブッシュフェルト」は、クロムやプラチナといったレアメタルの世界有数の産出場所として知られるとともに、20億年前に地球の地下深くにあるマントルが上昇して地殻に入り込んで形成された極めて特殊な場所です。
先月までに深さ500メートルまで掘り進められていますが、これまでに採取された岩石を鈴木准教授が国内に持ち帰って詳しく観察した結果、岩の内部の亀裂付近を中心に多数の微生物が確認できたということです。
さらに特殊な装置で分析したところ、DNAを含んだ細胞が見つかり、細胞内からは生きた生物が作り出すたんぱく質も検出されたことから、見つかった微生物は岩の中で“生きている”とみられることも確認できたとしています。
研究チームによりますと、掘削が行われた地層は現在にいたるまで安定していることがわかっていて、20億年前の原始的な微生物が岩の中で生き残っていた可能性が高いとしています。
こうした地下の生態系を支えるメカニズムの1つに「蛇紋岩化反応」と呼ばれる岩と水との反応があります。
この反応が起きると岩からは水素やメタンなどが生成され、それらをエサにすることで岩の中の微生物は長期間にわたって生き続けることが知られています。
特に南アフリカの地下の岩石はこの蛇紋岩化反応が起こりやすい「かんらん石」と呼ばれる鉱物が豊富に含まれていることがわかっていました。
微生物の調査が、数十億年前のレベルの古い地層で行われた例はこれまでなかったということで、鈴木准教授は南アフリカの地下の岩石には20億年前当時にすみついた微生物がいまも生き続けている可能性があると考えていました。
また別のグループの研究で地下の微生物のほとんどは増殖する速度が極めて遅く、少なくとも1億年程度では進化しないこともわかっているため、今回見つかった微生物もほとんど進化せずに20億年前の当時の姿をとどめている可能性が高いとみています。
心臓は自律神経の働きにより、個人の意思に関係なく鼓動を続けますが、脳には、心臓の動きを意識的に制御できる神経の経路が備わっていることを東京大学のグループがラットを使った実験でつきとめました。
心臓は自律神経によって制御され、通常、意識的に動かすことができないとされていますが、グループは心拍数の変化を自分で測定しながらだと意識的に数値を変化させられることに注目し、こうした現象が起きる仕組みを調べました。
グループでは、ラットを使って心拍数が下がれば、報酬を与えるという訓練を繰り返したところ、5日後には心拍数が通常の半分程度に減ったということです。
このときの神経の活動を詳しく調べたところ、脳の中で意思の決定などに関わる場所と自律神経をつかさどる場所の間に神経の経路があることをつきとめたということで、この経路を通じて、意識的な指令が心臓を制御する神経にまで伝わっているとみられるということです。
痛みにかんする話をしているとしばしば「男性より女性のほうが痛みに強い」という説が聞こえてきます。
この考えは日本以外の国にも広く浸透しており、世界の常識になりつつあります。
しかし近年の研究により、動物でも人間でもオスのほうがメスよりも痛みに鈍感であり、痛みを感じる閾値が低いことが明らかになってきました。
(※特に圧迫と電気刺激による痛みは他の方法に比べて最も強い性差を生み出していることがわかりました)
同様の結果は実験室での実験だけでなく、医療の現場でも報告されており、男性と比べ女性はより強いレベルの痛みを、より多くの体の部位に、より頻繁に、より長期に渡り感じていると報告されています。
また一部の鎮痛剤には痛みの敏感さ(閾値)を下げる効果がありますが、男性よりも女性のほうが効きにくいことが示されています。
これらの事実は、男性と女性では痛みに対する感じ方が大きく異なることを示しており、男女では痛みに対して異なる生物学的アプローチがあることを示唆しています。
