■ 1. 冷戦終結後の社会主義とマルクス主義の再燃
- 冷戦が終結しソ連は崩壊した
- 東欧諸国やアジアの社会主義国家も結局存続できず次々と体制を変えていった
- 20世紀に入りマルクス主義という理論を元にした社会主義は終焉した
- 社会主義と同様にマルクス主義も現実的ではなく終わったと思われていた
- しかし今アメリカを中心に労働者格差、富の再分配というキーワードが再燃している
- 終わったはずのマルクス主義が新たな形で台頭してきた
- LGBTQやフェミニズム、環境主義、移民受け入れや在日外国人の権利擁護など日本ではこれらの考えをリベラルと呼んでいる
- もちろんリベラル=マルクス主義ではないし共産主義的な政治運動でもない
- そして資本主義に限界が訪れていることも事実である
- それはマムダニ氏のニューヨーク市長当選が物語っている
■ 2. マムダニ氏のニューヨーク市長当選
- 民主社会主義を掲げるイスラム教徒がニューヨーク市長に当選した
- しかしこれは特別驚く事案ではなくニューヨークならそうだろうなというのがアメリカ国内の見方である
- マムダニ氏が敵視するトランプ大統領が彼を共産主義者と批判する一方、リベラル系のメディアはマムダニ氏就任を賞賛している
- マルクス主義、民主社会主義、共産主義、そしてリベラルといった曖昧なワードが出てくる
- なぜLGBTQやフェミニズムなどの運動が展開されるのか、メディアや教育業界に左派が多いのか、隣国が軍事大国であるはずの日本でなぜ軍事アレルギーを起こす人がいるのかをニューヨーク市長当選と合わせて解説する
■ 3. 右翼と左翼の基本的な違い
- 今の暮らしや政治に対する意見を大まかに2分したのが右翼と左翼という名称になる
- 右派とは何を重視するかによって立場が変わる
- 右派は自由、競争、平等、継続を重視する
- 左派は福祉、平等、改革を重視する
- ただあくまで自分の立場なので例えば経済システムは右派だけど社会システムは左派のようにそれこそ自由に捉えることができる
■ 4. 経済システムと社会システムの分類
- 社会は経済システムと社会システムに分けて考える
- お金と制度である
- 経済システムは右派よりの資本主義と左派よりの社会主義がある
- 社会システムは中立の民主主義と極端に左の共産主義がある
- 資本主義では個人が富を所有し自由なマーケットがある
- 社会主義では社会全体が富を所有しマーケットも社会全体で管理する
- 民主主義は国民の選挙で国家を運営する制度である
- 極端に左派の共産主義は経済システムの社会主義をさらに煮詰めて徹底し、富も階級も何もかも全て完全平等にする制度である
■ 5. 共産主義実現の困難さ
- 歴史上完全なる共産主義体制を実現した国家は未だない
- 1番共産主義に近づいたソ連は選挙は機能しないため民主主義ではなく国家がマーケットを管理する社会主義体制であった
- ソ連や社会主義国家にはマーケットを管理する独裁政党があるため理論上完全平等の共産主義実現は不可能である
- あくまで社会主義は理想の共産主義というゴールを目指す途中というわけである
- そのゴールを決めたのがマルクスが提唱したマルクス主義である
■ 6. マルクス主義の成立と思想
- 左派という言葉はマルクス主義より前の1789年フランス革命時に誕生した
- マルクス主義はこの左派を体系化したものである
- マルクス主義はフランス革命から約60年後の1848年にカール・マルクスとフリードリヒ・エンゲルスが提唱した理論である
- 資本主義を徹底的に否定し最終ゴールを共産主義、つまり私有財産の廃止と全平等社会に位置づけた
- マルクス主義では完全な平等になると国家は眠るように消えていくと説いている
- グローバル思考で国という概念を曖昧にしたり自国ファーストを否定する人たちに左派が多いのはここに通ずる部分があるからかもしれない
■ 7. マルクス主義による資本主義批判
- マルクス主義の考えは今の世の中、資本主義は狂っているが中心である
- 企業は本音を隠して利益を追求し、本来みんなの利益を目指すべきなのに自分の利益だけを追求する
- 競争で勝つために他者を蹴落とすなんて社会は本当に正しいのかと問う
- 現実の資本主義ではお金のためとはいえお客さんを満足させないと次はない
- サービスの低下は客離れを引き起こし結局自分の利益どころか自分の首を締める結果になる
- 神の見えざる手によって一定以上の質は担保されているのが現在の自由なマーケット資本主義である
■ 8. 社会主義の問題点
- 国家がマーケットを管理する社会主義では決められたことだけをすればいいので逆にサービスの質は低下する
- みんなの利益どころか自分の裁量で仕事をする自己利益に変わってしまう
- 社会主義は資本主義の否定を前提にしているため労働者にしわ寄せが来るマーケット展開や競争を断固否定する
- ガンガン稼いでも中央政府がダメダメ企業の救済に回して徹底して競争格差をなくす結果頑張る人はいなくなり生産能力は上がらない
- 社会主義では計画経済を実施するので指示されたものを指示されただけ作ればオッケーとなる
- 製品の改良や開発、コストカット、新しいアイデアなんかは誰も出してこなくなる
- 物の機能や個数が優先され各個人の思考は見向きもされない
- だから旧社会主義国では同じ人民服、同じ靴、同じ鞄である
- 生活の質や彩り、個性なんかを求めること自体資本主義の象徴なのである
■ 9. 社会主義成立の条件
- 社会主義は赤字を垂れ流す赤の他人の尻拭いを率先して行い、給料に関係なく与えられた以上の仕事をこなす労働者が過半数以上いてやっと成り立つシステムである
- 聖人君子ばかりの世の中じゃないとそもそも社会主義は成り立たない
- 左派は基本的にいい人が多いのだと思われる
- 本来世の中は自分のようないい人ばかりのはずだから理想も実現できるはずだと考える
- さらにどんな人でも話せば分かると信じている
- 安保法制反対運動を主導したSEALDSも攻める敵と酒を組み交わして仲良くなってやると言っていた
- 人間は本来自分たちみたいにいい人なはずでそれが歪んでいるのは社会システムが悪いからという考えが現代左派によく見られる
■ 10. 左派の他責思考の傾向
- 左派はその優しさと構造上「あなたは悪くないよ。悪いのは○○だよ」と他責思考を共有しがちである
- 貧困は資本主義が悪い、犯罪は環境が悪い、格差は政策が悪い、様々な差別も社会が平等を提供しないのが悪いと責任を外部に向けがちである
- 自分を変えるより外部を変えようとする
- ただ本当に外部が悪い場合も当然ある
- マルクスが立ち上がった背景は今と比べ物にならない超過酷な労働環境である
- 1日の半分以上休みなく働かされ小さい子供は体力が追いつかずその短い生涯を終えるなんてこともざらであった
- こんな社会が資本主義なんてシステムが許されていいはずがないとなるのは当時の悲惨な労働環境を踏まえると当然の考えである
- 声なき弱者のために立ち上がり改善を訴えた事実は賞賛すべきである
■ 11. 資本主義の矛盾
- マルクスは未だ改善できていない資本主義の矛盾も説いている
- ライバル企業に勝つため労働者には安い賃金で働いて欲しい一方その労働者は買い手でもある
- つまり給料は安く抑えたいけど買い手には多くのお金を持っていて欲しいという矛盾がある
- 結果買い手はお金がなくて買えず資本家は商品が売れず在庫を抱えることになる
- 売れないなら極限まで値下げしたり最悪無料で配ればと思うかもしれないがそれはできない
- 値下げは価格バランスやブランド力を落とし未来で回収できる利益を失う
- 無料化は商品の価値を下げるだけでなく配布時のコストやリスクまでついてくる
- 両方デメリットしかないので抱えた在庫は人知れず処分されるのが現実である
- 結果経済は少しずつ歪んでいき気づけば大量の失業者が生まれ企業がバタバタ倒産するいわゆる恐慌が一定のスパンで起きてしまう
- 恐慌とは資本主義だからこそ生まれる不幸なのである
■ 12. 世界恐慌とソ連
- 第2次世界大戦の引き金とも言える世界恐慌だが社会主義国家のソ連はその影響をあまり受けていない
- じゃあやっぱり資本主義はダメなのかと言うとそうでもない
- マルクス主義という理論自体この悪しき資本主義を倒すことだけに全集中していたためその後出来上がる社会システムについては全く考えられていなかった
- つまり誰も資本主義に変わる正解が分かっていない
- マルクス主義のとりあえず共産主義化しようの先に待っていたのはソ連崩壊という現実社会主義の実質的終焉である
■ 13. 恐慌と人間の自由の関係
- 恐慌が起こる資本主義のままでいいのかと思うかもしれない
- 難しい話だが結局のところ商品が売れないのは需要と供給の問題である
- 流行り廃りで経済が歪んだり波ができて巨大な恐慌になるということは人間の脳天気な購買意欲が自由に動いているある意味証拠なのである
- 人間が自由気ままだからこそ最終的に恐慌として跳ね返ってくる
- そこの折り合いをどう見るかなのである
- そもそも労働者には安い給料で働いてもらうということ自体限界が来ている
- 結局企業を成長させるためには高い給料を支払って優秀な人材を雇わなければならない
- 業界も仕事の内容もマルクスの時代とは比べ物にならないほど現代では増え続けている
■ 14. 資本主義の進化と格差の変化
- ソ連崩壊と共に消えた社会主義と違い資本主義は1415年の大航海時代以来徐々に形作られてきた500年以上の歴史がある
- 現在の資本主義はマルクスが直面した資本主義よりさらに進化を遂げている
- 自動化、ロボット、インターネット、そしてAIがある
- 資本主義は進化すれど正解になったわけではない
- まさに高い給料をもらえる人ともらえない人、生まれながらの環境や教育の違いがある
- マルクスの時代には過酷な労働に苦しむ大多数の労働者とそれを搾取する少数の資本家という明確な対立的格差があった
- 一方現代の資本主義では一握りの超富裕層が富を独占し得た富を運用するノウハウや有利な制度を活用し世代を超えて富を継承していく巨大で永続的な格差が表面化している
- その結果がマムダニ氏の当選である
■ 15. マムダニ氏のプロフィール
- 今年の11月4日ニューヨーク市長を決める本選挙にて史上初のイスラム教徒候補者マムダニ氏が当選した
- 過去100年で最年少のニューヨーク市長である
- マムダニ氏は1991年ウガンダ生まれの34歳インド系移民で自らを民主社会主義者と公言している
■ 16. 民主社会主義の位置づけ
- マムダニ氏が掲げる民主社会主義は資本主義を調整してより社会全体の平等を目指す思想である
- 平等のために必要であればマーケットの制限介入を含んでいるため左派の中でも左寄りである
- ここからさらに左へ行くと出てくるのがマルクス主義である
- こちらは資本主義は絶対ダメで労働者中心の社会と共産主義を目指す思想であった
- 逆に左派の中でも1番中立に近いのが社会民主主義である
- 資本主義は変えず格差を減らそうとする思想である
- 税負担が大きい分福祉が充実しているスウェーデンやフィンランドなどの北欧諸国がいい例である
- 左へ行くほど資本主義を変えようとしていることがわかる
- マムダニ氏は北欧諸国以上に左の立場を取っているのでトランプ大統領は彼を共産主義者と批判する
■ 17. ニューヨークの特殊性
- ニューヨークという町も極端な側面がある
- 世界最大の国際都市で経済、文化、メディアの中心であり思想の最前線でもある
- ただ経済と思想は分けて考えなければならない
- ニューヨークは経済システム上資本主義ではあるが社会システム含む思想はかなり左に寄っている
- 歴史的にもブルーステートで常に民主党が優勢になる州である
■ 18. ニューヨークで左派が多い5つの理由
- なぜニューヨークは左派が多くマムダニ氏に票が集まるのか主に理由は5つある
- 理由1:移民が多い点
- 移民は当然ながら左派が掲げる権利の保障に敏感である
- 文化にも寛容で受け入れに積極的で社会保障も平等な左派の考えは移民にとってメリットが大きい
- 理由2:経済格差が大きい点
- ニューヨークは物価も家賃も世界一である
- 市民の生活コストは公共交通機関が年間1800ドル、家賃の中央値は月3400ドル、年間保育料最大1人あたり2万5000ドルかかってくる
- この高額な生活費が1番負担になっているのは社会に必要不可欠な職につくエッセンシャルワーカーである
- 彼ら彼女らは高額な家賃に耐えられず郊外から通勤する
- それも公共交通機関を使って子供を保育園に預けてである
- 若い人も多いエッセンシャルワーカーが貧困に苦しむためマムダニ氏の政策は若者にも刺さった
- 特に家賃上昇凍結、バスの無料化、保育無償化は不満を大いに解消してくれる
- 理由3:高学歴が多い点
- 理由4:文化の中心地である点
- 理由5:アメリカならではの事情が絡んでくる
■ 19. マムダニ氏の政策と実現の課題
- マムダニ氏はその財源を富裕層や大企業への増税で賄うとしている
- まさに労働者の格差を富の再分配で是正しようというのである
- ただ実現のハードルは結構高い
- 富裕層や大企業のニューヨーク離れは想像しやすいが見落としてはならないポイントがある
- それは増税にはニューヨーク州議会の承認が必要という点である
- 今回は法人税を7.25%から11.25%まで上げる過去にない大増税を計画している
- そうすんなり通るとは思わない
- また会計専門家は税金が高くなると企業は利益を減らす節税に動くと予測している
- 増税で利益を吸い取られるのであればそもそも生産しない
- 赤の他人の尻拭いをするなら頑張らないという社会主義の負の面が顔を出しニューヨークの生産能力、競争力は落ちてしまう
■ 20. 高学歴と文化人に左派が多い理由
- なぜ高学歴と文化人に左派が多いのか
- これが現在左寄りのメディアが多い理由でありLGBTQやフェミニズム、ブラックライブズマター運動の展開につながる
■ 21. アントニオ・グラムシの思想
- メディアと左派のつながりは戦前のイタリア共産党創設者アントニオ・グラムシ氏まで遡る
- ちなみにグラムシ氏は現イタリア首相メローニ氏の縁戚だが政治的立場は真逆である
- イタリアはキリスト教カトリックが伝統的に強い影響力を持っていた
- 親から子へ丁寧なお祈りや教会へ通うという信仰が脈々と受け継がれる地域である
- 無神論を唱える共産主義につける隙はない
- そこでグラムシ氏は革命のためにはまず日常生活に染みついた価値観や当たり前を変えていく必要があると考えた
- キリスト的価値観の破壊でありその担い手がマスメディアだった
- グラムシ氏はマスメディアを現実社会を理解しながら変革を起こさせる集団頭脳と考え現実と理想をつなぐ知のネットワークになると考えた
- それは政治色の強い新聞だけでなく雑誌や情報誌も含まれていた
- 当たり前という支配層が植えつけた価値観を毎日目にするマスメディアで少しずつ壊していく
- 市民が知らず知らず新しい価値観に染まった時一気に社会を切り崩す
- これに影響を受けたマルクス主義者や左派勢力は多くマスメディアや教育業界から文化の土台を変えようとする動きが始まった
■ 22. フランクフルト学派の批判理論
- グラムシと思想がかなり近く現在までその影響力を発揮しているのが1923年に設立されたフランクフルト学派による批判理論である
- 人を支配するのは経済よりも文化や価値観である
- 差別やジェンダー問題は個人の問題ではなく作り出す社会の仕組みが悪い
- 批判理論の通りこれまでの世の中や価値観が間違っていると提唱している
- 賛成より批判し続けることを求める思想のため「これはいいよね。そのまま受け入れていいんじゃない」という賛成意見は存在しづらい
- 「いやいや、資本主義社会に毒されてるからつい賛成しちゃうんだよ。本当はダメなことなんだよ」とメディアや教育に乗せて現状を否定し続ける
- それがもはやスタンダードなことかのように誘導する
- 環境活動家のグレタ・トゥンベリさんも批判ばかりで対案はなく矛盾した行動を起こしている
■ 23. 批判理論の特徴と影響
- 批判理論は社会の仕組みを批判するため社会のポジティブな面や自己責任を見る視点が弱くなる傾向にある
- そのため批判し続ければ世の中が良くなると考えがちで矛盾した行動には目が向きにくくなる
- いい面を評価できないのは批判理論というフィルターを通して世界を見ているからであり思考が凝り固まりやすいのもその影響と言える
- ジェンダーフリーやLGBTQ、他文化強制、移民受け入れ、フェミニズム運動、ポリコレなど現代の社会運動には1つの共通点がある
- それは社会に隠れた不平等な構造を批判するという発想である
■ 24. 日本の教育における批判理論
- 日本の大学入試の現代文ではモダニズム批判が頻出テーマである
- 高校生は合格のため近代の価値観を批判する文章を何度も何度も深読みする
- ジェンダー論や多文化主義、近代社会構造問題などは東大や早稲田、国際キリスト教大学など日本の頭脳となる高学歴大学でよく出題されている
- 大学に入学した後は左派思想の強い教授にその価値観を共有される
- 特にアメリカはそうだが日本も例外なく左派的な大学は多い
■ 25. BLM運動とマルクス主義
- 2020年に世界的な大規模運動へ拡大したBLM(ブラックライブズマター)は黒人差別改善を訴えた運動である
- 創始者3人のうちパトリス・カラーズとアリシア・ガーザは自身を訓練を受けたマルクス主義者と公然と発言している
- このように隠れマルクス主義やリベラルが広がる背景にあるのは間違いなく資本主義という構造の限界である
- それが形を変えた格差である
- 批判理論を批判ばかりできない理由である
- マムダニ市長誕生の背景はこうした批判理論を持つ高学歴な左派や文化人の支持と世界都市で移民の町という土地柄が合わさったことが挙げられる
■ 26. アメリカの大学における同調圧力
- アメリカの大学で左派が誕生し拡散しやすい背景には同調圧力がある
- ブルーステートの地域では想像以上に人の目を気にするところがある
- 夫婦は常に一緒じゃなきゃ変という雰囲気がある
- ワールドシリーズで優勝した大谷選手もよく奥さんとメディアに出ているがあれはアメリカ国内の夫婦は常に一緒そういうものという見えない圧力である
- 大学はさらに顕著である
- アメリカの大学にはフラタニティとソロリティという社交クラブがある
- 専攻科目やスポーツなどテーマ性で分けられ会員だけの寮で共同生活をしたりパーティーを通して人脈作りを行ったりする
- OB、OGの繋がりも強固なため就職にも強い組織である
- このコミュニティに所属していないと「え、なんでどっか入りなよ」という圧力がある
- この違和感ある伝統が本音では嫌だから左派的な思想になる学生もいるようである
- またブルーステートの地域では公然と「僕はトランプ支持です」と表明もできない
- そういう空気感が間違いなくある
■ 27. ホームスクールと保守派の形成
- 大学に行かない人は面白いことに左派になりづらい
- アメリカにはホームスクールというシステムがある
- アメリカは自由の国なので子供を学校に行かせるかどうかも自由である
- アメリカ国内の敬虔なキリスト教徒は思想の強い公立学校を嫌い家庭教育ホームスクールを選ぶ家庭も少なくない
- 一般的な家庭でもコロナ禍でオンライン授業が普及した結果あまりにも左派思想に偏った教員を目の当たりにして公立学校からホームスクールへする家庭も多く出てきた
- これも教育格差を生み出す原因になってはいるがこうした人たちは独自のやり方で社会とは教会を通じてコミュニティを広げていく
- こうしたグループがアメリカには結構いっぱいあって彼らはリベラルと反対の保守右派の基盤になる
- そのため広大なアメリカの一都市であるニューヨークがリベラルだからと言ってアメリカ全体の民意というわけではない
- 共和党トランプ大統領が選ばれたのもその証拠である
■ 28. 日本における軍事アレルギーの理由
- 隣国が軍事大国であるはずの日本でなぜ軍事アレルギーを起こす人がいるのかを解説する
- ロシアはウクライナへ軍事侵攻している
- 北朝鮮は核実験を繰り返し日本海へミサイルも発射している
- 中国は圧倒的な軍拡と周辺国ほぼ全てと領土問題を抱える拡張主義国家でありながら核保有国である
- 最近では台湾との関係について日米に経済的軍事的圧力をかけている
- 世界には核保有国が9カ国ありうち3カ国は日本の近隣国である
- なぜ日本の左派はこの状況でも軍事アレルギーを持つのか
- 暴力や戦争への反対心もあるが根本には自国の国家体制こそ監視警戒すべき相手という意識があるようである
■ 29. 左派にとっての国家権力の認識
- 国家権力という言葉が分かりやすい
- 一部にとって国家は支配層の道具として国民を管理統制し抑圧するものと捉えがちである
- 軍事力も体制維持の手段として認識されてしまう
- 変えなければならないのは国内の体制や社会システム、そして自衛隊という認識である
- 一方で中国やロシア、北朝鮮は日本とは別の政治体制を持つため脅威としての意識は薄れてしまう
- 通常敵とされるのは外部の国家だがこうした左派にとっての敵・脅威は内部の制度や権力なのである
- つまり左派にとって軍隊は自分たちの理想国家であれば信用するけど信用できない体制の軍隊は同じく信用できないということである
- 内部を脅威とする認識と現体制を批判する思想から特に日本の左派は軍事アレルギーを発症しやすくなる
■ 30. 結論
- 留意していただきたいのは思想や立場というものは強制するものでも排斥するものでもない
- 相手の考えを理解することでより良い方向に進む可能性があるためである
- 翼は1つでは進めないとはよく言ったものである
- 右翼だけでも左翼だけでもまっすぐ飛ぶことはできない
- 多少傾くことがあったとしても僕たちの子孫が笑っていられる未来に向かって日本も世界も羽ばたいてくれることを願っている
日本のリベラル派の方々に、ぜひ中国共産党への批判をしてほしいです🙏
言論統制・思想統制されている今の中国は全体主義です。
共産党を批判すると連れて行かれます。
新疆では強制収容や強制移住や強制労働、強制避妊手術などがされていて、複数の機関からジェノサイドと認定されています。
香港では民主化運動が完全に叩き潰されて議会には民主派どころか中間派すらもいなくなってしまいました。
最近の日中関係の摩擦で、日本のリベラル派の皆さんが中国共産党への批判を遠慮するようになっていることについて、少し危機感を持っています。
悲しいことに、日本に住んでいる中国人も含めて中国人は共産党を表立って批判することができません。
今までの民主化運動や思想は全て弾圧されてきました。
リベラリズムの価値観に立てば、高市政権を批判することと中国共産党の全体主義を批判することは両立することができると思いますので、どうか自由と民主主義と平和を愛する方たちは、中国共産党の悪行を少しでも世界に広めていただきたいです。
日本の右派の方たちが中国を批判すると日本も中国も感情的になってしまうので危惧しています。
リベラル派の皆さんの中国共産党批判が必要です。
何卒宜しくお願い申し上げます。
(※文章を少し整えるために、部分的にAIを使用しました。)
Q.立憲民主党に対する今の若者の支持率が劇的に低いのはなぜですか?
A.立憲議員がまなじりを吊り上げ、質問相手に対して大声でわめき散らし、ネチネチと難詰し、相手が丁寧に説明しても全然納得しない理不尽な姿が、若者にとっては「パワハラ上司」や「カスハラクソ客」と同じように見えてるんでしょうね。
議員と同じくらい年配の人にとっては、自分たちも経験してきた世代なので感覚がマヒしてるのかもしれませんが、コンプライアンスが厳しくなり、ハラスメントなんて絶対NGという忌避意識が浸透している今の若者にとって、立憲議員の振舞いは「上から目線」「怒鳴ってばかりで威圧的」「理不尽にキレてまともな話し合いができない」といったネガティブな印象しか与えず、生理的な嫌悪感を抱かせ、それが拒絶反応として表れてるんだと思いますよ。
必然的に、そういった議員の振舞いを注意しようとも改めさせようともしない党や幹部の姿勢は「パワハラ上司を放置するブラック企業」「カスハラクソ客に注意もできない腰抜け店長」のように映るでしょうし、そんな昭和の悪癖のようなキレ芸を「ズバズバ切り込んだ!」などと称賛するオールドメディアも「不祥事を隠蔽する、パワハラ上司とグルの広報部長」のイメージを重ねられ、さらに愛想を尽かされていくことでしょう。
彼らが怒りのパフォーマンスを繰り返すほど、党のイメージは「現代のコンプライアンス基準に準拠できていない、旧態依然の組織」として定着していくことも、また彼らが有権者にそう認知されるリスクの重大さも、気づかれないままなんでしょうね。
フローレンスが根抵当権問題で炎上している今、
改めてベビーライフとの過去の関係を振り返ってみる。
ちなみに超人気ライターのヨッピーは、ある人物との対談でこう擁護していた。
「(ベビーライフの件は)海外で子供達は幸せに暮らしてるかも知れないじゃないですか~」
よって大した問題では無いと評価している。
以下、その点を留意して読み進めていくべき。
■ 1. 設立と事業開始(2009年~2013年頃)
2009年: ベビーライフが東京で設立。代表は篠塚康智氏。
主な事業は、特別養子縁組のあっせん(実親から子どもを引き取り、養親へつなぐ)。
当初は国内中心で、NPO法人フローレンス(代表:駒崎弘樹氏)などと「日本こども縁組協会」を組成し、共同で記者会見などを行っていた。
あっせん費用は国内の場合1件あたり約100万円程度。一方、国際養子縁組では海外養親から高額(1件あたり約2,550万円、2013~2015年度で総額2億円超)を受け取っていたことが後年判明。
米国提携NGO「Faith International Adoptions Inc.」(代表:John Meske氏)と連携し、海外へのあっせんを積極化。
2014年に施行された「民間あっせん機関による養子縁組のあっせんに関する児童の保護等に関する法律」(養子縁組あっせん法)により、
民間団体の許可制が導入されたが、ベビーライフは東京都の審査保留中で正式許可を得ていなかった。この法制度の隙が、後々の問題を生む要因となる。
■ 2. 事業拡大と内部対立の兆し(2014年~2019年)
2012~2018年度: ベビーライフがあっせんした子どもは約300人。
そのうち半数超(約174人、読売新聞推計)が外国籍の養親に引き取られ、主に米国へ送出。
ハーグ国際養子縁組条約締結国(米国など)のデータを基に、読売新聞が2021年に調査し、国際あっせんの規模が明らかになった。
元スタッフの証言によると、代表の篠塚氏が高額な国際あっせんを推進する一方、
スタッフは国内あっせんの推進と低価格化を望み対立が深まっていた。
篠塚氏は「利潤優先」の方針で、国際あっせんの利益を重視していたとされている。
■ 3. 突然の事業停止と混乱(2020年7月)
2020年7月: ベビーライフが突然事業廃止を宣言。
篠塚代表ら関係者が音信不通(行方知れずのあいつ)となり、冷凍都市の暮らしに行方をくらました。
実親側はあっせん予定の子どもとの連絡が途絶え、サポートを受けられなくなり、
養親側は実親情報や書類が引き継がれず、子どもの出自確認が不可能になった。
結局、あっせん総数422件の資料を東京都が引き継いだものの、海外送出された子どもの追跡は困難。
米国側NGOも同時期に廃業し、代表John Meske氏は現在も行方不明である。
また、国際あっせんで受け取った巨額費用(総額約53億円相当、209件×約2,550万円)の使途が不透明であり
寄付金として2億円超が海外養親から入金されていたが、今もって詳細不明である。
■ 4. 事件の表面化と現在の状況(2023年~2025年11月現在)
安否不明の子どもたちは2025年11月時点で、海外送出された174人(主に米国)。
彼ら彼女らの安否・国籍確認ができていない。
総計209人の国際あっせんケースで、被害総額は巨額。逮捕者ゼロ、関係者の雲隠れが続くいてる状況。
最近はX上での「人身売買事件」として再燃しており、米メンフィスでの児童救出報道と連動し、日本版捜査を求める意見が多数見うけられる。
また、フローレンスの根抵当権問題(2024年)が絡み、提携団体の信頼性が問われている状態。
■ まとめ
ベビーライフ・フローレンス、両者は記者会見を共同開催するなど、密接に提携していた。
ベビーライフは「海外養子縁組」を名目に日本国内の子供たちを海外へ送り出した。
しかし、その実態は実質的な人身売買だったと言える。
子供たちの行方は現在も不明。
関係者は雲隠れし逮捕すらされていない。
これを起こしたのは怪しい団体ではなく、著名な支援団体フローレンスと提携していた「真っ当な」はずの団体だった。
子供の人権を日頃から主張する人々はこの事件に触れようともせず、マスコミも沈黙を保っている。
犠牲となった子供たちの存在は闇に葬り去られている。
個人的な意見を述べれば、子供たちの『生』搾取そのものであり、非常に胸糞悪い事件である。
子供たちの安否を思うと胸が痛い。
なお、超人気ライターのヨッピーは「海外で子供達は幸せに暮らしてるかも知れないじゃないですか~w」
と事件の事を評価しているので、ヨッピー派の増田やブクマカはぜひベビーライフを応援して下さいね。
■ 1. 著書出版の経緯
- 産婦人科医の北村邦夫氏(74)が1990年初めから活動を続けてきたピル承認に向けた取り組みの歴史を綴った著書『ピル承認秘話 わが国のピル承認がこれほど遅れた本当の理由(わけ)』(薬事日報社)を出版した
- ピル解禁に反対する理由として副作用への不安だけでなく性の乱れを助長するとかエイズが蔓延するとか色々なことが言われていた
- 何度も承認が先送りされたので製薬企業が何度もピルを太平洋に捨てたという噂まで出回った
- 承認間近か?となると製薬会社も準備せざるを得ないがパッケージに詰めてその日を待とうとしても見送られたら売れない
- 突然「環境ホルモンになりかねない」という話まで出てきた
- 何度も横槍が入って承認が引き延ばされやっと1999年に承認された
■ 2. 本にまとめた動機
- ピル承認までの道のりについては日本家族計画協会のサイトで7年ぐらい連載を書いていた
- 100話近くになっていた
- 過去の資料まで読み込んでピルを開発した人から承認のために奔走した人まで調べて書いている
- 日本ではOC(Oral Contraceptives、経口避妊薬)、LEP(Low-dose Estrogen Progestin、低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬)という分類をしている
- 日本家族計画協会(JFPA)は2002年から「男女の生活と意識に関する調査」というアンケートをずっと続けている
- 2023年の最新調査ではその一つ前の2016年の調査よりOC、LEPの服用者が4倍に増えた
- 避妊や月経異常の薬として使っている人はもちろんOC、LEPの処方を売りにしている産婦人科医や製薬会社など恩恵を受けている人がたくさんいる
- しかしそのピルが承認に至るまで大変な道のりをたどってきたことを知らない人たちばかりである
- ピルにはそういう歴史があることを共有することが大事なんじゃないかと思って書いてきた
- 僕が苦労したと言いたいわけじゃなくて先人たちの苦労があったことを現在の人たちは知っておいた方がいいと思った
■ 3. ピル解禁議論への関与のきっかけ
- ピル承認に関する資料をスクラップしたファイルが10冊近くある
- 1992年3月にエイズが蔓延するという理由でピル解禁が凍結されたことを読売新聞が報じた
- この時読売の記者から「ピル承認の審議がエイズが蔓延するのを懸念して凍結される」と取材の電話がかかってきた
- ピルはあくまでも避妊薬であってエイズ予防薬ではないのだから一緒にするのはおかしいとコメントした
- エイズの予防は性教育やコンドーム利用を促す教育が大事なのであって承認目前になっているこの期に及んでそんな懸念を持ち出すのはおかしいと話した
- 新薬は薬の安全性と有効性を科学的に検討する薬事審議会で議論されるのに凍結を決めることになったきっかけは公衆衛生審議会だった
- 薬と直接関係ないエイズが蔓延する懸念があるからといって証拠もないのに審議が先送りされるなんて違うんじゃないかと発言した
- これをきっかけに北村氏はこのピルの問題に巻き込まれることになっていく
■ 4. 女性の自立とピルへの気づき
- 1990年に外国の女性記者とのやりとりがピルへのこだわりに影響を与えた
- 「女性が自立するには生殖のコントロールが不可欠なのに、日本の女性は男の医者や役人まかせで、政府にピル認可の陳情をしたり、圧力をかけたりしたという話は聞きませんね」と言われてハッとした
- ワシントンポストの取材を受けた時にそう言われて大事なことだよなと思った
- その前から日本の女性たちは避妊法というとコンドームと腟外射精(避妊の効果は薄いとされている)ばかりで男性に避妊の主導権を握られていていいのだろうかという疑問は持っていた
■ 5. 中絶問題への気づき
- 診療を通して中絶を余儀なくされるような女性たちと接触していた
- 自治医科大学出身なので学費が免除される代わりに卒業後9年間地元の知事の指定するところで働くことになっていた
- 県庁や保健所で長く働いた
- そこでいわゆる中絶のデータを見ていたのだが若年者の中絶が急増している時期と重なっていた
- 地方公務員であった時はデータはあるけれどこのデータの背景にいったい何があるかは意外とわからなかった
- 義務年限が終了した後1988年に日本家族計画協会のクリニックに入った
- そこでの診療経験から妊娠は確かに女性の問題ではあるのだが中絶を減らすには男性の避妊に対する協力がどうしても必要なんだなということを感じてきた
- 避妊に協力的でない男性が多かった
- 「生でさせろ」と言うとかで結果として女性は妊娠を余儀なくされて中絶をせざるを得ない
- 何が原因なのか突き詰めていくと妊娠は女性の体にしか起こらないのに避妊は男性に委ねてしまっているというところに間違いなく原因があるのだろうと行き着く
- そこで女性が自分でコントロールできる経口避妊薬ピルが浮かび上がってきた
■ 6. 日本家族計画協会の当初の反対
- 日本家族計画協会も当初はピル解禁に反対していた
- 日本家族計画協会創設者の國井長次郎は当時薬を飲むことの弊害を考えなくちゃいけないと主張して反対の意思表示をしていた
- ピル承認に反対する建議書をわざわざまとめて国に送ったりもしていた
- 國井は薬は本来病気に対して働きかけるものであってピルは健康な女性が服用して健康な体を乱すものだという発言をして承認を遅らせようとしていた
- その後小泉純一郎氏も全く同じ発言をする
- ひょっとしたらつながっていた可能性もあると思った
- 政治家も薬の事情なんてよくわからないでしょうから有識者がこういうことをかつて言っていたと耳打ちする人がいた可能性がある
■ 7. 小泉純一郎氏の主張
- 小泉純一郎氏はBARTという雑誌の中でピルと卵とサウナの三つに共通しているのは現代の人たちが非常に安易にものをとらえていることだと言っている
- サウナについてはサウナに入って安易に汗をかいて健康を取り戻すなんていうのはおかしい、汗をかきたいなら運動しろと彼は言う
- 卵については僕らは多くは無精卵を食べているけど野に放たれた有精卵を食べてこそ卵だと彼は言う
- ピルについてもこんな小さな薬で妊娠をコントロールするなんてあり得ないと言う
- この人が厚生大臣だった
- 堂本暁子氏に紹介してもらい小泉氏に会いにいった
- その時彼は「薬は本来病気を治すためのものであって、健康な人が薬を飲んで体を乱して避妊するのはおかしい」と日本家族計画協会の國井と同じことを言った
- ワクチンだって健康な体にうって人工的に感染したような状況を作って免疫を作っている
- ワクチンだって否定されてしまう論理である
■ 8. 日本のスタートダッシュ
- 月経異常に対するピルについては日本は海外に追いついていた
- 1955年に国際家族計画会議が東京で開催された
- ピルの産みの親と言われるグレゴリー・ピンカス博士がピルの開発について世界で初めて話をした
- 日本もすぐに動いた
- 1957年に避妊薬としては承認を取れなかったので無月経、月経異常の薬として黄体ホルモン剤の「ノアルテン錠」を発売した
- 早かった
- 55年の国際会議でピンカスがホルモン剤を使った新しい避妊法の話をして日本の産婦人科医は非常に強い刺激を受けた
- 世界に先駆けて日本の産婦人科医が女性ホルモン剤を使った避妊薬の話を耳にした
- その後ピンカスから資材を送ってもらって日本でも臨床試験をした
- スタートダッシュが良かったのは子宮内避妊具も同様である
- 産婦人科医の太田典礼が開発した「太田リング」は世界に先駆けて子宮内に異物を入れることで避妊を可能にした方法である
- これは荷物を運ぶラクダが妊娠したらパワーがなくなるのでラクダの子宮の中に石を入れて妊娠を防いだことにヒントを得たと言われている
- 子宮内避妊具についても結局承認まで40年かかった
■ 9. 承認の遅れ
- アメリカが1960年に避妊薬としてのピルを承認したのに続き「ノアルテン錠」とその後開発された「ソフィアA錠」が相次いで避妊薬としての承認申請を出したがまったく相手にされなかった
- 国は厳しい追試を求めて製薬企業もスピーディーにそれに応えたのに避妊薬として認められない状況が続いた
- 結局避妊薬としてエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲスチン(黄体ホルモン)の配合剤が承認されたのは1999年のことである
- 2025年にはドロスピレノンという黄体ホルモンのみを含む経口避妊薬「スリンダ錠」が承認され発売された
- この薬の開発には北村氏は医学専門家として参加している
■ 10. マーガレット・サンガーの功績
- ピルが生まれるのに貢献した家族計画の母と呼ばれるマーガレット・サンガーのことにも触れられている
- カトリック教徒の両親のもとに生まれた彼女が家族計画に携わるようになったのは18回目の妊娠後、50歳の若さで亡くなった母親への思いがあった
- 避妊をせずに妊娠させ続けた父親に向かって「お父さんがお母さんを殺したのだ」と叫んだという話から強い思いを持って家族計画に取り組んだことが伝わる
- 20世紀の初頭にサンガーは『The Woman Rebel(女の謀反)』という本を出した
- その本で彼女は「No Gods,No Masters」と言った
- 20世紀初頭と言えばアメリカの人はキリスト教に影響されている中で「産めよ、増えよ、地に満ちよ、地を従わせよ」と旧約聖書が言っている
- キリスト教徒は聖書の教えに従って次から次へと子供を産んだ
- でも育たないのでまた子供を産み女性の心身の健康が損なわれ貧困が彼らを襲うという負の連鎖である
- それを見かねたマーガレット・サンガーがなんとかしなきゃいけないと仕掛けたのが家族計画である
- 当時「コムストック法」という中絶や避妊の情報を提供する人は処罰される法律があって彼女は何度か投獄された
■ 11. ピル開発の実現
- マーガレット・サンガーがピンカスに安全で有効な避妊法を開発してくれと依頼してピルができた
- ピルが誕生するには彼女の力が不可欠であった
- 彼女がグレゴリー・ピンカスに出会ってピルの開発を依頼するのだがその時に彼女をサポートしたのがスパイス会社の社長夫人だったマコーミック夫人である
- 莫大な遺産がある夫人の資金援助を受けてピンカスに研究費を渡してピルが開発された
- 北村氏はクリニックや電話相談で生の患者と接したことが大きいがサンガーの話を聞くにつけてこの人が目標だという気持ちは確かに持っていた
- 彼女は訪問看護師なのだがニューヨーク市ブルックリンの貧民街で男性の支配を許してきたことが女性たちを苦しめてきたことを感じ取っていた
- そしてその人たちを救ってきた
- 保健師に講演する機会がある時「あなたもマーガレット・サンガーになれる。あなたも、あなたも」と一人ひとりを指さしながら語りかけることがある
児童買春は論外ね。
あとはまぁ、25歳以下の女を買春するのもあんまりよくないだろうなーとは思う。児童買春と似たようなもん。25歳くらいまでは人間ができていないから。
じゃあそれ以降の大人は?
