偽情報の問題が出ているが、インターネットがいろいろな意味で限界に近づいたと感じている。NTTは2019年5月に次世代通信基盤「IOWN(アイオン)」構想を発表した。インターネットの次をそろそろ考えるべきではないかということだ。
情報の概念は、20世紀半ばにシャノンが定義した。それまでのコンピューターは単なる計算マシンだった。情報を扱うことになったのは20世紀半ばくらいで、そこからコンピューターが進化してきた。情報の正しさを判別することが技術的に始まり、その後にインターネットが普及し、誰が情報を作ったのかを証明するデジタル署名の技術ができた。最近は、ブロックチェーンのような新しい分散型の仕組みで情報の正しさを証明する動きがある。
問題は、生成AI(人工知能)が出たことだ。それ以前のAIは、人間の勘や経験などを処理するのは難しいと言われてきた。それが、データを学習すればAIでもできるということになった。生成AIは人間を超えたようなコンテンツを今後もどんどん製作する。本当に正しい情報なのかを判別するのは技術的に難しい。
インターネットは万能ではなく、欠点がたくさんある。大量の情報を処理するために多くのエネルギーを使うし、偽情報があたかも本物のように全ての人に行き渡ってしまう。新しいインフラ(通信基盤)を考えることが重要だ。
IOWNは、光の技術を使っていこうと思っている。情報を遠くに飛ばす時、電気は大量のエネルギーを使うが光はほとんど変わらない。高い潜在能力を持っている。消費電力は100分の1くらいになり、今までインターネットでできなかったことがIOWNでできるようになる。
今のインターネットも光を使っているが、使い方が問題だ。今、NTTは光の全てのリソースをインターネットに差し上げている。産業領域ごとに波長を分けていくことが技術的にできる。すでにオールフォトニクス・ネットワークの商用化を開始した。
インターネットはプロトコル(手順)が決まっているので、どこに情報があるかを明らかにしているのが弱点だ。この部分を一生懸命暗号化して守ろうとしているが、破られる。
国や産業ごとに、情報がどこにあるか分からない世界が技術的にできる。情報を全てインターネットにさらけ出す必要はなく、完全にクローズドなネットワークができ、セキュリティーレベルが上がる。最終的には量子通信と呼ばれる領域まで持っていければ、今懸念しているようなことはほぼ解決できると思う。
年末年始に大きな「DDoS(ディードス)攻撃」があった。DDoS攻撃はこれまで、200以下くらいのIPアドレスが使われていたが、今回は3000を超えた。攻撃者がAIを使ってきた。守る側もAIを使うしかない時代に突入した。
サイバー攻撃が進化している。今までは(攻撃で使われるネットワークの)ボットネットを発見して対処するアプローチを取っていたが、AIを使ってボットネットがダイナミックにぐるぐる回るため、(対処が)本当に難しい。
これをどう防ぐか。IOWNを使ってインターネットの世界から一歩外れたところで、AIがボットネットを監視して対処するやり方しかないと思う。各国がインターネットの中で対処しようと一生懸命やっているが、限界がある。
今のAIはほとんどのことができると思われているが、唯一できないことがある。それは、自分の答えを否定することだ。唯一無二の存在になってしまっている。いろんな専門的なAIをたくさん作り、信頼できるネットワークで結び、時として協力して答えを出したり、チェックしたりする。民主的な形でAIを利用していくアプローチでいけば、人間社会に近い形でAIが進化していくのでないか。