紅海文書にはいくつかの異なる種類の文書があるが、最も人々を興奮させたのが、メレルの日誌だった。メレルは建造部隊の監督官を務め、大ピラミッド建造中の3カ月間、自分の部隊の活動を日々記録していた。
およそ200人の労働者が所属していたメレルの部隊は、エジプト中を旅して、大ピラミッド建造に関わるあらゆる業務の遂行を担っていた。特に興味深いのは、ピラミッドの外装に使用された石灰岩の化粧石だった。メレルは、トゥーラの採石場から石灰岩を切り出してギザまで運んだことを細かく記録していた。
四角く切られた石は、ナイル川を行く船に乗せられ、運ばれた。途中、港の事務所で石の数を数えた後、船はギザへ向かった。日誌のある一片には、採石場からピラミッド建造現場までの3日間の旅の記録が次のように書かれていた。
25日目:監督官メレルは、南トゥーラで部隊とともに石を運んだ。南トゥーラで一夜を過ごした。
26日目:監督官メレルは、部隊とともに石を積んだ船で南トゥーラを出港し、アケト・クフ(大ピラミッド)に向かった。シェ・クフ(ギザのすぐ手前にある港。事務所と石の保管場がある)で一夜を過ごした。
27日目:石を積んでシェ・クフを出港し、アケト・クフに向かった。アケト・クフで一夜を過ごした。
翌日、メレルとその部隊は新たな積み荷を受け取るために採石場に戻った。
28日目:朝、アケト・クフを出港し、川を通って南トゥーラへ向かった。
29日目:監督官メレルは、南トゥーラで部隊とともに石を運んだ。南トゥーラで一夜を過ごした。
30日目:監督官メレルは、南トゥーラで部隊とともに石を運んだ。南トゥーラで一夜を過ごした。
メレルの日誌には、クフ王の異母兄弟で、「王の仕事のすべてを司る」地位に就いていたアンクハフの名も登場する。パピルスのある一片に、こう記されている。「24日目:監督官メレルは、部隊とともに(文字欠落)を運び、高位にある人々や大隊、そしてロ・シェ・クフの宰相である高貴なアンクハフと過ごした」
メレルはさらに、部下たちの報酬についても細かく記録をつけていた。ファラオ時代のエジプトには貨幣がなかったため、報酬は一般に穀物によって支払われていた。受け取る量は、職位によって異なっていた。また、労働者の基本的な食事は、パンや様々な肉、ナツメヤシ、はちみつ、豆類などで、それらを全てビールで流し込んでいた。
昔から、大ピラミッド建設には大量の労働力が必要だったとされてきたが、労働者の身分については議論の対象になってきた。多くの歴史家は、労働者が奴隷だったに違いないと主張してきたが、紅海文書に書かれていることはこの考えと矛盾している。メレルによる詳細な報酬記録は、ピラミッドを建造した人々が有能な労働者であり、その労働と引き換えに報酬を受け取っていたことを示している。
注意を持続させることが困難だったり、順序立てて行動することが困難だったりといった特徴が現れる「注意欠陥・多動性障害(ADHD)」は、精神医学的に障害の一種とされています。しかし、ペニンシュラ大学の神経科学者であるデビッド・バラック氏らの研究チームが、狩猟によって食料を得るような環境に置かれた際には、ADHD患者がそうではない人々よりも優れたパフォーマンスを発揮する可能性を提示しています。
バラック氏は「人間や他の類人猿は非常に賢い採餌者ですが、多くの動物と同様に、同じ畑や狩り場にとどまって乱獲してしまう傾向があります。そのため、早めに移動するなどの行動を取ることは、乱獲を減らすことができる点で有益だと言えます。衝動的な行動を取るなどのADHDの症状はその点で優れている可能性があります」と述べています。
またバラック氏は「今回の研究結果は、初期の狩猟採集民のコミュニティが直面していた、食料やその他の資源が不足してしまうという問題によってADHDという特徴が生まれた可能性を示唆しています」と語りました。