なぜだめなのであろうか。
いやぁほんとによくわからない。
春を売ってでもお金がほしい人と、買ってでも春がほしい男性がいて
マッチングしました。
なぜ悪いのか。
まぁでも一つ思うことがある。
サブスクだったらきっといいのだ。
一回だけの関係を金銭でというのは、女性のメンタル的にもよくない。
サブスク太客を何人か回すほうが絶対女性はメンタルが楽である。
現代の価値観にあっていないというのは、きっとそうなのだろう。
時代はサブスクなのだ。
パパ活アプリでも、やはりみんなサブスクを求めている。
だからみんな、大人パパになるためには、毎月支払えるだけのお金が必要になる。
なんだそういうことだったのか。
解決しました(してない
■ 1. 選挙運動の開始と初期の状況
- 1年と3日前の10月23日に選挙運動を開始した時点ではテレビカメラは一台もなかった
- 開始時点ではどの世論調査でも候補者の名前は圏外であった
- 4カ月後の2月に支持率は1%に達し「その他」氏に並んだ
- 選挙運動開始時、政界は大して注意を払わなかった
- つくろうとしていた運動はこの都市の現実を反映するものであり、政治コンサルタントがスプレッドシート上で見ている都市とは異なっていた
- 権力の中枢では笑いの種とされていた
- 政府が誰のために仕えるのかを根本的に変えようという発想は想像もできないことであった
- 勢いづいてからも何千万ドルもの資金攻撃をどう乗り切るのかと問われた
■ 2. 選挙運動の成長過程
- 「ニューヨークは売り物ではない」というメッセージを掲げた
- 若者たちが記録的な数で集まった
- 移民たちが都市の政治に自分を見出した
- 世をすねた高齢者たちが再び夢を抱くようになった
- あまりに多くの人がカンパをくれるため寄付をやめるよう依頼しなければならなかった
- 支持率を急上昇させ、人々は候補者の名前の読み方を覚えはじめた
- 億万長者たちは震えあがり、ハンプトンズでは市長選挙についてのグループセラピーが行われていた
■ 3. トランプ再選後の政治状況分析
- 立候補表明の13日後にドナルド・トランプが再び大統領選挙に勝利した
- ブロンクスとクイーンズで生じた右派へのシフトは全米の郡で最も大きなものの一つであった
- 都市は右に向かっていると報じられた
- 民主党がアジア系、若い有権者、男性の有権者に訴えかける能力について死亡記事が書かれた
- 共和党に勝ちたいなら共和党になることだと何度も言われた
- アンドリュー・クオモは負けた理由を米国の労働者階級の要求に訴えかけられなかったからではなく、トイレとスポーツチームの話に時間を費やしすぎたからだと述べた
■ 4. 有権者の声と生活費危機
- フォーダム通りとヒルサイド通りという大きな右旋回が見られた二つの地域を訪問した
- これらのニューヨーカーたちは戯画的なトランプ支持者像とは似ても似つかない人々であった
- トランプを支持する理由:
- 民主党は並であることに満足し、資金をたくさんくれる人にだけ時間を割いている
- 自分とは無縁に思える
- 企業のお世話になり、何に反対かを言うばかりで何をめざすのかというビジョンを示さない
- 見捨てられたと感じている
- 生活費危機への不満:
- 家賃が高すぎる
- 食料品も高すぎる
- 保育料も高すぎる
- バス代も高すぎる
- 二つも三つも仕事を掛け持ちしても足りない
- トランプは財布にもっとお金を入れ生活費を安くする計画を約束したがそれは嘘であった
■ 5. 予備選挙の経過と勝利
- 8カ月以上にわたる予備選挙で生活費危機への取り組みをニューヨーカーたちに語った
- 何万人ものニューヨーカーが12時間のシフト仕事の合間をぬって戸別訪問をし、指がしびれるまで電話かけをした
- 一度も投票したことのなかった人たちが無敵の運動員になった
- 選挙運動は誰も想像しなかった速度で成長しはじめた
- アンドリュー・クオモは確実と思われていたが6月24日にその確実性を打ち砕いた
- 13%差で勝利しニューヨーク市の歴史において市レベルの予備選挙として最多の票を得た
- その票を入れたニューヨーカーの一部はトランプに投票しており、他の多くはいままで投票をしたことがない人たちであった
- クオモが敗北を認める電話で「とてつもない力を生み出していた」と述べた
■ 6. 選挙終盤におけるイスラモフォビア
- 選挙戦が終盤にさしかかるにつれて良心に衝撃を与えるイスラモフォビアの現れを目にした
- アンドリュー・クオモ、エリック・アダムス、カーティス・スリワは未来のための計画をもっていない
- 彼らがもっているのは過去を再演する台本だけである
- 彼らは選挙を生活費危機についてのものではなく、候補者の信仰と常態化させようとする憎悪についての住民投票にしようとした
- 一人のムスリムが先頭に立ってもいいのだという考えを擁護することを強いられている
- 大金提供者や政治家たちは野心をも奪おうとしてきた
- 彼らの考えでは有権者は尊厳ある生の美しさに値しないとされている
■ 7. 自由と超富裕階級の問題
- この国が建国の当初から取り組んできた問いは「誰が自由を許されるのか」である
- 自由を許されているのは超富裕階級(オリガルヒ)である
- 彼らが蓄えた莫大な富は朝から晩まで働きづめの人たちとはかけ離れている
- 米国の泥棒男爵である彼らはその富のゆえに他のすべての人々より大きな発言権をもつのが当然だと思っている
- 莫大なお金をスーパーPACにつぎ込み、候補者の顔に「グローバル・ジハード」の文字を貼りつけたコマーシャルが電波を覆い尽くした
- 彼らの自由は尊厳と真実だけでなく他の人々の自由をも犠牲にしている
- 彼らは権威主義者であり、人々を言いなりに抑え込んでおこうとする
- ニューヨークの超富裕階級は世界の歴史上、最も富裕な国の、最も富裕な都市の、最も富裕な人々である
■ 8. 主要政策公約
- 200万人を超える家賃安定化物件入居者のために家賃を凍結する
- 使える資源はすべて使って住まいを必要とするすべての人のために住宅を建設する
- すべてのバス路線の運賃を廃止し、米国で最も遅いこの都市のバスを難なく都市中を動けるものにする
- 親の費用負担がいらない普遍的保育を創設し、ニューヨーカーたちが愛するこの都市で家族を育めるようにする
- この都市をホームと呼ぶ人みんなが尊厳をもって生きられる都市にする
- 生きるために必要なものを買えないニューヨーカーが一人もいないようにする
- 政府の役目はその尊厳を届けることである
■ 9. 政府の役割と歴史的参照
- 尊厳とは自由の言い換えである
- アメリカにおける自由のために激しく闘った人たちから大きな力を得ている
- 人々の力が権力をもつ者たちの影響を圧倒するとき、政府に対処できない危機などない
- ニューディールを打ち立てて一世代を貧困から救い、美しい公共財をつくりだし、団結権と団体交渉権を定めたのは政府であった
- 問題を小さく危機を大きく見積もる政府の時代は終わらせなければならない
- 敵対する者に負けないぐらい野心的な政府が必要である
- 受け入れられない現実をはねつけ、ふさわしい未来をつくりあげることのできる強力な政府が必要である
■ 10. 現状の問題点と変革の必要性
- ニューヨーカーの4分の1が貧困のなかで生きている
- 15万人を超える公立学校の生徒に住まいがない
- 日々の働きで築きあげている都市で暮らしが成り立たない状況がある
- 何度も国は絶望の崖っぷちでよろめいてきたが、働く人々は闇の中に手を伸ばし民主主義をつくりなおしてきた
- 共和党が野心の党であることを許さない
- 民主党が大きな構想をもって先頭に立つ姿を歴史書をひもとかなくても見られるようにする
- 世界は変化しており、問題は変化が起こるかどうかではなく誰が変化を起こすのかである
■ 11. 最後の訴えと決意
- 選挙前の9日間、一人ひとりに「もっと!」とお願いする
- 戸別訪問、電話かけなどもっと多くの行動を求める
- 権力をもつ者たちはあらゆるものを武器庫に投入し、さらに何百万ドルもつぎ込むであろう
- 音を上げず、ひるまず、超富裕階級(オリガルヒ)に打ち勝ち尊厳ある生を取り返す
- FDRの言葉を引用し、選挙運動では私欲と権力欲の勢力が敵に出会い、市庁舎でそれらの勢力が主人に出会うと述べる
- 11月4日に自由を手にする
■ 1. ポリティカル・コレクトネスとの初期の遭遇
- 筆者が「ポリティカル・コレクトネス」という言葉を初めて聞いたのは1990年代はじめのアメリカの大学のキャンパスであった
- 当時はこの言葉が30年以上たった日本で意味が通じる言葉になるとは思わなかった
- 1992年の夏ごろ、大学のキャンパスで「極左の教授たちがとんでもない言語統制を大学内で敷こうとしている」といううわさが流れてきた
- 言語統制の例:
- 「背が低い(short)」は差別的だから「垂直方向に障害がある(vertically challenged)」と表現しなければならない
- 「議長」を「chairman」と呼んだらフェミニストから抗議され、「chairperson」と言い換えたらさらに抗議された
- そのたぐいの話はどれもいつどこで起きたかわからない都市伝説のようなものばかりであった
- カフェテリアでの無駄話として消費されて終わりであった
- 実際には博士論文の言葉の修正やプラトンの本の焚書などは起きていなかった
- 「極左の教授たち」が誰なのかもよくわからなかった
- 誰かが「レイシスト」「セクシスト」「ホモフォビア」などとなじっているのを聞いたこともなかった
- 「ポリティカリー・コレクト」というフレーズを使っているのを聞いたこともなかった
■ 2. ポリティカル・コレクトネス運動の捏造
- 1990年代初頭に起きた「ポリティカル・コレクトネス」の運動はリベラリズムの浸透を食い止めるためにアメリカの保守派によって捏造、操作されたものである
- ポリティカル・コレクトネスをめぐる争いは大学のキャンパスを中心に行われた
- 保守派の最終的な目的は大学の外部に議論を拡散することにあった
- 保守系の教授、学術団体、共和党支持の学生グループが様々なメディアを使った
- 実際には存在しないに等しいか、左派のなかでもかなりマイノリティのフリンジの言論をあたかもキャンパスを支配するヒステリックなファシズムのごとく描いた
- キャンパス外部の人々に嫌悪感と危機感を抱かせようとした
- 大学内の政治的な議論を左派による一方的な言論弾圧として捏造した
- メインストリーム・メディアが取り上げ、ラッシュ・リンボーのような「右翼エンターテイメント」が面白おかしく毎日のようにネタにして拡散した
■ 3. 保守派による組織的準備
- このムーヴメントは偶然出てきたものではない
- レーガン政権下での準備:
- ウィリアム・ジョン・ベネットやリン・チェイニーによる全米人文科学基金(NEH)の掌握
- 全米学者協会(NAS)のような保守派のアジェンダを推進するための大学関係者の団体の結成
- 保守派のシンクタンクや団体による資金投下
- 共和党を中心とする保守派は1960年代のキャンパスを席巻した反戦運動と公民権運動の悪夢を根絶やしにするという目的を持ち続けた
- 冷戦が終わりを迎えようとしていたこの時期に国内のリベラル派を弱体化させようともくろんでいた
■ 4. 二段階の戦略プロセス
- 第一段階:
- レーガン政権下で大学の人文学(Humanities)の没落を指摘し警鐘を鳴らす活動が開始された
- 没落とは多文化主義、多人種主義、エスニック・マイノリティやジェンダー・マイノリティの視点からの研究が頻繁に取り上げられるようになったことを指す
- カルチュアル・スタディーズと呼ばれることもある
- アラン・ブルームの「アメリカン・マインドの終焉(1987)」がその嚆矢となった
- この本はアカデミアに蔓延する相対主義を憂慮する議論のテンプレートとなった
- 第二段階:
- 没落した大学のキャンパスをフェミニストや人種、ジェンダーのマイノリティ(保守派は彼らをマルクス主義者と呼んだ)が乗っ取って好き勝手にやっていると危機をあおった
- ディネシュ・ドゥスーザの「Illiberal Education(1991)」が最も有名である
- 「Politically Correct」という表現をキャンパスにおける言語統制という文脈で紹介した
- ポリティカル・コレクトネスを批判する言説の雛形をつくった
■ 5. 保守系シンクタンクと財団の関与
- アラン・ブルームはジョン・M・オリン財団から研究資金を得ていた
- ブルームはシカゴ大学のオリン・センターを運営もしていた
- ディネシュ・ドゥスーザはジョン・M・オリン財団から30,000ドルの援助を受けて「Illiberal Education」を執筆した
- 財団は20,000ドルで1,000部を買い上げて関係者に献本した
- ドゥスーザはアメリカン・エンタープライズ・インスティチュートのフェローとして98,400ドルの資金を得た
- チャールズ・J・サイクスの「The Hollow Men(1990)」はダートマス大学の卒業生による保守団体アーネスト・マーティン・ホプキンス財団の援助を受けて執筆された
- ロジャー・キンボールの「Tenured Radicals(1990)」、マーティン・アンダーソンの「Imposters in the Temple(1992)」、クリスティーナ・ホフ・ソマーズの「Who Stole Feminism?(1994)」などもジョン・M・オリン財団、フーヴァー・インスティチュート、ブラッドリー財団、スカイフ財団から資金援助を受けて出版された
- ジョン・M・オリン財団は1991年だけで100万ドル以上の資金をこれらの研究活動に投下している
■ 6. 批判の二つの軸
- 第一の軸:
- 脱西洋化する学問そのものを西洋文化の歴史を無視した質の低いものとみなす
- その生産性の低さ、一般人の感覚からの乖離、下品さや粗雑さをあげつらう
- 第二の軸:
- 左翼はそういった脱西洋化を正統化するために保守派を「レイシスト」「セクシスト」と呼んで言論の自由を弾圧している
- この二つの軸は議論が紛糾するたびに互換と補間を繰り返す
- 保守派が言論のヘゲモニー(攻撃的位置)をとれるように機能している
■ 7. マスメディアでの拡散
- 1991年を境に堰を切ったように研究や書籍が市場にあらわれた
- 同時にテレビ、ラジオ、新聞、雑誌といったマスメディアで一般市民が理解できるナラティブが用意された
- それまで大学のキャンパスを席巻しているはずの言語統制、思想統制はほとんどメインストリームのメディアには登場していなかった
- 1990年暮れから1991年前半の数ヶ月で突然「ポリティカル・コレクトネス」はアメリカ社会に蔓延するリベラルの病として認知された
- キャンパスの一般人からすれば、先に「反ポリティカル・コレクトネス」の立場の意見を聞かされて、初めて「ポリティカル・コレクトネス」という存在を知った
- "Political Correctness"と"Politically Correct"がアメリカの新聞に登場した頻度は1991年から突如増加している
■ 8. 保守系学生新聞のネットワーク
- 各大学の保守系学生新聞が「ポリティカル・コレクトネス」のストーリーを作り出して拡散していった
- 保守系学生新聞は1988年ごろからアメリカ全国の大学で登場し始めた
- 全国60の大学でネットワークを作っていた
- この資金を提供していたのがジョン・M・オリン財団であった
- このネットワークの発表する記事がマスメディアのネタになっていった
■ 9. 主要メディア記事の問題点
- マスメディアでの「ポリティカル・コレクトネス」批判の先鞭を切ったのはニューヨーク・タイムズ紙の「The Rising Hegemony of the Politically Correct」(リチャード・バーンスタイン、1990年10月28日)とニューヨーク・マガジン誌の「Are You Politically Correct?」(ジョン・テイラー、1991年1月21日号)である
- リチャード・バーンスタインの記事:
- 多人種主義、多文化主義、フェミニズム、すなわちポリティカル・コレクトネスを先導する思考が教育の質を落としていると警鐘を鳴らした
- テキサス大学の1年生の英語のコースでの多文化主義に基づいたカリキュラムに反対した教授が左翼学生から攻撃された話を挙げた
- 大学のキャンパスを危険な言論弾圧が支配していると論じた
- ニューヨーク・マガジンの記事:
- さらにセンセーショナルな内容である
- ハーバード大学のテルムストロム教授がキャンパスで「レイシスト」と大声で罵倒されるシーンの描写から始まる
- 教授は授業でアメリカ先住民を「Native American」と呼ばずに「Indian」と呼んだために左翼学生による糾弾の格好の標的になった
- 最初の見開きページには文化大革命の紅衛兵のパレードとナチス・ドイツの焚書の写真が大きくフィーチャーされた
- 全体主義政権下の恐怖政治と左翼による「ポリティカル・コレクトネス」をイメージとして直結して提示した
■ 10. 記事の信憑性の問題
- これらの記事は極めて衝撃的に迎えられ、多くの新聞やテレビが記事の内容を引き写しながら「ポリティカル・コレクトネス」を一般向けに紹介していった
- 記事の異様な点:
- 「ポリティカル・コレクトネス」を推進する側の人間が一人も実名で登場しない
- マイノリティの学生、アイヴィー・リーグのフェミニスト、大学の職員といった具合で気味の悪いのっぺらぼうが怒り狂って罵倒している様子が描かれている
- 一方で罵倒される被害者は実名で登場しいかに大学社会のなかで抹殺されたかを滔々と語る
- 書かれている事件が実際に描写されている通りに起きたかどうかも疑問である
- テキサス大学の英語のクラスの件もハーバード大学のテルムストロム教授の件も事実とはかなり異なることが指摘されている
- テルムストロム教授自身が「記事で書かれているようなことは起きていない」と証言している
- リチャード・バーンスタインはこの後ブラッドレー財団の援助を受けて「Dictatorship of Virtue(1994)」を発表した
- ジョン・テイラーという人物はほとんどつかみどころがない
- 彼はフリーランスのジャーナリストで普段はエンターテイメント・メディア、プロフェッショナル・スポーツの舞台裏を取材していた
- 彼が政治と学問について何かを書いたのは後にも先にもこの記事一本きりである
- 彼の著書のバイオグラフィーに「Are You Politically Correct?」が言及されることは一度もない
- 誰一人として彼を今も深い溝を作り続けている「ポリティカル・コレクトネス」を人気の概念にした張本人として追及していない
■ 11. 極右メディアによるさらなる拡大
- 造られた虚構のリベラル恐怖政治を超保守派のラッシュ・リンボーやパット・ロバートソンたちが自らのラジオ番組やテレビ番組でさらにデフォルメしてジョークにしたり恐怖をあおったりした
- リンボーは有名な「フェミナチ(Feminazis)」という造語の作者である
- 面白おかしくエンターテイメントとして毎日提供した
- マスメディアのスペクトラムの最も極右はこのような「政治エンターテイメント」を通じて支持層を拡大していった
- 1992年に出版された「The Official Politically Correct Dictionary and Handbook」はポリティカル・コレクトネスを茶化した内容でベストセラーになった
■ 12. シンクタンクの戦略の巧妙さ
- シンクタンクや財団は直接ラッシュ・リンボーやパット・ロバートソンのラジオ、TV番組のスポンサーになったわけではない
- 最も庶民から遠く離れた象牙の塔の最もエソテリックな研究に資金をつぎ込み続けた
- アラン・ブルームやディネシュ・ドゥスーザにジャック・デリダ、ジャック・ラカン、ミシェル・フーコーらの思想を批判する研究をさせた
- カルチュラル・スタディーズなどのリベラル寄りの人文学研究の枠組みに疑問符を差し込ませただけである
- 大学のロースクールに長期間にわたって資金を投下し、若い弁護士、検察官、判事、その他の法律家たちを保守的な思想に誘導していった
- これは長期的にみてアメリカの司法を共和党が掌握していく道を舗装して整備したと言える
- リベラル勢も人文学研究にもちろん投資していたが保守派のほうが極めて効率的に影響力を生み出した
- オリン財団のディレクターによれば右派は年間100万ドル程度しか大学での研究資金を投下していないのに対し、左派は年間1200万ドルも投下していたという
- この30年間で保守派が作り出した支持基盤を考えるとプロパガンダの設計が極めてうまいというよりほかない
■ 13. 保守派の動機と背景
- 保守派が恐れたのは彼らの考えるアメリカの国益の追求が左翼の批判にさらされて頓挫することであった
- ノーム・チョムスキーに同調しているようなインテリの運動を封じる方法をいろいろ試しているうちについ軌道に乗ってしまった作戦の一つだったのではないか
- 冷戦の終結とともにカリフォルニアのような防衛産業に依存している州では財政引き締めが懸念された
- 旧来の学者たち(その多くは全米学者協会(NAS)に所属していた)は自分たちの財源を確保することに躍起になった
- スタンフォードがポリティカル・コレクトネスの震源地になったのも偶然ではない
- この時期にレーガン政権や共和党、あるいはワシントンの体制派が仕掛けた世論操作の運動:
- 音楽の低モラル化に対するレーティング制導入
- 生活保護制度の悪用横行に対する制度縮小
- 企業の強大化とトリクルダウン経済
- 都市部の犯罪増加に対する移民制限
- 暴力犯罪に対する銃規制緩和
- そういった運動にはなんらかの利益団体があり、彼ら彼女らの利益確保のためにアジェンダが用意され、レトリックが生成され、議論がメディアによって広められた
■ 14. ポリティカル・コレクトネスの現在
- ポリティカル・コレクトネスは30年の時を経て変化した
- もともとは保守派によって造られた侮辱的な言葉であった
- むしろ左派によって「そのとおり、我々も、君たちも、政治的に正しい思考と言動をするべきだ」というニュアンスに転覆された
- さらに陳腐化していった
- 2020年代には「ウォーク(Woke)」「キャンセル・カルチャー(Cancel Culture)」という言葉に変貌した
- 保守派によって準備された二段階のプロセスがこれらの言葉に反映されている:
- 人種差別、ジェンダー差別、階級格差について議論すること(ウォーク)
- 政治的に正しくない言動を糾弾しその人物を排除していくこと(キャンセル・カルチャー)
- 今では「ウォーク」も「キャンセル・カルチャー」も保守派によってまた侮辱的に使用されている
■ 15. 登場人物たちのその後
- ジョージ・F・ウィルは80歳となったいま「かつて48の州で同性愛は違法だった、けれどアメリカはそれから大幅に進歩した」と目を細めている
- ウィリアム・ジョン・ベネット:
- レーガン政権で教育大臣をつとめて口角泡を飛ばしながらリベラルを非難し続けた
- ジョージ・H・W・ブッシュ大統領の下でドラッグ問題に取り組んだ
- 「徳virtue」を説く本を書いてアメリカ国民にモラルの規範を示そうとした
- 高額ギャンブルの中毒であることをすっぱ抜かれてしまった
- それ以来モラルの話はしなくなった
- ディネシュ・ドゥスーザ:
- ジョン・M・オリン財団から多額の援助を受けてポリティカル・コレクトネス批判の急先鋒となった
- 今も財団に受けた恩を返し続けている
- テレビのコメンテーターなどを経て映画界に進出した
- 2012年の大ヒットドキュメンタリー『2016:オバマのアメリカ』を作った
- この中でオバマ大統領がいかにアメリカを弱体化させようとたくらんでいるかというストーリーを様々な証拠、インタビューを通して明らかにした
- 3340万ドルの興行収入があった
- その後も『アメリカ(2014)』『ヒラリーのアメリカ(2016)』『デス・オブ・ア・ネイション(2018)』『2000ミュールズ(2022)』と次々と映画を発表した
- ヒラリー・クリントン批判、トランプ前大統領礼賛、大統領選挙不正告発と時流に乗ったテーマでアメリカ極右、陰謀論信者、プラウドボーイズ達の精神的支柱となっている
- Rotten Tomatoesでの批評家による評価は雪崩のように低くなっていった
- 『オバマのアメリカ』で26%もあった評価が『ヒラリーのアメリカ』では4%、『デス・オブ・ア・ネイション』では0%にまで落ち込んだ
- 『2000ミュールズ』では誰にも点数をつけてもらえていない
- 『デス・オブ・ア・ネイション』までは『ジュラシック・パーク』『シンドラーのリスト』『マイノリティ・レポート』などスティーブン・スピルバーグの監督作品の製作をつとめた名プロデューサーであるジェラルド・R・モレンがプロデューサーをつとめている
■ 1. ジェームズ・カーヴィルの経歴と影響力
- ジェームズ・カーヴィルは政治コンサルタントであり、アメリカ民主党に最も影響力を持っている戦略家の一人である
- 1992年の大統領選挙時に主任選挙参謀を務めた
- 「経済だよバカモノ」というキャッチフレーズでビル・クリントンを当選に導いたことで有名である
- 定期的にニューヨーク・タイムズ紙に寄稿しており、どれも傾聴に値する記事である
- 何十年も民主党の戦略階層に深く関与してきた
- 彼の著述から民主党の党内力学や影響を見て取ることができる
■ 2. 2024年敗北後の民主党の状況
- 2025年2月25日寄稿「民主党は政治的大戦略で蛮勇に踏み切るべき時だ」で民主党に向けて「ひっくり返って、死んだふりをしろ」とアドバイスした
- この「戦略」提案から民主党は2024年11月の壊滅的な敗北に打ちひしがれていることが見て取れる
- リーダーが戦略を喪失して混乱状態にあることが明らかである
■ 3. カーヴィルの方針転換
- 最新記事「ウォークを放棄しろ。怒りを掲げよ」(2025年11月24日)で民主党のための前向きな政策構想を提言している
- カーヴィルは81歳の老人であり、いわゆる中道政治時代に松明を掲げていた人と思われている
- しかし現在は民主党が大恐慌以来、最もポピュリズム的な経済政策を掲げて戦わなければならないと主張している
- この記事からカーヴィルが大きく方針転換したことが見て取れる
- 我々が革命的な時代に生きていることを示している
■ 4. 民主党の歴史的経緯と現状分析
- 近年の民主党の成功は党内ポピュリストを抑え込んだことにあった
- これが2016年と2024年の大統領選の敗北をもたらした
- カーヴィルが「中道」と呼んでいるものは「支配者階級のための、支配者階級による政治」に他ならない
- 中道は今や崩壊の渦中にある
- 左翼ポピュリストに民主党を乗っ取る絶好の機会を提供している
- これは共和党が右翼ポピュリストに乗っ取られつつあるのとパラレルである
- カーヴィルはまさにこの乗っ取りを提案している
■ 5. カーヴィルの言説と革命的性格
- カーヴィルの文章は過去の革命で打ち出された言説と非常に似ている
- これは彼が「中道は死んだ」実感を深めていることの反映である
- カーヴィルの発言:
- 「民衆は反乱を起こしている。そしてしばらく前から続いている」
- 「不正で、めちゃくちゃで、道徳的に破綻した制度」
- 「歴史を学んだ学生ならわかるだろうが、アメリカにはフランス革命の風が吹いている」
- 「民衆よ、立ち上がれ」
■ 1. 児童虐待の現状と統計データ
- 令和5年の児童虐待相談件数は22万件で過去最大を記録している
- 虐待者の内訳は実母48.7%、実父42.3%と母親の割合が高い
- 令和3年度の虐待死亡事例77人のうち実母が38人(49.3%)、心中では75%を占める
- 実父による死亡は10人(12.9%)、心中は16.7%で、トータルでは実母が実父の約4倍となっている
- 検挙数では実父が実母の約2倍であるが、これは女性の司法割・行政割によるものと考えられる
- 実際には現代では母親による虐待が圧倒的に多いと推測される
■ 2. 離婚件数と虐待死の相関関係
- 未成年の子どもがいる離婚件数は平成15年頃にピークを迎え、以後緩やかに減少傾向にある
- 子どもの虐待死は離婚件数のピークから数年遅れて平成18~19年頃にピークを迎えた
- その後緩やかに減少し、近年はほぼ横ばいとなっている
- 離婚件数の減少は婚姻数や出生数の減少に伴うものである
- ひとり親家庭では虐待リスクが3倍以上になるという研究結果がある
- 離婚数と虐待死件数には相関関係があると考えるのが妥当である
■ 3. 母親の虐待動機と実態
- 母親による子殺しには「追い詰められて仕方なく」という擁護の声が上がることが多い
- 司法でも虐待死のほうが単純殺人より罪が軽くなる現象が見られる
- 20~30年前の母親による子殺しの執行猶予率は6~8割という高率であった
- 心中以外の加害動機:
- 「しつけのつもり」が上位を占める
- 「泣き止まないことにいらだった」が上位を占める
- 「子どもの存在の拒否、否定」が上位を占める
- 死因の実態:
- 撲殺、頸部絞扼による窒息、溺水、ネグレクトなどが上位を占める
- 愛情があったとは思えない殺し方がされている
- 安楽死的な毒殺などはほとんど見られない
- ひとり親(同居あるなし)、内縁、再婚を合わせると292人で全体747人の約4割を占める
- 「母親が追い詰められて仕方なく虐待してしまう」という神話は嘘である
- 虐待は「仕方なく」ではなく「やりたいからやっている」と言える
■ 4. 「皿洗い理論」の検証
- 「母親の育児時間が長いから虐待しやすい」という言説が存在する
- 同条件での比較による実態:
- 母親サイド(ひとり親、内縁関係、再婚等含む)の虐待死は277件である
- 父親サイド(ひとり親、内縁関係、再婚等含む)の虐待死は23件である
- 母子家庭は約120万世帯、父子家庭は約15万世帯である
- 母子家庭での虐待死発生率は父子家庭の1.51倍となる
- 実母のみと実父のみの比較でも実母は実父の1.38倍である
- 両親揃っている家庭との比較:
- 父子家庭でのリスクは5倍である
- 母子家庭でのリスクは7.6倍である
- 生後ゼロ日のケースを除外すると父子家庭、母子家庭の有意差はなくなる
- 交際相手まで含めると母子家庭は父子家庭の1.26倍リスクが高い
- 選択バイアスの可能性:
- 母親はどんな母親でも単独親権者になれる可能性が高い
- 父親で単独親権者になっている人はまともな人が多い可能性がある
■ 5. 死別と離別の決定的な違い
- 死別家庭では心中以外の虐待死が約20年でゼロである
- 母子家庭の死別は令和3年で5.3%、過去20年で概ね10%前後である
- 父子家庭の死別は20%前後である
- 「皿洗い理論」では離別の1割程度は虐待死があってもおかしくないはずである
- 導き出される結論:
- 虐待死は子供を見ている時間に比例するものではない
- 虐待の素因がある人間が実行可能な環境になった際に実行する
- 母子家庭で虐待が多いのは父親が不在で止める人間がいないためである
- 離婚をする人間の特性:
- 有責の配分に関わらず他者と共同生活を続けられなかった人間である
- 問題のある人間である可能性が一般の人より高い
- 死別の場合:
- 不慮の病気や事故で配偶者がなくなったケースが大半である
- 親は普通の人間である可能性が高い
- 一律に母親に親権を渡している現状が虐待リスクに拍車をかけている
■ 6. 育児能力と非認知能力の関連
- 実母による虐待の背景として「育児能力の低さ」が約3割認められる
- キャパの低い母親が暴力に頼ってしまうと考えられる
- 虐待と非認知能力の低さは密接にリンクしている
- 日本の上昇婚傾向:
- 多くの女性が上昇婚を望んでいる
- 認知能力、非認知能力ともに夫側のほうが高い可能性がある
- 一律に母親に単独監護させていることが虐待リスク上昇につながっている可能性がある
■ 7. 女性の結婚相手選好と経済的要因
- 世界共通で高所得男性や高学歴男性は結婚相手として好まれている
- 日本は特にその傾向が顕著である
- 2015年の調査結果:
- 経済状況を「考慮する」「重要」と回答した女性は94.0%(男性は40.5%)である
- 職業を「考慮する」「重要」と回答した女性は84.9%(男性は43.9%)である
- 学歴を「考慮する」「重要」と回答した女性は53.9%(男性は28.7%)である
- 女性は平均して自分より1~3歳年上の男性を好む傾向がある
- これらから女性は上昇婚思考があると解釈できる
■ 8. 非認知能力の定義と重要性
- 非認知能力はOECDにより「社会情動スキル」と定義されている
- 「長期的な目標達成、他者との協働、感情の管理に関わる個人の思考、感情、行動パターン」とされる
- 学力やIQといった認知能力とは異なり数値化が難い
- 個人のwell-beingや社会、経済的成果に重要な影響を与える
- 非認知能力と労働市場成果の関連:
- 学歴や認知能力と同等かそれ以上に労働市場成果を説明する可能性を持つ
- 幼少期の自制心と将来の関連:
- 1000人を出生から32歳まで追跡した調査が実施された
- 幼少期の自制心が将来の身体的健康、薬物依存、個人的財政、犯罪行為の結果と結びつく
- 基本的に高収入、高ステータスの人間は非認知能力が高い傾向にある
■ 9. 非認知能力と育児能力の関連
- 非認知能力には性格におけるビッグ5という因子がある
- ビッグ5の構成要素:
- Openness(開放性)
- Conscientiousness(誠実性)
- Extraversion(外向性)
- Agreeableness(調和性)
- Neuroticism(神経症的傾向)/Emotional Stability(精神的安定性)
- 2024年の11061人を対象とした28の研究のメタ解析結果:
- 神経症的傾向は無関心、育児放棄的な子育てスタイルと正の相関関係がある
■ 10. 共同養育による虐待減少効果
- 社会との繋がりがない能力が低めのひとり親が虐待リスクが非常に高い
- 共同養育することが有用である
- 子の実の親であれば他家庭への介入が可能である
- 米国ケンタッキー州の事例:
- 2018年に米国で初めて離婚時に平等な養育時間(50対50の監護を原則とする)を推定する法律が施行された
- 隣接するオハイオ州と比較して児童虐待の調査または対応を受けた子の数が激減した
- 2017年から2021年までの変化率はオハイオ州で-2.5%、ケンタッキー州で-33.2%である
- この期間に変わったことは平等な養育時間推定の法が定められたことのみである
- オハイオ州内の地域差:
- 郡ごとに「標準養育時間」規定を定めることが義務付けられている
- 最も平等な養育時間を定めるものをAランク、最も時代遅れの養育時間をDランクとした
- AランクとDランクでは虐待発生率にかなりの差があった
- 共同養育と虐待発生率には少なくとも相関関係がある
■ 11. 結論
- 母親による虐待が多い理由は虐待のリスクがある母親が比較的実行しやすい環境にいるためである
- 育児能力の低さ、非認知能力の低さが虐待リスクにつながる
- 多くの女性が上昇婚を求める日本での一律母親単独親権は危険である
- 離別者は一般人口より問題のある人間である可能性が高い
- 能力の低い母親にも親権を与えてしまう強制母親単独親権は危険である
- 共同養育は虐待を減らしうる
正直、今の女子枠の流行には反吐が出る。
別に俺はアンフェじゃない。むしろ、日本のジェンダーギャップ指数が低いことには危機感を持っている。
でも、その解決策として大学入試に「女子枠」を作るのは最悪手だ。
あれはアファーマティブ・アクションなんて高尚なもんじゃない。
この国が18年間、女の子に「理系なんて似合わない」という呪いをかけ続けてきた責任を、たまたまその年に受験する18歳の男子学生と将来18歳になるいまの未成年男子たちに全部押し付ける行為だからだ。
左派やリベラルを自認する人たちにこそ、この制度のグロテスクさに気づいてほしい。
本来、理工系に女子が少ないのは、大学入試のせいじゃない。もっと手前だ。
幼少期からの女の子は愛嬌、理系はオタクっぽいという刷り込み、ロールモデルの欠如、長時間労働が前提で女性が働きにくい研究職の現場。これら社会全体の構造的欠陥が原因だろ?
本来なら、政府や大人が数十年かけて労働環境を変え、教育を変え、女子が自然と理系を目指せる土壌を作るべきだった。
でも、それは金も時間もかかるし既得権益を壊す痛みも伴う。
だから彼らは手抜きをしたんだよ。
根本的な社会改革をサボり、入試の定員という一番いじりやすい数字だけを操作して、「ほら、多様性達成しました」とドヤ顔をする。
これはやってる感を出すための行政のアリバイ作りであり、企業のSDGsアピールと同じだ。
その手抜きのツケを払わされているのは誰だ?
政治家でも大学教授でもない。これから社会に出ようとしている、罪のない未成年男子たちだ。
大人の怠慢の尻拭いを子供にさせるなよ。
さらにタチが悪いのが、この制度が「経済格差」を無視している点だ。
想像してみてほしい。
都内の裕福な家庭に生まれ、中高一貫の女子校で手厚い教育を受け、塾にも通えた女子学生。
地方の貧困家庭に生まれ、バイトしながら国公立を目指す男子学生。
女子枠という制度下では、前者が「弱者」として優遇され、後者が「強者」として割を食う可能性がある。
これはリベラルが最も嫌うべき「生まれによる固定化」の助長じゃないのか?