科学技術が発展した現代では、狩猟採集を行うことは一部の民族を除いてほとんどなくなりました。しかし、今回実験で使われたような意志決プロセスが発生する状況はいまだに存在しています。バラック氏は試験勉強を例に挙げ「試験勉強をしている人は1つのリソースから知識を得ようとしますが、そのリソースがトピックの理解に役立たない場合もあります。そこでADHD傾向がある人はすぐに別のリソースに切り替えることができ、より効率的な勉強ができるかもしれません」と報告しました。
東北大学は3月22日、BSなどの衛星放送用の一般的な受信アンテナ(約50cm)の100万分の1(約600nm)という極めて微少なパラボラ型の金属反射面と半導体で構成される「光ナノ共振器」を開発し、可視光を捕集して金属ナノ粒子に集めることで光強度を約1万倍(4桁)に増強できることを、電磁界シミュレーションを用いて明らかにしたと発表した。
科学者たちは、これまでの研究により、「BC8(eight-atom body-centered cubic)」という構造が、ダイヤモンドを越える硬さを持つと考えています。
このBC8構造のスーパーダイヤモンドは、通常のダイヤモンドと比べて圧力に対して30%高い抵抗力を示す可能性があります。
しかし、炭素原子におけるBC8構造の生成は、これまでに成功していません。
今回、オレイニク氏ら研究チームは、スーパーコンピュータを使ったシミュレーションにより、炭素原子でBC8を生成するために何が必要か分析しました。
BC8は、8つの原子からなる結晶であり、周期表で炭素のすぐ下にあるシリコンやゲルマニウムでは、既に生成されています。
そこでオレイニク氏ら研究チームは、それらの元素でBC8が生成されるための知識を利用し、炭素でBC8を生成するために何が必要か調べるためのコンピュータモデルを作成しました。
これには非常に膨大な計算が必要となりますが、彼らは世界初のエクサスケール(1秒間に100京回の演算)スーパーコンピュータ「フロンティア(Frontier)」を使用することで、生成シミュレーションを行うことができました。
その結果、チームはBC8のスーパーダイヤモンドの生成条件を予測することに成功しました。
彼らによると、BC8が生成されるのは、高圧・高温の狭い条件の中だけだという。
具体的には、6000K(約5727℃)の温度と、1050GPaの圧力が必要になると予測されています。
そして生成されるBC8のスーパーダイヤモンドには、通常のダイヤモンドに見られる「へき開性(一定の面に沿って割れやすい性質)」が無いとも考えられています。
ダイヤモンドは非常に硬く傷つきにくいことで知られていますが、実はこのへき開性により、靭性(粘り強さ)はそこまで高くなく、ハンマーなどで叩けば比較的簡単に割れます。
スーパーダイヤモンドでは、いわばその弱点すら解消されると考えられており、研究チームによると、「これを作るには膨大な費用が掛かるだろうが、その強靭性は計り知れないほど貴重なもの」です。
中国の南京大学、米コロンビア大学、ドイツのミュンスター大学、米プリンストン大学に所属する研究者らが発表した論文「Evidence for chiral graviton modes in fractional quantum Hall liquids」は、重力を媒介すると考えられている「重力子」に似たものを半導体から発見した研究報告である。
[...]ところが今回、研究チームが半導体中で重力子に酷似した性質を持つ集団励起モードの検出に成功した。研究チームは、ガリウムヒ素半導体の薄片を極低温に冷却し、強い磁場をかけることで、電子が集団で奇妙な振る舞いをする特殊な状態を作り出した。この状態で現れる粒子的な励起が、重力子に特有なスピン2を持つことが、精密なレーザー分光実験により明らかになったのである。
ただし、半導体中の電子は2次元平面に閉じ込められており、宇宙空間とは異なる環境にあるため、今回の発見をそのまま重力子を検出したものとして同一視することはできない。しかし、物質の物理と重力理論を結びつける成果であり、量子重力理論の一部を検証する舞台になると考えられている。
中国で絶滅したとされる世界最大の両生類「スライゴオオサンショウウオ」が日本国内で東京の水族館と広島の動物園で飼育されていることを、京都大学の西川完途教授(動物系統分類学)らが発見した。日本固有種で国の特別天然記念物でもある「オオサンショウウオ」と外来種の交雑状況を調査する過程で分かった。クローン技術と人工繁殖でスライゴオオサンショウウオを保全し、将来的には元の生息地に返すという計画もあるという。
先週、降った雨の影響で岐阜市の長良川が増水し、川の一部に設置されていた釣堀から、およそ3000匹のニジマスが川に流れ出たとみられることがわかりました。
ニジマスは、ほかの魚などを食べる外来種であゆなどの生態系への影響を懸念する声が出ています。
ENEOSは大気中の二酸化炭素(CO2)を回収する技術の実証試験を始めた。再生可能エネルギー由来の水素とCO2を使って製造する「合成燃料」の実用化に向けて、安価で大量の原料CO2を調達するのが目的。今後1年程度をかけて、合成燃料の原料として使える品質・コストかどうかを検証する。(根本英幸)
合成燃料は水素とCO2、それに触媒を用いた合成反応により粗油を精製し、そこから石油化学製品の原料となるナフサやガソリン、ジェット燃料、軽油などに変換する。既存の自動車や航空機、さらにはインフラ設備をそのまま活用でき、低コストに脱炭素化できる点が強みだ。液体燃料であるため、長期備蓄や輸送が簡単というメリットもある。
CO2の回収は送風機を用いてコレクターに大気を吸い込み、フィルターにCO2を吸着。コレクター内の空気を抜いて約100度Cに加熱し、吸着したCO2を放出・回収する。その後コレクター内を常温に冷却して、再度作業を繰り返す仕組みだ。1日当たり約75キログラムのCO2を回収する。
2023年8月からX(旧Twitter)にて、元杏林大学保健学部准教授の平岡厚さんと対話を続けています。HPVワクチンは安全で効果的というのが世界中の専門家のコンセンサスですが、平岡さんはHPVワクチンの深刻な副反応・薬害が相当規模で存在すると主張しています。
平岡仮説に必要なのは、他の抗体と比べてHPVワクチンに誘導された抗体に特異的に害があるという根拠を提示することでした*3。重ねて質問すると別の根拠を提示してくださいました。
今のところ、最重要なのはMatsuno論文ですが、Sci.Rep誌の撤回論文(Arataniraら)のデータは、BBBの障害とHPVワクチン接種が重なると脳障害が生じる可能性は示唆しており(抑制された表現で通すべきでは)、彼等が百日咳毒素を用いない別な系で再実験したらどうか、と思います
ですが、科学的な議論において、撤回された論文は根拠として使えません。倫理的な問題や不正や重大な誤りがあるときに論文は撤回されます。平岡さんは、撤回されたことを知らずにうっかり撤回論文を提示したのではなく、撤回されたことを承知の上で提示しました。
HPVワクチンについてまったく言及されていないMatsuno論文以外には、平岡仮説を支持する証拠は撤回されたAratani論文ぐらいだと平岡さんもお認めになりました4。つまり、血液脳関門に異常が生じることでHPVワクチンにより特異的に害が生じるという平岡仮説には科学的根拠はなかったのです。平岡さんが、誤りを認め、仮説を取り下げたのならよかったのですが、平岡さんは仮説を繰り返します5。これでは論点が同じところをグルグル回って、建設的な議論になりません。
私たちの宇宙について、広い目線で見れば天体や物質の分布が均質であるという「宇宙原理」が広く信じられています。しかし近年の観測では、宇宙原理に反すると思われる巨大構造物(宇宙の大規模構造)がいくつも見つかっています。