女性であるという属性一つで、個々の経済的背景や努力のプロセスを無視して下駄を履かせるのは、平等の実現どころか、新たな特権階級の創出にすぎない。
大学側が女子枠を欲しがる本音は透けて見える。
女子比率を上げれば偏差値の見栄えがいい、補助金が取りやすい、ダイバーシティランキングが上がる。
そこに学生への教育的配慮はない。あるのは大学経営と、世間体のための数字合わせだけだ。
本来なら大学のこういった姿勢こそ糾弾すべきだろ。
本当に女子学生を増やしたいなら、女子枠なんて安易な劇薬じゃなく、大学卒業後のキャリアパスを保証するとか、研究職の給与を上げるとか、そういう出口改革をするのが筋だろ。
出口が泥沼のまま入り口だけ広げても、不幸な人を増やすだけだ。
最後に、これから受験を迎える男子、そして将来受験する男の子たちへ。
君たちが枠を奪われるのは、君たちの能力が不足しているからでも、君たちが「男性という加害者」だからでもない。
単に、この国の大人が社会構造を変える努力を放棄して、そのコストを君たちに転嫁したからだ。
この理不尽を差別是正という美辞麗句でラッピングして正当化する大人たちを、俺は軽蔑する。
真の左派なら、真のリベラルなら、子供に責任を押し付けるこの「偽りの平等」にこそ、NOを突きつけるべきじゃないのか。
【北京共同】中国の習近平国家主席は4日、フランスのマクロン大統領との会談で「中国とフランスは歴史の正しい側に立つべきだ」と述べ、日本を念頭に歴史問題で足並みをそろえるよう訴えた。香港のテレビが会談の映像を放送した。
(CNN) オックスフォード英語辞典を出版する英オックスフォード大学出版局(OUP)はこのほど、今年の言葉に「レイジベイト(rage bait、怒りをあおる)」を選んだ。
ネットで何かを読んでいるときに、コンテンツがわざと挑発をしているようで、怒りをあおるために仕立てられているように感じることがあるだろう。それは、エンゲージメントを高めるために意図的に怒りを誘発するよう作られた「レイジベイト」だ。
この言葉の使用頻度は今年、3倍に増加しているという。これは人々が「SNSのアルゴリズムと怒りをあおるコンテンツの中毒的な性質に対する反応として、これまで以上の速さで分極化した議論や論争に引き込まれている」と認識していることを示している。OUPは声明でそう述べた。
ほぼすべての主要辞典がインターネットに関連する言葉を今年の言葉に選んだことは、テクノロジーが日常生活に及ぼす影響と、それを表現する言葉の重要性を浮き彫りにしている。
レイジベイトは比較的無害な場合もある。例えば、気持ちの悪い組み合わせの食材を使ったレシピや、ペット、パートナー、兄弟を困らせる人などだ。しかし、それは同時に政治の議論にも浸透し、政治家の知名度向上や賛否の連鎖を引き起こすためにも利用されている。
OUPは昨年、「ブレインロット(brain rot)」を選んだ。同局代表のキャスパー・グラスウォール氏によれば、この言葉は「エンドレスにスクロールすることによる精神的消耗を捉えたものだ」という。
グラスウォール氏は、「レイジベイト」と「ブレインロット」は「怒りがエンゲージメントを刺激しアルゴリズムによって増幅されることで、人々が絶え間なくそれらにさらされ精神を疲弊させるという強力なサイクルを形成する」と指摘する。
「これらの言葉は単にトレンドを定義するだけでなく、デジタルプラットフォームが私たちの思考や行動をどのように変えているかを明らかにしている」(グラスウォール氏)
■ 1. 石破政権の終焉
- 自民党総裁選で高市氏が勝利したことにより、石破氏の自民党内でのトップの座は失われた
- 石破氏は安倍氏と争い、その後もなかなかトップになれなかったため、自民党総裁になった時は天にも登る気持ちだったと推測される
- 石破政権の不人気が問題であった
■ 2. ネット上での評価と実態の乖離
- 石破政権はネット上でリベラルと散々叩かれており、あまり人気のある印象がなかった
- ネット上の不人気が石破政権を低迷させていたことは否定できない
- 批判の内容が適切なのかは実態を見てから判断した方が良い
- 年収の壁の問題や外国人問題で石破政権の中身はほとんど見えてこなかった
■ 3. 安全保障政策の強化
- 石破政権はある意味すごく自民党らしい政権であった
- 石破政権は非常に安全保障に力を入れていた
- 石破氏は元々防衛大臣、防衛庁長官をしており、防衛オタクとして知られている
- 総理大臣になった際の防衛構想がたくさんあったと考えられる
- 具体的な取り組み:
- 自衛隊の処遇改善
- 反撃能力の強化
- 武器弾薬の国内製造体制の拡充などの平時能力の強化
- 能動的サイバー防御の実現
- 能動的サイバー防御はサイバー攻撃を受けることを予想した際には国内外を問わず先にこちらから仕掛けることができる法案である
- 敵基地攻撃能力に似たある種の先制攻撃である
- リアルとデジタルどちらの点からも日本の防衛力をより広範な範囲で適用させた
- 野党は敵基地攻撃能力の時は大騒ぎしたが、能動的サイバー防御では年収の壁などで盛り上がっていたためそちらに注力していた可能性がある
■ 4. 次世代のための政策
- 石破氏は高齢者だという印象が先行していたが、実際には次世代のための政策も行っていた
- マクロ経済スライドの強化:
- 簡単に言えば高齢者の年金を減らして以降の人たちの年金を増やしたことになる
- 世代間格差是正につながる良い政策である
- 維新の会と組んで社会保障改革にも取り組んだ:
- 医療費の削減や若い世代に過度に依存する負担体制が緩和される
- 石破氏は全世代型社会保障、つまり若い世代に負担が集中する今の社会保障体制の見直しを訴えていた人物である
■ 5. 経済政策の二本柱
- 経済政策は主に2つの柱がある:
- デフレ脱却と称したもの
- 地方創生2.0
- デフレ脱却について:
- 石破政権初期の頃から日本はすでにインフレであった
- デフレ脱却は正直的外れの側面がある
- アベノミクスからずっとデフレ脱却を日本は言っていた
- デフレスパイラルに陥れば経済に悪影響だが、インフレになれば経済成長するといったシナリオはかなり甘い発想であった
- 地方創生2.0について:
- 従来のばら巻きによって地方を成長させるのではなく、地方自らが稼ぐ力をつけるべきだという発想である
- 発想自体は良いが、石破氏が自民党の政治家らしい側面がある
■ 6. 地方重視と都市部軽視
- 自民党は地方票に強さがあるため、何らかの方法で地方を重視する
- 地方こそが自民党の総本山である
- どういう方法にせよ地方の支援は自民党の生命線である
- 言い換えれば都市部を軽視したとも言える
■ 7. 外国人労働者政策
- 石破政権は外国人労働者に非常に前向きな姿勢を持っていた
- これがネット上で石破政権が叩かれまくった理由である
- 自民党が外国人労働者を受け入れたがる理由:
- 自民党を支えている業界団体(経団連、建設業、農業など)が全て外国人労働者を欲しがっている
- 特に地方で力が強い建設業や農業にとって安価な労働力は必須である
- 外国人労働者の大量受け入れも地方活性化の一環として考えていた
- 地方や業界団体を重視する姿はある意味で自民党らしいとも取れる
- 外国人労働者の受け入れが今まで自民党を支えていた岩盤支持層を激怒させた
- 逆に外国人労働者を受け入れなければ地方が怒り出すのでどうにもならない状況である
■ 8. 石破政権の総括
- 石破政権は別にリベラルになったというよりも従来の自民党らしく安全保障と地方を重視する政治体制を敷いていた
- 地方での石破人気につながった一方で、都市部の石破不人気でもある
- どちらかを取ればどちらかは取れないという構造である
- 本来政策とはそういうものである
- 一部の政治家が主張する「皆が幸せ」のような都合の良い話は要注意である
【12月2日 AFP】フランス東部リヨンの裁判所は1日、男娼との性行為の盗撮動画を使って政敵を脅迫したとして起訴された、東部サンテティエンヌのガエル・ペルドロー市長(53)に対し、拘禁4年の判決を言い渡した。
2014年から現職のペルドロー市長は、公判中、同性婚に反対していたカトリック教徒のジル・アルティーグ元副市長に男娼を差し向け、性行為の動画を撮影するよう命じたことを否認していた。
だが裁判所は、ペルドロー市長を脅迫、共謀、公金流用の罪で有罪とし、拘禁4年(うち執行猶予1年)と5年間の被選挙権停止(即時執行)を言い渡した。
ブリジット・ベルネ裁判長は、ペルドロー市長は「完全に有罪」だと述べた。
検察側は公判で、2015年初頭にホテルの一室で撮影されたアルティーグ元副市長と男娼の性行為動画は、アルティーグ元副市長の忠誠を確保するためのもので、反旗を翻した場合に公開すると称して撮影を依頼されたものだと主張した。
オードリー・ケイ検事は法廷で、「核ボタンに指を置いていたのは彼(ペルドロー市長)だった」と述べ、ペルドロー市長を「決定権者」と呼んだ。
裁判所は、市長の元首席補佐官ともう一人の副市長を含む共同被告3人にも拘禁刑を言い渡した。3人はアルティーグ元副市長にわなを仕掛けたことを認めた。
ペルドロー市長は判決言い渡し後も無罪を主張し、控訴する意向を表明した。
だが、アルティーグ元副市長は2017年にペルドロー市長との会話を秘密裏に録音していた。その中で市長は、人に見られては困る画像が詰まった「USBスティック」を持っており、これらの画像を公開すると述べてアルティーグ元副市長を脅迫している。
アルティーグ元副市長は法廷で、この脅迫によって市の会議に出席できなくなったと証言。 「私はまるで操り人形のようだった」「置物のように、ただ笑っていた」と付け加えた。
自殺願望に悩まされていたとも証言したアルティーグ元副市長は、1日の判決を歓迎。「私は人生をやり直せると思う」と、家族に囲まれながら述べた。(c)AFP
■ 1. 暇空氏の基本的立場
- 暇空氏は自身が正義を標榜していないことを強調している
- 正義を標榜する者は頭がおかしいと考えている
- 第三者から正義を標榜していると受け取られる表現を押し付けないよう求めている
- 自身の行動は正義の定義次第であり、正義を標榜したつもりはないと主張している
■ 2. 日本星党と飯山明里の訴訟問題
- 暇空氏は日本星党と飯山明里の問題において飯山明里に筋が悪いと判断している
- 日本星党は嫌いだが、百田直樹の子宮除去の例え話を持って日本星党支持者を子宮除去支持者とする飯山明里の主張に理があると考えていない
- 子宮訴訟については訴状を読んだ上で飯山明里がおかしく、日本星党には訴える妥当性があると判断した
- 福永弁護士が絡んでいる裁判については訴状を見ていないため判断できないとしている
- 日本星党にも筋が悪い裁判がありそうだと考えている
■ 3. 川上氏の立場に対する批判
- 川上氏の行為を武器商人に例えている:
- どちらに筋があるかを判断せず双方から訴訟という武器を取り上げようとしている
- 双方の裁判を否定する川上氏の姿勢は筋が悪いと評価している
- 川上氏が福永弁護士やNHK党へのアレルギー的反応で動いているのではないかと疑問視している
- 福永弁護士やNHK党が嫌いであることを前提として理論を組み上げていると主張すべきだと指摘している
■ 4. 訴訟という手段の必要性
- 法治国家において白黒をつける唯一の手段である訴訟そのものの否定は解決の機会を奪うと主張している
- 訴訟以外の私刑的解決を招きかねないと懸念を表明している
- 銃の使用を一切禁止しても戦争はなくならず、銃以外による解決が模索されるだけという例えを用いている
- 揉め事には原因があるため、原因を取り除かずに揉め事の手段だけを取り上げる行為は揉め事をなくすのではなく揉め事の手段を変えさせるだけだと論じている
- 法治国家では訴訟という唯一の争い解決手段があるため、それを否定するのは法治の否定に等しいと主張している
■ 5. 自身の支持者を名乗る者からの被害
- 自身の支持者を名乗って変なことをする個人に何度も迷惑をかけられていると述べている
- ブロックし認めないと宣言した相手から応援され、それを理由に嫌がらせをされたと訴訟を起こされている
- 堀口英一郎がコラボに嫌がらせをしたことが自身のせいだとコラボが主張し、裁判所がそれを認めたと説明している
- 住民訴訟で情報開示を求めてもコラボが嫌がらせが発生したと主張し、裁判所がコラボ側に都合のいい判断をしたと批判している
■ 6. 川上氏への訂正要求
- 川上氏が暇空氏を正義を標榜していると第三者から受け取られかねない発言をしたことについて訂正を求めている
- 川上氏は「正義だと思っているんだろう」という推測を書いたのみで訂正の必要はないと主張している
- 暇空氏は川上氏の言い方だと悪意を持って引用する人がいるためもっと丁寧に表現してほしいと要請している
- 川上氏は問題のある表現だとは思わないため訂正の必要は感じないと回答している
- 暇空氏は「でしょう」という表現が断定しているのか確認しているのか曖昧であり、そこを明確にしてほしいという意味の訂正を求めている
■ 7. 立花孝志/NHK党関連の支援
- 暇空氏は大津綾香に1500万円寄付したことについて、立花孝志が大津氏に100件以上の訴訟を仕掛けていたため支援したと説明している
- 川上氏はこれをNHK系統への憎しみによる行動だと評価している
- 暇空氏は憎しみではなく、彼らが社会的に悪であり対峙することに意味があると考えて行動していると主張している
- 川上氏はガーシーから脅迫されて刑事告訴してからNHK系統と揉め続けており、現在は地方議員や菅野完とつるんでNHK党と戦っているとされている
■ 8. 言葉の表現をめぐる論争
- 暇空氏は川上氏の表現が誤解を招くため訂正を求めたが、川上氏は表現のニュアンスの問題であり訂正する必要はないと主張している
- 川上氏は他人に訂正を求めるレベルのものではなく、相手の表現の自由の範囲内であると反論している
- 暇空氏は自身が他人の悪意で決めつけられた経験があるため訂正の必要性を感じると説明している
- 暇空氏は川上氏の国語力の問題だと指摘し、主語を明確にするよう助言している
- 川上氏は自分の間違いを認めるのは負けではなく、むしろ積極的に認めた方がいい場合もあると説教的な発言をしている
- 暇空氏は対談を提案したが川上氏は対談する価値がないと拒否している
■ 9. 訴訟内容の確認について
- 暇空氏は日本星党と飯山明里の件の訴訟を読んだ上でコメントしていると主張している
- 川上氏が子宮訴訟の訴状や経緯を読んだかどうかを繰り返し質問している
- 川上氏からは明確な回答が得られなかったと暇空氏は述べている
- 暇空氏は訴訟を一つ一つ読んで判断すべきだと主張し、福永弁護士が絡んだからという理由だけで判断するのは問題だと指摘している
■ 10. スラップ訴訟についての見解
- 川上氏は訴訟自体を否定しているのではなく、立花孝志らがやっているスラップ訴訟を否定していると主張している
- 日本星党のやっている訴訟の類似性を批判していると述べている
- 暇空氏は川上氏が一つ一つ訴訟を読んだ上でスラップだと判断しているのか疑問視している
- 福永弁護士と組んでいることでNHKのようなことをしているからスラップだという判断をしているように見えると批判している
- 訴訟されることは多くの一般人にとって金銭的心理的に負担であり、裁判の勝ち負けによらず相手にダメージを与える部分のみをキャンセルすることが川上氏の目的だとされている
派遣型性風俗店の女性従業員の裸などを盗撮したとして徳島県議の古川広志容疑者(64)=徳島市=が性的姿態撮影処罰法違反(撮影)の疑いで警視庁に逮捕された問題を受けて、同県議会で1日、各会派の会長・幹事長会が臨時で開催された。古川容疑者が会長を務める会派「公明党県議団」の梶原一哉幹事長は、古川容疑者に接見した公明党本部関係者からの情報として「議員辞職の意向が示されていると聞いている」と述べた。
会長・幹事長会では、議会事務局側が経緯を説明した後、梶原幹事長が発言を求め、「非倫理的で人権を侵害する重大な犯罪容疑」と指摘したうえ、各県議や被害者、県民に「深くおわびする」と頭を下げた。
古川容疑者は党県本部代表を務めており、梶原氏は、11月30日に党県本部役員が対応を話し合うとともに、幹事会総意として党本部に厳正な処分を求めていると説明。梶原氏は「信頼回復に全力で取り組む」とした。
現職の徳島県議が逮捕されるのは、2003年5月に統一地方選を巡る公職選挙法違反事件で徳島県警が同県議2人を逮捕して以来、22年ぶり。【植松晃一】
立憲民主党の原口一博元総務相は1日、産経新聞のインタビューに応じ、高市早苗首相による台湾有事と存立危機事態を巡る国会答弁を引き出し、その後、撤回を求める同僚議員らに苦言を呈した。有事にどう対応するのか明確にしない「曖昧戦略」を反故(ほご)にしたとして「最悪だ。気にいらない総理だったとしても、外交面では支えないといけない。国益より政争を優先させたようにみえる」と指摘した。
「俺が幹事長なら除名する」
首相については答弁を撤回する必要はないとし、安易な譲歩はさらなる中国側の要求を招き続けるとの見方を示した。
今回の首相答弁を巡っては、立民の岡田克也元外相が11月7日の衆院予算委員会で、台湾とフィリピンの間のバシー海峡を中国軍が封鎖したケースを挙げて「だから、どういう場合に存立危機事態になるのか」と繰り返し尋ね、引き出した経緯がある。立民の大串博志前選対委員長らは答弁撤回を求めている。
原口氏は「立民も、日本政府や米国政府と同じく台湾に対して『曖昧戦略』を採っている。にもかかわらず『明らかにしろ』と詰めて、高市首相にケース(具体事例)を言わせた」と述べ、岡田氏について「『バシー海峡』を持ち出した時点でアウトだ。俺が幹事長なら除名する。外相経験者なだけに問題性は二重三重に重い」と語った。
同僚は「いやいや…」とヤジ
中国側が首相の答弁に反発している状況については「『日本が中国に武力行使する』など首相は一言も言っていない。それなのに(日本など第二次大戦時の敗戦国を対象とした国連憲章の)『旧敵国条項』を持ち出して、武力行使をちらつかせている」と問題視した。
28日の衆院外務委員会では、茂木敏充外相も岡田氏について「曖昧戦略を変えるようなことをした」と苦言を呈し、これに対し原口氏は「批判は真摯に受け止める」と述べた。直後、同僚議員から「いやいや…」とヤジを飛ばされたという。
原口氏は、自身のユーチューブチャンネルで、同僚のヤジについて「前に質問した人間のミスを修正しようとしているのに『いやいや…』とは。(国益か政争か)どこを見て仕事しているのか」と憤慨している。立民については「ほとほといやになった。もうちょっと限界だ。外交や安全保障の基本を外して政権が取れると思えない」ともこぼした。
原口氏は自身へのヤジを繰り返し問題視しているが、産経新聞の取材に、この同僚議員は2日に謝罪に訪れる予定だといい、内容次第で矛を収める考えも示した。(奥原慎平)
香港人です
まずはっきりさせたいことですがこの火災は100%の人災です。ここまで破滅的な火事になってしまったのは竹の足場のせいではなく
・安全基準未満の防護ネット
・そもそも使用すべきものじゃない発泡スチロール
が最大の原因です。
これらの使用されたことに監督の責任から視線を逸らすために竹足場の廃止論に転じただけにすぎない。
さらに言うと火災報知機すら故意的に切られていた。
またこの工事を担当する会社は過去に多数の条例違反を侵し、2023年に小規模工事禁止命令を受けていたにも関わらずこの大規模な改修契約を勝ち取ったのは
複数の業者が事前に談合して入札を操作したからです。今回の工事の過程でも住民は何度も火災のリスクを訴えていたが、まともに相手にされません。
あと、家を失い食料も寝所もなくなった人々のために、市民は自発的に大量な物資を集めて住民に提供し、それらの提供と輸送は全て無償で行っていた。
なぜなら政府は無能の極みで何一つ助けてくれません。それならまだよかったが、政府の走狗である「關愛隊」(名目上各区域の市民の助けになるボランティアチームだが、その実態は膨大な予算をもらいながら、やることは有事の際現場に赴き自撮りをして仕事してますよ感をアピールするだけの人間のクズの集まりです。何一つ、本当に何一つ役に立ちません)が手柄を掻っ攫うべく物資を勝手に接収すると宣言し、ここ数日無償でボランティア活動をしていた市民を追い出す。
立場上政府全肯定の新聞紙「文匯報」がボランティアの市民が集まるのは「違法な集会であり、政治的意図を持って乗っ取ろうとする」と理不尽な疑いをかけようとし、悪者にしようとしている。
政府も恰も最初から「關愛隊」が被災者の世話をしている風に発表し、市民の助力に感謝するどころか言及すらしていない。
何故かと言うと、2019年の大規模デモ以来政府は市民が協力しあって何かをすることを極度に恐れ、異常なまでに制限しようとするからです。彼らはそれが香港政府、そして中国への反逆に繋がりかねないという被害妄想に陥り、どんな小さな可能性でも徹底的に潰そうとしています。例えこんな惨劇の直後でもそれは構いなしです。
会社も政府も、何もかも腐っています。これが今の香港です。
■ 1. 「ひろゆき的思考」と陰謀論の共通点
- 西村博之(ひろゆき)が創設した「2ちゃんねる」などの匿名掲示板について、メディア研究者の伊藤昌亮は「ひろゆき論」(『世界』2023年3月号)で陰謀論的な思考が増幅される点を批判していた
- 伊藤は日本の匿名掲示板がいわゆる「ネトウヨ」をいかに生み出してきたのか解説している(『ネット右派の歴史社会学』)
- 陰謀論には政治学者の秦正樹曰く「ある重要な出来事の原因を一般人には知り得ない強大な力に求める点にその特徴がある」(『陰謀論』)
- 何か大きな政治や社会の出来事が起こったとき、一般人には隠されているが強い影響力をもっている人びとの意図によって引き起こされたのではないかと考えるのが陰謀論である
- 例:アメリカの新型コロナウイルスワクチンには「マイクロチップが埋められている」「ビル・ゲイツが人びとの行動を捕捉しようとしている」という言説がSNSを通して急速に広まった
- これは陰謀論的な論理(ワクチン接種を推進する裏にはビル・ゲイツらの企図が隠されている)である
■ 2. 匿名掲示板と陰謀論の拡散
- 西村が管理人を務めていたアメリカの匿名掲示板「4chan」はこのような陰謀論が広まる場だった
- ただしYouTubeのような動画配信サイトでも陰謀論は広まっており、陰謀論の拡大の場は匿名掲示板に限ったことではない
- 陰謀論の論理を考えてみるとそれは「ひろゆき的思考」と非常に近い
- 「ひろゆき的思考」はまさに自分たちの環境や生活は「気づいていない」、つまり隠された抜け道やコツがたくさん存在することを前提とする
- マイナスが存在する環境に「気づく」ことが重要だと彼は説く
- それだけでは決して陰謀論と同じものだとは言えない
- しかし陰謀論の論理(自分たちの環境や生活には隠された意図があり、それが自分たちに何かしらのマイナスを生んでいる)はまさに同様の前提を共有している
- これは「陰謀論的思考」(conspiracy thinking)と呼ばれている(『陰謀論』より)
■ 3. 「世界のスタート地点が間違っている」という思考の構造
- 大切なのは自分たちのマイナスをつくっている原因に気づくことである
- 「ひろゆき的思考」も「陰謀論的思考」もこのような論理を共有する:
- ①そもそも重要なことが損なわれている社会(世界)で自分は生きている
- ②そういう①のような社会(世界)をつくった大きな権力が存在する
- ③損なわれた真実を知れば、自分は②のつくった社会(①)から抜け出すことができる
- ここで求められるものは悪の権力を倒してくれそうな誰かを探すことではない
- 世界には悪の権力が存在しており、その悪の権力に騙されないことによって自分は正しい場所に戻ることができることを求める
- 悪の権力が「ひろゆき的思考」の場合は旧来的な日本企業体制であったりムラ社会的な空気の読み合いだったりする
- つまりこういう論理である:そもそも自分の立っている世界のスタート地点が間違っている、だから人生を変えるにはスタート地点を変えるしかない
- そのスタート地点が「現世を支配しているが気づかれていない悪の権力」であるとするのが陰謀論である
- そのスタート地点が「気づかれていないプログラミングや投資の手法」であるとするのがひろゆき的思考である
■ 4. 「動く」自己啓発書から「気づく」陰謀論への変化
- 筆者は「ひろゆき的思考」が危険だと言いたいのではない
- 投資の知識やプログラミングが実際に自分を助けてくれることは大いにある
- むしろ注目すべきは「ひろゆき的思考」の書籍や動画を拡散させている欲望、令和の人びとの志向である
- 堀江貴文の『多動力』をはじめとする平成の自己啓発書は「もっと世界を豊かに」「もっと楽しく」「もっと成果を出す」といった論理を説いていた
- だからこそ行動を重視した
- しかし「ひろゆき的思考」や陰謀論は異なる
- 「マイナスをゼロにする気づき」を与えるのである
- それは従来の自己啓発書ではエンパワーメントされない人びとを癒やす
- そして努力が報われる世界に変わってほしいという人びとの欲望が隠されている
- 努力して成功したい、ではない
- 努力した分だけ(誰にもその成果が損なわれることなく)報われたいのである
- 損なわれたものを取り戻したいだけである
- それは外部環境に対する働きかけである
■ 5. 自己啓発書と陰謀論の違い
- 自己啓発書とは外部環境を度外視し、自分の行動を変えることに注力するものである(拙著『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』で解説)
- 陰謀論はむしろ損なわれた外部環境に気づくことで正常な環境を取り戻そうとする論理である
- 掲示板からSNSへ変化し、発言に対して「いいね」「フォロワー数」などの「報われポイント」が生まれた
- そして自己啓発的言説から陰謀論的言説に流行が変化するようになった
- その根底には「損なわれている社会を取り戻したい」という欲望が存在する
- 損なわれたものに気づきさえすれば努力が報われる社会に移ることができるからである
- この社会は見えない何かが損なわれ隠されている
- それに気づいた人だけが救われる
- 同じ物語が語られ続けている
■ 6. 考察系YouTuberと陰謀論
- 「考察系YouTuber」と銘打つチャンネルが都市伝説として陰謀論を伝えている場合もしばしばある
- 考察文化と陰謀論は相性が良い
- 陰謀論は悪意なく信じている人もいるが、アフィリエイトサイトや動画再生で広告収入を得るために意図的に拡散している人も少なくないという(『陰謀論』より)
- インターネットが報酬という形で報われる場になってしまったからこそ陰謀論は拡散され続ける
■ 7. 陰謀論の構造に気づいても報われない現実
- その構造に「気づく」ことの難しさは現代日本の大きな政治的困難を生み出す
- 陰謀論が収入のために生み出された嘘であるだなんて、その言説を見て信じる人にとって生きづらさが報われるための正解にはならない
- だから難しい
- 気づいても報われない現実がある
- だってこの社会は何かが損なわれているのだと語る人をほかに誰が救うことができるのだろう
■ 1. 総合評価
- この文章は着想としては興味深いが、論理的厳密性に重大な欠陥がある
- 「ひろゆき的思考」と「陰謀論」の共通点を指摘しようとする試みは知的に魅力的である
- しかし概念の恣意的定義、論理的飛躍、根拠の薄弱さにより説得力を欠く
- 結論も曖昧で、読者に何を伝えたいのか不明確である
■ 2. 主要な論理的問題点①「ひろゆき的思考」の恣意的な定義
- 著者は「ひろゆき的思考」を「隠された抜け道やコツに気づくこと」と定義しているが、この定義の根拠が不明確である
- 定義の出典が不明:ひろゆき自身がこのように自己規定しているのか不明である
- 著作の引用なし:ひろゆきの多数の著書からの直接引用がゼロである
- 操作的定義の欠如:「ひろゆき的思考」とそうでない思考を区別する基準がない
- 実際のひろゆきの主張:
- ひろゆきの言説は多岐にわたり、「論破」スタイル、コスパ重視、現実主義など様々な要素がある
- 「隠された抜け道に気づく」というのは一面的な解釈に過ぎない
■ 3. 主要な論理的問題点②「共通点」の論証が極めて粗い
- 「ひろゆき的思考」と「陰謀論」の共通点を3段階の論理構造として提示しているが、この抽象化は過度に一般的で意味をなさない
- 著者の論理:
- ①損なわれた社会で生きている
- ②その社会を作った大きな権力が存在する
- ③真実を知れば抜け出せる
- この構造はほぼすべての社会批判に当てはまる:
- マルクス主義:資本主義に搾取されている→ブルジョワジー→階級意識で解放
- フェミニズム:家父長制に抑圧されている→男性中心社会→意識化で解放
- 環境運動:環境が破壊されている→大企業・化石燃料産業→認識で行動変容
- 宗教:罪の世界に生きている→悪魔/煩悩→信仰/悟りで救済
- 区別がつかない:この論理構造だけでは「正当な社会批判」と「陰謀論」の区別ができない
- 論理の粗さ:「ひろゆき的思考」の②は「大きな権力」ではなく「非効率な慣習」程度である、著者は強引に陰謀論の構造に当てはめている
■ 4. 主要な論理的問題点③決定的な差異の無視
- 「ひろゆき的思考」と「陰謀論」の決定的な違いを軽視している
- 無視されている差異:
- 「敵」の性質:ひろゆき的思考は非効率な制度・慣習/陰謀論は秘密結社・隠された権力者
- 検証可能性:ひろゆき的思考は高い(投資・プログラミングは検証可能)/陰謀論は低い(反証不可能)
- 対処法:ひろゆき的思考は自己のスキルアップ/陰謀論は「真実」の拡散
- 結果の予測可能性:ひろゆき的思考はある程度予測可能/陰謀論は予測不可能
- 証拠の扱い:ひろゆき的思考は事実・データ重視/陰謀論は「隠された」証拠を信じる
- 根本的問題:
- ひろゆきの主張(例:プログラミングを学べ)は反証可能で検証できる
- 陰謀論(例:ワクチンにマイクロチップ)は反証不可能である
- この認識論的差異を無視している
■ 5. 主要な論理的問題点④因果関係の混同
- 「同じ論理構造を共有している」ことから「危うさ」を導いているが、論理の飛躍がある
- 著者の暗黙の論理:ひろゆき的思考≒陰謀論的思考→ひろゆき的思考は危うい
- 類似性≠同一性:構造的類似があっても内容の妥当性は別問題である
- 連座の誤謬:陰謀論と構造が似ているからといって、ひろゆき的思考が「危うい」とは言えない
- 例:科学的方法と疑似科学は構造(仮説→検証→結論)が似ているが、科学が「危うい」とは言えない
■ 6. 主要な論理的問題点⑤「自己啓発書」との対比の恣意性
- 「動く」自己啓発書vs「気づく」陰謀論という対比は単純化しすぎである
- 自己啓発書も「気づき」を重視:多くの自己啓発書は「マインドセット」「パラダイムシフト」などの「気づき」を強調する
- 堀江貴文の例の不適切さ:堀江も「常識を疑え」「既得権益に騙されるな」という言説を持っており、著者の分類に当てはまらない
- 二項対立の恣意性:「行動vs気づき」という軸は著者が設定したもので必然性がない
■ 7. 主要な論理的問題点⑥その他
- 「欲望」への還元の問題:
- 「ひろゆき的思考」を広める「欲望」「志向」に注目すべきと言いつつ、その分析が浅い
- 「損なわれたものを取り戻したい」という欲望は人類普遍の欲望であり、特定の時代・思想に限定されない
- 世代論の不在:なぜ「令和の人びと」が特にこの欲望を持つのか説明がない
- 社会的背景の分析不足:経済停滞、格差拡大、社会的流動性の低下などとの関連が不十分である
- 結論の曖昧さと無責任さ:
- 結論部分が極めて曖昧で、読者に何を伝えたいのか不明である
- 著者の結論は「気づいても報われない現実がある」「誰が救うことができるのだろう」である
- 問いを投げて終わる:批評として無責任である
- 処方箋の欠如:問題を指摘するだけで解決策を示さない
- 「危うさ」の具体的内容不明:タイトルで「危うさ」を謳うが具体的に何が危険なのか不明確である
- 伊藤昌亮・秦正樹の引用の問題:
- 専門家の著作を引用しているが、引用の仕方が恣意的である
- 伊藤昌亮の「ひろゆき論」の論旨全体を示さず部分的に利用している
- 秦正樹の陰謀論の定義は引用するが、その後の分析は著者独自のものである
- 権威の借用:専門家の名前を出すことで自説に権威を付与しているが論証は著者自身のものである
- 自著への言及の問題:
- 「拙著『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』で解説」と言及しているがこれは論証の代わりにならない
- 別の著作への丸投げ:この論考の中で論証すべき内容を別著作に委ねている
- 自己引用の問題:自分の著作が正しいという前提で議論を進めている
- 読者への負担:別の本を読まないと理解できない論考は不完全である
- 「考察系YouTuber」への言及の不十分さ:
- 「考察系YouTuber」と陰謀論の関連を示唆するが具体例や分析がない
- 具体的チャンネル名なし:誰のことを言っているのか不明である
- 「考察」の定義不明:映画・アニメの考察と陰謀論は本質的に異なる
- 一般化の根拠不明:「しばしばある」はデータに基づかない印象論である
■ 8. 欠けている視点
- ひろゆきの実際の言説の分析:
- ひろゆきの著書、動画、発言を具体的に分析すべきである
- 「ひろゆき的思考」を論じるならその実態を示す必要がある
- 陰謀論研究の知見の活用:
- 陰謀論研究は心理学、政治学で蓄積がある
- 「陰謀論メンタリティ」「認知バイアス」などの概念を活用すべきである
- メディアリテラシーの視点:
- なぜ人々が陰謀論を信じるのか、どうすれば批判的思考を促進できるかという実践的視点が欠如している
- 階級・教育の視点:
- 陰謀論を信じやすい人々の社会的属性、教育水準との関連の分析がない
- 国際比較:
- 日本の「ひろゆき的思考」と海外の類似現象(例:Jordan Peterson)との比較があれば説得力が増す
- 「報われない」という感覚の社会学的分析:
- 「損なわれている」「報われない」という感覚が広がっている社会的背景の分析が不十分である
■ 9. 構造上の問題
- タイトルと内容の乖離:
- タイトルは「危うさ」を示唆するが本文では具体的な「危うさ」が論証されていない
- 論理展開の不明瞭さ:
- 1-2節:陰謀論とひろゆき的思考の定義
- 3節:共通構造の提示
- 4-5節:自己啓発書との比較
- 6節:考察系YouTuber
- 7節:結論?