セントラル・ランカシャー大学のAlexia Lopez氏は、地球から約92億光年離れた位置(※)に、直径が約13億光年にも達する巨大構造物「ビッグ・リング(Big Ring)」を発見したと、アメリカ天文学会(AAS)の第243回会合の記者会見で発表しました。Lopez氏は2021年にも同様の巨大構造物である「ジャイアント・アーク(Giant Arc)」を発見していますが、両者は非常に近い位置と距離にあります。これは宇宙原理に疑問を呈する発見です。
英国のノッティンガム大学(UoL)で行われた研究により、希ガスであるクリプトン原子(Kr)をカーボンナノチューブの内部に閉じ込めることで「一次元の気体」を作成し、その様子をリアルタイムで視覚的に捉えることに成功しました。
実際に撮影された映像では、クリプトン原子が狭いチューブ内である種の「交通渋滞」に巻き込まれており、数珠つなぎに配置されている様子が見て取れます
世界最大級の巨大竜脚類「パタゴティタン・マヨルム」などを紹介する「巨大恐竜展 2024」が 7月13日(土)からパシフィコ横浜(横浜市西区)で開催されます。
約46億年にもわたる地球の歴史のなかでも、「竜脚類」と呼ばれる恐竜は史上最大の陸上動物とされています。本展は、ロンドンの大英自然史博物館(Natural History Museum, London)で開催され、大好評のうちに今月閉幕した企画展「Titanosaur:Life as the Biggest Dinosaur」の国際巡回展で、横浜での開催が記念すべき第一会場目となります。
会場では、世界最大級の巨大竜脚類「パタゴティタン・マヨルム」について、約 37m の大迫力の全身復元骨格や、インタラクティブ展示でわかりやすく紹介します。さらに、福井県立恐竜博物館、福井県立大学恐竜学研究所の監修のもと、竜脚類以外の恐竜や恐竜以外の生物の数々の標本を展示。恐竜の繁栄の歴史や、恐竜をはじめとする生物の巨大化や進化などを楽しく学べます。“恐竜大好き!”なお子様から、太古の生物の歴史に思いを馳せたい大人まで、幅広い層におススメの、この夏必見の展覧会です。
愛媛大学は1月24日、これまで観測が容易ではなかった、物質中において質量ゼロとして振る舞う特殊な電子である「ディラック電子」系の物質において、同電子の振る舞いを観察することに成功したと発表した。
今回の研究では、1気圧下において化学物質「α-ET2I3」を観測し、ディラック電子の観測に成功。同物質には、多数のディラック電子が通常の電子と共存していることがわかったという。なお今回の研究は、3次元空間(x, y, z)での電子のエネルギー(E)をグラフにするため、4次元空間(x, y ,z, E)が必要である点を特徴とする。さらに、今回の解析手法は汎用性が高く、ディラック電子に限らず今後の物性研究に広く活躍が期待されるものとしている。
固体内部は電気を流さない絶縁体だが、その表面だけは電気を流す金属として振る舞う特殊な物質に「トポロジカル絶縁体」がある。このような物質を実用化できれば、消費電力が極めて小さな演算素子や通信システムなどを開発でき、現代社会が直面しているエネルギーや環境問題の救世主となり得るとされる。それらを実現するためには、まずディラック電子の振る舞いをよく理解し、どうしたらそのような電子を含む物質を実用化できるかを考える必要があり、愛媛大の内藤教授は、今回の研究成果はその1つにあたるとしている。
宇宙航空研究開発機構(JAXA)は1月20日、小型月着陸実証機「SLIM」の月面着陸が成功したと発表した。日本初の快挙で、世界でも5カ国目の快挙となった。
ただし、現時点で太陽電池が発電しておらず、バッテリーで駆動しているという。今後データを集めて探査機の状況を確認する方針だ。
中国・北京貝塔伏特新能科技有限公司は8日(現地時間)、民生向けとしては初めて実用化できるレベルの小型化/モジュール化/低価格化を実現した「原子力電池(中国語では原子能電池)」の開発に成功したと発表した。この原子力電池は50年間の安定した発電が可能としており、充電、メンテナンスが一切不要。既にテスト段階に入っており、もうまもなく市場向けに投入できる。