- この流れに必然性が感じられず焦点が散漫である
- 文体の問題:
- 学術的分析と感傷的エッセイが混在し読者を困惑させる
■ 10. 肯定的評価
- 良い点:
- 着想の面白さ:「ひろゆき的思考」と陰謀論を並べる視点は新鮮である
- 時代への感度:SNS時代の言説空間への問題意識は重要である
- 専門文献の参照:伊藤昌亮、秦正樹の著作に言及している
- 共感的姿勢:陰謀論を信じる人々への一定の共感がある
- 示唆的な指摘:
- 「マイナスをゼロにする」という欲望の分析は示唆的である
- SNSの「報われポイント」と陰謀論拡散の関連は検討に値する
- 「気づいても報われない」というジレンマへの言及がある
■ 11. 改善提案
- 「ひろゆき的思考」の厳密な定義が必要である:
- ひろゆきの著作・動画からの直接引用
- 複数の言説を分析し共通する特徴を抽出
- 他の論者(ホリエモン等)との比較
- 共通点と相違点の両方を公平に分析すべきである:
- 類似性だけでなく決定的な差異も明示
- 「共通点があるから危険」という短絡を避ける
- 「危うさ」の具体的論証が必要である:
- 具体的にどのような害が生じるのか
- 実例やデータの提示
- 反証可能な形での主張
- 処方箋の提示が必要である:
- 問題を指摘するだけでなく解決策を提案
- メディアリテラシー教育、批判的思考の促進など
- 自己の立場の明確化が必要である:
- 著者自身は「ひろゆき的思考」をどう評価するのか
- 陰謀論批判の規範的根拠は何か
■ 12. 結論
- この文章は知的に刺激的な問題提起ではあるが論証として極めて不十分である
- 主な問題点:
- 「ひろゆき的思考」の恣意的定義:根拠不明の解釈
- 共通構造の過度な抽象化:ほぼすべての社会批判に当てはまる
- 決定的差異の無視:検証可能性という認識論的差異
- 因果関係の飛躍:類似性から「危うさ」を導く誤り
- 結論の曖昧さ:何が言いたいのか不明確
- 処方箋の欠如:問いを投げて終わる無責任さ
- 格付け:論理的説得力★★☆☆☆(5点満点中2点)
- 着想は面白いが論証の粗さが致命的である
- 「ひろゆき的思考」と「陰謀論」の共通点を指摘するならもっと厳密な概念定義と両者の決定的な差異の分析が必要である
- 現状では「なんとなく似ている気がする」という印象論の域を出ていない
- 最大の弱点:
- 著者が提示する「共通構造」(損なわれた社会→権力→気づきで解放)はマルクス主義、フェミニズム、環境運動などあらゆる社会批判に当てはまる
- この構造を持つことが「危うい」ならすべての社会批判が「危うい」ことになる
- 陰謀論を特徴づける反証不可能性、隠された意図への執着、専門知識への不信といった要素の分析が欠如している
- 結果として陰謀論批判としてもひろゆき批評としても中途半端な論考になっている
東京・赤坂のホテルで派遣型風俗店に勤務する女性の裸を盗撮したとして、警視庁は29日、徳島県議の古川広志容疑者(64)を性的姿態撮影等処罰法違反の疑いで逮捕した。捜査関係者への取材でわかった。容疑を認め、「自分のスマートフォンで盗撮したことは間違いありません」と供述しているという。
捜査関係者によると、古川容疑者は28日午後8時40分ごろ、東京都港区赤坂にあるビジネスホテルの一室で、派遣型風俗店に勤める20代女性の裸をスマートフォンで撮影した疑いがある。警視庁は、女性の客だった古川容疑者が自身のスマホを女性から見えない位置に置き、隠し撮りしていたとみている。
被害に気づいた女性が勤務先の従業員を通じて警視庁に通報したことで事件が発覚した。
古川容疑者は29日に都内で開かれる会合に出席するため、このホテルに宿泊していたという。
古川容疑者は徳島選挙区(徳島市・名東郡)選出で現在3期目。県議会のホームページによると、2人所属している公明党徳島県議団で、会長を務めている。
事件を受け、公明党本部の西田実仁幹事長は29日、談話を発表した。西田氏は「弁護士の接見により事実関係を確認した結果、到底容認できない行為があったことが明らかになった」としたうえで、「極めて非倫理的で人権を侵害する重大な犯罪容疑。速やかに中央幹事会を招集し、中央規律委員会に対し規律処分の検討を指示し、厳正に対処する」とコメント。被害者に対して「心より深くおわび申し上げます」と結んだ。(長妻昭明)
お詫びの談話
本日(11月29日)、公明党徳島県議会議員・古川広志氏が、性的姿態撮影等処罰法違反の疑いにより警視庁に逮捕されました。
弁護士の接見により事実関係を確認した結果、到底容認できない行為があったことが明らかになりました。
本件は、極めて非倫理的で人権を侵害する重大な犯罪容疑であり、公明党議員として遵守すべき綱領・規約、さらには国民の模範となるべき政治倫理規範に照らして、党の名誉を著しく損なう行為であると言わざるを得ません。
この状況を重く受け止め、速やかに中央幹事会を招集し、中央規律委員会に対し規律処分の検討を指示し、厳正に対応してまいります。
被害に遭われた方に対し、心より深くお詫び申し上げます。
■ 1. 基本情報
- 配信日:2025/11/28
- 参加者:バイモン大好きおじさん、遊牧民(タバサ/毒王子)
■ 2. 論点1:男女論の社会的有益性について
- 遊牧民の主張:
- 男女論は社会にとって有益な行為である
- インターネットの言論がリアルの言論に直接反映される時代である
- 社会にとって有益な思想を啓蒙している以上、恥ずかしい行為ではない
- インターネットでの発信が現実社会に影響を与える
- バイモン大好きおじさんの視点:
- 有益かどうかと恥ずかしいかどうかは別の軸である
- 有益だから恥ずかしくない、無益だから恥ずかしいという単純な関係ではない
- 社会学や社会をよく知らない立場から質問している
■ 3. 論点2:「猿」「病気の知り合い」の必要性(運動論)
- 遊牧民の主張:
- いわゆる「病気の知り合い」(感情的な男女論者)は実際に多い
- 運動として考えると感情的な参加者も重要である
- フェミニズムや黒人差別撤廃運動も同様に、当初は感情を煽ることからスタートした
- 理性的な議論だけでは少数の賢い人間しか参加できない
- 賢くない人間も巻き込む必要がある
- 感情を煽られて入った人の中から真面目に考える人が出てくる
- 話題を目立たせ、運動に参加する人を増やす効果がある
- バイモン大好きおじさんの理解:
- 男女論には「真面目な議論」と「病気の知り合い」の両方が存在する
- 自分が知っていたのは主に「女叩き、男叩き」である
- 運動として意味があるという認識は持っていなかった
■ 4. 論点3:インターネット言論の影響力
- 遊牧民の主張:
- インターネットの言論とリアルの言論の境目がなくなってきている
- インターネットでの議論が直接リアルに影響を与える時代である
- 「インターネットで話しているだけ」という批判は当たらない
■ 5. 論点4:分かり手(小山明博)の活動と思想
- 分かり手の特徴:
- 男女論界隈で活動している
- 男性差別の撤廃、男性が損される社会への問題提起を行っている
- 雑誌への寄稿やリアルでの討論会も実施している
- 非常に筋が通っている人物である
- 間違っていると思ったら間違っていると言う
- 意のある返答があれば議論するが、議論に乗らず逃げると怒る
- 仲が良くても思想を曲げることはしない(純粋性を重視)
- 遊牧民と分かり手の関係:
- 遊牧民は分かり手と仲が良い
- 分かり手のことが好きすぎて、男女論を擁護する際に「分かり手という素晴らしい人間」を根拠に出してしまうことを自覚している
- キスのエピソードなど個人的な経験も共有している
■ 6. 論点5:男女論が恥ずかしいかどうか
- 遊牧民の主張:
- 社会にとって有益な思想を啓蒙している以上、恥ずかしくない
- 運動として正しい
- バイモン大好きおじさんの主張:
- 運動的には正しいかもしれないが、恥ずかしいか恥ずかしくないかで言ったら恥ずかしい
- 討論の開始時と立場が逆転した形になった
■ 7. 論点6:フェミニズムとの比較
- フェミニズム運動の歴史:
- 当初は犯罪行為をして感情を煽るところからスタートした
- 理論的な部分を考える人もいたが、大半は感情を煽られて参加した
- その中から真面目に考える人が出て、思想的バックボーンが充実した
- フェミニズム内部の対立について:
- 遊牧民の主張:フェミニズムには思想対立がない
- ディスカッションの歴史がない
- フェミニストの対談は「そうだね」という共感しかない
- JKローリングの例:
- JKローリングは母体系フェミニスト(女性はすごい、母親は強い)である
- トランスジェンダーを女性として認めない立場である
- ラディカルなLGBT肯定派のフェミニストと対立している
- 遊牧民の解釈:これはフェミニズムの思想対立ではなく、LGBT肯定派vs否定派の対立である
- 「女性のエンパワーメント」という思想では一致している
- 「どこまでを女性に含めるか」という範囲の問題である
■ 8. 論点7:男女の根本的な違い
- 遊牧民の経験:
- 女性の話がつまらないという問題がある
- 女芸人が面白くない問題がある
- 男のブサイクがいじられるのは笑えるが、女性がいじられるのはかわいそうに感じる
- 分析:
- 男性には「余裕」を感じられる(叩かれても後で仕事で頑張れば成功できる可能性がある)
- 女性には余裕を感じられない(このまま折れていくのではないかと心配になる)
- 結論:
- こうした差別的な思考がなぜ生まれるのかを考えると、根本的な部分の違いに行き着く
- 根本的な部分の話をすると男女論になる
- そうしたことを語ることすら許されない環境はおかしい
■ 9. 論点8:男女差別主義との葛藤
- バイモン大好きおじさんの経験:
- 大学時代は女性を舐めていた
- その後、男女差別に悲しみ、撤廃しなければと考えた
- しかし「THE W」を見て女芸人のつまらなさに頭を抱えた
- 自分が男女差別主義者なのかと悩んだ
- 遊牧民の経験:
- なぜ自分の思考が差別的になるのか悩んだ
- 本来差別はいけないはずなのに、思考が差別的になる理由を考えた
- 最終的に根本的な部分の違いに話が収束した
■ 10. その他の話題
- 二次創作・アニメ関連:
- ゼロの使い魔の話題
- ガンダムと銀河英雄伝説の比較
- ジークジオン(ジークアクス)への批判
- メタ的な議論:
- コメント欄の質について
- 配信時間(予定1.5〜2時間が実際は2.5時間になった)
- 討論の進め方
■ 11. 全体的な流れ
- 男女論が恥ずかしいかどうかという問いから開始した
- 遊牧民が「社会的有益性」を根拠に恥ずかしくないと主張した
- 「猿・病気の知り合い」の必要性について運動論的に議論した
- フェミニズムとの比較を通じて運動の在り方を検証した
- 男女の根本的な違いについての個人的経験を共有した
- 最終的に「運動的には正しいが、恥ずかしいかどうかは別」という着地になった
- 結論:立場は開始時と逆転し、遊牧民が男女論を擁護する側、バイモン大好きおじさんが一定の理解を示しつつも「恥ずかしさ」は認める側となった
■ 1. 研究の背景と目的
- 発展途上国においても「子どもを持たない選択」をする人が増加している傾向が確認された
- 従来「子どもを産まない人の増加」は日本やヨーロッパ、アメリカなど先進国特有の現象と考えられていた
- ミシガン州立大学の心理学者ザカリー・P・ニールとジェニファー・ワトリング・ニールが51か国の国際的な人口・健康調査データを解析した
- 研究結果は2025年11月付けで科学雑誌『PLOS ONE』に掲載された
■ 2. チャイルドフリーの定義と各国の状況
- チャイルドフリー(childfree)の定義:
- 「これまで子どもがいない」かつ「今後も子どもは欲しくない」という2つの条件を満たす人
- 単に子どもがいない人とは区別される概念である
- 各国のチャイルドフリーの割合(15〜29歳未婚女性):
- パプアニューギニア: 約15.6%
- エチオピア: 約9%
- フィリピン: 7%超
- 日本の参考値: 20〜40代で「子どもを希望しない」と回答した人は約7%程度(内閣府調査、定義は厳密には一致しない)
- 51か国の比較では、チャイルドフリーの割合は0.3%から15.6%まで幅広く分布していた
- 従来「出生率が高い国」とされてきた地域にも意外なほどチャイルドフリーの人が多い国が存在する
■ 3. 研究手法とデータの信頼性
- 使用データ: DHS(Demographic and Health Surveys)という国際標準の人口・健康調査
- データの統一化:
- 国によって調査対象や質問項目が異なる問題に対処するため、専用ソフトウェアを開発してデータを自動統合した
- 「これまで子どもがいない」「理想の子ども数が0である」という2つの条件を満たす人を機械的に抽出した
- 比較対象の統一:
- ほぼすべての国で共通して調査されている「15〜29歳の未婚女性」という層に絞って分析を実施した
- この絞り込みにより国ごとの文化や家族観の違いが残るにもかかわらず、チャイルドフリーの割合を公平に比較可能とした
■ 4. 人間開発指数(HDI)との相関関係
- 人間開発指数(HDI)の定義:
- 「健康に長く生きられるか」「教育をどれだけ受けられるか」「生活を支えられる所得があるか」の3つを数値化した指標
- 国の生活の安定度や将来の見通しの立てやすさを示す
- 発見された傾向:
- HDIが高い国ほどチャイルドフリーの人が増えるという明確な傾向が見られた
- 「発展途上国」という大きなくくりでは見えなかった価値観の違いが、HDIという視点から浮かび上がった
- 「発展途上国」の定義の問題:
- 国際的に統一された定義が存在しない
- 世界銀行やIMFが経済規模や産業構造に基づいて便宜的に用いてきた分類にすぎない
- 医療や教育、寿命といった生活の安定度までは十分に反映されていない
■ 5. HDI上昇がチャイルドフリー増加をもたらす要因
- 教育とキャリアの変化:
- 教育を受けられる機会が増え、就職先の選択肢が広がる
- 教育年数が長くなり、20〜30代は学びやキャリアの基礎を固める時期になる
- 「大人になれば結婚して子どもを持つ」という従来のパターンが必ずしも当たり前ではない状況が生まれる
- 社会保障制度の整備:
- 公的年金や医療制度、女性の安定した雇用などが広がる
- 「子どもが生活の支えになる」という構造的な役割が弱まる
- HDIが低い地域では子どもが老後の支えや労働力として必要とされるが、HDIが高い国ではこの必要性が減少する
- 家族を持たないことが生活上の大きなリスクになりにくくなる
- 子育てコストの可視化:
- 教育や情報へのアクセスが広がることで、子育てにかかるコストが具体的に見えやすくなる
- 住居費、教育費、家事や育児に必要な時間の大きさがHDIが高い社会ほどはっきり意識される
- 趣味や学び、旅行など「自分の時間」を使える機会も増える
- 子どもを持たない選択が相対的に合理的に感じられる場面が増加する
■ 6. 研究の限界と今後の展望
- データの性質上の制限:
- DHSのデータは横断調査(cross-sectional)であるため、個人の価値観の変化を追跡できない
- 「今は子どもを欲しくないが将来は欲しくなる」といった変化を捉えることはできない
- 文化的要因の複雑性:
- 宗教、家族制度、経済状況、男女の役割観などチャイルドフリーの背景にある文化的要因は国によって大きく異なる
- 今回の研究だけではこれらの複雑な要因をすべて説明できるわけではない
- 研究の意義:
- 51か国・200万人以上のデータを統一的に扱った分析により「途上国の内部でも価値観の転換が起きている」可能性を示した
- 出生率の低下や家族観の変化が世界全体で同時進行している可能性がある
- 少子化を「先進国の特殊な事情」として扱うのではなく、「世界的な価値観の再編」として捉え直す必要性が示唆される
これまで世の中で語られてきた「清潔感が大事」だの「なぜ風俗でメンタルが病むのか」だの「熟年離婚」だのといったバラバラの事象が、ひとつの仮説ですべて説明がついたので書き留めておく。
名付けて『メスの2段階選別論』だ。
倫理的な是非は一旦置いておく。あくまで「我々ヒトという動物がどう設計されているか」という仕様書の話だと思って読んでほしい。
■基本定義:メスは「2つのザル」を持っている
結論から言うと、女が男を見る目には、明確に異なる2つのフィルタリングシステムが存在する。
重要なのは、この2つは「判定基準」も「目的」も全く別物だということだ。
第1段階:生理的許容ライン(マイナス回避)
判定基準: 「コイツに力ずくでレイプされて妊娠させられた時、産み育てる価値が(ギリギリ)あるか?」
ここが最大のポイントだ。
女の脳内にはバックグラウンドで常に「最悪の事態(強制性交)」のリスク計算プログラムが走っている。
目の前にいるオスが、自分を襲ってきたと仮定する。その時、遺伝子的に「完全に不良債権(ハイリスク・ノーリターン)」になる相手に対し、脳は警報を鳴らす。
これが「生理的に無理」「清潔感がない」の正体だ。
そして「清潔感」とは、風呂に入っているかどうかではない。肌の質感や挙動から読み取る「遺伝的なエラーのなさ」や「病原体リスクの不在」を示すシグナルだ。
つまり、第1段階で弾かれるというのは、「お前の遺伝子を身体に入れるくらいなら死んだほうがマシ」という生物学的拒絶に他ならない。
第2段階:本能的渇望ライン(プラス獲得)
判定基準: 「自分から積極的に遺伝子が欲しいか?」
第1段階をクリアした中の、ごく一部の特異点(強烈なオス)だけがここに入る。
理屈抜きで「濡れる」相手。
これは第1段階の完全上位互換だ。
※補足:パラメータ設定の「個体差」について
誤解なきよう言っておくが、もちろん「閾値の設定ファイル(好み)」には個体差がある。
「筋肉質なら第1段階クリア」という個体もいれば、「細身でないと第1段階で足切り」という個体もいる。いわゆる「好み」や「フェチ」だ。
しかし、重要なのは「どんな値が設定されているか」という表面的な違いではない。
「第1段階(足切り)」と「第2段階(渇望)」という『2層構造の判定ロジック』自体は、すべての女性に標準実装されているOSの仕様であるという点だ。ここを履き違えてはいけない。
■現代社会のバグ1:「結婚」という妥協
この理論が残酷なのはここからだ。
人類のペアの大多数(夫婦)は、「第2段階(本能的渇望)にはいないが、第1段階(生理的許容)はクリアしている」というグレーゾーンで成立している。
第2段階のオスなんて滅多にいない。だから女は現実的な適応戦略(妥協)として、「まあ、万が一妊娠しても育てられる(社会的地位や経済力があるから)」という相手と契約を結ぶ。これが結婚だ。
ここには「理性」はあるが、本能的な「種の渇望」はない。
だから、結婚して子供を作った後にセックスレスになるのは仕様通りの挙動なんだよ。最初から「遺伝子が欲しくてたまらない相手」ではなかったんだから。
■現代社会のバグ2:性産業という拷問
この理論を使うと、水商売や風俗で女性のメンタルが崩壊する理由もロジカルに説明できる。
・水商売のストレス
第1段階(防衛本能)が「コイツは危険(レイプされたら割に合わない)」と判定している相手が、閉鎖空間で接近してくる。
脳が「危険な相手が近くにいるぞ!」と非常ベルを鳴らし続けているのに、理性で笑顔を作る。この乖離が脳を焼く。
・風俗のストレス=生物学的自殺
さらに深刻なのが風俗だ。
第1段階すらクリアしていない(=遺伝子を入れたら破産する)相手に対し、あろうことか最もリスクの高い「性的関係」を受け入れる。
これは生物学的に見れば「自殺」に等しい。本能が「絶対に拒絶しろ」と叫んでいる相手を受け入れる行為は、魂を削るなんて生易しいもんじゃなく、脳の回路を物理的に破壊しにいってるようなものだ。
■応用編:おばちゃんと成功者
事例A:なぜ「おばちゃん」は図々しいのか
閉経すると「妊娠リスク」がゼロになる。
すると、バックグラウンドで走っていた「第1段階(レイプ対策セキュリティ)」が用済みになって解除されるんだ。
だから、若い頃なら「生理的に無理」だった弱者男性ともフラットに会話できるし、距離感もバグる。あれはセキュリティソフトをアンインストールした状態なんだ。
事例B:成功者のセクハラは「過学習」によるバグ
金や地位のある男は、女の「第1段階(社会的地位による許容)」をクリアしやすい。
ここで厄介なのが、稀に「金や地位=第2段階(本能的な魅力)」として判定してくれる女性個体が存在することだ。
成功者は、過去にそういった女性とマッチングして「いい思い」をした経験(成功体験)を持っていることが多い。
これが彼らに致命的な「過学習」を引き起こす。
「俺のアプローチ(金・権力)は、女を濡らす(第2段階)のだ」と誤った学習をしてしまうわけだ。
その成功体験をユニバーサルな真理だと勘違いし、第1段階で止まっている(理性で付き合っているだけの)部下や他の女性にも同じアプローチを仕掛ける。
結果、相手の女性からは「生理的にはギリOKなだけだったのに、勘違いしてきてキモい」と判定され、セクハラとして通報される。
これは単なるスケベ心ではなく、「過去のデータセットに偏りがあったせいでAIが誤動作した」という悲劇なのだ。
■結論
こう考えると、世の中の理不尽な男女関係のほとんどに説明がつく。
男たちは「清潔感」という言葉に騙されてはいけない。あれは「俺の遺伝子を受け入れる覚悟があるか」という、遥かに重い問いかけなんだ。
そして、大多数の夫婦は「本能的な渇望」がないまま、理性という糸で繋がっているに過ぎない。
人間社会、あまりにも残酷すぎるだろ。
ぶっちゃけ上野千鶴子みたいな社会学者が「自閉症はマザコン少年の末路」と発言しても、そのまま東大名誉教授になれてしまうのが今の日本の社会学の現状なんだよな。
■ 1. エンターテインメント作品への高尚さ要求の問題提起
- エンターテインメント作品に対し「高尚であるべきか」「社会的メッセージを含ませるべきか」という議論は常に存在する
- 批評家や一部の愛好家は単純な娯楽作を「低俗」「子供騙し」という言葉で批判する傾向がある
- 歴史を振り返ると、高尚さへの傾倒が大衆を置き去りにし、業界そのものを衰退させかけた事実がある
■ 2. スター・ウォーズの成功事例
- 1970年代のハリウッド映画界の状況:
- アメリカン・ニューシネマと呼ばれる潮流の只中にあった
- ベトナム戦争や政治不信といった社会背景を反映し、リアリズムを追求していた
- アンチヒーローが主人公となり、救いのない結末や難解なテーマを扱う作品が「良質な映画」として評価されていた
- 『タクシードライバー』や『ゴッドファーザー』といった傑作が生まれた一方で、映画館から夢、希望、純粋なワクワク感が失われつつあった
- 批評家たちは芸術的で高尚だと称賛したが、重苦しい現実に直面している観客は説教臭い現実に疲れ果て、映画館から客足が遠のいていた
- ジョージ・ルーカスの企画:
- かつて自身が子供の頃に夢中になった冒険活劇「フラッシュ・ゴードン」のような作品を目指した
- 単純明快な勧善懲悪、科学的考証など関係ない冒険活劇のスペースオペラ、騎士が姫を助ける剣と魔法の物語、時代劇のような痛快なチャンバラというエンタメ全振りの作品だった
- タイトルすら一切ひねりがなく余計な考察は不要である
- 製作当時の前評判:
- 「今さら宇宙戦争など流行らない」「子供向けのB級映画」「低俗な漫画映画」といった散々なものだった
- 映画関係者や批評家の多くは冷ややかな目で見ていた
- 配給会社ですらヒットを疑問視し、ルーカス自身も公開当日は失敗を恐れてハワイへ逃避していた
- 高尚なテーマを持たないSF活劇は取るに足らない低俗な見世物に過ぎないとされた
- 公開後の結果:
- 1977年に公開されるや否や劇場には長蛇の列ができ、世界中で社会現象を巻き起こした
- 観客は難解なメタファーや社会風刺ではなく、ライトセーバーの唸る音や宇宙船のスピード感に熱狂した
- 理屈抜きに楽しめる面白さがあった
- 低俗という誹りを受けた作品が映画産業そのものを救い、ブロックバスター映画の礎を築いた
■ 3. 現代ロシアにおけるプロパガンダ映画の失敗
- ウクライナ戦争向けプロパガンダ映画の興行成績:
- 2022年の戦争ドラマは興行収入/製作費で示す回収率が21%どまりだった
- 2023年のプロパガンダ作品は回収率2.5%だった
- 2025年最新作品は公開週末でも1上映あたりの平均観客数はわずか3人で、回収できたのはせいぜい20万円という惨憺たる状況である
- ロシアの映画制作会社幹部の証言:
- ロシア人はどこに行ってもプロパガンダを強制的に観せられている(国営テレビ、街頭、学校や大学でも)
- 多くの人は現実を一瞬でも忘れさせてくれる映画を見たいと思っている
- ウクライナ関連の暗いニュースを忘れたい、戦争を思い出すことが彼らが最も望まないことである
- 自分でお金を払ってまでプロパガンダ映画を見たがらないのは当然だと指摘している
- ベトナム戦争の影に疲弊し、ニューシネマのリアリズムや説教臭さに背を向けた70年代のアメリカ観客の姿と重なる
■ 4. 社会的メッセージ性の質的問題
- 「社会的メッセージを含ませれば高尚になる」というのは幻想に過ぎない
- メッセージ自体の質が低ければ作品の価値は下がる
- 新興宗教系団体の制作物の例:
- 組織票によってランキングの上位を席巻することがある
- 極めて明白かつ強烈なメッセージが込められているが、映画史に残る傑作として一般大衆に評価されることはまずない
- 布教のためのメッセージは一般にエンターテインメントとしての面白さや芸術としての深みには何ら寄与しない
■ 5. 作家の経験と知識の限界
- 「作家は自身の経験した以上のことは書けない」という論説が従来より存在する
- エンタメ全振りであればこの限界は問題にならない:
- 大統領を主人公にしつつポストアポカリプスでの活躍を描いたり、異世界に飛ばして現世での仕事の苦悩などスパイス程度に使っている作品など普通にある
- 社会的メッセージ性を売り物にする場合は問題になる:
- リアリティのある社会描写を追求しようとすればするほど、取材や作者の実体験の範囲外に出た瞬間にボロが出る
- 『島耕作』シリーズの例:
- 主人公が課長であった初期は作者のサラリーマン経験が生きた生々しい描写が魅力とされた
- 主人公が出世の階段を登り詰めるにつれ、作者自身が経験したことのない世界を描くことになった
- 経営判断や役員としての描写におけるリアリティの欠如、政治的・経済的な視点の浅さは隠せない領域まで来て、もはや読者はネタにして擦るために読んでいると言われる始末である
- 偉大なベテラン作家ですら未知の領域において高尚な社会派であり続けることは至難の業である
■ 6. SNS時代における社会的メッセージの困難
- インターネットによる言論の可視化が状況を悪化させている
- 作品に込めた社会への警鐘や高尚な哲学が、𝕏(旧Twitter)でポストすれば「いいね」もつかず、リプライ欄でボコボコにされて終わる程度の浅いメッセージでしかないケースは後を絶たない
- 綿密な取材や専門家の監修、作家本人の深い経験をもとに社会的メッセージを作品性の中心に据えるなら評価されるだろうし、そこの良さで成功した作品もある
- 社会的メッセージがなければならないという強迫観念だけで、専門家でもないエンタメ作家が生半可な知識で社会を語ることは危険である
- 観客は敏感であり、物語の展開上不自然に挿入された説教や作者の独りよがりな思想が見えた瞬間、急速に白けてしまう
- SNSで袋叩きにされるような程度の低いメッセージであるなら、それは作品にとってノイズでしかない
■ 7. エンターテインメント作家の役割に関する結論
- 芸術性の高い作品や社会派の作品を否定するものではなく、それらも文化には必要不可欠な要素である
- 売上や評価を気にせずに自分のメッセージを出したいという動機も、出資者に見限られない限りは問題ない
- 表現は自由であり、好きにしたらよい
- エンタメは高尚であるべきという強迫観念が創作の幅を狭めるのであれば、それは害悪でしかない
- 「作品は社会的メッセージを持つべき」という主張は、エンターテインメント作家に対し過度な役割を期待しすぎている
- マスメディアが一方的に情報を発信するだけの時代であれば、クリエイターが安全圏から社会批評を行い、それを大衆が有難く拝聴するという構図も成立したかもしれない
- 現在はSNSを通じて読者や視聴者から瞬時に鋭利な反論が飛んでくる相互監視の時代である
- 純粋な娯楽の提供者に対し、専門外である社会評論家としての役割を要求するのはあまりに酷である
- 現実を忘れさせ、ワクワクさせることはエンターテインメントの原点の一つである
- 創作者がそれに専念するのは何も悪いことではなく、それに異議を唱えるのはあまりにも傲慢である
■ 1. 令和人文主義の定義と特徴
- 「令和人文主義」という言葉が最近注目を浴びている
- 哲学者の谷川嘉浩が提唱した言葉である
- 「読書・出版界とビジネス界をまたいだ文化的潮流」とされている
- 担い手として挙げられる人物:
- 株式会社COTENの深井龍之介
- 株式会社baton(QuizKnock)の田村正資
- 文芸評論家の三宅香帆
- 広告会社勤務で大阪大学招へい准教授の朱喜哲
- 哲学者の戸谷洋志
- 元スクウェア・エニックスのシナリオライターで作家・書評家の渡辺祐真
- 漫画家の魚豊
- 特徴として挙げられる点:
- 文体が上の世代と全然違う
- 受け手は学生よりも会社員(新しい知の観客を意識した語り方)
- 多メディア展開
- 反アカデミズムではない
- 教養主義から単なる人文知へ
- SNSやポストトゥルースを意識した自己論や社会論
- 言葉への強いこだわり
- 筆者が特に注目する四つの特徴:
- 受け手は学生よりも会社員(新しい知の観客を意識した語り方)
- 反アカデミズムではない
- 教養主義から単なる人文知へ
- SNSやポストトゥルースを意識した自己論や社会論
■ 2. 人文学における「会社員」と「市民」の区別
- 従来の人文学では「会社員」という存在は未熟なものとして相手にされていなかった
- 学生は大人になって国家や社会を構成する「市民」になることが期待されていた
- 「市民」の定義:
- 自分がやったことの法律的な責任がとれる存在である
- 事故を起こせば損害賠償を払わなければならないし、逆に事故を起こされれば賠償責任を相手に問い、裁判を起こすことができる
- 選挙で良い首相を選べば恩恵を受けるし、悪い首相を選べば害を被る
- すべて「あなたの責任です」と言われ、「そうです。私の責任です。なぜなら、私が自分の意志に基づいてやったことだから」ということが求められる存在である
- 法律を主体的に運用することが求められる人たちのことである
- 「会社員」の定義:
- 企業という「法人」に勤める「履行補助者」という位置づけである
- 業務命令を下す企業経営者の手足であり、「メンバー」とも訳される
- 会社員として経営者に与えられた権限をはみ出ない限り、法律的な責任を問われない
- 業務上のミスを犯せば上司から怒鳴られて鬱になるかもしれないが、法律上の責任を問われる可能性は非常に低い
- 損害賠償請求は勤めている企業(法人)に対して行われる
- 選挙での投票も「会社員」として行うことは建前上避けるべきだとされている
- 企業という「大きな市民」(法人)の手足という位置づけであり、市民社会や国家を構成する主体とはみなされていない
- 従来の人文書は読書を通して学生を「市民」に成熟させることを促してきた
- これがいわゆる「教養主義」である
- 誰もが「市民」であることを自覚して法律的な主体としてふるまうことで賢い国家による良い統治がもたらされるという考えが近代主義の前提である
- この考えを体系化したのが哲学者のフリードリヒ・ヘーゲルである
- 人文学は労働者の「会社員」ではなく「市民」としての側面に重点を置いて育もうとしてきた
- 人文学は一時期まで経営学ではなく労働運動との関係が緊密であった
- これは「会社員」が労働運動によってはじめて企業内部で法権利主体である「市民」として活動できたからである
- 「市民に向けて書く」という行為は中立的な行為ではなく、実践的な行為(パフォーマティブな発話)である
- 読者をある主体(市民)として想定することで、逆説的に読者はそのような主体(市民)として育っていく
■ 3. 歴史的経緯①グローバル化
- 良い市民・良い国家・良い統治を目指す「教養主義」を突き崩す事態が生じた
- グローバル化の定義:
- 企業や人の活動が国境を越えて広がることをいう
- 1990年代にコンピューターが普及し、そのスピードや規模が格段に飛躍した
- 郵便制度や電線網や鉄道という国家が主導して整備したインフラを用いることなく、直接的に海外の友人や取引先とコミュニケーションが取れるようになった
- 企業や人々が国家制度を介することなく活躍する余地が格段に増大した
- 2010年代のGAFAMの登場:
- グーグル・アップル・フェースブック・アマゾン・マイクロソフトといったIT企業が新たな通信インフラを普及させた
- 企業が国家の統制下にあった通信インフラに依存していたが、いまや企業は国家に依存する必要がなくなった
- テレビは国家の統制下(免許制)にあるが、そのテレビを介さずとも企業は有効に広告を打つことができるようになった
- 国家がIT企業に業務を委託するなどして、その力を借りるようになっていった
- 企業が国家に代わり、「統治」(支配)の担い手となり始めた
- 東京大学では最近、学生たちが法学部ではなく経済学部を積極的に選ぶようになった
- 官僚・政治家・弁護士の人気は落ちるいっぽうである
- むしろエンジニアやコンサルタントといった「会社員」が注目されつつある
■ 4. 歴史的経緯②新自由主義
- 新自由主義の定義:
- 「統治」の担い手を国家(自治体)そのものではなく、企業に任せる(委託する)ことを肯定する思想である
- 「統治」を市民が税金で雇った公務員が担うのではなく、企業の「会社員」に担わせる
- グローバル化の進展と新自由主義の普及は同時に訪れる
- 「民間活力の導入」と言われて肯定されるが、他方で市民が「統治」に携わる領域(公共領域)が縮小されやすくなる
- その先兵となっているのが広告代理店やコンサルティング企業である
- 具体例:
- 選挙にマーケターが入り込み、結果を左右している
- コンサルティング企業は自治体や国家の仕事を請け負い主導している
- 行政は公園の管理を企業に任せ、その見返りに企業は年間40万円という格安で好立地にレストランを建てることができる(豊中市の事例)
- 市民が情報公開請求を行っても、行政が大企業(コンサルタント会社)に公園管理を委託し、その大企業が小企業(レストラン)に公園管理を委託するという下請け構造を盾にして「その情報は民間の契約のことなので(民民なので)公にできません」と資料を真っ黒に塗りつぶして出してくる
- 新自由主義の根本は「統治」に関する思想である
- 法や権利で世の中を動かすのではなく、市場の論理で世の中を支配することを当然と見なすのが新自由主義である
- 市場の論理で世の中が動くことが当然だとすれば、貧困に陥った人々もまた市場の論理の上で動かざるを得なくなる
- 三宅香帆の言葉では「個人の誰もが市場で競争する選手だとみなされるような状態」である
- その結果として「自分が貧困に陥ったのは、自分に商品価値がないからだ」「失敗しても、それは自分のせいだ」という自己責任論が蔓延する
■ 5. 歴史的経緯③インターネット
- 良い市民・良い国家・良い統治という考え方に基づく「教養主義」を支えたのが新聞社や出版社であった
- 新聞社や出版社は知識人を起用して議論を展開させ、「良い市民」が行うべき議論や姿勢の範を示した
- かつて知識人はアカデミアに依存しながらも、それらが「専門領域」に閉じこもっていることを批判し、「反アカデミズム」の姿勢を鮮明にしていた
- 知識人は「アカデミシャンは『人々がどう生きるべきか』や『社会はどのように統治されるべきか』に関心がない」と批判していた
- 「良い市民」を必要とする国家(特に議会)とメディア産業は補完的な関係にあった(1980年代まではかろうじて維持される)
- 1990年代に入り、インターネットの出現によってこれらの力を削ぐ事態が生じた
- コンピューターが1990年代になって普及し、多くの人が自分の意見を表明できるようになった
- 2010年代に入り、SNSの登場によってインターネットによる発信者は激増した
- もはやIT企業の通信インフラやそこで行われるコミュニケーションを無視しては議会の議論が成り立たない
- IT企業は議会での審議も何も通さずに、人々のコミュニケーションの形を勝手に決めてしまう
- イーロン・マスクがツイッター社を買収して、その通信のあり方を一瞬で変えてしまったように、選挙結果をも左右する通信インフラが企業によって一瞬で変えられてしまう
- たくさんの投稿の中の一人にすぎない知識人よりも、エンジニアにこそ圧倒的に影響力がある
- 国家が巨大IT企業の「会社員」によって左右されるようになってくる
- 「良い市民」という前提が崩れ、知識人という存在も古びたものになる
- 「良い市民」が崩れた結果、そのような知識人的なふるまいは許されなくなる
- むしろ研究者の方がたくさんのユーザーから知識の点で頭一つ抜けることができる
- 「教養主義から単なる人文知へ」とまとめられる理由は、「人生」や「社会」を偉そうに語る教養主義ではなく、単なる知識に還元された人文「知」が重視されるようになったことにある
■ 6. 歴史的経緯④2010年代の言論状況と群れ(マルチチュード)の登場
- 令和人文主義の担い手が経営者(深井龍之介)や(元)マーケター(三宅香帆・朱喜哲)であるとされているのは当然である
- 谷川嘉浩自身も「企業からヒアリングを受けたり、コンサルティングや調査を引き受けたり、研修を提供したり、コーチングのようなことをしたりすることもあります」と述べている
- 国家が没落すれば企業の力だけが残るわけではない
- 企業が実質的な「統治」を担うようになり、市民と国家が教養主義とともに没落した後に生まれてきた存在が群れ(マルチチュード)である
- 群れ(マルチチュード)の定義:
- 左派の思想家であるアントニオ・ネグリが創った言葉である
- 議会や裁判を通さず、直接的に企業や行政にぶつかっていく抵抗運動の担い手を指す
- 2011年にアメリカのウォール街を人民が占拠したオキュパイ・ウォールストリート運動が代表的な事例である
- スペインでは、パレスチナの人民を虐殺するイスラエルが出場するスポーツ大会の会場に抗議団体が直接入り込むこともあった
- 日本でも行政と癒着した吉本興業への抗議運動が展開されている
- 市民はすべて議会や裁判などを通して間接的に自分たちを統治しようとする(間接民主主義)が、それが機能不全に陥ったときに、市民の権限を縮小された人々は群れ(マルチチュード)となって直接的な抗議行動に打って出る(直接民主主義)
- 国家や法に依存した市民が凋落した後に、越境する企業(会社員)と世界中の群れが「統治」のあり方をめぐって抗争を行っているのが現代社会である
- イーロン・マスクをはじめとした実業家と、グレタ・トゥーンベリをはじめとした活動家たちが火花を散らしている
- ドナルド・トランプは群れから企業の財産を守る鉄砲玉にすぎない
- 令和人文主義が受け手とした「会社員」とネグリが依拠している「群れ(マルチチュード)」は、市民が凋落した後に出てきた点で表裏一体の存在である
- 日本の言論界では2000年代に入り、新自由主義とグローバル化で国家が機能不全に陥ってから、この「群れ」を基点とした抵抗運動を理論づける思想がよく語られるようになった(「ストリートの思想」と呼ばれる)
- しかし世界の中でも珍しく日本では非暴力直接行動が行われにくい
- この傾向を決定づけたのがSEALDsが主導した2015年の安保法制反対闘争で、そこで人々が「市民」として街頭に出て国会前で抗議運動を展開し、小熊英二や内田樹をはじめとしたリベラル派の思想家が言論界の覇権を握った
■ 7. 令和人文主義の歴史的意義
- 2010年代は市民運動の時代であった