同社の原子力電池は初の民生向けとなっており、放射性同位体ニッケル63から発せられるベータ粒子を用いている。2枚の厚さ10μmの単結晶ダイヤモンド半導体でそのニッケル63を挟み込むモジュール構造を採用。モジュールとなっているため、数個もしくは数百個でユニットを作成し、直列または並列でつなぐことで、異なるサイズ、異なる出力を持つ電池を作成できるという。
原子力電池は物理電池でも化学電池でもないため、リチウムイオン電池の10倍以上の容量密度を実現できる。1gの中に3,300mWhの容量を凝縮でき、発火しない、爆発しない、充電サイクルを持たないといった特性も持つ。さらに、周囲の環境や負荷による劣化も少なく、-60~120℃の環境で正常に動作し、自己放電も発生しないといった特性を持つ。
また、外部に対して放射性物質を出すこともないため、人工の心臓や渦巻管といった医療機器にも応用可能。ニッケル63は壊変で最終的に銅の安定した同位体となり、一切の放射性を持たず、自然や環境への脅威にもならないとしている。
血糖値を下げるホルモン・インスリンの分泌がうまくいかなかったり、インスリンの効きが悪くなったりすると、高血糖が常態化してさまざまな不具合や病気を引き起こす「糖尿病」の原因となります。そこで、糖尿病の進行によってはインスリンを注射する必要があるのですが、「インスリンを分泌できるように遺伝子改造した皮膚常在菌を体内に取り込むことで、自動的にインスリンを体内に供給する」という新たな治療法の研究を、生物学系ブログサイトであるGROWが紹介しています。
ギャロ氏は2013年に、皮膚に常在する細菌が表皮だけではなく、表皮より2mm深い体内でも生息しており、一部が欠陥と相互作用する可能性があるという研究結果を発表しました。つまり、この表皮の常在菌のDNAを改変し、「血糖値の上昇を感知するとインスリンを分泌する」ようにプログラムすれば、自動でインスリンが分泌されるシステムを体に導入できるというわけです。
ハイエク氏やギャロ氏らの研究チームは、皮膚の常在菌の1種である表皮ブドウ球菌のDNAを改変し、1本のアミノ酸鎖からなるインスリン類似体を発現する遺伝子を組み込みました。このインスリン類似体は、体内で生成されるインスリンと同様に機能しますが、表皮ブドウ球菌の生息に適した温度でも安定しているのが特徴です。
ポネックさんの白熱した石の箱が非常に重要なのは、それらが大量の石炭やガスを燃やして加熱されたのではなく、ポネックさんの試作品を囲む何千もの太陽光発電ソーラーパネルが太陽光を受けることで加熱されたという点だ。
もし成功すれば、ポネックさんとその新興企業アントラ・エナジーは、数兆ドル規模の新たなエネルギー貯蔵分野の一翼を担うことになるかもしれない。そこでは、太陽や風を利用するだけで世界最大級の工場を稼働させるのに十分な温度に石の箱を加熱する。
「バッテリー」という言葉は、自動車や電子機器に使われている化学的なものを思い起こさせることが多い。蓄熱技術を用いた岩石には現在、1800年代に誕生した「カウパーストーブ」として知られる発明のおかげで、リチウムイオン電池の10倍のエネルギーが蓄えられている。精錬所でよく見られるれんがを積み上げた巨大な塔が溶鉱炉の排熱を吸収して3000度近くまで加熱。その後、約20分間にわたって100メガワットを超える熱エネルギーを供給する。
太陽炉と炭素製のレンガ的なもので蓄熱するという話か。
高温を持つ設備は溶鉱炉や焼却炉と同じで取り扱いが難しいから一般家庭に普及させるのは難しそうだが。
大阪大学で行われた研究によって、高出力レーザーをエネルギー源として光子同士の衝突を引き起こして電子と陽電子を対生成させ、さらに陽電子を超相対論的エネルギー(光速に近い)まで加速する単純な方法が発見されました。