- 令和人文主義が「市民」という法的主体ではなく「会社員」に向けて書いているなら、その動きは2010年代の「市民」主義者の覇権に抗して出てきたとみることもできる
- 令和人文主義と括られた人の本を実際に読めば、谷川嘉浩の『スマホ時代の哲学』にせよ、三宅香帆の『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』にせよ、いずれも基盤にあるのは他者への共感(感情の再活性化)を重視するリベラリズムである
- 共通するのは感情の重視である
- 三宅香帆と谷川嘉浩は「会社員」であることから逃れる契機を人文知(文学や哲学)の中に見出そうとする点で共通している
- スマホを介して私たちの注意力を奪う現代経済の構造(アテンションエコノミー)や、自己啓発本を介して「会社員」であり続けるよう強迫する思想潮流に対して、自分自身の内面や思考を守ろうとする
- 「会社員」(手足)であることを一時停止するキッカケを人文学に見出し、思考や内面を固守し、他者への共感を呼び覚ますことで、現況の支配的な経済とはズレて自分たちに変化を起こすことを肯定するのが、この二人に共通する思想である
- 踏み込んだ解釈をすれば、令和人文主義の思想はそのような他者への共感に基づいた「良い統治」を形作るものでもある
- 令和人文主義は理念的には教養主義の系譜にあるように思われる
- 定式化すれば、教養主義は「良い市民・良い国家・良い統治」を前提とし、令和人文主義は「良い会社員・良い企業・良い統治」を前提とする
- 谷川嘉浩の論考には「良い会社員になれ」なんて一言も記されていないし、「市民になれ」とも言われていない
- ただいま時代が「良い会社員・良い企業・良い統治」を目指す方向に流れている以上、そちらに抵抗しなければそちらに流されてしまう
- 令和人文主義はこの流れへの抵抗を欠いている
- それは「穏やかな専制」への加担ではないかと思われる
■ 8. 問題点①知識人の抹消
- 谷川嘉浩は令和人文主義の担い手は「ビジネスに役立つ」と銘打っているわけではないと述べている
- かといって読書を通して良い統治を目指そうと声高に訴えているわけでもなさそうである
- 「人生の中に小説や評論や人文知がある暮らしになるとうれしい」というスタンスを採り、「別に専門家養成や学問分野の成熟に直接繋げようと思っていない」としている
- 谷川嘉浩の記述には知識人という古めかしい言葉への言及がない
- 谷川嘉浩は読者が書き手に近づくことを「研究者」になることだと記述している
- しかしかつての大学生たちは研究者ではなく知識人になりたいと思ったのではないかと筆者は考える
- 本を読みつつ、発言し、行動するジャン=ポール・サルトルのような知識人になることを求めた
- 東浩紀くらいまでの人文学の担い手は読者に知識人になるように求めた
- その知識人へのこだわりが谷川嘉浩には見受けられない
- むしろ積極的にそのマチズモを消そうとしているように見受けられる
- 知識人の定義:
- 統治の言葉(統治の言語ゲーム)を習得した人物たちのことである
- 「こういうルールで世の中を動かせばうまくいくのだ」と語る存在である
- 統治の言葉の代表格は法律であり、それを学んだ法曹は知識人とみなされテレビに出る
- 哲学者や文学者はその法律による統治に異議を唱える形で存在感を示した
- かつての知識人の問題は政治と文学だった
- 統治(政治=法律)とそれに反抗する自我(文学)のバランスをどう取るかが大きな問題だった
- 現代はグローバル化と新自由主義を直接的な原因として、国家の統制力が弱まり、法学の地位は失墜した
- 哲学と文学もそれに伴い失墜する
- その代わりにIT企業を率いるエンジニアや、市場の論理に習熟したマーケターやコンサルタントが統治を担う
- プログラミング言語やマーケティング理論こそ、法律に代わる新たな統治の言葉である
- 弁護士や官僚だけではなく、エンジニアやマーケターやコンサルタントが統治者の中に入った
- いまやこのような「会社員」こそ「良い統治」を担う特権的な階級(知識人)である
- かつて市民派議員や市民派弁護士がいたように、令和人文主義が創り出そうとするのは市民派会社員なのではないかと筆者は考える
- 会社員は市民の代弁者ではなく企業のメンバー(手足)なのだから、いくら市民派であるとはいえ、最後には経営者の決定に従い、資本を活かして物事を強引に前に推し進める
- 市民からの声を「聴くな」と言われたらすべて黒塗りで返してくる
- もし良心を発揮して公開してきてもそれは恩情である
- 統治の問題が法や権利ではなく、力と恩情として解決される
- これは資本の装いをした「専制」である
- 極中道(エキストリーム・センター)と呼んでもいいかもしれない
- イーロン・マスクはSFが好きだそうだが、政治と文学の代わりにいまはITとSFの時代が到来したと言える
- 東浩紀が現代日本で唯一無二の知識人である理由は、ITとSFの問題を『サイバースペースはなぜそう呼ばれるか』や『一般意志2.0』で担ったからである
- 谷川嘉浩の文章を読む限り、令和人文主義では(統治を担う)「会社員」の「暮らし」を人文知で補完する役割を果たすそうである
- 令和人文主義はマーケターやコンサルタントにとっての「文学」(自我)を担おうとしているのかもしれない
- その専門知は「会社員」として仕事をする上で役にたつ
- 実際、筆者の周りでも人文知を修めた学生がコンサルタントやマーケターとしていい給料で就職していく
- 大学の中で人文学の肩身は狭くなっても、人文知は「売れる」のである
- 現代のキャリア組の「会社員」の多くが知識を用いる業務に従事している以上、その知識をまとめた上で新たな知識の生産を行う人文知の素質が求められる
- 令和人文主義はそれに「待った!」をかけない
- 谷川嘉浩が提唱する「令和人文主義」では法と権利が問題にならない
■ 9. 問題点②『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』の歴史観
- 谷川嘉浩はラジオで令和人文主義の典型的な作家として三宅香帆の名前を挙げている
- 三宅香帆は「いま批評は存在できるのか」というトークイベントで「ビジネスパーソンを観客として意識せねばならない」と語っていた
- 三宅香帆の歴史観は新自由主義に基づくものであり、教養主義の歴史を「会社員」向けに都合よく編纂したものだと筆者は考える
- 三宅香帆は新自由主義の問題点を指摘している:
- 新自由主義の思想が個人に競争を強いるあまり「自己決定・自己責任」の過剰な内面化をもたらし、社会問題に目をつぶらせてしまうと批判している
- しかし「教養主義」の近代主義的な側面(良い市民・良い国家・良い統治)を切り捨ててしまい、新自由主義思想を相対化できていない
- 新自由主義が過去を解釈する唯一の思想になってしまっている
- 結果として過去の読書家もまた市場の論理で動いていたという解釈が提示される
- 三宅香帆は人々が教養を身に着けることを「階級上昇の運動」と一言で表現している
- 三宅香帆の記述:「読書や教養とはつまり、学歴を手にしていない人々が階級を上がろうとする際に身につけるべきものを探す作業を名づけたものだったのかもしれない」
- 大学出のエリート層が労働者階級と差別化を図るための営みという側面が教養主義には間違いなくあった
- 教養を身に着けた方が労働市場に出て就職活動をした際にいい会社に就職しやすい
- 要するに労働力商品としての価値を高める側面が教養主義にはたしかにあった
- ただしこの解釈では多くの学生たちがマルクス主義や共産主義思想に魅了されたのか説明できない:
- 1930年代の言論界のスターは三木清や戸坂潤というマルクス主義者である(後に獄中死している)
- 学生たちは貧困地区に赴きセツルメント運動(社会改良運動)を担い、警察による激しい弾圧の中でもマルクス主義を勉強し続けた
- マルクス主義を学んだ「アカ」は就職先からも嫌がられた(阪急電鉄創業者の小林一三は大の「アカ」嫌いだった)
- 筆者の認識では当時の学生たちは「市民」の一員として「統治」を担おうとしていた
- その「統治」は民族差別的・性差別的であったが、彼らなりに「良い統治」を目指そうとした
- その結果、資本主義体制とは異なる「統治」のあり方であるマルクス主義に惹かれた
- もし「教養主義」が統治を担う市民であろうとする人々の間に広まっていた文学や哲学を指すならば、マルクス主義が教養のひとつであったことは何ら不思議ではない
- それは「統治」に関する新たな考え方そのものだったからである
- 三宅香帆の歴史観は人々の読書という営みを「階級上昇」と端的に結びつけている
- 読書を自分自身の商品価値を高めること(スキルアップすること)を目指すものだとしている
- 教養主義の営みを市場の論理に回収している
- 『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』は新自由主義批判を行いつつも、新自由主義の考え方を無意識のレベルで広める本である
- 三宅香帆は教養主義の歴史から市民的な側面をカットすることで、「会社員」たちに「誰も市民などではなかった」と甘言を弄している
■ 10. 問題点③キャリア組のための哲学
- 「教養主義から単なる人文知へ」という令和人文主義は、法学に連なっていた人文学を「知」へと還元することで、コンサルタントやマーケターを範とする「会社員」が利用しやすいように人文学を改変している
- 民俗学の例:
- 民俗学は私たちがふだん用いている言葉の由来や古来の用法などを紹介している点でそれ自体とても面白い「知」である
- しかし創始者である柳田國男は民俗学を日本に「民主主義」を根づかせるために創った
- 後続の批評家である大塚英志が民俗学を「公民の学」であると声高に言い続けなければならなかったのは、民俗学が「知」としてあまりに面白く役に立つために、それが「市民」(公民)を形成するために創られたことを誰もが忘れてしまうからである
- 筆者は読者に対して「市民」になるよう、押し付けがましく口酸っぱくいわなければならないと考える
- どんなに嫌がられようとも、その結果として人文学が見捨てられようとも、押し付けがましく口酸っぱく反復して言うべきだと考える
- そうしなければ現代の人文知は時代の趨勢に流されるままに「良い会社員・良い企業・良い統治」のためのツールになる
- コンサルタントの勅使河原真衣はまさに「良い会社員」「良い企業」をつくるために教育社会学の知見を活かしている
- それが悪いとはまったく思わないし、人文知を仕事に活かすのは素晴らしいことである
- ただその政治的な結果が市民の権利縮小につながるのではないかと懸念している
- 時代に流されるのがいけない
- それは「階級」の問題を隠蔽することになる
- 実際のところ「市民」とならずに「会社員」として社会の「統治」に参加できるのは、法人から統治能力を与えられた「手足」(メンバー)であるキャリア組(正社員)だけである
- ノンキャリア組(非正規社員)はその権限を持たない
- ノンキャリア組はいまだに「市民」という立場で「統治」に参加しうるだけである
- たとえ本人が主観的にはマーケターやコンサルタントのように社会を動かしたいと思っていても、実際に関与できるのは「市民」か「群れ(マルチチュード)」としてだけである
- 谷川嘉浩は「会社員」という一言を書きつけることで「会社員」(手足)の間に走る階級的な亀裂を隠蔽している
- もしノンキャリア組を眼中に収めるならば、人文学が「会社員」に向けて書かれ、その担い手が経営者やマーケターであることをこのように素直に肯定しないはずである
- ノンキャリア組はこの社会の統治に「市民」か「群れ(マルチチュード)」として以外に関わることができないからである
- 人文学者がもし強きにおもねらず、長い物には巻かれないという矜持を持つならば、「市民」あるいは「群れ(マルチチュード)」に向けて書くという一線を絶対に揺るがせてはならない
- 筆者は谷川嘉浩の言う「令和人文主義」を次のように表現したくなる:「正社員様の哲学」
- この表現には悪意を込めている
- しかし甘言を弄するだけではなく、読者を不快にさせることもまた人文学の任務である
- 谷川嘉浩は哲学者の鶴見俊輔について一冊の本を書き上げている
- ただ鶴見はフリーターの困難を語ったロスジェネ世代の論客・赤木智弘の登場を衝撃的に受け止めていた
- その鶴見なら「令和人文主義」をどう思うだろうか
- 何らかの形で自らの哲学を引き継ごうとする若い哲学者が「会社員」に向けて書くということを素直に肯定するに至っては、鶴見も天国で苦笑いを浮かべているのではないか
- 谷川嘉浩の言う「令和人文主義」は格差の隠蔽を前提としている
- そのようなマーケティング用のネーミングなど撤回したほうがよいのではないか
■ 11. 学生への訴え
- エンジニアがもたらすITの覇権とマーケターやコンサルタントがもたらした市場の論理の専制に対して、人文学は抵抗の牙城となっている
- いまや人文学はカウンターカルチャーに他ならない
- それには歴史的な経緯がある
- 令和人文主義はその歴史的な経緯に蓋をすることで、人文学から「カウンター」性を抜いてしまう
- いまは抗争の時代である
- ITエンジニア・マーケター・コンサルといった市場の論理と、弁護士・官僚・政治家といった市民の論理、そして群れ(マルチチュード)の論理が覇権をめぐって抗争し/協力し合っている段階である
- ここで最も劣勢なのは(この数世紀人文学が依拠していた)市民である
- 群れとならず、とはいえ市民となることも避けたいけど、人文知は生き残らせたいという現在の窮状に対する保身的な動きが「会社員」に依拠した「令和人文主義」なのではないか
- これは出てくるべくして出てきたものである
- 筆者の著作は主に市民、群れ、そして学生に向けられている
- それは読者に法を主体的に運用する「市民」や抗議運動を担う「活動家」にもなってほしいからである
- 人文学はマーケティング理論や経営理論やプログラミングではなく、法学に連なる学問であってほしいからである
- そうでなければ「市民」として平等に担保された権利(少なくともその建前)に基づいて論理を組み立てることができない
- 誰にでも向けられているというのは文体の問題だけではなく、拠って立つべき基盤の問題である
- 法や権利は誰もが拠って立つことができるという建前になっている
- 市場の論理はそうではない
- 「会社員」をターゲットにするとき、そこで扱われる人文知は誰もが利用可能なものなのかどうか怪しい
- 学生への具体的提言:
- もし人文学ではやっていけないなと思ったら、研究歴や業績をすべて投げ捨てて法律を勉強すべきである
- 法の支配を立て直すべきである
- マーケティング会社やコンサルティング企業は若さと人文知を高値で買い取るだろうが、安易に企業の側に入らずゼロから出発するべきである
- そのうちの何人かは法務につくことができる
- 王道の道:
- 令和人文主義にせよ法律の勉強にせよ、いずれも対症療法にすぎず邪道である
- 王道は人文学者として統治を担う企業との抗争関係にはいることである
- 企業に人文知を「売る」のではなく、企業の統治に対抗できるような新たな統治理論・新たな主権理論を模索すべきである
- 人文学が「解釈」によって統治に貢献する以上、ITや市場の論理による統治ではなく、法による統治の幅をどれだけ広げるかが重要である
- 誰もが「法によって統治されている」という感覚を持つこと(を目指すこと)ができれば、おのずと人文学の立場も向上すると筆者は考える
■ 1. 総合評価
- この文章は知的野心に富んだ批評的論考である
- 社会理論・政治哲学の枠組みを用いて「令和人文主義」を批判的に分析している
- 論理構造は比較的明確で、歴史的文脈の整理も丁寧である
- しかし概念定義の恣意性、二項対立の過度な単純化、実証性の欠如という重大な欠陥がある
- 著者自身の規範的立場が分析を歪めている箇所が散見される
■ 2. 肯定的評価
- 構造的明晰さ:
- 「市民」と「会社員」の概念的区別は明確である
- グローバル化→新自由主義→インターネットという歴史的流れの整理は分かりやすい
- 批判対象(令和人文主義)の特徴を具体的に列挙している
- 理論的射程の広さ:
- ヘーゲル、ネグリ、東浩紀など多様な思想家を参照している
- 「マルチチュード」概念の導入は示唆的である
- 教養主義の歴史的変遷への言及は有益である
- 問題意識の鋭さ:
- 「誰に向けて書くか」という問いは重要である
- 階級的視点の導入は一定の妥当性がある
- 人文学の政治性への自覚は評価できる
- 具体的事例の提示:
- 豊中市の公園管理の事例を挙げている
- 三宅香帆のテキストの具体的引用がある
- 鶴見俊輔と赤木智弘への言及がある
■ 3. 主要な論理的問題点①「市民」と「会社員」の二項対立の過度な単純化
- 著者は「市民」=法的主体、「会社員」=企業の手足という二項対立を設定するが、この区分は現実を過度に単純化している
- 重複するアイデンティティの無視:
- 人は同時に市民であり会社員でありうる
- 会社員も選挙権を行使し、裁判を起こし、政治活動に参加できる
- 「会社員として投票することは建前上避けるべき」は法的に無意味である(投票は個人の権利)
- 「履行補助者」の法的位置づけの誤解:
- 会社員も個人として法的責任を負う場面は多い(刑事責任、重過失など)
- 「法律上の責任を問われる可能性は非常に低い」は不正確である
- 市民概念の理想化:
- 著者が描く「市民」は理念型であり、実際の市民の多くは政治に無関心である
- 「良い市民・良い国家・良い統治」はそもそも実現したことがない
- より正確な理解では、市民と会社員は対立概念ではなく、同一人物の異なる社会的役割である
- この基本的理解を欠くことで議論全体が歪む
■ 4. 主要な論理的問題点②「令和人文主義」の定義の曖昧さと批判の的外れ
- 谷川嘉浩が提唱した「令和人文主義」という概念を批判しているが、その概念自体が曖昧であり、批判も的を射ていない可能性がある
- 概念の二次的解釈:
- 著者は谷川の記述を自らの枠組みで再解釈し、その解釈を批判している
- 藁人形論法の疑い:
- 谷川が本当に「会社員に向けて書く」ことを全面的に肯定しているのか、原文の確認が必要である
- 担い手の恣意的選定:
- 「令和人文主義」の担い手とされる人々が本当にそのように自己規定しているか不明である
- 問題のある推論:
- 「受け手が会社員」→「市民を軽視」→「統治への無関心」→「専制への加担」という論理の飛躍は著しい
■ 5. 主要な論理的問題点③三宅香帆への批判の不公平さ
- 三宅香帆の『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』への批判が一面的である
- 引用の恣意的選択:
- 「階級上昇の運動」という一節だけを取り上げて批判している
- 文脈の無視:
- 三宅の著作全体の論旨を踏まえているか疑問である
- 二律背反の設定:
- 「新自由主義批判をしつつ新自由主義を広める」という評価は矛盾を指摘しているようで、実際には単なる断定である
- 公平な評価のためには:
- 三宅の著作全体を通読した上での批判が必要である
- 三宅自身が自らの立場をどう規定しているかの確認が必要である
- 他の批評家の評価との比較が必要である
■ 6. 主要な論理的問題点④マルクス主義への過度な依存
- 著者の議論は暗黙のうちにマルクス主義的な階級観に依拠しているが、その妥当性を検証していない
- 階級二項対立の前提:
- キャリア組/ノンキャリア組という区分が社会の本質を捉えているか疑問である
- 現代社会の分断は正規/非正規だけでなく、世代、地域、教育水準など多次元である
- 「マルチチュード」概念の無批判な導入:
- ネグリの理論は多くの批判を受けている
- 「群れ」が本当に抵抗の主体となりうるか実証されていない
- 1930年代マルクス主義の美化:
- 戦前のマルクス主義者は多くが転向し、あるいは国家主義に合流した
- セツルメント運動の実態も複雑である
- 「市民として統治を担おうとした」という解釈は理想化である
■ 7. 主要な論理的問題点⑤その他
- 「知識人」概念の恣意的定義:
- 「知識人」を「統治の言葉を習得した人物」と定義しているが、これは標準的な定義ではない
- 独自定義による議論を展開している
- 循環論法が見られる(「知識人は統治に関わる」→「統治に関わらない人文主義は知識人を軽視」→「よって問題だ」)
- かつての知識人が本当に「統治」を担おうとしていたか、反証例は多い(芸術至上主義、純文学など)
- 「法の支配」への過度な信頼:
- 著者は「法による統治」を「市場の論理」より優れたものとして前提している
- 法の限界を無視している(法は常に支配的権力の道具にもなりうる、法律実証主義の問題、法的手続きの遅さ、コスト、アクセスの不平等)
- 「法 vs 市場」は単純化しすぎである(実際には法と市場は相互補完的、市場を規制するのも法、法を支えるのも経済基盤)
- 歴史的反証として、「法による統治」の時代も差別、抑圧、帝国主義は存在した
- 実証性の完全な欠如:
- 主張のほぼすべてが理論的演繹であり、実証的根拠がない
- 読者調査の不在(「令和人文主義」の読者が本当に「会社員」中心か、データなし)
- 社会変動の実証なし(「国家の没落」「企業による統治」はスローガンであり、指標がない)
- 比較の欠如(他国との比較、他時代との比較が不十分)
- 処方箋の現実性の欠如:
- 「法律を勉強せよ」「企業との抗争関係に入れ」という提言は現実的でない
- 法曹の現実を無視している(司法試験の難易度、弁護士過剰の問題、法曹が「市民派」である保証はない)
- 「抗争」の非現実性(「企業との抗争関係に入る」とは具体的に何をするのか、生活の糧をどう得るのか)
- 自己矛盾がある(著者自身はどのような立場で発言しているのか、「人文学者」として給料を得ているなら、それも「会社員」的立場では)
- レトリックの過剰:
- 「正社員様の哲学」「穏やかな専制」など、挑発的な表現が議論の質を下げている
- 感情的訴求への依存(論証ではなく修辞で説得しようとしている)
- 対話の拒否(「悪意を込めている」と明言することは建設的議論を阻害)
- 自己正当化(「不快にさせることも人文学の任務」は批判への予防線)
■ 8. 欠けている視点
- 「令和人文主義」への内在的理解:
- 批判対象の思想を内側から理解する努力が不足している
- なぜそのような思想が生まれたのか、その合理性や意義への共感的理解がない
- グローバルな視点:
- 日本の「令和人文主義」を国際的な知識人論、公共哲学の文脈に位置づける努力が不足している
- 類似の議論は欧米にもある
- 読者・実践者の視点:
- 「会社員」として働きながら人文知を学ぶ人々の実感、苦悩、希望への想像力が欠如している
- 上から目線の批判に終始している
- 人文学の多様性:
- 人文学を「法に連なる学問」に限定するのは恣意的である
- 芸術、文学、歴史学などは必ずしも「統治」と直結しない
- テクノロジーへの複眼的視点:
- ITを「統治の道具」としてのみ捉え、市民のエンパワーメント(情報公開、監視への抵抗)の可能性を無視している
- 世代間対話の視点:
- 「令和人文主義」を若い世代の挑戦として受け止め、対話する姿勢が不足している
- 上の世代からの一方的批判に終始している
■ 9. 構造上の問題
- 論文の長さと焦点:
- 11節にわたる長大な論考だが、焦点が散漫である
- 歴史的説明が長すぎ、核心的な批判が埋もれている
- 論証と主張の混在:
- 社会学的分析(〜である)と規範的主張(〜べきである)が混在し、区別が曖昧である
- 結論の弱さ:
- 「法律を勉強せよ」「企業と抗争せよ」という結論は、長い議論の帰結としては貧弱である
■ 10. 改善提案
- 概念の精緻化が必要である:
- 「市民」「会社員」の関係をより精緻に分析する
- 両者が対立ではなく重複する現実を認める
- 「知識人」の定義を標準的な用法に近づける
- 実証的裏付けが必要である:
- 人文書の読者調査を行う
- 「市民」としての政治参加のデータを示す
- 新自由主義の影響の計量的分析を行う
- 内在的批判が必要である:
- 「令和人文主義」の意義を認めた上での批判を行う
- 谷川、三宅らの著作の丁寧な読解を行う
- 対話的姿勢を持つ
- 現実的処方箋が必要である:
- 「法律を勉強せよ」以外の選択肢を示す
- 人文学者が現実に何をできるかを示す
- 成功事例の提示を行う
- 自己反省が必要である:
- 著者自身の立場(大学教員?)の明示を行う
- 自らも批判の対象となりうることの自覚を持つ
- 「マルチチュード」に依拠する根拠を示す
■ 11. 結論
- この文章は知的刺激に富む批評的論考である
- 「誰に向けて書くか」という問いや、人文学の政治性への意識は重要である
- 歴史的文脈の整理も参考になる
- しかし致命的な欠陥がある:
- 「市民」vs「会社員」の二項対立は現実を歪める
- 批判対象への内在的理解が不足している
- 実証性がほぼゼロである
- 処方箋が非現実的である
- マルクス主義的前提の無批判な導入がある
- レトリックへの過度な依存がある
- 格付け: 論理的説得力 ★★★☆☆(5点満点中3点)
- 問題意識と理論的枠組みは評価できるが、論証の粗さ、実証性の欠如、二項対立の過度な単純化により、説得力は中程度にとどまる
- 最大の弱点:
- 著者は「市民」と「会社員」を対立させ、後者に向けて書くことを批判するが、現実には両者は同一人物の異なる側面である
- この基本的な理解の欠如が議論全体を空転させている
- 「令和人文主義」批判の名のもとに、実際には著者自身のマルクス主義的・市民主義的規範を押し付けている
- 批判というより、異なる政治的立場からの対抗宣言である
- それ自体は正当だが、客観的分析を装うべきではない
【パリ時事】フランスのマクロン大統領は27日、若者を対象に新たな志願制の兵役を来年夏に導入すると表明した。
徴兵制は東西冷戦終結で2001年に停止しており、ウクライナ侵攻を続けるロシアの脅威に対抗するには、効果的な兵員確保策が必要と判断した。
ドイツも志願制の兵役を来年導入する方向だ。欧州連合(EU)加盟の27カ国中、地理的にロシアに近い北欧やバルト3国など9カ国には兵役義務がある。ほかにも東欧クロアチアが徴兵制の復活を決めた。
佐賀県警で不正なDNA型鑑定が繰り返されていた問題をめぐり、警察庁はきょう、先月8日から実施している「特別監察」の中間報告を公表しました。
この問題は、佐賀県警の科学捜査研究所の元男性職員が、およそ7年半にわたりDNA型鑑定の結果をねつ造していたなどとして書類送検され、懲戒免職となったものです。
この問題を受け、警察庁は先月8日から警察の信頼を揺るがす重大な不祥事があった場合に実施される「特別監察」を佐賀県警に対して実施していて、その中間報告をきょう公表しました。
今回の特別監察では、元男性職員が1人で担当したすべての鑑定に関して、警察庁の科学警察研究所の職員などおよそ30人の態勢で▼「捜査・公判への影響の有無」▼「鑑定の実施状況」の確認を行っているということです。
「鑑定の実施状況」については、DNA型鑑定を専門とする大学教授らの意見も踏まえて確認を進め、業務上の問題点や原因を分析したうえで、今後、再発防止策を検討するとしています。警察庁は、佐賀県警が不適切と判断したDNA型鑑定130件から確認を始めたうえで、問題ないとされているほかの513件についても精査するということです。
警察庁によりますと、130件のうち「犯罪の捜査目的」での鑑定は101件、遺体や行方不明者の身元確認など「犯罪の捜査目的外」の鑑定は29件でした。
「犯罪の捜査目的」の鑑定によって▼容疑者でない人を捜査対象にした、▼拘束すべきでない人を拘束した、▼犯人でない人を容疑者として検察庁に送検したというケースは確認されず、捜査への影響はなかったとしています。ただし、このうち捜査中の事件の鑑定25件と、時効が成立した事件の鑑定9件については、容疑者を見逃して捜査への支障が生じていないか引き続き検証するということです。
また、事件の証拠として、殺人未遂や不同意性交などで16件の鑑定結果を検察庁に提出したと佐賀県警は発表していましたが、保管されていた書類を確認した結果、ほかにも9件あり、あわせて25件だったことが新たにわかりました。
検察庁に提出した鑑定結果、25件のうち18件は公判で使用されていなかったため影響はなかったということですが、残り7件については現在、確認中だということです。
特別監察の結果の取りまとめは、少なくともあと数か月はかかる見通しです。
街にはソシャゲの広告が溢れ、電車ではアニメCMが流れる。
オタク差別してた人間はさぞ憎々しい思いをしてるだろう。
彼ら彼女らは、一体どこへ行ったのだろうか?
「こんな気持ち悪いアニメ観てるのかよ」とオタクをバカにしてた人達は、
その気持ち悪いもので溢れている今の世の中のどこで生きても辛い筈だ。
山の中とかで暮らしてるのかな。
■ 1. 左派の苦境:不平等とインフレへの関心の非対称性
- 不平等への注目:
- トップ1%とそれ以外の人々の間の格差の拡大に関して多くの記事が書かれてきた
- 人々の間に格差が生じていることを突き止めた論文が多数刊行されてきた
- グローバル不平等や所得不平等のトレンドを非難した学術書が多数出版されてきた
- インフレへの無関心:
- 価格高騰の原因を糾弾するカンファレンスはほとんど開かれていない
- インフレが一般市民の生活に与える影響を論じた学術書はほとんど出されていない
- 不換紙幣から兌換紙幣への転換を求めるパンフレットもほとんど書かれていない
- 左派知識人の傾向:
- 進歩派の知識人の多くは不平等を強く懸念する一方、インフレに関してはほとんど気にかけない
■ 2. バイデン政権の不運
- 不平等への怒りの焚きつけ:
- 2011年のオキュパイ運動以来、富の不平等への怒りを焚きつけようとする試みが繰り広げられてきた
- こうした怒りのいくばくかは民主党の支持へと繋がると期待されていた
- しかし選挙の面ではほとんど全く成果を生まなかった
- インフレの発生:
- アメリカ人は経済問題ではなく文化の問題にばかり目を向けるよう仕向けられていると言われていた
- バイデン政権末期に全世界が深刻なインフレに見舞われた
- アメリカ人は経済問題に関して激しい怒りに燃え上がった
- 怒りの行き先:
- この怒りは共和党への支持へと向かった
- 共和党はその見返りに富裕層向けの巨額の減税を可決した
- 左派の困惑:
- アメリカ人はなぜ自分たちの経済状況にあれほど怒りながら、その苦境の実際の原因との明白な繋がりを見逃してしまうのか
- なぜ移民に怒りを向けながら大富豪には怒りを向けないのか
- この怒りを利用して左派への支持を増やす方法がきっと何かあるはずだという疑問
■ 3. ゾーラン・マムダニのニューヨーク市長選での当選
- 従来の民主社会主義者:
- バーニー・サンダースやアレクサンドリア・オカシオ=コルテスのような民主社会主義者の大物政治家たちはポピュリストと呼ばれることがある
- 彼らが最近敢行した「大富豪と闘う」というキャンペーンは大きなムーブメントにならなかった
- トランプへの支持を弱めることもできなかった
- マムダニの成功:
- 有権者に響くようなポピュリスト的メッセージとプラットフォームを作り上げた
- 最初の調査では支持率1%に満たなかったところから一般選挙で50%以上の票を獲得して勝利した
- どうすればこの奇跡を再現できるのか多くの人が知りたがっている
■ 4. ポピュリズムの正確な理解
- ポピュリズムの本質:
- ポピュリズムは経済的エリートへの反逆ではなく認知的エリートへの反逆である
- ポピュリズムの中核はインテリやその取り巻きが支持する突飛な空論を捨て常識を肯定することにある
- 常識は合理的な推論ではなく直感の産物である
- 認知システムとの関係:
- ポピュリズムを理解する手っ取り早い方法はそれをシステム2の認知に対してシステム1の認知を特権化する政治戦略と見なすこと
- 直感(システム1)は世界との相互作用を通じて引き出されるため非常に具体的な一次表象に焦点を当てる
- 分析的システム(システム2)はデカップリングされた表象を操作でき、抽象的・仮説的・反事実的な状態に関する推論を可能にする
- デカップリングのコスト:
- 進化はデカップリングのコストを高くつくものにした
- 現実世界から長い間遊離してしまうのを避けることが非常に重要であった
- 世界の一次表象の取り扱いは常に特別な顕著さを持つ
■ 5. ポピュリストの訴えとテクノクラートの訴えの違い
- 見分けるための目印:
- ポピュリストのメッセージが一次表象に縛られている
- 具体例(食料品価格):
- 「生活費」は一次表象ではなく抽象概念
- 食料品価格は一次表象である
- スーパーの棚を見るなり、最後に買ったオレンジジュースやパンの価格を思い出すなりすれば「食料品価格」はすぐイメージすることができる
- トランプの戦略:
- トランプが多くの時間をかけて食料品について語っていた(「食料品、なんてシンプルな言葉だろう」)
- アメリカのバラモン左翼が嘲笑してきた点でもある
- しかしそうやって嘲笑することで左派はある種高次の愚かさを露呈している
- 一次表象は抽象概念と違い特別な顕著さを持つ
■ 6. マムダニの市営食料品店公約
- マムダニの洞察:
- トランプの発言から明白な結論を引き出した数少ない人物の1人
- トランプが食料品について語るのを鼻持ちならない高慢さで嘲笑する代わりに、左派も食料品について語るべきだと考えた
- 選挙公約:
- 主要公約の1つは公有の市営食料品店を設立して食料品価格を下げるというもの
- 現実との乖離:
- 食料品店が不当な利得を得ているために食料品価格が高騰しているわけではない
- ニューヨークの食料品店の利益率は非常に低く、主要なコストはサプライチェーンのもっと上流で生じている
- マムダニも恐らくは理解しているだろう
- サプライチェーンの問題:
- 「サプライチェーン」というのが完全に抽象的な概念
- ほとんどの人にとって「サプライチェーン」なるものは存在しないも同然
- 食料品価格を低下させるきちんとした政策を立てたいなら農業補助金・輸送コスト・小売業の間接費などについて考えるのが筋
- しかしそんなことを語っても一般市民を沸き立たせることはできない
- 怒りの向け先:
- 生活費の高騰に怒っている人々はサプライチェーンの連鎖の最後にあたり最終消費者へと商品を直接販売する小売店(食料品店)に怒りを向ける
■ 7. ユナイテッドヘルスケアCEO射殺事件との類比
- 事件の概要:
- ニューヨークの路上で生じたユナイテッドヘルスケアCEOの射殺事件
- ポピュリスト的な盛り上がりを生み出した
- 殺害容疑をかけられたルイジ・マンジョーネは英雄視された
- 経済オタクの指摘:
- 健康保険会社の利益率はかなり低い
- アメリカの医療システムのコスト高騰は保険会社の責任ではない
- 分析の限界:
- このような分析は一連の抽象概念(例えば「モラルハザード」)に依存しており直感では理解不可能
- 食料品店と同様、保険会社も医療のサプライチェーンにおいて最終消費者と相対する最後の部分
- 保険というのはそれ自体難解な商品であり理解できている人はほとんどいない
- ほとんどのアメリカ人は保険会社はいかなる価値も生み出しておらず請求を拒否することで収益を得ていると考えている
- 怒りの向け先:
- 医療費高騰に怒っている人々(現在医療費債務を負っているアメリカ人の3分の1が含まれる)にとって、医療保険会社というのは責めるべき相手として自然
■ 8. サンダース/オカシオ=コルテス式キャンペーンの問題点
- 不平等批判の問題:
- 不平等もまた抽象概念
- 不平等それ自体を気にかけるのはインテリだけ
- 一般市民は所得不平等や富の分布に関して何も知らないということを示す研究はたくさん存在する
- 人々が不平等を大して気にかけていないからである
- 人々が気にかけること:
- 何よりもまず自身の経済状況
- 他人の経済状況にいらだつ場合でもその態度は特定の準拠集団との比較に基づいている
- 人々が自分と比較するのは隣人・高校の同級生・兄弟姉妹など自分と似たような状況にあると考えられる個人または集団
- これが一次表象を形成する
- 大富豪批判の問題:
- ジェフ・ベゾスのヨットやイーロン・マスクの実効税率の低さを非難することが政治戦略として問題なのは、こうした大富豪がほとんどのアメリカ人にとって完全に比較対象の外にあるということ
- 大富豪の経済状況は一般市民が自身の経済状況と比較できるようなものではない
- 人々にこうした抽象的な事柄について考えさせ怒りや強い感情を湧き起こさせるというのは非常に難しい
■ 9. 左派のジレンマ
- ポピュリズムの効果的利用の条件:
- 一般市民が気にかけている問題に焦点を当てるだけでなく、一般市民による問題のフレーミングの仕方も多かれ少なかれ受け入れなければならない
- ジレンマの発生:
- 一般市民による問題のフレーミングは複雑な現代社会において大抵の場合間違っている
- 結果、左翼政治家が真正のポピュリストになれるような問題を見つけるのは非常に難しい
- 集合行為問題:
- 気候変動であれ公共交通機関であれ医療費高騰であれ、左派が解決したいと考える問題の多くは集合行為問題
- 集合行為問題は極めて反直感的
- 黒板を使いながら1時間説明しても学生たちはそれを誤解してしまう
- 釣り商法の問題:
- 選挙キャンペーンで食料品店に焦点を当てるとしても、真に食料品価格を低下させたいならサプライチェーンのもっと上流に目を向ける必要がある
- 結果的にこのような選挙キャンペーンはちょっとした釣り商法となってしまう
■ 10. ベネズエラのチャベスの教訓
- チャベスの問題点:
- チャベスの問題は彼が真のポピュリストであったこと
- 単にバカのふりをしていただけでなくインテリの奉じる突飛な空論を本当に拒否していた
- インフレへの対応:
- ベネズエラ経済のインフレ(特に食料品価格の高騰)に対するチャベスの対応は生活必需品に価格規制を敷くというもの
- チャベスはそのプロセスで基本的に経済の全セクターを違法にした
- 具体的には損失を出さずに食料品を販売することを不可能にした
- 結果:
- 人々は市場から財を引き上げた
- 多くの農家は自家農業に切り替えて商業作物の栽培をやめた
- 何百万のベネズエラ人が飢餓の寸前まで押しやられた
- 経済は完全に崩壊した
- 人口の約25%が国を離れた
- 近代でも最悪の経済的破滅の1つを自ら招いた
- 本質的な問題:
- 問題はチャベスが社会主義者だったことではなくポピュリストだったこと
- 世界を理解する上で一次表象しか用いないならばインフレは商品価格の全般的な上昇のように見える
- 難解な推論を辿っていけばインフレが実際には貨幣価値の下落に過ぎないということが分かる
- 抽象的な推論を辿れる人々はインフレに対する正しい政策対応が貨幣価値の下落を止めるための金融政策(金利を上げたり貨幣供給を絞ったりすること)であると理解できる
- これはポピュリストによるインフレへの対応とは正反対
- 世界のどこを見てもポピュリストがやりたがることは金利を下げること
- チャベスの政策は物事を具体的に考えようとする人が惹きつけられがちなもの
- 財の価格を上げた人に対してそれをやめるよう命令した
- 命令への対応の仕方が気に食わなければ軍を送って商品を没収した
■ 11. 「警察予算を打ち切れ」運動の問題
- 運動の実態:
- 2020年の「警察予算を打ち切れ」の熱狂
- このスローガンはポピュリズム的な盛り上がりを生み出した
- しかしそれが何を意味し何を含意しているのかについてはなんの合意にも辿り着かなかった
- インテリの混乱:
- インテリたちが同意できていたのはこのスローガンが通常の英語の意味で用いられていないということだけだったように思える
- アレックス・ヴィターレの『取り締まりの終焉』を買って読んだ人はタイトルが言葉遊びでありヴィターレが取り締まりの終焉を求めているわけではないことに気づいて失望したと思われる
- この本は取り締まりの是非ではなく目的を論じるものだった
- 釣り商法の不可避性:
- この種の釣り商法は左翼ポピュリズムにとって避けられないもの
- 多くの人がこのようなキャンペーンに気乗りしていないのも恐らくそのため
■ 12. マムダニへの期待と課題
- マムダニの評価:
- 明らかにたぐい稀なる有能な選挙戦術家
- トランプの感覚を理解できる人物であるようにすら見える
- 課題:
- 彼を当選へと至らせたポピュリスト的な炎を消してしまうことなくニューヨーク市民の生活を向上させるために真に必要なテクノクラシー的政策を実行できるかどうか
■ 1. 前提:ハニトラリスト公開説への懐疑
- 大前提:
- ハニトラリスト公開の話はただの妄想である
- 青識が石川優美に行って裁判で負けた「相手の言っていないことを言ったことにする」手法と同様のものである
■ 2. 政治家の思想転換とハニトラ説
- よく見かける論調:
- 中国は日本の政治家にハニトラを仕掛けており、それが奏功しているケースもあるという主張
- 橋下徹は若い時は反中目的だったのに最近は媚中するようになった
- これはきっとハニトラにかかったに違いないという論調
- 反論:
- 橋下氏の思想が180度変わったように見えるとしても、それがハニトラかは分からない
- 支持層としては信仰対象の不祥事は罠であって本人は悪くないということにしたい心理もある
- 金に靡いただけかもしれない
- 何らかの犯罪をバレずに犯していてそれをネタに脅迫されているのかもしれない
- 原因がハニトラとは限らない
- 他の事例:
- 小林よしのりも言っていることが20年前くらいと今で180度逆になっているように感じる
- これも原因は何か分からない
- 単純に本人の思想が変わっただけかもしれない
- 20年かけて思想が変わらない方がレアケース
■ 3. 仮にハニトラリストが出るとしたらという仮説
- リストに載る人物:
- スパイとされるが大した働きがなかった者がリストに載っているだろう
- スパイを仕込むなら信頼を得てからここぞという時に刺すのが常道
- ハニトラにかかった人間の行動:
- ハニトラを食らってしまったことに気づいて良心の呵責に耐えられない者は自死したり命を絶ったりしたことだろう
- 脅迫者は骨までしゃぶりたいのであって暴露したいわけではない
- ハニトラにかかった人間の本質:
- ハニトラを食らってもスパイ活動をさせ続ければ、そいつが良心の呵責に耐えられなくなるか周りにバレてスパイとしての価値がなくなる
- ハニトラにかかった人間とは時限爆弾である
- ここぞという時に爆発させる人間である
- バレないようにスパイとして働くのがハニトラにかかった人間
■ 4. 山田太郎・玉木のスキャンダルに関する仮説
- 共通点:
- 大事な職についた途端、ハニトラかは分からないが不倫のスキャンダルが出た
- 仮説:
- スパイ処理班が動いたのではないか
- 山田太郎の場合:
- 中華のハニトラをかけられていたと仮説すると、子供家庭庁を作ったり国賊的と言えることをやっているように見える
- 中華のハニトラの根を見つけた人に爆弾処理として爆破されたのが例の不倫報道に見える
- オタクに媚びているがやっていることは共産系の表現の自由を守るだけというのもハニトラされたスパイっぽく見える
- ハニトラを仕込む対象:
- 与党・自民党の保守がターゲットになるだろう
- せっかくハニトラを仕込めた有望株を共産党や立憲に移したりはしないだろう
- せいぜい国民民主がハニトラスパイを仕込む対象になるギリギリではないか
- ハニトラの特性:
- ハニトラはバレた時点で終わり
- 脅迫するならハニトラの事実は伏せた状態で操らないといけない
- ハニトラに見えるスキャンダル暴露は爆弾処理班が処理したのではないか
■ 5. ハニトラリスト公開の目的に関する推測
- 公開があるとしたら:
- バレそうになったと気づいた外国の最後の悪あがき
- この国が混乱するかもというだけの目的
- ガチでハニトラにかかっている証拠を添えて、口先だけだった保守政治家とか味方だと思っていた者のセックス写真とかが出てくると思う
■ 6. ハニトラリスト公開説への違和感
- 気になる点:
- ハニトラリスト公開ネタはどう探してもソースがない
- にもかかわらずフィフィとか胡散臭いアルファアカウントが食いついている
- 何か胡散臭い
- 感じる意図:
- 台湾侵攻を本気で起こそうとしている
- 平和ボケみたいな胡散臭さを感じる
- 想定されるシナリオ:
- 証拠付きで保守系の政治家でまだバレていない者をハニトラ公開する
- 「ほら中国がやっていた」と煽る
- しかし中国がやっていた証拠は添えられていない
- 反中感情を煽り立てそれをアルファアカウントに操作誘導させる
- 日本での暴動そして日本攻撃に持っていく
■ 7. 日本の状況に対する見解
- 楽観的見方:
- 日本人はいい意味でひねくれている
- 戦う牙を抜かれているから大丈夫そう
- 戦後の扇動のようなものはもう起こせない
- 懸念:
- やろうとしているのは日本赤軍とか全共闘的なものではないか
- そのような風に感じる
■ 1. ヒトラー独裁の本質
- 民主主義からの独裁:
- ヒトラーは最初から独裁者として登場したわけではない
- 合法的に選挙で選ばれて民衆の支持の元で権力を握った
- 民主主義の仕組みの中から独裁が生まれた
- 民主主義のルールに則っていた
- 逆説的な可能性:
- 当時のドイツの人々であればヒトラーの独裁を止められた可能性がある
- 民主主義のルールで追放することもできた
■ 2. 第一次世界大戦後のドイツの社会背景
- 戦争の疲弊:
- 1914年から1918年までの約4年間続いた第一次世界大戦
- ドイツは多くの兵士を失い国民の生活は疲弊していた
- 敗戦という事実が国全体を打ちのめした
- ベルサイユ条約(1919年):
- ドイツにとって屈辱の象徴
- 広大な領土を奪われた
- 海外の植民地も全て失った
- 軍隊の規模も厳しく制限された
- 戦争による損害の賠償金として巨額の支払いを命じられた
- 賠償金の規模:
- 当初の取り決めでは1320億ゴールドマルク
- 当時の金換算で約330億米ドル
- 現在の価値にすると数十兆円規模に相当
- 当時のドイツ政府歳出が約20億マルク前後だったため、60倍を超える天文学的な負担
- 社会の混乱:
- 国民の税金では賄いきれなかった
- 物価の高騰や通貨の暴落を引き起こす要因となった
- 町に失業者が溢れ食料も不足していた
- 多くの人が怒りと不満を募らせていた
- 背後からの一突きという考え:
- 前線で戦った兵士たちは帰国すると敗戦の責任を押し付けられた
- ドイツ軍は前線では負けていなかったが裏切り者たちが国を負けさせたという考え
- この裏切られたという感情が多くの人々の心に深く残っていた
■ 3. ハイパーインフレーションの発生
- インフレの原因:
- 1920年代に入るとさらに苦しい時代が到来
- ドイツ政府は賠償金を払うために大量のお金を印刷した
- 恐ろしいほどのインフレーションが発生
- インフレの規模:
- 1918年はライ麦パン一斤が約0.6マルク(戦前とほぼ同じ水準)
- 1922年の初めには約3マルク(5倍近くに上昇)
- 1923年11月の終わりには約2億マルクから数千億マルクに
- パン1個の値段が朝と夕方で全く違うレベル
- リヤカーに札束を積んでパンを買いに行くこともあった
- 社会への影響:
- 国は自分たちを守れないという絶望が広がった
- 犯罪も増え政治への不信感が高まった
- 民主主義に対する信頼も揺らぎ始めた
■ 4. ナチスの台頭
- ナチスの登場:
- 正式名称は国家社会主義ドイツ労働者党
- 混乱の中で登場した
- 演説で「ドイツは裏切られた。誇りを取り戻そう」「腐った政治家を追い出せ。真のドイツ人のための政府を作ろう」と熱弁
- 群衆の怒りや不満を利用して人々の心を掴んでいった
- 初期の状況:
- ナチスはすぐに大きな力を持ったわけではない
- 最初のうちは過激な集団として警戒されていた
- 1929年の世界恐慌:
- アメリカの株価暴落が世界中に広がった
- ドイツ経済は再び崩壊
- 失業者は600万人を超えた
- 家を失う人々が続出
- ヒトラーの訴え:
- 「ベルサイユ条約を破棄しよう。ドイツを再び偉大にしよう」と力強く語りかけた
- 人々の耳に残るスローガンは国中に広がった
- 救世主に見えるようになった
- 台頭の結果:
- 人々の怒りと不安、そして希望の混ざり合った感情が原動力になった
- ヒトラーとナチスを押し上げていった
- 第一次世界大戦の敗北から生まれた屈辱と混乱がヒトラーの独裁への道を開く大きなきっかけとなった
■ 5. ワイマール憲法の弱点
- ワイマール憲法の特徴:
- 第一次世界大戦後、ドイツで作られた新しい法律
- 国民の自由や人権、男女平等、表現の自由などが保障されていた
- 当時としてはかなり進んだ憲法
- 理想の民主主義国家を目指すものだった
- 大統領緊急令という弱点:
- 国に問題が起きて議会が混乱した時に大統領が議会を通さずに法律を出せる仕組み
- 元々非常事態に備えるための安全装置だった
- 次第にこの制度が乱用されるようになった
- 議会の力が弱まり民主主義が機能しなくなっていった
- 議会の分裂:
- 様々な政党が乱立して意見の対立が止まらなかった
- 常に20党前後の政党が存在していた
- 1920年代の半ばには登録政党が30党以上
- 国会に議席を持っていたのが10から15党前後
- どの政党も国の再建を主張していたが考え方が全く違って協力できなかった
- 右派政治家の判断:
- 革命を恐れた右派の政治家たちの間で共産主義に対抗できる勢力としてナチスが注目されるようになった
■ 6. ヒトラーの首相就任
- 選挙の結果:
- 1930年代に入ると経済状況はさらに悪化
- 国民の怒りは限界に達していた
- 1932年の選挙ではナチスが議会で第一党になった
- この時点では議席が過半数に達していなかったためヒトラーはまだ首相になれていなかった
- 首相就任(1933年):
- 当時の大統領ヒンデンブルクの側近だった右派の政治家たちはヒトラーを首相にすれば国民の人気を利用できると考えた
- 自分たちなら彼をうまくコントロールできる、危なくなったらすぐにやめさせればいいとかなり軽く考えていた
- 1933年1月に大統領から命じられヒトラーが首相となった
■ 7. 独裁体制の確立
- 国会議事堂放火事件(1933年2月27日):
- ヒトラーは放火を共産党員の仕業と断定
- 共産党を非合法化し活動を禁止した
- 国民を守るためとして言論の自由や集会の自由を停止させた
- 全権委任法の成立:
- ヒトラーが議会の承認なしに法律を作れるという法律
- これで彼が独裁する権利が合法的に認められてしまった
- 民主的に選ばれたリーダーが民主主義を壊していくという状況が生まれた
- 全権委任法可決の手口:
- ワイマール憲法で法律改正案を通すには議員の2/3以上が出席した上で出席議員の2/3以上の賛成が必要だった
- 国会議事堂放火の件で共産党議員81人全員を逮捕または逃亡に追い込み欠席扱いにした
- 逮捕・逃亡中の共産党議員は議席を喪失したと強引に扱い、定足数を引き下げた
- カトリック系の中央党に教会の権利は守るという約束のもとで賛成票を入れるように取引
- 社会民主党議員を親衛隊と突撃隊で取り囲んで反対票を入れれば命の保証はないと脅した
- 社会民主党議員は最後まで抵抗を続け94人が反対票を投じた
- 最終的に賛成441票、反対は社会民主党の94票のみで可決
■ 8. 情報の支配とプロパガンダ
- ゲッベルスの役割:
- 宣伝担当大臣のヨーゼフ・ゲッベルスが情報支配を担当
- 新聞、ラジオ、映画、ポスターなどあらゆる手段を使って国民の意識をコントロール
- 映画の活用:
- 映画監督レニ・リーフェンシュタールが制作した「意志の勝利」
- 巨大な集会で整然と行進する兵士や群衆に迎えられるヒトラーが映し出された
- 神話の英雄のような雰囲気を作り出した
- 国民に「この人ならドイツを導ける」と思わせる効果を生み出した
- 経済政策と社会事業:
- ナチス政権は経済政策と社会事業を巧みに利用
- 道路建設や軍事産業を拡大し失業を減らしていった
- 多くの人々が再び仕事を得て生活が安定したように見えた
- ヒトラーのおかげで暮らしが良くなったと感じさせた
- その成功体験が彼の信頼をさらに深めることになった
- 少数派への迫害:
- ユダヤ人、共産主義者、障害を持つ人々など少数派が犠牲になっていた
- 国家の敵として非難され社会から排除されていった
- 共通の敵を作り出した
- 社会の空気:
- ヒトラーに黙って従うのが安全という空気が社会全体に広がった
- 異なる意見を言えば危険という状況
- 多少の嘘や誇張があっても多くの人は特に疑うこともなくなった
■ 9. ゲシュタポによる恐怖支配
- ゲシュタポの設立:
- ナチス政権が作った秘密警察
- ヒトラーが首相になってから約3ヶ月後に作られた
- 初期の役割は主に共産党員の取り締まりと政府への反対運動の摘発
- 役割の拡大:
- 1934年にナチス内部で起きた権力争いを経て全国規模の組織になった
- 市民の通報や密告の収集、反ナチスとされた人々の尋問・拘束、ユダヤ人の監視や逮捕など恐怖の維持に変わっていった
- 密告システム:
- ゲシュタポはドイツの至るところに潜んでいるとされていた
- 実際には国民の密告によって多くの情報を得ていた
- 確証もないような些細な告げ口が命取りになることもあった
- 誰もが他人の前では政治の話を避けるようになっていった
- 沈黙の効果:
- 本当はおかしいと思ってもそれを言葉に出せない
- この沈黙が独裁を支える壁のようになっていた
- 社会全体が服従することが正しいと思い込むようになっていった
■ 10. 白バラ運動の抵抗
- 白バラ運動の概要:
- ミュンヘン大学の学生グループ
- 戦争や独裁に反対するビラを撒いた
- 「人間には考える自由がある。もう盲目に従ってはいけない」と訴えた
- メンバーと活動:
- 当初ミュンヘン大学の学生仲間6人ほどの少数
- ビラを印刷して夜中に配っていた
- 電話や郵便を使う時も偽名を使ったり一度中間地を経由してから送るなど非常に用心深かった
- 当初は学生のいたずらと見て政府も本格的な捜査対象にはしていなかった
- 逮捕と処刑:
- 配布地域が拡大しミュンヘン以外にもビラが出回るようになって当局が動き始めた
- 1943年2月18日にゾフィー・ショルと兄のハンス・ショルがミュンヘン大学の校舎内でビラを配布しているところを守衛に目撃され通報された
- その場で逮捕されわずか4日間の取り調べの後、2月22日に国家反逆罪で即日処刑
- 他のメンバーたちもその数ヶ月から半年後に処刑されたり、投獄された後強制労働に送られた
- 社会の反応:
- 当時彼らの声を聞いて賛同した人は極僅かだった
- 徹底的に監視された社会の中で人々は自分の生活を守ることで精一杯だった
- 誰かを助けようとすれば自分や家族が危険にさらされた
- 多くの人が見て見ぬふりをした
■ 11. 独裁を止められたチャンス
- 選挙段階でのチャンス:
- ナチスが急速に勢力を伸ばしていた1930年代始め、多くの政治家は一時的な流行だと考えていた
- すぐに人気は落ちるだろうと本気で止めようとはしなかった
- 左翼政党の分裂:
- 本来なら力を合わせてナチスに対抗できたはずの左翼政党たちが互いに敵視し合った
- 協力するどころか足を引っ張り合ってしまった
- 右派政治家の判断:
- 右派の政治家にとって一番の脅威は貧しい人々が蜂起して革命を起こすこと
- ヒトラーは過激だが左翼よりはマシというだけで独裁を許す要因になった
- 首相就任時の楽観:
- 1933年にヒトラーが首相に任命された時も多くの政治家は「どうせ彼には経験がない。すぐ失敗するだろう」と笑っていた
- しかしヒトラーは権力を握るとすぐに法律を変え反対派を排除するための仕組みを整えていった
- 気づいた時にはもう彼を止める手段は残されていなかった
- 7月20日事件(1944年):
- 戦争が長引くにつれてこのままでは国が滅びると考える人々が軍部や政府内部にも現れた
- シュタウフェンベルク大佐を中心とする将校たちが計画
- 現在のポーランドにあたる東プロイセンの総統大本営に仕掛けた爆弾でヒトラーを暗殺しようとした
- ヒトラーを排除して戦争を終わらせようと考えた
- しかし計画は失敗しヒトラーは生き延びた
- 関係者は次々と逮捕された
- この事件をきっかけに多くの国民はヒトラーに逆らえば国を敵に回すと思い込むようになった
- 独裁完成の要因:
- ヒトラーを止めるチャンスはなかったわけではない
- 恐怖や分裂そして無関心の中でそのチャンスが見過ごされてしまった
- 多くの人が「自分には関係ない」と沈黙したことが独裁を完成させた最大の要因
■ 12. 現代社会への教訓
- 独裁の仕組みの現代的存在:
- ヒトラーの独裁は過去の出来事だがその成立を支えた社会の仕組みは現代にも形を変えて存在している
- 民主主義国家だったとしても情報が偏り国民感情が操作されればその内部から独裁を作り出すのは不可能ではない
- 現代の情報操作:
- 現代社会でも情報操作や偏向報道、SNSによる分断が顕著になっている
- ネット上ではアルゴリズムによって自分と似た意見ばかりが表示され、異なる意見は排除されやすくなっている
- ナチス時代にゲッベルスが操った心理の仕組みが形を変えて再び現れている
- 不安の政治的利用:
- 不安と憎悪を政治的に利用する構図も今も続いている
- 経済格差や移民問題、パンデミックの恐怖など社会に溢れている不安
- 特定の敵を作り出すことで一時的に解消される
- 「自分が苦しいのはあの集団のせいだ」という考え方は安心を与える一方で冷静な思考を奪っていく
- ナチスがユダヤ人をスケープゴートにしたのと同じ構造があらゆる国や社会にも再現可能
■ 13. 現代日本における独裁の可能性
- 法律上の障壁:
- 現代の日本ではヒトラーのような独裁の仕組みを通すことは法律上ほぼ不可能
- 国会の承認なしに法律を作ることはできない
- 緊急時にも無制限の権限は与えられない
- 憲法改正のハードルが当時のドイツよりはるかに高い
- 日本で憲法を変えるには国会議員の2/3以上の賛成と国民投票で過半数の賛成が必要
- 一部の政治家の判断だけで憲法を変えることはできない
- 似た構造が生まれる可能性:
- 大規模な災害やパンデミックが起きて緊急事態宣言が出された時
- 政府が国民の安全のためと言って監視や制限を強化する
- メディアなどがそれを批判しにくい空気を作れば全権委任法の縮小版のような形になる
- そのまま日常が普通になり気づけば独裁が完成してしまうかもしれない
- 危険信号:
- 法律がしっかりしていても国民が政治への関心を失ったら危険
- 「偉い人に任せておけば良い」と考えるようになったら危険信号
- 現代人の課題:
- SNSで簡単に発信できる代わりに炎上や孤立の恐怖を抱えている
- 怖がって真実を語らず他人の声に耳を傾けずに沈黙してしまえばやがて服従へと変わってしまう
- 20世紀の悲劇を学んで後世に伝えていく必要がある
■ 1. 極右支持の通説とその問題点
- 極右台頭の一般的説明:
- 極右は「忘れられた労働者」の政党である
- 支持動機は既存政党に見捨てられた層の「怒り」である
- 支持の中心は「地方・周縁部」である
- 通説の問題:
- フランスの研究は「見捨てられた敗者」というナラティブが実態を正確に反映していないことを示している
- 極右支持を過大評価すべきではない
- 「声なき声」を代弁する役割として極右を正当化する言説が流通している
■ 2. 極右の「プロレタリア化」言説の検証
- 1980年代の国民戦線:
- 小ブルジョワジーや自営業の男性を支持基盤とした
- 新自由主義的改革を訴えた
- 「フランスのサッチャー」を求める層に支持された
- 1990年代の転換:
- 反グローバリズムの保護主義的政策へ舵を切った
- 「国民優先」の排外的福祉を訴えた
- 1995年大統領選挙では現役労働者の3割がルペンに投票したとされた
- 現在の支持基盤の実態:
- 熟練労働者や比較的安定した被雇用者を中心に支持が広がっている
- 中間層や管理職の一部にも浸透している
- 支持基盤は「不安定層」ではなく、一定の職業的・経済的安定を有する層である
- 月収900ユーロ未満の最貧層では左派のメランションが第一の候補となっている
- 移民系など社会的差別を受けやすい集団では左派支持が顕著である
- 最低所得層や移民系の不安定層を動員しているのは左派である
- 国民連合は階級を横断して多様な層を取り込んだフランス社会の縮図に近い支持層を形成している
■ 3. 左翼ルペン主義仮説の検証
- 左翼ルペン主義の定義:
- 国民連合が社会党や与党連合の失敗への不満から転向した左派労働者票を取り込んできたという仮説である
- 左派の選挙的後退と極右の台頭に因果関係を見出すものである
- 実態:
- 労働者票の右傾化は左派からの大量流出によって生じたわけではない
- 国民連合は左派よりも穏健右派の票を吸収することで支持基盤を拡大した
- 2012年以降、労働者票が右派・左派双方で低迷したことに乗じて支持層が拡大した
- 左派から極右への直接の移動はごく少数にとどまっている
- 世論調査で国民連合投票者の多くは自己定位を「右派」か「右でも左でもない」と答えている
- 国民連合は右派に投票していた社会集団の周縁を取り込み、そこから労働者・被雇用者のあいだに基盤を築いた
- 労働者階級の政治文化:
- 祖先や家族が労働組合(CGT)やフランス共産党に属していた事実は極右への投票を食い止める防波堤である
- 北部や東部の「労働者階級の牙城」での得票増は従来の労働者の態度変化ではない
- 中道ないし右派に近い新たな層の流入と新しい業種への従事が地域の政治的バランスを変容させた
- 結論:
- 極右支持の拡大は右派票の取り込みや中間的安定層の流入によって進んだ
- 極右と左派は異なる社会的基盤と独自のイデオロギー的動員形態を持つ
- 有権者が両者のあいだを大規模に行き来することは稀である
- 両者の支持は大衆階級内部の異質な社会的セグメントを反映した別個の政治的方向性である
■ 4. 地理的説明「周縁のフランス論」の問題点
- 周縁のフランス論の内容:
- フランスを「中心」と「周縁」の対立構図で捉える
- 大都市中心部は国際化・文化多様性・新産業の恩恵を受ける「勝者の空間」である
- 地方や郊外、中小都市は産業転換やグローバル化に取り残された「敗者の空間」である
- 2012年大統領選以降、メディアが「郊外の小さな家に住む庶民=極右支持者」というイメージを広めた
- 実態との乖離:
- 投票行動を決定づけるのは居住地そのものではない
- 学歴や年齢、雇用の不安定化、持ち家取得などの社会的上昇経験の有無が複合的に作用している
- 政治への不信感も影響している
- 都市と周縁の境界は固定的ではなく、地方にも成長地域と衰退地域が併存している
- 人々の居住は流動的である
- 領域論は階級関係や差別関係、労働の価値に関するイデオロギー的志向を覆い隠す
- ステレオタイプの問題:
- 「農村=極右支持」と「都市団地=棄権する移民系」というスティグマが存在する
- 農村は「閉ざされた共同体」、都市団地は「同化しない移民」として描かれる
- いずれも「国家や国民的規範から欠けた存在」として扱われる
- 黄色いベスト運動や都市郊外の暴動は「危険」や「無能力」として扱われ、住民の政治的表現の正当性が奪われてきた
- 農村と都市団地の共通点:
- 戦後の住宅政策や産業再編の影響により、居住地の選択は自由意志によるものではない
- 雇用や公共サービスへのアクセスが不足している
- 住民には自助や近隣の助け合い、遠隔化された行政手続きへの対応といった「余計な労働」が課されている
- 「国家からの距離」を生み出しているのは公共サービスの縮小や行政の遠隔化、交通コストの増大など国家の政策的作用である
- メディアによる分断:
- 「怠ける若者」「移民」「生活保護依存者」といったラベルを用いて想像上の脅威としての「他者」を作り出してきた
- 構築された大衆階級内部の主観的な分断が極右支持を支える「三角形意識」を生み出している
■ 5. 三角形意識と「ニコラ」の比喩
- 三角形意識の定義:
- 古典的階級意識は「上 vs 下」、すなわちエリートと大衆の対立に集約されていた
- 今日ではそれに加え、社会的空間のさらに下方に位置づけられる「非正当な貧者」への距離が強く意識される
- 人々は「自分たちは上に支配されているが、最下層ではない」と感じている
- 形成メカニズム:
- 「見捨てられた地方」のスティグマを帯びた地域に暮らす大衆階級が自らを「国家の支援に依存する非正当な貧者」や「悪い移民」と差別化しようとする
- 他者に責任を転嫁したり、地域を肯定的に再定義したりする象徴的実践を強いられる中で形成される
- 強化要因:
- 新自由主義的改革による社会的権利の弱体化と自己責任論の拡大が意識を強めている
- 農村や都市郊外に向けられるステレオタイプ的な眼差しが大衆階級内部の主観的分断を深めている
- レイシズムやイスラモフォビアの土壌を作り出している
- 「ニコラ」の比喩:
- 2025年に流行したネットミーム「C'est Nicolas qui paie !(払っているのはニコラだ!)」が象徴的である
- 極右系ウェブサイトから広がったフレーズである
- 「ニコラ」は報われない中間層の勤労世代の男性を典型化した架空の人物像である
- 働いても報われず、給与から差し引かれる社会保険料が「不当な」社会手当、特に移民の社会保障に流れているとされる
- 国家財政をゼロサムの「国民勘定」とみなす直感的発想を示している
- 極右政党に投票する「普通の人々」の感覚を映し出している
- 「国民勘定」の誤謬:
- フランス国籍を持つ者だけが税金を払っているのではなく、移民も税金を払っている
- 「ニコラ」は所得税だけを意識しているが、消費税や社会保険料もある
- 再分配の恩恵は「移民」や「非正当な貧者」に偏っておらず、全人口の60%の世帯が純利益を得ている
- しかしこの「国民勘定」の体感は治安、給付、教育などに波及し、「国民を優先せよ」「不正には寛容ゼロ」といった極右のスローガンへの支持を強めている
■ 6. 事例研究:フランス南東部PACA地域圏
- 調査概要:
- 2024年出版の『普通の有権者たち――極右の常態化に関する調査』を参照している
- 2016年から2022年にかけてプロヴァンス=アルプ=コート・ダジュール地域圏で実施された
- 国民連合の活動家ではなく日常生活を送る一般の支持者約30人を対象とした
- 長期にわたる聞き取りと参与観察を行った
- 地域特性:
- 国民連合が地方政治に深く根を張っている
- 「忘れられた地方」ではなく、地域経済も活発で観光資源も潤沢である
- 内部の不平等が大きい
- 支持層は職人や小規模商店主、警察などの治安関連の仕事に従事する人々など、比較的安定した大衆階級や小規模中間層が中心である
- 投票動機の複合性:
- 「経済的要因か文化的要因か」という二分法では説明できない
- 国民連合は移民問題を税金、社会保障、治安、教育といった幅広い領域に結びつけている
- 聞き取りのすべてで程度の差はあれレイシズム的な語りが確認された
- 繰り返し登場したのは「職を奪う移民」ではなく「働かずに給付を受ける移民」というイメージである
- 「支援を受けるには収入が高すぎ、余裕を持つには低すぎる」という中間層特有の相対的な位置が反映されている
- 日常における「優遇」の体感:
- 公的施設の行列、住宅やトラム整備の優先順位、教育資源の配分で「移民が優遇されている」と感じている
- 国民連合は「フランス国民を優先せよ」というメッセージでこの「体感」を強化している
- 住民は国家経済をゼロサムの「国民勘定」として理解している
- 「移民への給付=フランス人からの取り上げ」と考えている
- 「われわれには厳しく、彼らには甘い」という二重基準への不満が治安強化や「寛容ゼロ」への支持に直結している
- 競争意識の焦点:
- 移民との競争意識は「雇用」よりも「住宅・給付・教育」といった生活基盤の取り合いに集中している
- 再生産領域の中心的担い手はしばしば女性である
- 「家庭や子どもを守る」という発想が極右支持に結びついている
- 「再生産の保護主義」志向は従来女性支持の低かった極右政党に新たな基盤をもたらした
- 家族呼び寄せの停止や社会給付の自国民優先といった政策が女性有権者の支持を拡大させた
- 三角形意識の地域的特徴:
- 豊かでありながら格差の大きい地域では「上下から挟まれる感覚」が強調される
- 上からは富裕層や観光客の流入による地価高騰や生活様式の衝突が迫る
- 下からは移民の流入や公営住宅の増加が迫る
- 住民は自らを「社会的にも地理的にも中間」に位置づけ、その位置を守ろうとする
- 上位層に対する諦念に比べ、移民は「政治的に制御可能」と見なされるため反発が強まりやすい
- 持ち家などの居住投資を行う場合、移民の存在が「負の経済シグナル」として受け止められる
- 地域の評判や資産価値の下落への懸念が喚起される
- レイシズムの核心性:
- 国民連合支持の核心にはレイシズムがある
- メディアは極右支持者を「哀れな弱者」として社会経済的な困難へ単純化しがちである
- 調査は投票行動が移民や少数者への否定的感情に強く規定されていることを示している
- 2024年のCNCDH調査では極右支持者の56%が自らをレイシストと認めている
- 「漂白」の論理と「白人の賃金」:
- 非白人で帰化した有権者でさえ、スティグマ化された「悪い移民」を攻撃することで「良きフランス人」であることを証明しようとする
- 内部移動で地元から「よそ者」扱いされていた労働者が地域の少数者をスケープゴートにすることで多数派への帰属意識を得る
- デュボイスが提唱した「白人の賃金」――人種的優越感から得られる象徴的報酬――の作用が確認された
- 根底に共通してあるのは「自分がマイノリティに転落するのではないか」という不安である
- 国民連合への投票は「多数派であり続けるための自己防衛」であり、自らを境界の最前線に立つ「沿岸警備員」として位置づける行為である
■ 7. 国民連合支持の「普通化」
- 「普通化」の過程:
- かつて国民連合への投票は「恥ずかしい選択」とされ隠して行うものだった
- 近年では状況が一変し、2021年にはむしろ支持を過大に申告する例すら確認されている
- 地域や身近な集団では「マリーヌに入れるのが普通」という感覚が広がっている
- 国民連合票は日常に根付いたものとなっている
- 投票の社会的性格:
- 投票は孤立した行為ではなく、周囲の人々と共有される経験のなかで形づくられる
- 人は「一緒にいる人と同じように」投票する傾向が強い
- 投票は「賛成」(国民連合そのものへの支持票)と「反対」(既存政党への抗議票)の両方に支えられている
- 日常の会話や地元の規範が国民連合への支持を「正当で普通の選択」として後押ししている
- レイシズムの日常化:
- インタビュー対象者の多くは「人種差別ではない」と前置きする
- 実際の怒りや不満は特定の少数者、特に北アフリカのマグレブ系やムスリムに向けられている
- 近所や商店での雑談が「やっぱりみんなもそう思っている」という確信を強める
- 国民連合への投票を論理的で自然な判断へと変えていく
- 極右への支持は孤立やアノミーの産物ではなく、身近な集団で共有される経験の積み重ねである
- 文化エリートへの反発:
- 支持者は文化資本を有する層、すなわち教師や芸術家、ジャーナリストといった「左派的な文化エリート」に対して「説教臭く現実を知らない」と反発する
- 経済エリートへの批判は「過度な富」や「不当な蓄財」に限られる
- 勤労や経営を通じて得られた富は「正当な成果」とみなされる
- 小企業主の成功はむしろ称賛される
- 背景には中間層の社会的位置が影響している
- 一定の経済資本を保持しながらも文化資本において劣位にある
- 学歴や言説能力の差異を象徴的屈辱として経験する
- 文化的格差は経済的不平等以上に強い敵意を呼び起こす
- 批判の矛先は富裕層ではなく文化的エリートに集中する
- 政治不信の広がり:
- 「政治家は皆同じだ」という感覚が広く共有される
- 政治家は社会的に均質なエリート集団とみなされる
- 巧みな言葉と特権を使う「利得者」として嫌悪の対象になる
- 左派は「移民に甘い」として退けられる
- 右派もサルコジ期の汚職やそれに伴う失望で支持を失った
- マクロンは金融エリートとしての経歴と弁舌の巧みさを兼ね備えた結果「富と言葉の象徴」として反感を一身に集めた
- 「右でも左でもない」という戦略が「上の世界は皆同じだ」という不信感を強めた
- ポピュリズム的な反発は統治者と被統治者の間にある階級的な距離の反映である
- 国民連合への選択的信頼:
- 支持層は政治家全般に強い不信を抱きながらも、移民問題に関してだけは国民連合を「多数派を守る党」として信頼する
- 時には消極的に選択する
- 投票は単なる抗議ではなく、治安や移民政策への具体的な期待に支えられている
- 「国民連合が政権を取っても大きなことはできない」という想定が投票のハードルを下げている
- 脱悪魔化戦略:
- かつての「極端な政党」というイメージが薄れている
- 「昔ほど過激ではない」という認識が広がっている
- 国民連合の本質は「正常化」と「過激性」を同時に追求する二面戦略にある
- 「制度の一部」として受け入れられるための正当化を進める一方で「他の政党とは違う」と示すための急進性を保つ
- 結果、熱烈な支持者から懐疑的な有権者まで幅広い層を取り込んでいる
■ 8. 極右支持の本質:人種のミクロ政治
- 人種化された資源配分:
- 税や学校、住宅、公共サービスといった社会的資源をめぐる争いがしばしば人種化される
- 移民やムスリムが「不当な競争相手」として可視化される
- 勤労や功績を重んじる階級的道徳と「国民を優先せよ」という秩序意識が重なる
- 「国家が外国人を優遇している」という不満が増幅する
- 人種のミクロ政治としての投票:
- 国民連合への投票は「人種のミクロ政治」として機能している
- 支持者は投票を通じて自分たちが社会の多数派にとどまることを望む
- 非白人やムスリムの存在が目立つほど「自分の居場所が失われている」という感覚が強まる
- 投票は抗議であると同時に秩序回復を求める行為である
- 現実には社会の構造を大きく変える力を持たず、望むような白人の同質性を確保できない
- 結果として安心感は得られず、不安と無力感が蓄積していく
- 経済政策の位置づけ:
- 経済的不満だけが極右支持の軸ではない
- 多くの極右政党にとって経済政策は排外主義・権威主義・ポピュリズムを遂行するための「道具」にすぎない
- 国民連合とその支持層にとって、税制や労使関係といった経済的課題は移民、イスラム、安全保障、フランス的アイデンティティといったテーマに翻訳されることで初めて意味を持つ
- 経済的競合は「人種の線引き」を通じて経験される
- 左派の誤認:
- 既存の左派を含む政治勢力はレイシズム的側面を軽視してきた
- 国民連合への投票を「怒りの票」として片づけてきた
- その態度こそが国民連合の「脱悪魔化」戦略を補強してしまう危険性がある
- 極右支持は単なる反体制感情ではなく、人種化された敵対心に方向づけられた政治的選好である
- レイシズムの構築性:
- レイシズムは固定された本質ではなく、政治によって強弱が操作される社会的構築物である
- 極右はここに働きかけ、白人の中間層や労働層に「承認」と「物的改善」の両方を約束することで動員している
- レイシズムを「パーソナリティ」や「悪しき習慣をもつ個人」といった個人的次元に矮小化すべきではない
- それを埋め込んでいる社会構造や制度から切り離すべきではない
- 国民連合は資本主義的不平等と現代のレイシズムの強化が交錯する状況から利益を得ている
■ 9. 極右への対抗策
- 国民連合の位置づけ:
- ジャン=マリー・ルペンのスローガン「右でも左でもなくフランス人」が極右の位置づけをよく示している
- 「経済的には右、社会的には左、国家観はナショナリスト」というイデオロギーの組み合わせが中間層の幅広い支持を可能にしている
- 国民連合の経済政策:
- 移民やマイノリティに対して強い敵対姿勢を示す
- 労働・雇用問題では経済自由主義的な立場をとる
- 失業者管理の厳格化や労働組合への敵対的態度、解雇の自由を容認する姿勢がそれを示している
- リベラリズムはマクロン派とは異なり、有権者は富裕層への課税や公共サービスの維持を支持する傾向を持つ
- より新自由主義的な極右政党「再征服」よりも「社会的」と評される
- 実際には両者ともに経済自由主義と排外主義を結合させた共通の基盤に立っている
- 支持者は難民受け入れや社会給付の管理において非常に厳格な立場をとっている
- 中間層が社会的上昇を閉ざされた中で移民や失業者との差異化を通じて相対的な尊厳を維持するための「三角形意識」が働いている
- 対抗の方向性:
- 極右への対抗を単に「アイデンティティ問題」から「雇用・労働問題」へと移すだけでは不十分である
- 国民連合支持層は雇用の領域でも左派的価値観と対立している
- 同党を支えているのは排外主義と雇用主的リベラリズムを結びつける潮流である
- 極右に対抗するためには、(1)排外主義と(2)ネオリベラルな経済秩序への同調、という二つの前提を同時に問い直す必要がある
- 極右への対抗は長期的な社会的・文化的営みを通じ、資本主義的不平等とレイシズムという二つの戦線に同時に取り組むことによってのみ効果を持つ
- 今後の展望:
- 近年顕著であるのは億万長者と極右との接近である
- 次回は「上からの極右支持」――国民連合を支える富裕層とその思想的論理――に焦点を当てる
俺は反自民なので、必然的にリベラルとされる政党に投票してきたんだけど、俺のスタンスとしては
①弱者は優遇すべき②自民党の政治には問題がある③女性は女性というだけで弱者ではない
これがロジカル的に完全に正しいわけだが
リベラル勢力とは①②では合致してるんだけど③でどういうわけかすべての女性は弱者であるとしてしまってる奴が多いんだよね。
③に反対するのは明らかにおかしいじゃん。アンチ③が正しいんだとすると総理大臣の高市や都知事の小池や女性芸能人より俺の方が強いってことになるじゃん。
強い弱いはグラデーションがあって、仮に弱い側に女性が比較的多かったとしても、強い側にも確実に女性はいて、だから性別で強い弱いを分けるべきじゃなく性別関係なくただ単に強い弱いで分けるべきなんだけど
リベラルは女が絡むと急にバカになるのか、筋の通らない持論を延々とごり押ししている。
ひどいのは、フェミが完全に論破されてるのにその事実自体を臭い物に蓋をするが如くなかったことにして、その主張をまた別のところで繰り広げている点
フェミが完全論破されてる様は棘やらposfi見ればいくらでも出てくるのでどうぞ
一つ例を挙げるなら、それこそ高市が首相になった時にフェミが呪詛の言葉を吐いてたこと自体がおかしいわけじゃん。高市は俺も嫌いだし実際に台湾有事とか言い出してほれ見たことかと思ってるが。それはそれとして一旦ガラスの天井を突き破ったことを祝福して見せろよ。
それができないからフェミは筋が通ってないという話になる。お前らフェミが渇望していた女性リーダーが現れた瞬間ブーイングを浴びせる。じゃあジェンダーギャップ指数とか最初からどうでもよかったんじゃん、となる。いままでのフェミの主張何だったの?となる。
あのさ、①②に関してはリベラルは理路整然とロジカルに主張を展開してるわけよ。今強い人たちもいつか病気とかして弱くなるかもしれない、その通りだし。公文書とか統計ないがしろにして経済弱くさせてたら国として没落する、実際そうなってるし。
でも③の話になったとたんにバカになるの何なの?世界のナベアツなの?
全くロジカルじゃないよ。筋が通ってない。
あのね、フェミと言う存在自体が害悪なの。邪魔なの。支持されないから。いつまでたっても政権交代できないの。
野党側もフェミに媚びても大して票にならないって早く気づけよ。一方表現の自由を掲げた山田や赤松は50万票以上取ってるよね?