この仕組みは2つの光子衝突から物質を生成する不思議な現象(ブライト・ホイーラー過程)を利用して、反物質である陽電子を採取するための方法として、将来の実験に役立つと期待されています。
KDDIとKDDI総合研究所は12月26日、次世代暗号(耐量子暗号)として標準化が進められている「Classic McEliece」方式において、これまでは総当たりによる探索での解読には1兆年以上要するとされてきた1409次元の暗号を、わずか29.6時間で解読に成功し、2023年11月13日に世界記録を更新したことを共同で発表した。詳細は、2024年1月23~26日に長崎で開催される「2024年 暗号と情報セキュリティシンポジウム(SCIS2024)」で発表される予定。
1409次元の暗号とは、10の56乗(=1阿僧祇(あそうぎ)=100兆×100兆×100兆×100兆)通りの解の候補が存在し、現在の最速のスーパーコンピュータを用いたとしても、総当たりによる探索で解読するには1兆年以上かかるため、解読困難とされてきた。
今回の挑戦では、まず独自開発の解読アルゴリズムが用いられ、解の候補を10の36乗(1澗(かん)=1兆×1兆×1兆)分の1程度にまで絞り込むことで解読の難しさを引き下げるところからスタート。さらに、約2700万の解読処理を同時に実行できる並列コンピューティング環境を構築。その結果、1409次元のClassic McElieceを29.6時間で解読し、世界記録を樹立した。またこの解読の結果を通じ、1409次元のClassic McElieceの暗号の解読に要する計算量が2の63乗であることが実証され、その暗号強度が突き止められたとした。
[...]材料の専門家はダイヤモンドに代わる超硬質素材として、窒化炭素と呼ばれる素材を合成しようと研究を積み重ねてきました。
窒化炭素の特性は30年以上前に予測されていますが、合成することは非常に難しく、科学者は長年、試行錯誤を繰り返してきました。しかし、スコットランドのエディンバラ大学とドイツのバイロイト大学、スウェーデンのリンショーピン大学の研究者らによるチームは、この繰り返しを終わらせることに成功しました。
またこれらの化合物は、周囲環境を常温・大気圧状態に戻してもダイヤモンドに近い性質を保っており、それを見た科学者らは嬉しい驚きを覚えたとのことです。「この新しい窒化炭素材料の第一号が発見されたとき、私たちは、研究者たちが過去30年間夢見てきた材料ができたことを信じられませんでした」と論文の筆頭著者であるエディンバラ大学のドミニク・ラニエル博士は述べています。
研究者らはさらにこの物質について調べ、これらがフォトルミネッセンス(蛍光発光。光エネルギーを加えた際に励起された電子が元の状態に戻るときに発光してエネルギーを放出する現象)特性、圧電性特性、および高いエネルギー密度を持ち、わずかな質量でも大きなエネルギーを蓄えられることも発見しました。
「物理的特性を調べたところ、これらの材料は、超非圧縮性で超硬質であり、高いエネルギー密度、圧電特性、フォトルミネッセンス特性も有していることがわかりました」 「この新しい炭素窒化物は100GPa以上で生成され、しかも大気圧・常温の条件下で回収可能なので、高圧材料の中でもユニークなものと言えます」と研究者ら報告しています。
まだ実験的にごく少量の合成に成功した段階ではあるものの、このダイヤモンドに次ぐ硬さを持つ素材について、専門家は将来的に自動車や宇宙船の保護コーティング、高耐久性の切削工具、ソーラーパネル、光検出器などの産業目的で使用される多機能材料として将来性があると指摘しています。
セラバイトは最近公開したビデオで、待望のセラミック・ベースのストレージ・システムを紹介し、データ・ストレージ技術の革新を発表した。今後数年間でデータ・ストレージを一変させるべく、同社は従来のハードディスクやSSDを、10,000TBという驚異的なデータを保存できる独自のセラミック・ガラス複合材で作られた手のひらサイズのカートリッジに置き換えることを目指している。
この革新的なストレージ・システムは、特殊なセラミックの層を積み重ねることで、ガラスベースの上に300マイクロメートルの厚さの表面を形成する。この構成により、驚異的なGbps速度でのデータ書き込みが可能となり、面密度は1平方センチメートルあたりTBに達する。これに対し、従来のHDDは現在、0.02TB/平方センチメートルの密度しか達成していない。
システム内の各カートリッジは、コーニング社のゴリラガラスに似たガラス層と、データ記憶媒体としての薄くて暗いセラミック層からなるデータ・キャリアを備えている。カートリッジはロボット・ライブラリーに収納され、データの書き込みと読み出しは、記憶媒体にナノ・スケールのパターンを形成する200万本のレーザー・ビームレットを含む綿密なプロセスによって行われる。
同社は、セラミック・ベースのストレージ技術のコスト効率、スピード、拡張性を強調している。特筆すべきは、このシステムがエネルギー効率に優れ、セラミック素材の耐久性により5,000年を超える寿命を持つと主張していることだ。対照的に、従来のハードドライブやSSDは通常、数年ごとに交換が必要である。
ほんとぉ?
物質・材料研究機構(NIMS)と科学技術振興機構(JST)の両者は11月30日、電流と熱流がそれぞれ直交する方向に変換される「横型熱電変換」の性能を磁場や磁性によって大幅に向上できることを実証し、さらに熱電材料と永久磁石を複合化することで、電流を流すことで冷却したり、熱から発電したりできる新たな機能性材料「熱電永久磁石」の開発に成功したことを共同で発表した。
横型熱電変換は、磁場や磁性によって発生する磁気熱電効果と、素子構造や電子構造の異方性によって生じる。素子構造の異方性で横型熱電変換を行うためには、2種類の導体を交互に積層・接合し、斜めに切断した複合材料の「人工傾斜型多層積層体」(ASML)が利用される。ASMLにおいては、構成材料の傾斜角度に依存して電気伝導・熱伝導が異方的になり、縦型熱電効果であるペルチェ効果を起源としつつも横型熱電変換が生じる「非対角ペルチェ効果」が生じるという。
磁石を使って、電流の印加で冷却したり、熱を電気に直接変換できれば、革新的な省エネ・創エネ技術につながることが期待される。しかし現状では、ASMLにおける横型熱電変換の最適化と永久磁石の導入を両立できていないため、永久磁石を組み込むと熱電変換性能が劣化してしまうことが課題だとする。ただし今回の研究により、磁石材料に高性能の電子冷却・熱電発電機能を付与するための手法と設計指針が確立されたことから、研究チームは今後、熱と電気を高効率に変換できる熱電永久磁石を創製するための物質・材料科学と、それを応用展開するためのデバイス技術開発が加速することが期待されるとしている。
東京理科大学の研究グループは、現在主流のリチウムイオン電池より安価に製造できる「ナトリウムイオン電池」用の新たな負極材料「ZnO鋳型ハードカーボン(HC-Zn)」の合成に成功したと発表した。現行の商用リチウムイオン電池に匹敵する高いエネルギー密度を実現できる一方で、リチウムやコバルトといった高価な元素を使用しないため、リチウムイオンの代替として期待される。
また、グルコン酸亜鉛と酢酸亜鉛の比率が75:25のものを負極材料としたナトリウムイオン電池を制作し、電池の性能の評価を行なったところ、エネルギー密度は312Wh/kgに達した。これは現在広く使用されているリチウムイオン電池と比較して同等であり、その有用性が実証されたという。
今回の研究は、希少元素を使わないナトリウムイオン電池やカリウムイオン電池の大容量化/好エネルギー密度化に寄与し、蓄電池を利用したエネルギー変換の低環境負荷化、低コスト化に貢献できるとしている。