フェミニズムが女性のための思想であるなら、女性が共産党に一挙に投票してるはずだよね?人口の半分が投票してたら一気に共産党は政権獲得に近づくよね?なんでそうなってないの?フェミニズムは女性からも嫌われているからでーす。
リベラルのチン騎士たちと利益誘導に勤しむ女さんたちは自分たちの醜悪さを直視して政権交代のためにフェミニズムと言う間違った思想を一刻も早く捨ててくださーい
最後にフェミを黙らせる一言を書いてこの文章を終わろうと思います。
いいですか?いきますよ?せーの
草津
■ 1. クライストチャーチ事件の概要
- 事件の詳細:
- 2019年3月15日、ニュージーランド・クライストチャーチで発生
- アルヌールモスクとリンウッドイスラムセンターが襲撃された
- 51名のイスラム教徒が射殺された
- 犯人の情報:
- ブレントン・ハリソン・タラント、28歳のオーストラリア人
- 犯行にあたり「ザ・グレート・リプレイスメント」という全74ページのマニフェストをネット上で配布
- マニフェストの主張内容:
- ヨーロッパが歴史上かつて見られなかった規模の侵略(白人虐殺)に見舞われている
- 白人は毎日数を減らし、老い、弱くなっている
- 問題は出生率であり、出生率こそ白人種の未来の鍵である
- 出生率の高い移民は今白人を滅ぼそうとしている
- 生存の問題として白人が移民を先に滅ぼさねばならない
- この攻撃は多様性への攻撃ではなく、多様性の名における攻撃である
- 多様な諸民族が多様なまま分離され独自性を保つため
- 世界の諸民族がその伝統と信仰に忠実に留まり外部者の影響によって薄められないようにするため
■ 2. グレート・リプレイスメント理論の定義
- 基本概念:
- 日本語訳は「置き換え論」「大置換理論」「大置き換え理論」
- 白人種が移民・難民・非白人の高い出生率によって置き換えられるという考え方
- 具体的なメカニズム:
- 在来種である白人種が少子化によって数を減らす
- 高い出生率を維持する外来種(職の外国人や移民)がどんどん数を増やす
- やがて白人という民族集団は自国の多数派ではなくマイノリティの地位へ追いやられる
- 白人はその支配権を喪失し、白人文化は有色人種文化に飲み込まれる
- キリスト教的価値観も失われていく
- 人口統計上の白人種の衰退が西洋キリスト教文明そのものを衰退・崩壊させる
- 陰謀論的側面:
- 自然な人口動態の変化として生じるのではない
- 何者かの政治的な意図によって計画的に置き換えられつつあるとする考え方
■ 3. 理論に影響された主な事件
- アメリカでの事例:
- 2018年10月27日、ペンシルベニア州ピッツバーグのシナゴーグ襲撃(ロバート・バワーズ、11人殺害)
- 2019年4月27日、カリフォルニア州ポウェイでシナゴーグ銃撃(ジョン・アーネスト)
- 2019年8月3日、テキサス州エルパソのウォルマート店舗襲撃(パトリック・クルシウス、23人殺害)
- 2022年、ニューヨーク州バッファローで10人の黒人を射殺(ペイトン・ジェンドロン)
- 共通する主張:
- 白人が侵略者によって置き換えられ滅びようとしている
- バワーズ・アーネスト・ジェンドロンは明白にユダヤ人への敵意を表明
- 反ユダヤ主義と結びつく形で語られることが多い
- 白人絶滅の計画を進めている者がユダヤ人であるという論立て
- 正当防衛としてユダヤ人を攻撃するという理屈
- ヨーロッパでの事例:
- 2019年10月9日、ドイツのハレでシナゴーグ・通行人・トルコ料理店を襲撃(ネオナチのステファン・バリート)
- ノルウェーの連続テロ事件(アンネシュ・ブレイビク、77人殺害)
- 影響の規模:
- この概念が登場した2011年以降、260件以上の殺人事件の明確な動機となってきた
■ 4. 理論の歴史的背景(19世紀〜20世紀初頭)
- 19世紀フランスにおける人口問題:
- フランス・ドイツ・イギリス、特にフランスで人口問題が国家の存続を脅かす大問題と認識されていた
- 1849年、フランスの国民議会議員が著書でフランス衰退の原因を停滞する出生率に求めた
- 1902年、人口統計学者ジャック・ベルティヨンが国の人口再生産能力が損なわれれば共同体の持続や文化・文明が危機にさらされると主張
- 人口学者の見解:
- 国力の衰退を招く出生率低下を女性の社会進出や個人主義の台頭などと関連付けた
- それを文明の退廃として批判
- 白人全体の危機への拡大:
- 1893年、歴史家チャールズ・ヘンリー・ピアソンが「一般法則として下等人種は高等人種よりも早く増加する」と論じた
- 高等人種は衰退しつつあり、人口増加・発展を通じて黒人及び黄色人種に圧倒されるだろうと予見
- 地球は黒人と黄色人種の連続した帯にすっかり取り巻かれているのが見えるだろうと警告
- アーリア人とキリスト教に属する運命にあると考えていたが、かつて劣等的だと見下していた人々に押しのけられることになる
- ルーズベルトやグラッドストンなどの政治家が彼の議論に強く影響された
- フランスの小説家モーリス・バレス:
- パリで見られるような移民の流入がフランスの民族性を損なうと考えた
- 人種の純粋性に関する様々な主張を展開
- 特定の集団との混血によって純粋性が損なわれる
- いずれ白人が外人種に侵食され圧倒されるという恐怖
■ 5. 人種自殺概念の登場(20世紀前半)
- エドワード・ロスの主張(1900年):
- 同化不能な移民を継続すれば白人種が絶滅していくと論じた
- 同化不能な要素の移民は停止されなければならない
- アングロサクソン民族は人種的に優れた国家を再生産しなければならない
- マディソン・グラントの理論:
- 人種自殺を論じる上で最もよく知られている人物の一人
- アメリカ合衆国は北方人種すなわちノルディックの国であり、優れたノルディックによって構成されている
- 移民及び他の劣等人種、さらにはアルプス人種や地中海人種といった白人の中でも劣等なものたちによって出生数で圧倒される
- 人種的な絶滅に陥るだろうと論じた
- グラントの本はヒトラーに絶賛されており、ナチスにつながる置換論にも大きな影響を与えた
- ロスロップ・ストダード(1920年):
- グラントの支持者でありKKKの構成員
- 「有色人種の勃興」という本を執筆
- 白人支配が危機にさらされていることを唱えた
- 人種混合の危険性を説き、白人種が人種としての純粋性を維持することの必要性を訴えた
- 共通する発想:
- 優れた文化や文明を維持するためには優れた人種がマジョリティでなければならない
- 人口の問題が社会の同質性や文明の優越性といった問題とはっきり結びつけられている
- 現代の大置換理論も白人のマジョリティ低下と文明の衰退を結びつけている
- この当時の議論の再生産に近い部分がある
■ 6. 第二次世界大戦後の展開
- 表面上のリセット:
- ナチスの蛮行により露骨なレイシズムは遠ざけられるようになった
- しかし完全に消えたわけではない
- 戦後の移民現象:
- ヨーロッパの帝国は解体された
- かつての植民地から旧宗主国へのポストコロニアルな移民が進行
- 戦後の出生率低下期を迎えた欧米諸国は高水準の移民流入によって人口水準を維持
- 安定的な経済発展を続けるようになる
- アメリカの社会運動:
- 公民権運動が盛り上がる
- フェミニズムなどの政治運動が活発化
- イーノック・パウエルの血の川演説:
- この時期の人口問題への恐怖を象徴する演説
- 移民の流入によって英国という伝統的共同体が崩壊することを予見
- 「我々は国家として文字通り狂っている」
- 「国が自らの葬儀の薪木を熱心に積み上げているのを眺めているようなもの」
- 「現在の傾向が続けば15年か20年のうちにこの国には350万人のイギリス連邦からの移民及びその子孫が存在することになる」
- 「差別と剥奪・危機感と憤りを抱いているのは移民ではなく、移民がやってきた側の住民の中にある」
■ 7. 学術領域からの警告
- ピエール・ショニュの主張:
- フランスの歴史家
- 人口現象と出生率の低下が西洋世界を自滅へと向かわせていることを論じた
- 先進国における人口減少と第三世界における人口増加の不均衡が全車への移住の流れを強める
- 14世紀の黒死病に匹敵するような大厄が訪れるだろうと予見
- 1980年代の警告の高まり:
- 先進国の低い出生率を代替するための移民輸入に警鐘を鳴らす声がさらに高まる
- ヨーロッパには第三世界からの移民が急増
- 中でも多かったのが北アフリカや中東のイスラム系人口
- 安定的成長を支えるために呼ばれた労働者たちがやがて定住し家族を呼び寄せた
- ヨーロッパに大規模なコミュニティを築き始める
- イスラム化への警告:
- ヨーロッパ文明が置き換えられるという物語が漠然としたものではなくなる
- イスラム化というより現実味を帯びたものへと変化
- 1995年、人口学者ジャン=クロード・シェネが「西洋の黄昏」を出版
- ヨーロッパにおけるアフリカかアラブかイスラムかの到来を警告
- 出生率が低すぎる地域では統合する母体が不足するため移民の統合は失敗に終わる
■ 8. 文学作品での描写
- ジャン・ラスパイユ「キャンプ・オブ・ザ・セインツ」(1973年):
- 第三世界からの大量移民によって西洋の白人社会が破壊される様を描くディストピア小説
- 肌の黒い難民の艦隊によってフランス及び白人の西洋世界が侵略されるというモチーフ
- 第三世界人口の増大によって西洋文明が押し潰される様を描いた
- ラスパイユ自身の意図:
- 「他の人種の増大は我々の人種が今の倫理的原則に固執する限り絶滅へと追いやる」
- 「白人世界の終焉についての戦慄すべき小説」と宣伝された
- およそ50万部ほどを売り上げた
■ 9. ルノ・カミュによる理論の確立(2011年)
- 下地の総括:
- 白人種の出生率低下・移民流入・文明衰退という大置換理論に通底するナラティブがすでに形成されていた
- 広く共有されていた
- カミュの貢献:
- 2011年に「グレート・リプレイスメント」という直接的なタイトルの本を出版
- フランスに焦点を当てた
- ムスリム及びアフリカ系移民の高出生率を指摘
- 大規模な移民輸入がヨーロッパ文明を弱体化させていると論じた
- カミュの理論の核心:
- グローバル資本主義の発達により人間はその人種や民族を問わずいつでも誰にでも置き換え可能な単なる産業の駒となった
- 人々は共同体や文化から切り離された存在となった
- 移民という現象は土着の人々が外来の人々によって徐々に代替されていく置換という現象になった
- 何者かの陰謀とまではしないが、ヨーロッパ文明を破壊するためにモダンなリベラルエリートによって助長されている忌まわしい動きだと見なした
- 理論の普及:
- 置換という現象が進行しつつあることを最もらしく説明したことから一気に市民権を得た
- 右派の政治家や活動家に受け入れられた
- ジェネレーション・アイデンティティ運動、フランスのゼムール、ハンガリーのオルバンなどが取り入れた
■ 10. 陰謀論との結合
- カミュの立場:
- 陰謀論的なものには賛同しないことを表明している
- 現実の展開:
- 置換という概念は従来の漠然とした不安を白人の絶滅とそれを計画する者たちの陰謀という物語を強化する方向に働いた
- 極右の活動家たちはこの概念を扇動的ナラティブの中にうまく取り入れた
- ユダヤ人・イスラム教徒・フェミニズム・ジェンダー理論・欧州連合・LGBT政策といった敵を集約
- 白人の置換という物語の中に組み込んだ
- 白人文明の衰退と崩壊という破局を煽る恐怖扇動に劇的に再解釈して広めていった
- 歴史的連続性:
- 何者かが欧州社会を破壊しようとしているという陰謀論の雛形は18世紀末のイルミナティ論にすでに見られた
- 隠された少数派が社会や文化を操作し伝統的・支配的集団の価値や制度を終焉させようとしていると論じるもの
- 大置換という物語はこの使い古されたが一定の支持を保ち続けている大きなストーリーにすっぽりとはまるもの
■ 11. 陰謀論的置換論の内容
- 宣伝者の戦略:
- 反移民・反中絶・反LGBT政策といった物語を結びつけることでインターネット上の様々な過激的コミュニティの不満を取り込む方法を見出した
- 陰謀論の主張内容:
- リベラル政治家・メディア・グローバル企業が白人とその文化を破壊するために組織的・陰謀的・意図的に連携している
- 西洋文化の破壊を目論むムスリムコミュニティや国際ユダヤ人が大量移民を仕組んでいる
- そうした勢力が白人文明を攻撃する意図を持って白人国家の人口構成を意図的に置き換えている
- 現状の白人社会はそうした勢力の陰謀にはめられ民族浄化・中絶容認・LGBT容認などと自ら絶滅の道を歩んでいる
- 最も高貴であるはずの白人文明がその自らの堕落さと愚かさによって劣等な者たちの奔流に押し流されていく
- 多様性を守れというのであれば白人にも生存する権利とその高貴な文明を守る権利があるにも関わらず
- バット・イェオールの「ユーラビア」(2005年):
- ヨーロッパとアラブのエリートの共同計画によりヨーロッパとアラビアを融合させた形態の社会が欧州に生み出されようとしている
- 荒唐無稽な話だが、大置換理論の登場はこうした与太話にも最もらしさを与えるようになった
■ 12. アメリカにおける白人虐殺論
- 白人虐殺論の定義:
- 移民・強制同化・暴力によって白人が絶滅へと追いやられようとしているというもの
- これら全てが白人を破壊するためにユダヤ人の陰謀によって意図的に仕組まれ操作されているという陰謀論
- 大置換理論との違い:
- より包括的である
- イスラムに対する恐怖よりも反ユダヤ主義とはっきり結びつけられている
- デイヴィッド・レインによる普及:
- 1990年代にネオナチのデイヴィッド・レインによって広く流布された概念
- レインはオーダーのメンバーでもある
- 「シオニストの陰謀は何よりもまず白色アーリア人種を絶滅させることを望んでいる」
- 「強制的な統合は冷酷で悪意あるジェノサイドである」
- 「我々の民族の存続と白人の子供たちの未来を守らねばならない」
- クライストチャーチ事件との関連:
- タラントはカミュとレインの両方の主張に強く影響されていた
■ 13. 欧州とアメリカの文脈の違い
- 欧州の文脈:
- 北アフリカ及び中東からのムスリムの計画的な移民
- アフリカから地中海沿岸諸国への黒人の大規模な移動が脅威となる
- 置換計画の推進者にはグローバリスト・ユダヤ人・イスラム主義者・欧州連合が挙げられる
- アメリカの文脈:
- サラダボウルなどと称されるアメリカは人種の分離を論じなければならないほどに多様性を抱えている
- メキシコ国境を越えて流入するヒスパニック系やアフリカ系アメリカ人が主な置換者とされる
- 彼らがアメリカ社会における白人の歴史的優位性や政治的支配を奪うという物語が主流
- 米国内の有色人種がいずれ蜂起し、国内で人種戦争を引き起こし、その結果として白人がジェノサイドに至るという筋書き
- 移民が増えることで白人を圧迫する民主党が有利になるといった文脈で語られる
- その背後にあるのはユダヤ人グループだということになっている
- ターナー日記との関連:
- ユダヤ人の欲望によりアメリカの白人が隷属させられ有色人種たちが我が者顔で振る舞う様が書かれている
- 米国におけるホワイトジェノサイドのあり方を分かりやすく表現したもの
- 混合の過程:
- 置換するという概念のキャッチーさが結びつき欧州産の大置換理論と混ざり合うような形で米国に広まった
■ 14. 理論の受け入れやすさと特徴
- 受け入れやすさの理由:
- 在来人口の出生率の低下と外来の人口集団における出生率の高さが劇的な人口動態の変化をもたらすのは統計的な事実
- 白人が少なくなり逆に移民の人口が増加し続けるコミュニティが現実に存在する
- そうした移民が多数派になるようなコミュニティは犯罪が多発し治安が崩壊し街が荒廃する悲惨な状況にあるとされる
- 移民は非ヨーロッパ的な存在であるから受け入れる側に同化することはなく、むしろその同質性を脅かして汚染していくとされる
- 統合のメカニズム:
- 移民に対する不安感情に治安の問題・教育の問題・中絶の問題・女性の社会進出・政治不信といったあらゆる要素を統合していく
- 誰もがどこか何かしら納得のできる最もらしいナラティブを形成していくことが可能になる
- SNSのような空間ではとめどなく広まっていく性質のもの
- 分離・隔離・排除への誘導:
- もはやこの問題を解決するには分離・隔離・排除といった手段を取るしかないという方向に話を持っていく
- この考え方に染まりきって直接行動に出てしまった者は何人もいる
■ 15. 世論調査に見る浸透度
- フランスの状況(2017年):
- 有権者の実に48%が人口置換はフランスで起こる、または起こりうると考えていた
- イギリスの状況(2018年):
- 英国人の58%が政府は移民の真のコストを国民に隠していると信じていた
- 51%が過去20年間に渡り政府が意図的に移民政策を通じて英国社会をより民族的に多様化させようとしてきたと考えていた
- 解釈:
- これらの人々全員が過激な陰謀論者というわけではない
- 同質性の高い社会で静かに暮らしている人々であれば当然に抱く漠然とした疑問や不安と言える
■ 16. 理論の問題点と対応の難しさ
- 陰謀論としての破綻:
- 何者かによって白人種が計画的に置き換えられようとしているというのは陰謀論
- 文化の消滅を人口動態で語ったり移民の出生率が高止まりすると仮定したりその最もらしさには破綻している部分が目立つ
- 事実の存在:
- 移民コミュニティというのは実存する
- 欧州連合が移民や難民に寛大というのは陰謀論でも何でもない
- 無茶な難民受け入れを行った国があるのも事実
- 労働力供給のために移民輸入を望んだ人がいることも事実であり隠された秘密でも何でもない
- 移民や難民に好意的な人たちが不寛容と見なされた人を攻撃しているのも事実
- 先進国の出生率が下がっているのも単なる事実
- 理論を扱う上での難しさ:
- 最もらしく聞こえる理由はちゃんとある
- 「なんか変じゃない」と思うところに「実は〜」とやられたら信じる人がいるのも理解できる
- 正当な不安と陰謀論の区別:
- 移民に懐疑的であることが極右陰謀論に親和性があることを意味しない
- 過激主義者に同調するような考えの持ち主であることは全く意味しない
- むしろそうした漠然とした不安や疑問に向き合うことなくただ単に抑えつけようとすることこそ危険
- 過激な陰謀論者につける隙を与える
■ 17. 対策と課題
- 信頼喪失の問題:
- この考え方を漠然と支持する人は移民が怖いとか憎いという以前に行政や公的機関に対する信頼を失っていることが多い
- 移民との生活トラブルを放置されたり移民の犯罪を取り締まってくれないみたいな不満
- 文句を言ったら差別主義者扱いされる
- 現実に移民の集団的な犯罪や生活トラブルが解決されないまま長期間放置されていた例はある
- 必要な対応:
- デマや陰謀論を指摘していくことは重要
- 同時に移民と地元住民のトラブルを放置しないこと
- 治安の問題にきちんと対応すること
- 今起きていることをできるだけクリアに説明すること
- 地味な仕事をサボった結果、過激なことを言う人たちが伸びてしまう
- 過激主義につける隙を与えないためにはまずは行政の信頼回復が第一
- 結論:
- 膝を突き合わせた地道な対話と信頼される制度を作るしかない
- 綺麗なお題目を唱えているだけだと過激な人たちの養分が増えるだけ
- 共生とは遠く険しく長い道のりのように思われる
大体の国民にとって「アメリカが台湾有事で攻撃を受けた時に日本はどう立ち振舞うのかを明言する必要があったか」については議論の余地があれど、同盟国が攻撃されたら日本も防衛に周るというのは失言とは見做されてないのですよ。
それを左翼が「撤回が必要」だとか「これは宣戦布告で中国へ戦争を仕掛けてる」とか頓珍漢なことを言ってるから、令和では左翼が周りから白い目で見られているの。
中国と関係が悪化したことで経済影響は多少はある。一般人もそれは問題視してる。
一方で、脅して言うことを聞かせようという国に依存するのも間違いだからマーケット規模がデカくても依存しすぎないようにしていこうという転換期にしていくという言い分もわかるから「ならしゃーない」くらいに国民も多少納得してるっていう話だよ。
お前ら、自分たちの主張がファンタジーの世界にあることを自覚してよ。日本中で誰も彼も戦争しようなんて言ってない。(もしかしたら一部の極右は言ってるかも知らんが、それはアホなんで無視していい)
むしろ戦争を起こさせないための抑止力の話をしている。どうにかして中国による台湾への武力行使を止めたいんだ。
オールドメディアの支持率を下げる報道に踊らされてる場合じゃないよ。現実をみよう。
追記:
アホ左翼(左翼の中でも考えがない人のこと・左翼全般を指さない)が返信つけたから補足しておくけど、「高市政権の支持率65%」「台湾有事答弁 問題ない50%」これが日本の現実である。
最低でも左翼思想は少数であることを認識すべきなのよね。
https://mainichi.jp/articles/20251123/k00/00m/010/107000c
https://news.yahoo.co.jp/articles/399c57ce95533e7a04157079c92fb804dc464a6f
俺は「なぜ普通の日本人が高市政権を支持しているのか」、「台湾有事への回答が一般人の中で問題視されていないか」を文章化しただけだよ。
別にこの記事に対して左翼が何を喚こうとも俺は一向に構わないが、お花畑なのは国民じゃなくてあんたらだと自覚ないのが滑稽極まりないよ。
支持率を下げてやる記事を真に受けて、キャッキャしながらコメントしてるのが噴飯ものなんだと自覚できてないのがおもしろおかしいのよ。
国民が何も考えてないと嘆く前に自らの不明を恥じてバイアスを取り除いて世界のパワーバランスなどを真剣に考えるべき。
【記事へのご指摘について】
朝日新聞のデジタル版で配信しているこちらの記事について、ご指摘をいただいています。
高市首相、台湾有事「存立危機事態になりうる」 武力攻撃の発生時 [高市早苗首相 自民党総裁][高市早苗首相 自民党][台湾有事答弁めぐる日中応酬 存立危機事態 高市首相 中国]:朝日新聞
記事には当初、「高市首相、台湾有事『存立危機事態になりうる』 認定なら武力行使も」との見出しがついていました。後段は、政府が存立危機事態と認定した場合、集団的自衛権に基づく武力行使が可能になることを表現したものです。
記事の履歴にある通り、初報を11月7日15時57分に配信した後、記事本文と見出しを同日21時58分に更新しました。
見出しに「なりうる」と「認定なら」という仮定の表現が重なっていることを解消するとともに、どんな場合に存立危機事態と認定されるかを説明するために「高市首相、台湾有事『存立危機事態になりうる』 武力攻撃の発生時」と見出しの一部を変更しました。
翌日の朝刊紙面に向けた編集作業の過程で、デジタル版もあわせて記事の内容や見出しを更新したものです。
反響が広がった投稿は11月8日夜のものと認識しており、時間の前後関係からもご理解いただけると思いますが、批判を受けて見出しを修正したものではありません。
■ 1. ロシアによる日本の選挙介入
- 2025年7月の参院選で政府や一部メディアが「ロシアによる選挙介入という認知戦」の展開を報じた
- 長迫智子氏:政府外からコメントできる範囲としてはあくまでも先行研究やSNS上の動向など公開情報からの「推測」になる
- これまでのロシアの選挙介入の前例やロシアのボットネットワークがどれだけ日本で広がっているかなどの分析がアメリカのシンクタンク「大西洋評議会」内にあるDFRLab(Digital Forensic Research Lab)からも出ている
- そうした調査結果の蓄積から「選挙時にこうしたボットが活発に活動し選挙に影響を与えようとした」と判断できる蓋然性が非常に高い状態にあった
- 政府からも青木一彦副官房長官(当時)や河野デジタル大臣(同)により選挙への介入を警戒するコメントが発表された
- 青木副官房長官は7月16日の記者会見で外国からの選挙介入について「我が国も影響工作の対象になっている」との認識を明確に示していた
- その後プラットフォーマー側にも照会が行われた上でいくつかのアカウントが停止されている
- こうした動きからロシアが工作に関与していると判断し得る確度の高い情報があったのではないかと考えられる
■ 2. ディスインフォメーションの定義
- 認知戦においては偽情報という言葉が政府やメディア等で使用されるが、実態を考慮すると「偽」の情報だけに警戒すればよいという誤った印象を与えてしまう訳語だったのではないかと個人的には考えている
- 影響力工作で多用されるディスインフォメーションはフェイクの情報も含むが、事実である情報が誤った文脈で用いられたり、ハッキングによりリークされた機密情報など表に出るべきでない情報が利用されたりすることもある
- そのためディスインフォメーションを日本語で表すなら「歪曲された情報」といったニュアンスがより正確ではないかと思う
- 諸外国での用法を総合するとディスインフォメーションは社会・公益への攻撃を目的とした害意のある情報で、情報自体が偽であるだけでなく、情報自体は真であるが誤った文脈や操作された内容で拡散されるものなど真偽どちらもありうると定義できる
■ 3. インフルエンサーの利用
- 現時点ではボットネットワーク周辺で拡散に利用されているアカウントがロシアから金銭の支払いなどを得ていたのかは分かっていない
- 単純に金銭的なインセンティブからインプレッションを稼ぎやすい話題を拡散していただけのアカウントもいると思われる
- ただし過去に南米でロシアと中国が連携してディスインフォメーションを広げようとした際にローカルなインフルエンサーに資金を提供して拡散させるという事例が確認されている
- そのため日本でも同様の事例が既に存在する可能性はある
- 中国の例で言えば台湾で活動している大陸系のインフルエンサーに投資するあるいは愛国的なネットユーザーたちがインフルエンサーにスーパーチャット(投げ銭)をしている
- 2019年の調査では台湾のトップ10に入るインフルエンサーのうち7人がそうした中国からの投資や意図が疑われるような不自然な投げ銭を受けていたという調査結果もある
■ 4. 認知戦の広がり
- 2016年以降活発化してきたと言っていい
- ロシアは当初自身の権益や影響力に関わる欧米やアフリカに対する選挙干渉に力を入れていた
- そしてロシアがサイバー空間で影響力工作を拡大させているのを見て中国もその手法を学び、これまでのプロパガンダ的発信だけでなく社会の分断を煽る工作も採用して実践するようになった
- もともと中露は軍同士の交流も深く人員を派遣するなどして連携を強めてきている
- 中国はインド・太平洋側に注力していて特に中国が「核心的利益の中の核心」と位置付ける台湾は工作のメインターゲットとされている
- 認知戦というとインターネット空間やSNS上でだけ行われるというイメージだが実際にはメディア買収からサイバー攻撃、物理空間での体制破壊的行動の煽動までを含む広い範囲で展開されている
■ 5. 中国による福島原発処理水に関する認知戦
- 代表的な事例としては2023年の福島原発処理水排出に関するディスインフォメーションキャンペーンがある
- ディスインフォメーションの拡散だけでなく処理水(treated water)を「核汚染水(nuclear contaminated water)」と呼ぶなどといった印象操作も行われた
- 放水以前の温度変化による海面変化の画像を悪用して「汚染水の影響がこんなに広がっている」というようなフェイク画像などが中国で作られ同様のディスインフォメーションが日本にも侵入され拡散されるとともに同じ中国語圏である台湾でも広く拡散された
- しかも中国はSNS内の情報拡散だけでなく太平洋島嶼国に対して現地の活動家を扇動して「汚染水放出反対デモ」を組織していたという報告もある
■ 6. 台湾のオードリー・タンの対策
- 認知戦への対策が進む台湾はIT大臣を務めたオードリー・タンが音頭を取って「2-2-2の原則」を推進してきた
- 誤った情報や害のある情報が確認されてから「20分以内」に「200字以内」で「2枚の画像」を付けた形式で迅速かつわかりやすい発信で有害情報を打ち消す運用を行政府は求められている
- また2019年からLINE Fact Checkerという取り組みが始まっていてユーザーが疑わしいと思う情報をLINEで質問すると即座に「フェイク」「真実」「一部真実」という判定を下してくれる
- もちろんここまでやってもすべてのディスインフォメーションを打ち消せるわけではないが政府やプラットフォーマー、ファクトチェック団体等がこれだけ積極的に協働しているという姿勢をみせることによって国民の理解も高まっている
■ 7. JICAアフリカ・ホームタウン構想の誤情報
- 影響力工作かどうかは明らかではないが最近の日本でもアフリカ開発会議(TICAD)に関連して「JICAアフリカ・ホームタウン」構想に関する偽・誤情報が大量に拡散された
- 「ホームタウン」という言葉が移民促進事業を連想させまたナイジェリア政府のプレスリリースやタンザニア現地報道が特別ビザ創設など誤情報を含んでいたことで国内で大きな反発を呼んだ
- JICAもこれらが「誤った情報である」ことは発信・反論していたがSNSで逐次訂正情報を出すなど後手に回ってしまい偽・誤情報対策には不慣れだったと思われる
■ 8. 認知戦という概念の問題点
- 認知戦という概念が広まったことで意見や認識の異なる相手を「お前はロシアか中国の手先だろう」と決めつけるような人たちも出てきてしまった
- 認知戦では社会の分断を深めることも狙いの一つであるにも関わらず認知戦の知識のある人たちによってむしろ分断が広まってしまう皮肉な状況となっている
- 本来あるアカウントが外国勢力のボットなのかどうかというようなことは政府やプラットフォーマーが技術的・政治的にアトリビューション(帰属の特定)を行って判断すべきこと
- ユーザーは発信している情報の真偽や文脈、ナラティブに注目すべき
■ 9. ディスインフォメーションの真偽の割合
- ディスインフォメーションは日本では「偽情報」と訳されることが多いが実際には社会に対する攻撃のために意図的に流される情報の7割が真実、3割が虚偽という割合だと信憑性が出やすく信じられやすいとされている
- ロシアによる情報戦・認知戦に関する学術的発信でもディスインフォメーションを「嘘と真実の割合を注意深く調和させること」と定義してもいる
- ディスインフォメーションを丸ごと「偽である」と認識してしまうとむしろ部分的に正しい情報を指摘されて「フェイクニュース扱いしているがこれは事実だ」と言われる余地が生じてしまう
■ 10. 生成AIによる動画の悪用
- 技術面で言えばやはり動画中心のSNSの登場、インフルエンサーによる動画配信の活発化、ショート動画などの流行によりこれまで以上にエモーショナルなアテンションエコノミーが拡大してきた
- また生成AIの進展によって大量かつ多言語のディスインフォメーションが作られやすくなった面もある
- ロシアの「ドッペルゲンガー」というキャンペーンではAIを使ってウクライナ支援を止めさせるためのナラティブを広める画像が大量生成され拡散された
- 例えばハリウッドセレブの画像をAIで加工して「ウクライナ支援にこれだけの巨額のお金が使われている。あなたは疑問に思いませんか」というようなことを言わせているもの
■ 11. 陰謀論の兵器化
- 2021年の米議会襲撃には中心となったQアノングループへのロシアの関与も指摘されていたがこの前後から中露は陰謀論的なナラティブが認知戦に有効であることを認識し「陰謀論の兵器化」に乗り出しているという分析もある
- Qアノンのような陰謀論を思想の中心とする人々がその陰謀論的世界観をベースに何らかの体制破壊的な行動に出る時にその行動を中露の認知戦が後押ししている可能性がある
- こうした動きは今後日本でも警戒すべき
■ 12. 対策:プレバンキング
- 現状では対象となる人のリテラシーによってアプローチは変わってくるという分析がなされている
- そこまで陰謀論に染まっていない一定以上のリテラシーを持つ人にはファクトチェックや政府および公的機関の公式発表を随時確認してもらうのがいい
- 若い世代へのリテラシー教育も効果があるとされている
- ファクトチェックが事後の対応となるため効果が薄いという指摘もあり現在では「プレバンキング」という事前の手法も重視されている
- プレバンキングとは「認知戦のテーマとして狙われやすい話題やナラティブこれらを拡散する典型的手法を事前に知っておくこと」で騙されることを避けることも有効
■ 13. 怒りの感情の利用
- 認知戦ではわれわれの「怒り」の感情や認知バイアスを利用することで情報の拡散を図ると分析されている
- 心理学的に「怒り」の感情はディスインフォメーションの拡散行動を促進するという先行研究もある
- そのため何か怒りを覚えるようなニュースや情報に接した際にはいったん自分の情動を顧みて感情の赴くままに拡散や発信をしないことを心掛けるだけでも効果がある
- ある意味ではアンガーマネージメントがSNSを使う際にも必要となり認知戦防衛の一助ともなる
■ 14. 社会的アプローチの必要性
- 反ワクチンであれディープステート論であれそうした情報に深入りしてしまう人は社会に対する不満や不安を抱えているかたも多いと考えられている
- そうした人に「あなたは間違っている」「正しい情報はこれだ」と押し付けてもあまり効果がなくむしろ意固地になって余計に別の情報を受け入れなくなってしまうことさえある
- そのような認識レベルが深刻である方々には無理やり正しい情報を押し付けるのではなくなるべく別の楽しみに誘導する、孤立している人であるならばコミュニティとして受け入れるなどの心理的・社会的なアプローチも必要になる
- 最近の研究では陰謀論者をAIチャットボットと対話させると陰謀論への確信度が減少したり信念を変化させることが出来たという研究もあるのでそうした技術的アプローチにも期待できる
■ 15. 結論
- 認知戦下で狙われやすい分断を社会に生じさせないためには政府やプラットフォーマーの対応だけでなくSNSユーザーの方々のユーザーの方の振る舞いやメディアの報道のあり方、リテラシー教育などあらゆる角度からの対策が求められる
- 情報戦・認知戦という観点ではサイバー空間に接続したときに市民一人ひとりが戦場に立っていることとなり国民も政府も含めすでに認知戦の文脈では有事のさなかにあることを意識した対応が必要
■ 1. 作品の基本情報
- 『みいちゃんと山田さん』は2012年の新宿・歌舞伎町のキャバクラで知り合った主人公の「山田さん」と同僚の「みいちゃん」が共に過ごした12ヵ月間を描いていく漫画
- 作者は亜月ねね
- 漫画アプリ「マガポケ」(講談社)で連載中
- 筆者も「マガポケ」を使っており読むたびにモヤモヤしながらも何となく読んでいた
■ 2. 作品の成り立ち
- 作者がXで発表しKindleインディーズマンガで『みいちゃんと山田さん: みいちゃんが死ぬまでの12ヶ月の話(Kindle版)』として公開していた作品がもとになっている
- 現在コミックスは公開停止中
- 同作の人気に目をつけた講談社の担当編集者がスカウトし商業媒体での連載が始まった
- Kindle版の作者名義はダイアナ
- ダイアナとは旧Twitter時代からX上でキャバクラ、パパ活、性風俗産業などに関わる漫画を発表していたアカウント
- 亜月は2022年1月から2024年2月まで漫画を担当していた
- 運営者の実態が不明なアカウントであり何人の人間によって動かしているのかもわからないため、作品の内容について亜月が作画以外のどれぐらいの部分を担当していたかは不明
- コミックス『夜のことばたち』が彩図社から出されている
- かつての友人が「みいちゃん」のモデルとなっていると亜月が作中コラムで語っている
■ 3. 物語の内容
- 第一話で「みいちゃん」が殺害されたことが語られ冒頭から彼女の不幸の軌跡を追っていく物語になることが読者に提示される
- 「みいちゃん」は軽度知的障害を持っているのであろうことが物語中で示唆されている
- 空腹のため金を払わないままコンビニで売っているパンを食べてしまうなどの奇行が絶えない
- 小学生レベルの学力がなく漢字の読み書きはできない
- 小柄で可愛らしい風貌の彼女は言動を含めて幼く見え、そういった嗜好の一部の客に人気があるが、複数のお客と性的関係を結んでいることが人気の理由の一つだと発覚する
- 店の店員複数とも性行為をしている
- 安易に性行為をしてしまう原因としては過去の体験から性交すると相手が優しくしてくれるという刷り込みがされているから
- 彼氏からDVを受けており金を稼ぐために街娼をすることを指示されるなど様々な虐待を受けているが、本人は共依存状態に陥っているためそれが愛情によるものだと誤認識をしている
- キャバクラ退店後はNGなしのデリヘル嬢として過酷なプレイや本番行為を客に要求されている
■ 4. 山田さんのキャラクター
- 「山田さん」は大学生だがほぼ通学していない
- キャバクラも生活費のためにやっているだけでモチベーションはさほど高くない
- 小説好きであり本人は絵を描くのが好きだったのだが、過干渉な母親に勉強以外のことを否定されて育ってきた
- 「みいちゃん」に対して距離をとったり意地悪く接する同僚の中で唯一といってくらい普通に接しようとしているように描かれている
- 現在は「みいちゃん」と同居しており「みいちゃん」の問題行動を是正しようと接することも多い
■ 5. 障害者福祉に関する描写
- ライター・田口ゆうによる記事『「みいちゃんが殺されるまでの12か月」新宿キャバクラを舞台に描く衝撃作『みいちゃんと山田さん』。作者が明かす創作の裏側』(「日刊SPA!」25年05月22日)がある
- 田口の「障害者福祉に興味を持つ層に向けて描いたのか?」という質問に対して、亜月は「みいちゃんがどんな子なのかは読者の判断にゆだねています。特に障害福祉を描く目的の作品ではありません。夜のキャバクラという物語にしやすい舞台にみいちゃんや山田さんといった性格が真逆のキャラクターを配置し物語を作りました」と答えている
- また作品を描くにあたって少年犯罪や心理学系の書籍を参考にしたり、支援学校の教師や性風俗従事者のための無料相談窓口・風テラスなどの団体に取材ということも語られている
■ 6. 筆者の批判的見解
- 障害者福祉に興味を持つ層に向けて描かれたものではないのは読めばすぐわかることだし、「みいちゃん」がどういう子なのか読者の判断にまかせているというのも無理がある
- この作品は作者の体験をベースに軽度知的障害の人や取材などで得た水商売や風俗、パパ活等に従事する人や客の極端で不快なエピソードを過剰に積み込み、体裁程度の障害者福祉についての情報が付け加えられたような作品なのではないか
- 障害者福祉に関わっている当事者や関係者が読んで肯定的にとらえられるような作品ではない
- 「読者の判断にゆだねています」というが作中各所であからさまにそれが示唆されている以上それは通らないのではないか
- 明言することから逃げているだけのように思える
- 作中の極端で不快なエピソードには実際の出来事がモデルとなっているものが多いと思うが、極端なケースを集めて一人の人間に盛ってしまえばそれは現実の当事者とは離れてしまう
- 当事者に対する偏見を育てているという批判があっても不思議ではない
- 少なくとも読者がそういうエピソードの不快さを見世物的に消費することは想定されているのではないだろうか
■ 7. 一種の「ポルノ」として消費されている側面が強い
- コミックス3巻では『ケーキの切れない非行少年たち』の著者・宮口幸治と亜月の対談が掲載されている(このセッティングにもなんらかのエクスキューズを感じモヤモヤする)
- そこに「みいちゃん」を気にかけており彼女の母親に特別支援学級に入れることを提案するも激しく拒絶される小学校時代の担任教諭について、宮口が親との信頼関係をもっと形成しておかないといけなかったという専門的な知見を示すところがある
- しかし実際のところ彼女は「みいちゃん」の母や祖母の拒絶を引き出すためのガジェットとしての役割しかない
- そういった指摘も意味がないような気分になってしまった
- 本作を真鍋昌平の作品と比較することもできるが、それよりも本作にテイストが似ているのは中村敦彦のノンフィクション
- 企画AV女優を扱った『名前のない女たち』シリーズ、10年代の東京で貧困を理由に性産業に従事する女性を扱った『東京貧困女子。』、『ルポ中年童貞』といった中村の著作は取材対象者のネガティヴな面を強調する傾向があり一種の「ポルノ」として消費されている側面が強い
- 『みいちゃんと山田さん』も多くの人にそういった消費の仕方がされているように感じる
- 作者や編集部がどう考えているのかはっきりとしたことは言えないが「エクスプロイテーション」作品として機能している側面があることは否定できないのではないか
■ 8. 解像度の高い部分と低い部分
- 「みいちゃん」というキャラクターが過剰に盛り込まれ過ぎている一方で、同僚の発達障害の女性のエピソードや「山田さん」の「毒親」エピソードは解像度が高いというか過剰になり過ぎておらず作者の実体験や周囲のエピソードが反映されている部分ではないかと思う
- また客の男性の不快なエピソードも過剰になりすぎないリアリティを保っている
- 「日刊SPA!」の記事で亜月は10年代の夜職の独特な雰囲気を再現したかったと語っているが、そういった部分はちゃんと反映されているのではないだろうか
- バンギャについてはそんなに解像度が高くないような気がする
- 「山田さん」が結局は見下しているとか問題に対する意識が低いという意見もあるが、あれは物語の設定から考えるとわりとリアルだと思う
■ 9. 結論
- モヤモヤしてしまう作品だがこの作品はエンターテイメント志向のフィクションであって、確かに言えることはこれを読んだからといって知的障碍者について理解したように何かを語ったりするのは違うのではないかということ
- 酷い出来事、人間の心のゲスな部分、物事の最低な部分を書いている作品を見て「ここに真実がある」みたいな反応をとる人もいるけど、それは「面白いもの」ではあるかもしれないけど真実ではないし、それだけでは何もならないというと思うくらいには自分も年を取ったのだなと感じる
■ 1. 2025年ノーベル経済学賞の受賞者と意義
- 受賞者:
- フィリップ・アギヨン(フランス)
- ピーター・ホーウィット(カナダ)
- ジョエル・モキイア(オランダ)
- 受賞理由:
- 経済成長を創造と破壊の連鎖(creative destruction)として捉え直した
- 単なる理論の顕彰ではない
- 成熟社会が停滞を脱し再び成長を取り戻すための知の再設計に対する評価
■ 2. シュンペーターの理論の数学的再構築
- シュンペーターの洞察:
- 資本主義の本質は創造的破壊にある
- 資本主義とは安定ではなく絶えざる変化と入れ替えの連鎖を本質とするシステム
- 直感的ではあったが実証・政策設計には使いづらかった
- アギヨンとホーウィットの貢献:
- イノベーションが旧技術を駆逐するダイナミズムを定量的・政策的に操作可能な形に翻訳
- 1992年の論文「A Model of Growth through Creative Destruction」で資本主義の動態を数式で描いた
- 成長率の公式:
- 成長率 g = λ × ln(1+γ)
- λ(ラムダ)= 革新頻度(どれだけ頻繁に新しい技術・企業が生まれるか)
- γ(ガンマ)= 改良幅(一回の革新でどれだけ生産性が向上するか)
- 公式の意味:
- 経済成長を技術革新の数と質の掛け算として定義
- 成長とは創造(innovation)が破壊(淘汰)を生み、淘汰がまた次の創造を呼ぶ動的均衡
- 経済成長は外生的(天から降ってくるもの)ではなく社会の構造と制度によって内側から生み出せる
- 国家は成長の設計者になれるという革命的発想
■ 3. モデルの4段階構造
- 4段階の循環:
- 創造(Innovation): 新しい技術・企業・職種が生まれる
- 破壊(Destruction): 旧技術・非効率企業が淘汰される
- 成長(Growth): 生産性が高まり、賃金が上昇する
- 制度(Institution): 痛みを吸収し、再挑戦を支える
- 循環の重要性:
- この4段階が循環し続けるとき経済は停滞せず進化する
- いずれかの歯車が止まると成長も止まる
- 日本の長期停滞:
- 創造の少なさ、破壊の遅れ、成長の浅さ、制度の硬直という4つの歯車が同時に摩耗している結果
■ 4. 実証事例(米国・韓国・デンマーク)
- 米国の事例:
- 特許件数の増加とともに新規企業設立率と旧企業退出率の双方が上昇
- 特許(知識の累積)が創造(entry)と破壊(exit)を同時に活性化させた
- 生産性成長(TFP)を押し上げた
- 創造と破壊が対立するのではなく共進化する関係
- 韓国の事例:
- 1997年のアジア通貨危機は制度的破壊だった
- IMFの支援条件として財閥構造の独占が是正された
- 新しい企業の参入が急増
- 革新頻度λが高まり生産性成長率が再びプラスに転じた
- 制度の破壊が経済の創造を導いた典型例
- デンマークの事例:
- フレキシキュリティ(Flexicurity = flexibility + security)制度
- 解雇ルールの明確化(柔軟性)+ 所得補償(安全網)+ 再教育(再挑戦)という三位一体構造
- 破壊を止めずに社会を安定化させることに成功
- アギヨンは自らの理論の社会実装版と呼ぶ
■ 5. 国家の役割の再定義
- 国家の二重の役割:
- 国家は投資家(Investor)兼保険者(Insurer)でなければならない
- 創造を促すためにリスクを取る(投資家として)
- 破壊の痛みを社会保障で吸収する(保険者として)
- アギヨンの言葉:
- 柔軟性と安心を両立させることがダイナミックで一体的な社会の鍵である
- 経済成長とは単に生産性の上昇ではなく変化を受け入れながら幸福を守る社会システムの再構築
■ 6. 理論の本質的メッセージ
- 成長の非自動性:
- 成長は自動的には続かない
- 技術があれば自然に成長するという時代は終わった
- 創造・破壊・成長・制度の4段階を設計可能な連鎖として運用する力が必要
- 進化の倫理:
- 創造的破壊は単なる経済モデルではない
- 進化を恐れず痛みを設計する社会哲学
- 創造がなければ活力が失われる
- 破壊がなければ創造は生まれない
- 成長はこの二つの緊張の中からしか立ち上がらない
- 創造的破壊とは壊すことではなく再び生き直す力
■ 7. 日本の賃金が上がらない理由
- 賃金上昇の数式:
- 実質賃金成長 ≒ 労働生産性成長 - マークアップ上昇 + 労働分配率の上昇
- λを上げる(新陳代謝を高める)ことで生産性と競争力が向上
- γを拡大する(技術と人材を深める)ことで付加価値が高まる
- 適度な競争と利益分配制度で成果が賃金へ波及
- 日本の問題点:
- 賃金停滞の真の原因は生産性と新陳代謝の停滞にある
- 日本の起業率はOECD平均の半分以下
- 倒産率も低く企業の平均寿命は30年を超える
- これは安定ではなく動かない構造
- 経済は生き物であり創造がなければ新しい産業も雇用も生まれない
- 破壊がなければ資源は動かない
- 全要素生産性(TFP)は上がらず賃金上昇のエネルギーも生まれない
- 日本の賃金停滞とは創造されず破壊されずよって成長しない経済
■ 8. λを上げる(挑戦の総量を増やす)
- 原則:
- 賃金を上げたければ挑戦の数を増やせ
- λ(革新頻度)が上がれば新技術・新企業・新職種が生まれる
- 経済全体の挑戦密度が上昇する
- 国家レベルの施策:
- 規制サンドボックスの常設化(AI・医療・建設・金融など)
- 起業コストの低減(法人設立や登記・社会保険負担を軽減)
- 大学発ベンチャーの事業化支援(研究成果を社会実装へ接続)
- 企業レベルの施策:
- 内部起業制度の再設計(Amazonのように社内の課題解決を外部提供に転化)
- 小チーム・A/B実験文化(革新頻度を構造的に最大化)
- 効果:
- λが上がれば新しい産業が生まれ新しい労働需要が生まれる
- 労働市場が高付加価値側に動き賃金が底上げされる
■ 9. 破壊を正常化する
- 日本の文化的問題:
- 倒産を恥とし撤退を失敗と見なす文化が根強い
- アギヨン理論において破壊は創造の前提であり経済の再生プロセス
- 政策的課題:
- 倒産・再挑戦制度の迅速化(破産を再起のプロセスへ変える)
- 経営者保証の撤廃(挑戦のリスクを制度的に軽減)
- 補助金のサンセット化(低生産性産業への支援を段階的に縮小しリスキリング投資へ転換)
- 原則:
- 破壊を止めることは創造を止めることに等しい
- 終わりを設計できる国だけが始まりを生み出せる
■ 10. γを拡大する(学びと技術で賃金の深さをつくる)
- 技術の深化:
- AI・半導体・グリーン・医療DXなどへの集中投資
- Compute & Data Commons(共有研究基盤)の整備
- 中小企業の採用側イノベーション(ロボット・自動化導入支援)
- 人材の深化:
- J-CPF(個人教育口座制度)の全国導入(全国民に学び直し残高を付与)
- マイクロ資格制度(短期間で技能を可視化し職能流通を促進)
- 企業の学習KPI導入(学習時間・再教育受講率を経営指標に組み込む)
- 重要な認識転換:
- γを拡大すれば付加価値が高まり賃金が物価上昇を超えて持続的に伸びる
- 学びをコストから投資へと定義し直すことが重要
■ 11. 制度で支える
- デンマークの成功モデル:
- フレキシキュリティの三位一体構造
- 解雇の自由、再教育の義務化、所得補償
- 破壊を止めずに社会を安定させた
- 国家の役割:
- 投資家としてR&D・教育を支える
- 保険者として破壊の痛みを吸収する
- Investor + Insurerモデルが創造的破壊を持続可能にする社会的装置
- 日本への提言:
- 雇用を守るから人を守る社会へシフトすべき
- 再教育と所得保障をセットで制度化
- 挑戦を恐れない国をつくることが創造の土台になる
■ 12. 日本再生の4つのプロセス
- 創造(Innovation):
- 規制サンドボックスの常設化
- 起業コストの引き下げ
- 大学発ベンチャー支援
- 公共データの開放
- 企業の自己破壊の文化
- 破壊(Destruction):
- 倒産・再挑戦制度の迅速化
- 経営者保証の撤廃
- 補助金のサンセット化
- 雇用を守るから人を守るへのパラダイムシフト
- 成長(Growth):
- 技術と人材の同軸投資
- R&D×HRD経営
- 知識の拡散(地方スキルハブの設置、企業間越境学習、教育のオープンプラットフォーム化)
- 制度(Institution):
- 国家は投資家兼保険者である
- 公的R&D・教育投資の拡大
- 再教育・再挑戦支援の制度化
- 政策のデータ連動(国家ダッシュボード化)
- セカンドチャンス制度の整備
■ 13. 賃金上昇国家の本質
- 定義:
- 単に物価を超えて賃金を上げる国ではない
- 挑戦が報われ失敗が許され再挑戦が称えられる国
- この精神的インフラこそがアギヨン=ホーウィット理論の社会実装
- 4つの要素の循環:
- 創造とは希望を生み出す力
- 破壊とは過去を整理する勇気
- 成長とは人が学び続ける仕組み
- 制度とはそれを社会が支え合う知恵
- この4つの要素が呼吸のように循環する国家においてのみ賃金上昇は構造として定着する
■ 14. 成熟社会のフロンティア
- 変化のデザイン:
- 日本はもはや量的拡大の時代を生きていない
- 必要なのは変化そのものをデザインする成熟国家の知性
- 変化を拒む国には脅威として襲いかかる
- 変化を設計できる国には新しい成長の源泉となる
- 創造的破壊とは変化のデザイン学
- 変化を管理するのではなく変化を歓迎する
■ 15. 経営への呼びかけ
- 創造的破壊経営:
- 破壊を恐れず自らを進化させ続ける企業だけが真に社会を変える力を持つ
- 経営の目的は利益の最大化ではなく挑戦の継続化にある
- イノベーションを日常化しλ(革新頻度)を上げる
- 技術と人材の同軸投資でγ(改良幅)を深める
- 挑戦を許す制度・失敗を称える文化を企業文化に組み込む
- 組織を人間の進化装置に変えること
■ 16. 政治と社会への提言
- 政治の役割:
- 国民を守ることではなく動けるようにすること
- 3つの政策転換:
- 政策のデータ化と更新性(国家ダッシュボードで賃金・物価・生産性をリアルタイム管理)
- 社会保障の統合再設計(雇用保険・教育・再挑戦支援を統合)
- 挑戦者への再分配(勇気の分配)(新産業・ベンチャー・リスキリングへの公的支援を未来への社会投資と位置づける)
- 原則:
- 勇気の分配ができる国こそ創造的破壊を幸福に変える国
■ 17. 理論の到達点
- 進化を恐れない社会の条件:
- 経済の仕組みを超えた進化を恐れない社会の条件を示した
- 創造が増え破壊が設計され成長が深まり制度が包摂する
- その連鎖の先にあるのは数字ではなく人間の尊厳
- 成長の再定義:
- 成長とはGDPを増やすことではなく人が進化を恐れなくなること
- 賃金とは挑戦の価値を社会が共有する仕組み
- 最大のメッセージ:
- 未来は設計できる
- 創造を奨励し破壊を恐れず成長を深め制度で痛みを吸収する
- この4つの歯車を社会全体で噛み合わせたとき日本は再び挑戦が報われる国・変化が幸福を生む国へと進化できる
- 創造的破壊とは壊すことではなく再び希望を設計すること
- 破壊を恐れた国は停滞し破壊を設計できた国は進化する
- 進化を信じる国だけが未来を所有する
■ 1. フローレンス疑惑の概要
- 事件の発覚:
- 2025年11月、日本の非営利セクターを牽引してきた認定NPO法人フローレンスを巡る疑惑が発覚
- ネットから始まり地上波でも報じられるなど社会に波紋を広げた
- 渋谷区議会議員の指摘等により明らかになった
- 疑惑の内容:
- フローレンスが補助金を活用して取得した不動産に対して、法的に制限されているはずの根抵当権を設定していたというコンプライアンス違反
- 公的資金が投入された資産は適正な運用のために厳格な処分制限が課されるのが通例
- 無断での担保設定は補助金適正化法等の趣旨に反する
- 事件の意味:
- 単なる一団体の不祥事にとどまらない
- 過去四半世紀にわたって形成されてきた日本の非営利セクターの構造的な課題を浮き彫りにした
- 長年にわたり政府の有識者会議に参加し政策提言を行ってきた業界の顔ともいえる団体の重大なガバナンス上の課題を示唆
- 今後の展開:
- なぜこのような事態が起きたのか理由は現状わからない
- 今後、渋谷区や区長の関わりを含めて解明が進むだろう
■ 2. 日本の非営利セクターの歴史的変遷(1990年代)
- 1990年代以前の状況:
- ボランティアや市民活動は法的な後ろ盾を持たない脆弱な草の根の活動に過ぎなかった
- 特に自民党政権下において市民活動はしばしば反体制的な運動と同一視された
- 警戒の対象ですらあった
- 阪神・淡路大震災の影響(1995年):
- ボランティアの爆発的な活躍により潮目が変わる
- ボランティア元年と呼ばれる
- 市民の自発的な活動を支援するための環境整備が急務とされた
- NPO法の成立(1998年):
- 特定非営利活動促進法が成立
- 市民活動団体はNPO法人という法人格を持つことが可能となった
- 契約主体となることができるようになった
■ 3. 社会起業家の台頭(2000年代)
- 社会起業家概念の輸入:
- ITベンチャーブームと呼応するように社会起業家(ソーシャル・アントレプレナー)という概念が日本に輸入された
- ビジネスの手法を用いて社会課題を解決するという新しいモデル
- 従来の清貧なボランティア像とは一線を画す革新的でスマートなスタイルとして脚光を浴びた
- ITブームやイノベーションへの関心の高まりとも結びついた
- 民主党政権の影響(2009年):
- 民主党への政権交代がこの流れを決定づける
- 新しい公共というスローガンのもと鳩山政権は社会起業家たちを政府のパートナーとして政策決定の場に招き入れた
- 東日本大震災の影響(2011年):
- 復興支援のために巨額の公的資金や寄付金が非営利セクターに流れ込む契機となった
- 活動の規模は急速に拡大した
- その過程で資金を回すことへの関心が高まった
■ 4. 問題のある合理性の醸成
- 一部の有力者に醸成された合理性:
- 一部の有力な社会起業家やNPOリーダーたちの間にある種の合理性が醸成された
- イノベーション志向の強いコミュニティを背景に持つ
- 日本社会の既存の行政手続きや前例踏襲主義を非効率な障害物とみなす雰囲気があった
- 手続きのハック:
- 社会を変えるという崇高な目的のためには煩雑な手続きをハックすることが許容される
- 政治家や有力者との個人的なネットワークを駆使してショートカットすることが一種の実務能力として称揚される空気感があった
■ 5. 新陳代謝のなさによる構造的問題
- リーダー層の固定化:
- 1990年代後半から2000年代初頭に台頭した若手リーダーたちは2025年現在もなお業界の顔として君臨し続けている
- 20年以上にわたり主役が交代していない
- 業界の新陳代謝は失われた
- 馴れ合いの構造:
- 評価する側(資金分配者)と評価される側(受託者)が極めて親密な人間関係の中で固定化される馴れ合いの構造が生じている
- 健全なガバナンスを機能不全に陥らせる温床となりうる
- 制度上の課題:
- NPO法における経済的インセンティブの制約
- 日本のNPO法は経営者や職員がビジネスセクター並みの報酬を得ることを想定していない
- 経済的なリターンを限定的にすることを求める建付けになっている
- 優秀な人材をつなぎとめるための正当な報酬体系の確立はセクターの持続可能性にとって重要な課題
■ 6. NPOの実態とイメージの乖離
- メディアイメージと実態の差:
- メディアで華々しく取り上げられる社会を変える若き社会起業家や数億円規模の事業を回すNPOは統計的には極めて稀な例外に過ぎない
- 内閣府の実態調査データ:
- 2023年度特定非営利活動法人に関する実態調査報告書によれば、NPO法人の代表者の大半は60代から70代の高齢者
- 事業収益の中央値は年間わずか600万円程度(認証法人の場合)
- NPOの主流の実態:
- 日本のNPOの主流は社会起業家ではない
- 定年退職した高齢者らがまちづくり・地域清掃・伝統文化の継承・高齢者の見守りなどを行う町の互助組織
- 社会起業をしているという意識すら薄い
- 地域社会の隙間を埋めるボランティア活動の延長として契約や口座開設の利便性のために法人格を利用しているに過ぎない
- エリートNPOとの違い:
- 大多数の草の根NPOと今回疑惑の渦中にあるエリートNPOは同じNPOという看板を掲げていても全く別物
- 組織論理・資金構造・ガバナンス能力において全く異なる
■ 7. 準市場としてのNPOの役割
- 準市場の概念:
- 非営利セクターは純粋な市場原理では解決できない領域を担っている
- 行政の一律的なサービスでも対応しきれない領域を担っている
- 政府とNPOの関係:
- 政府は資源を持っているが個別の社会課題に対する解像度が低く専門性も乏しい
- NPOは現場の課題に対する解像度は高いが資源がない
- 両者が協働し政府の資源を使ってNPOが課題解決にあたる図式
- 世界的なモデル:
- 福祉国家の財源的制約が露呈した現代において1990年代にイギリスのブレア政権が提唱した第三の道が代表する世界的なモデル
- 日本における役割:
- 少子高齢化で行政機能が縮小していく中、若年無業者支援や非行少年の更生・まちづくりといった票になりにくく市場化も難しいニッチな領域を支えている
- 現状:
- 2025年現在、全国には約5万のNPO法人が存在
- その多くが地域社会の不可欠なインフラとして機能している
- むしろ数の上ではピークアウトが始まっている
■ 8. 批判の矛先と懸念
- 監視強化の必要性:
- 今回の疑惑を受けてNPOに対する監視の目が厳しくなることは避けられない
- 監査の実効性向上や利益相反の防止には実効的なアプローチが導入されるべき
- 懸念される事態:
- 批判の矛先が一部のエリート・ソーシャルビジネスのガバナンス不全に向けられるのではなく制度やセクター全体への不信やバッシングへと転化する可能性
- 割を食うのは日々の資金繰りに奔走しながら地域を支えている大多数の小規模NPO
- 結果として日本のセーフティネットをさらに脆弱にすることになりかねない
■ 9. 求められる制度改革
- 規制の二階建て構造:
- 公的資金を受け入れる規模の大きなNPOに対しては企業と同等かそれ以上の厳格なガバナンスと透明性を求めるべき
- 社会貢献しているからという甘えや手続きの軽視は許容されるべきではない
- 大多数を占める小規模なNPOに対してはむしろ過度な事務負担を求めず活動しやすい環境を守る寛容な制度を維持することも必要
- 規模や公的資金の受入額に応じたいわゆる規制の二階建て構造への転換が必要
- 業界の新陳代謝:
- ソーシャルビジネス第1世代から20年以上固定化されてきた業界に適切な新陳代謝をもたらす必要がある
- 同じような人物が多くの分野で長期間にわたって有識者として公金の配分に関与し続けるシステムは見直されるべき
- 小規模NPOの保護:
- 大多数を占める善意の小規模NPOが活動しやすい環境を守ること
■ 10. 非営利セクターの転換期
- 時代の転換:
- 今回の疑惑は日本の非営利セクターとNPOが善意と熱意だけで走れる牧歌的な時代が終わりを告げることを示唆
- 次のステージに入ろうとしている
- 厳格な規律と責任が問われる成熟期に移行すべき時期に来ている
- 歴史的転換点:
- 1995年のボランティア元年
- 2011年東日本大震災を契機とする寄付元年
- 2025年のいま、非営利セクターを再度評価し再設計する局面を迎えている
■ 1. 専門家は信頼できない
- 政治評論家とかあらゆる業界の評論家がやっていること
- 最近、政治評論家の皆さんは外すことが多い
- すごく困っている
- でも聞かれたら答えざるを得ないから、みんな一生懸命お話をひねり出している
■ 2. 漫画で分かる国際情勢
- 「漫画がやっぱすごい」ということで「漫画で分かる国際情勢」をやってみる
- 岡田先生は「ベイジュモカーバ」と「日本の兵器が世界を救う」という本を買った
- 実は買うつもりがない本が1冊混じっていた(ベイジュモカーバの方)
- 本屋さんで積んである本を別の本と間違えて買ってしまった
- 普段だったらこういう本は絶対買わない
■ 3. 今の情報を追いかけることの問題
- ひかわ竜介さん(アニメ特撮研究家)が「最近のアニメ全部見ない」とFacebookで書いていた
- なぜかというと、最近のアニメを見てもそこで得られる知識は2年3年経ったらもう古くなっている場合が多い
- ブームがとっくに去ってしまって、あの時にはすごい大事に感じたんだけど何年かしたらみんな振り返りもしないことも多い
- だから今の情報というのはそんな熱心に追いかけないという
- 岡田先生も同じ考え
- 今のことを言ってる本よりも、今のブームと離れたところで書いてるような本の方が多分本質的に考える時に面白い
- 本というのは情報を得るんだったらブログでも何でもいい
- 考えるためには最新の知識とか今のものを追っかけるよりは別のところから考えた方がいい
■ 4. 専門家に聞いても分からない
- 例えば戦争が起きるのかどうか(中国と北朝鮮で戦争が起きるのかどうか)
- 最新の知識とか深い知識もしくは他に流れない知識を持ってる専門家に聞いても分からないと思う
- あんまり意味がないと思う
- その理由は漫画に書いてある
■ 5. ワシズ麻雀の比喩
- 赤木というあの麻雀漫画の中に出てくるワシズ麻雀
- 全てのパイの3/4がガラスで透明になっている
- だから自分の手が見える
- でも1/4だけ黒い
- なので1/4だけ見えない
- こういう状況で麻雀を打っている
- 実は政治評論家とかあらゆる業界の評論家がやってることはこれ
- 一般の人に比べてパイは透けている
- 例えばこれまでのアメリカの政治の歴史とか見てたり、自民党の幹部の人に取材したり、話聞いたり友達になったり一緒の番組だったら裏話みたいなもの聞いてるとほぼ分かってくる
- 全体の3/4ぐらいは麻雀パイが透けていてガラスの状態
- なので次はどうするのかっていうのが手が読めれば麻雀の先がどっち勝つのか分かるように大体ほぼみんな読めてくる
- そういう状況が大体20年とか25年30年ぐらいから続いた(日本にしても世界にしても)
■ 6. 麻雀パイが見えなくなった
- でも最近、政治評論家の皆さんは外すことが多い
- 例えばEUをイギリスのEU離脱とかトランプの大統領の出現とか、そういうのは全部外している
- なぜかというと、一斉にこの麻雀パイが見えなくなっている
- 麻雀牌が透明だった時に自分たちが分かると思ってたことがこれまで1/4は確かに謎だった
- でも残り3/4の向こうが見えてるものが急に見えなくなってしまった
- なのでみんな困ってる
- 知ってる限り政治評論家というのはみんな基本的に聞かれても分からないこと聞かれてすごく困ってる
- でも聞かれたら答えざるを得ないから、みんな一生懸命お話をひねり出している
■ 7. 韓国の朴槿恵大統領弾劾裁判の例
- 今韓国で大統領選挙が行われようとしていて、それが朴槿恵前大統領が弾劾裁判を受けて有罪と決まったから
- この弾劾裁判に関しても韓国の専門家でほとんど全員「朴槿恵大統領は裁判受けるけども有罪にはならないだろう」とみんな言ってた
- でも見事に予想を外した
■ 8. 人情論
- 予想を外して有罪になってからみんなこう色々理屈を考える
- その中で出てきた理屈が「人情」という言葉
- 京都大学の岡本教授(文学部の教授、中国法制の専門家)が説明した
- 中国法制の専門家の間で法や判決を下す際の基準の1つとして「情」という言葉がよく使われる
- これを4文字引き延ばせば「人情」
- 裁判で判決を下すなり政府が何らかの政治的判断を下す際に大多数の人々が「なるほどな」と納得できる判断を下す、これが「情」
- 法律の条文はこの「情」によって解釈され、また変更もされる
- 極端に言えば日本語で言えば大岡裁きだということになる
- 判決などが最終的に拠るのはこの「情」によってであって、それを組み上げる政治家というのが徳があるとか、そういう風な尊敬されるリーダーということになる
- なので韓国の裁判では今でも基本
- 国民感情に合致しない判決を下した裁判官は世間から非難の的になる
- 民主化で世論が強くなった分ますますその裁判の傾向が深まった感じがする
■ 9. 法治国家批判への反論
- これに関して大体みんなも「これダメだろう」って意見が多い
- それはなぜかというとそれは法治国家の形ではないから
- いかに人が納得しないからと言っても法律で決まってるんだからちゃんと決めなきゃダメじゃないか
- なんで中国や韓国はこんなに遅れるんだ
- 彼らは法治国家じゃまだない
- 日本みたいに早く法治国家の中に入れて先進国の仲間入りしなきゃダメじゃないのか
- という試験意見が一般的な意見というかインテリっぽい意見
- でも本当にそうなのか
- 法治国家というシステムが本当に正しいのか
■ 10. 中国は3000年前に法治国家を通ってきた
- 法治国家というシステムは中国はすでに3000年前に通ってきている
- 元々古代中国というのは超強烈な法治国家で、その影響下にある韓国も法治国家
- これはハムラビ法典でも何でもそうだし、ギリシャ時代、ローマ時代から法治国家なの当たり前
- 別に20世紀になって21世紀になって世界中の先進国がようやっと法治国家になってきましたね、それまでは王様の気分次第でとか独裁者の気分次第でっていう風になっていった遅れてますねっていうのは違う
- 実は超古代から人類は法治国家をやってみてやっぱりダメでそうじゃないシステムというのを延々繰り返している
■ 11. 蒼天航路の例
- 蒼天航路にこういうシーンがある
- 曹操孟徳というやつがカクの頭の頭のところに刀持って殴り込んでしまった
- そこで偉い騒ぎを起こして牢屋に放り込まれた
- 彼を裁く時にこの橋玄というキャラクターが悩む
- 「本当に私は朝廷に逆らってまでも法に仕えることができるのかどうか」
- つまり法治国家の限界というのは三国志の時代からしょっちゅうお話の中のドラマの中に使われている
- こういうものを大体中国は2000年ぐらい前に通り過ぎている
- この橋玄というキャラクターも曹操孟徳は一応罪は罪なんだけど、これを法で裁くことは不可能だと
- なぜか:法というのは天が決めたものなんだけども君を裁くことは例えば君はよくできた世の中(全然乱れてない世の中)だったら全然いらない人なんだけどでもそうじゃなくて今のような乱世なところだったら君のような人の方がひょっとしたら天の道理にあってるかもわからないと言ってこの人を釈放しちゃう
- これが橋玄という法の番人で当時の中国で最も法を守ったという人の判断だった
- これがやっぱりその古代中国の法治国家の中でもすごい大きいエピソードとして伝わっている
■ 12. 法治社会vs信用社会
- 法治社会っていうのはいわゆるその見知らぬもの同士が新しいことをしようとする時に法律という分かりやすいルールというのをちゃんと明文化していってそれを守ってる限り何をしてもいいっていう発展型の社会
- ところがこの地球全体が結びついていてネットワーク型の社会になっていくと全ての人が見知らぬもの同士ではなくなる
- あることをした人が別のところで何をしてで彼らが使ってる通貨もお互いに互換性がある通貨ではない
- こういう風な場合は法治社会よりも信用社会という形になってくる場合が多い
- どうやってもですねその人を法的に信頼できるのかどうかより個人的に信用できるのかどうかの方が大きくなってきて結果的に中国社会、韓国社会っていうのは法治国家という国の取るような発展途上国はお前ら経済発達しなきゃいけないから法治国家にならざるを得ないよなと
- でも先進国である中国はもう違うぞ
- お前らがやってることはもうすでに2000年、1000年先に比べて2000年前に通り過ぎた
- 徳治国家という風に言ったり、つまり王が徳を持って国を納めることとか、もしくは人治主義と言ってもいい
- 政府のトップに立つ、行政のトップに立つ人間がキャラクターを出してその国を運営していくという風になってくる
■ 13. 歴史の繰り返し
- これらは法治国家が後退したのではなくて法治国家の先にいつもいつもある問題
- それもギリシャの時代からローマの時代から古代中国の時代から一応法治国家、民主国家としてそれぞれの国が成立していったらその次はキャラクター主義になっていくっていうのは見てる限りやっぱり歴史の繰り返し
- こういうですね国家のトップの判断によって政治行政が変わってしまうっていうのは民主主義によってグローバリズムっていう無個性化
- 政治家ってこの10年20年ぐらいキャラが立たなかった
- 昔の政治家は面白いやつがいた
- でも田中角栄を最後ぐらいにしてそっから先誰が首相やっても変わんねえよという時代が日本では何十年も続いた
- それはなぜかというと実は民主主義が完成したからであって、もしくは法人効果が完成したから
■ 14. キャラクター主義とブラフ
- 今韓国がなぜ民衆のご機嫌を取るような判決になるのかというと多分法治国家の限界っていうのはもうそこ
- 法治国家っていうのはじゃあみんなの民衆の気に入らないことでも法律で決まってるからそれで行けっていう風にやって収まるのかというと暴動が起こって収まらない
- それに関しては国民の教育が足りないのかというのではなくてそれを国民に納得できるだけの人徳っていうのかな
- それを自分の人間力を持って国民を納得させるだけの政治家が出ていれば問題ないっていうのが儒教的な考え方
- だからこそ政治家には人徳が必要であって王には人徳が必要でっていう孔子様の儒教の教えにガーっと戻ってことになる
- 人徳と言ってもいいが悪く言うとトップのやつの気分次第になって、移民嫌いだわ、移民のやつにアメリカに来ちゃダメみたいに気分次第で政治が動く
■ 15. 銀と金の青天井ポーカーの比喩
- 銀と金という漫画の中で青天井ポーカーっていうのが出てくる
- 金の量に限りがない、我々のポーカーは腐敗だ
- どんなに仕掛けてきても大丈夫、しかしあいつに自信がある、俺は壁を築いてやる、注ぎ込むこの平蔵の金庫の底、その鉄板が見えるまで
- ポーカーなんだけどもどれぐらい金を継ぎ込んだかと資金力勝負のポーカーに無理やり持ち込む
- これは今の北朝鮮とアメリカと全く同じ
- つまりどちらが強いのかっていうと実はこのブラフの掛け合いになってるとブラフの掛け合いになった時は力ではなくて奥にある資金力だけで決まっちゃう
- 具体的に言うとアメリカと北朝鮮の兵力だけで完全に決まっちゃう
- だからどんなにブラフかけても北朝鮮の負けはもうこのブラフ合戦になった瞬間に完全に終わっちゃってる
■ 16. キューバ危機の例
- ケネディとフルシチョフが実はキューバのミサイルの時に同じような状況になった
- フルシチョフのソ連が何が何でもキューバに核ミサイル基地を作ることで船に核ミサイルを持ってきたところにケネディはそんなことするんだったらアメリカ核戦争も辞さないぞという風にしてブラフかけた
- どっちが引くかという風に見られたがソ連がやっぱちゃんと引いた
- それはなぜかというとブラフの掛け合い
- これケネディ以外の大統領だったら多分やらなかったしやっぱり北朝鮮とブラフの掛け合いというのもトランプ以外の大統領だったらやらなかった
- オバマは現にやらなかった
- キャラクターで勝負してくる人が出てくると、人徳っていうのを言い換えればいい、現代の言葉で言えばキャラクター
- キャラクターで勝負する人たちが政治家で出てきちゃうとそれはもうブラフ合戦になってしまってブラフ合戦になっちゃうともうこの青天井ポーカーと同じように実力というか武力をどれぐらい持ってるのかの勝負にいずれはなっちゃう
- なので武力が弱い側は張り返せない
■ 17. 結論
- 相手の麻雀が実はその見えた世界から見えない世界に変わってきた
- なので日本中の政治評論家が多分世界を含めても状況が読めなくなってみんな予測が外れてくるようになった
- 同時にイギリスのEU離脱もそうだしトランプ大統領もそうプーチンもそうドゥテルテ大統領とフィリピンもそう、世界中の政治家がキャラクター勝負になってきた
- 日本の安倍首相もそう
- キャラクター勝負になってきた
- こうなってくるとお互いにキャラクターによるブラフそういう風なものの割り合いになってくる
- そうなった場合これまでのお互いの麻雀パイが見えている状態から完全に見えない状態になってくるので実はかなり武力勝負っていうつまんないといえばつまんないがそういう風なものになってきてしまう
- でも先の状況が読めないと言ってもこれから先どうなるのかという回答は常にどっかの漫画の中にある
- どっかの漫画の中にあるので僕らは大丈夫だと思う
- 最新の本を読むよりは漫画読んだ方が分かりやすくなってると思う
■ 1. ソ連の誕生と理想
- ソ連は労働者が搾取されない社会、貧富の差がなく誰もが平等に生きられる国を目指して誕生した
- しかしその壮大な理想の果てにあったのは自由を奪われた国民と静かに崩壊していく巨大国家の姿だった
■ 2. マルクス主義の思想
- ソ連の社会主義はカール・マルクスとフリードリヒ・エンゲルスの思想(マルクス主義)に基づいていた
- マルクスの考え:
- 歴史とは支配階級と非支配階級の闘争の連続である
- 資本主義社会では工場や土地を持つ資本家が労働者を搾取して富を得ている
- この不平等はやがて爆発し労働者たちが団結して革命を起こす
- そして全ての人が平等に働き貧富のない社会=共産主義社会が誕生する
- この考え方は当時の貧困や格差に苦しむ人々の心を強く打った
■ 3. 共産主義社会の最終形
- マルクスが最終的に目指した共産主義社会とは国家そのものが不要になる世界だった
- マルクスの考え:
- 全ての争いはお金持ちの階級と貧しい階級の摩擦から来るものである
- 全ての階級がなくなれば警察や軍、政府のような権力も必要なくなる
- 結果として人々は自発的に協力し合って生活し争い事もなくなる
- そんな完全に平等で自律的な社会がマルクスの描いた理想の最終形だった
- しかしそんな理想的な社会をすぐに作ることはできないため、途中段階として用意されたのが社会主義という体制だった
■ 4. ロシア革命とレーニン
- 1917年ロシアで革命が起きた
- 貧困と戦争に苦しんでいた民衆が皇帝を倒し社会を変えようと立ち上がった
- この革命を主導したのがウラジミール・レーニン率いるボリシェヴィキ
- 彼らはマルクスの理論を土台に労働者と農民による新しい国家の建設を目指した
- レーニンは当初他の国々でも同じように革命が起きると信じていた
- しかし期待に反して世界的な革命の波は起きずロシア一国で社会主義を維持するしかなくなった
■ 5. スターリンの一国社会主義
- レーニンが亡くなり権力を握ったのがヨシフ・スターリン
- スターリンは一国社会主義という方針を掲げた
- 他国で革命が起きなくてもソ連一国だけで社会主義を完成させることはできるという考え方
- この考え方がソ連の方向性を決定づけた
■ 6. スターリン下のソ連の制度
- 1つ目:生産手段の国有化
- 工場、農地、鉱山、銀行などあらゆる経済資源を国家が管理し私有を禁止した
- 2つ目:計画経済の導入
- 何をどれだけどこで作るかを全て国家が決定する
- 市場の力ではなく国家の計画によって経済を動かす仕組み
- 3つ目:階級の廃止と平等の追求
- 資本家や地主といった階級を廃止し全ての国民を労働者として扱う
- 教育、医療、住宅の無償提供もこの一環
- 4つ目:労働者が権力を握る
- 名目上は労働者と農民が選んだ代表(ソビエト)が国家を動かす形
- ただし実際には選挙も形式的で意思決定は全て共産党、しかもごく少数の幹部たちによって行われた
■ 7. 共産主義社会への移行ステップ
- ソ連の目標は次のようなステップで共産主義社会に進むことだった:
- 1つ目:資本主義を打倒する(革命)
- 2つ目:社会主義国家を作る(生産手段の国有化、計画経済、階級の廃止など)
- 3つ目:生産力が十分に高まれば国家は不要になり共産主義社会へと移行する
- しかしこの移行は最後まで実現しなかった
- 国家はなくなるどころかむしろ強化され共産党に権力がどんどん集中
- 自由な議論も許されず国家は人々を導く存在から支配し管理する存在へと変質していった
■ 8. 失敗の理由1:計画経済の非効率性
- ソ連の経済は計画経済と呼ばれるシステムで動いていた
- これは国全体の生産や流通を全て政府が計画して管理するという仕組み
- 問題点:
- 国の隅々までの需要や状況を指導部の人間が把握するのは現実的に不可能
- 広大で多様な地域や業種がある中、数人でこの判断を的確に下すのは無理があった
- 現場の工場や農場では上から与えられたノルマを達成することが何よりも優先された
- ノルマ達成=評価アップ、ノルマ未達成=処罰という仕組みだった
- 数さえ揃えればいいとばかりに使い物にならない製品を大量に作るケースが多発
- 例:小さな釘の注文なのに大きな釘を作って重さを稼ぐ、服のサイズや品質を無視してとにかく量を作る
- 一方で国民の生活に必要なもの(トイレットペーパー、子供用の服、日用品、パン、肉)は慢性的に不足
- 需要と供給のずれ:計画経済は数字の上ではうまくいっているように見えるが現実の暮らしはどんどん苦しくなる仕組みだった
■ 9. 失敗の理由2:改革を潰す社会構造
- 人々の自由が奪われ恐怖が支配する社会になった
- その象徴が1930年代に行われた大粛清
- スターリンは自らの権力を守るため政敵だけでなく多くの党員、官僚、軍人、技術者、知識人を次々と逮捕・処刑した
- 大半の容疑は捏ち上げでスターリンに逆らった・不満を抱いていたなどの疑いだけで拷問され自白させられ家族もろとも姿を消すことが日常的に起きていた
- 結果:
- 有能な人材が大量に失われた
- 誰もが沈黙するようになった
- 正直に問題を報告したら自分が粛清されるかもしれない、本当のことを言っても上には届かない、むしろ危険だという空気が党にも政府にも社会全体にも広がった
- 共産党の指導部は国民とは全く異なる特権階級になっていった
- 専用の病院やレストラン、豪邸や別荘、運転手付きの車など
- 建前では全ての人が平等だったはずなのに一部の人だけが贅沢な暮らしをしていた
- そうした立場にある者たちは自分たちの特権を守るために体制を変えようとはしなかった
- むしろ自由な発言や新しいアイデアを体制を揺るがす危険として排除するようになった
- こうして自由に発言すれば消される・保身が1番大事という文化が根付き改革や成長を求める人間が育たない社会になった
■ 10. 失敗の理由3:軍事や宇宙開発費の増大
- ソ連は第二次世界大戦後アメリカと世界の覇権を争う冷戦へと突入
- この時代軍拡競争が激化しソ連は膨大な資金を軍事や宇宙開発に投入した
- 一方で国民の生活に関わる産業への投資は後回しにされた
- 結果:消費財の不足、建物やインフラの老朽化、技術革新の停滞
- 1970年代以降ソ連経済は停滞の時代に突入
- 一見すると安定しているように見えて新しいものが生まれない、成長しない、未来が見えない
- 国民の間には社会主義への期待よりも諦めと無力感が広がっていった
■ 11. ゴルバチョフの改革
- 1985年、若き書記長として共産党のトップに就任したのがミハイル・ゴルバチョフ
- 当時54歳という若さは老齢化した指導層の中では異例で国民からは大きな期待が寄せられた
- ゴルバチョフが打ち出した主な改革は2つのキーワードに集約される:
- 1つ目:ペレストロイカ(経済システムそのものを作り直そうという試み)
- 一部に市場原理を導入
- 官僚支配の見直し
- 労働意欲を高めるため成果に応じた報酬制度の導入
- 長年の計画経済から脱却し柔軟で効率的な経済へと転換しようとした
- 2つ目:グラスノスチ(言論の自由や報道の自由を解禁し政治や社会の透明性を高めようとするもの)
- 検閲の緩和
- 過去の粛清や政治的犯罪の真相解明
- 国民が自由に議論できる社会への移行
- 長年沈黙していた社会にようやく声を取り戻そうとした
■ 12. 改革の帰結
- ゴルバチョフの改革は最初こそ希望に満ちていた
- 市民たちはようやく自由に発言し新聞やテレビでは今まで見られなかった本音や議論が交わされるようになった
- しかし自由には想像以上の力があった
- それまで抑えつけられていた不満が一気に吹き出してきた:
- あの戦争は無意味だったのでは?
- スターリンは英雄ではなく恐怖の支配者だった
- なぜ我々だけが貧しく党の幹部は豊かなんだ
- もう共産党の言いなりにはなりたくない
- 各地の民族や共和国が次々と自立を求める声を上げ始めた(バルト三国、ウクライナ、ジョージア、アルメニア)
- それはやがて独立運動へと発展
- 西側諸国との生活水準の差が明らかになると人々は「資本主義の方がよっぽど暮らしやすいじゃないか」と思うようになった
- 自由は広がったが肝心の経済は一向に良くならなかった
- 市場原理と計画経済が中途半端に混ざり混乱が広がった
- 物価は上昇し供給は追いつかず国民生活はむしろ悪化
- 一方で党や官僚たちは自分の立場を守ろうと改革に消極的だった
- ゴルバチョフは孤立し権力を失っていった
■ 13. エリツィンの登場とソ連解体
- そんな中突如として登場するのがロシア共和国の大統領に就任したボリス・エリツィン
- エリツィンは共産党を痛烈に批判しロシアはソ連から離脱すべきだと主張
- 彼は民衆の支持を集めモスクワでのクーデター未遂を乗り越えゴルバチョフを完全に上回る存在へと成長していった
- 1991年12月、ソビエト連邦は正式に解体を宣言
- 世界初の社会主義国家は音もなく静かに幕を下ろした
■ 14. 結論
- ソ連の社会主義は壮大な理想から始まり厳しい現実に打ち砕かれた物語だった
- それでもこの物語は単なる失敗の歴史ではない
- そこには理想に燃えた人々の情熱、現実と格闘した政治家の試み、そして自由を求めた無数の声があった
- 私たちはこの歴史から様々なことを学べるはず
■ 1. 高市早苗総理の台湾有事発言(2025年11月7日)
- 衆議院予算委員会で高市早苗総理が「台湾有事」を巡って発言
- 中国が台湾に武力侵攻する事態が集団的自衛権の行使が可能となる「存立危機事態」に当たるかを問われた
- 高市総理:「戦艦を使い、武力の行使も伴うものであれば、存立危機事態になり得るケースだと考える」と述べた
- これは中国が武力行使をした際、日本は参戦すると受け止められる内容
■ 2. 中国側の反応
- 中国側の最初の反応は駐大阪総領事の「台湾海峡問題に首を突っ込むなら、その汚い首を斬ってやる」とのSNSでの発信
- これを中国中央の反発を代弁したものととらえず、その言葉だけを巡って中国が失礼だという雰囲気が広がった
- 中国側の発言者のポストが上がっていってもまともな対応がとられていない
- 段階を追って圧力がかけられる事態:
- 日本への観光自粛
- 留学自粛
- 日本アニメ上映延期
- 日本産水産物輸入停止
- 日本バンドの公演停止
- 各種の日中交流の停止など民間レベルにも影響
■ 3. 日本側の反応
- 高市総理が発言を撤回しないことや中国との交流の断絶に「スッキリした」という声がSNSで流れてきた
- 自民党の国会議員は駐大阪総領事への相応の対応を求めている
- 野党の国会議員ですら「無理に来ていただかなくても結構」と挑発するような発言をする始末
- ほんの少し前に日中首脳会談を行い、戦略的互恵関係を築くと合意したばかりのタイミングで、複雑な台湾問題で敵対するような不用意な発言をして招いた禍
- 日本側が被害者だという世論が広がっている
- 「よく言った」という「スッキリ」感の広がりは危うい
■ 4. 戦前の「スッキリ」事例1:国際連盟脱退(1933年)
- 1933年2月25日、国際連盟総会でリットン報告書を基にした満州国問題の解決を目指す勧告案が反対1(日本)、賛成42で可決
- 日本の全権代表松岡洋右が連盟を脱退する演説をした
- 松岡本人は外交上決裂は失敗と考えていて、国内での非難を恐れてとりあえず米国に行った
- ところが国内では大歓迎という情報を得て帰国
- 信濃毎日新聞主筆の桐生悠々は松岡の態度を凱旋将軍になぞらえてほめていた
- この時日本人は「スッキリ」していた
■ 5. 国際連盟脱退の結果
- 正式な連盟脱退は2年後の1935年
- 海軍軍縮条約の期限が切れるのが1936年
- 我に返った人たちは「1935、6年の危機」と叫んだ
- 陸軍は華北分離工作に邁進して新たな火種をまいていった
- 結果:
- 日本は「帝国主義クラブ」から抜けて敵対関係になり世界からも孤立
- たがが外れたと中国大陸侵略を続けて九か国条約などの国際法違反を重ねていく
- 日中戦争への道を歩むことになった
- 海軍軍縮条約の不成立は建艦競争を促し、時がたつほど経済的に弱い日本は不利になるとして早期の開戦を後押しすることになった
- 連盟脱退を「スッキリ」した国民が後押しした結果、諸外国との衝突、中国との対立激化になった
■ 6. 太平洋戦争開戦前の状況
- 1937年7月7日に塘沽協定違反、北京議定書違反の増強された陸軍のため盧溝橋事件が勃発
- やがて海軍の謀略も加わって全面戦争となった
- この戦争と建艦競争のための軍事支出が国庫を圧迫
- 一部の軍需で潤った経営者らを除いて臣民は物不足、じわじわ広がるインフレなどに悩まされた
- 最初はすぐやっつけると思った日中戦争が終わらないじりじりした感じを持っていた
- それまで3年以上戦争を続けたことがないので、1940年には国力の限界を超えて国力がじり貧になっていた
- 日中戦争の継続のため東南アジアの資源活用をもくろんで仏印進駐をした:
- 1940年の北部仏印進駐で米国から屑鉄とハイオクタンの航空燃料の輸入を制限
- 1941年の南部仏印進駐で英米蘭と衝突し石油輸入の道を絶たれる
- これをABCD包囲陣と称してまたもや被害者を装い臣民に宣伝し開戦に至った
■ 7. 太平洋戦争開戦時の「スッキリ」感
- 開戦の報を聞き「スッキリ」した人の声は多数残っている
- 作家・伊藤聖:「私は急激な感動の中で、妙に静かに、ああこれでいい、これで大丈夫だ、と安堵の念の湧くのを覚えた。この開始された米英相手の戦争に、予想のような重っ苦しさはちっとも感じられなかった。方向をはっきり与えられた喜び、弾むような身の軽さとがあって、不思議であった」
- 喜劇役者・古川ロッパ:「ラジオ屋の前は人だかりだ。切羽詰まってたのが、開戦と聞いてホッとしたかたちだ」
- 放送タレント・徳川夢声:「そら来た。果たして来た。コックリさんの予想と二日違い。身体がキューッとなる感じで、隣に立っている若坊を抱きしめたくなる。表へ出る。昨日までの神戸と別物のような感じだ」
- いい大人たちがこの調子だった
- 一方で憂えた人もいた:
- 皇族・東久邇稔彦:「アメリカの外交謀略にかかって、日米戦争に自ら突入してしまった。これで日本は没落の第一歩に踏み込んだと知って、私はがっかりした」
■ 8. 石橋湛山の警告
- 1932年10月24日の連盟理事会で日本の満州撤退案が13対1(日本)となり日本の1票で否決された件について
- 石橋湛山の言葉:「かような外交事件は、とかくその真相が秘密にせらるるところから、誤った観念を国民に与え、無謀な排外思想を激成する結果を来し、ために政府が後には正しき外交を行わんとしても、国内の激化する情勢に押されて、心ならずも飛んでもない誤った政策をとるのやむべからざるに至る例が、東西古今にはなはだ少なくないということである」
■ 9. 結論
- 過去に学ばぬ者は過ちを繰り返す
- SNSの時代、熱狂は容易に伝播する
- それを踏まえればより冷静であるべき
- 政治家とマスコミ、国民であれと願うばかり
■ 1. 総合評価
- この文章は歴史的類似性に基づく警告として一定の価値はあるが、歴史的アナロジーの限界を無視し現代の文脈を十分に分析していない点で説得力が弱い
- 「スッキリ感」という感情的反応への警鐘は理解できるが、論理的飛躍が多く1933年と2025年の状況の違いを軽視している
■ 2. 歴史的アナロジーの過度な単純化
- 国際連盟脱退(1933年)と太平洋戦争開戦(1941年)の「スッキリ感」を2025年の高市発言への反応と直接結びつけている
- 論理的欠陥:
- 時代背景の根本的相違を無視(1930年代は帝国主義時代・植民地獲得競争・国際法の未成熟、2020年代は国連体制・核抑止・経済相互依存・国際人権法の発展)
- 権力構造の違い(戦前は軍部の独走・統帥権干犯問題・文民統制の欠如、現代は民主的選挙・文民統制・三権分立)
- 情報環境の違い(戦前は政府による情報統制・言論弾圧、現代はインターネット・多様な情報源・国際的監視)
- 根本的問題:歴史的アナロジーは示唆的だが証明にはならない。「A(1933年)とB(2025年)で同じ感情的反応が見られた→Aと同じ結果になる」という論理は成立しない
■ 3. 高市発言の文脈の不十分な分析
- 高市発言を「不用意な発言」として批判するがその法的・戦略的文脈を検証していない
- 論理的欠陥:
- 存立危機事態の法的要件(「日本と密接な関係にある他国」が攻撃を受ける、「日本の存立が脅かされ国民の生命に明白な危険」、台湾海峡の封鎖は日本のシーレーンに直接影響、これは法的に不合理な解釈ではない)
- 抑止力としての明確化(曖昧戦略vs明確化のトレードオフ、中国が台湾侵攻を抑止するには日本の参戦可能性を示す必要があるという論理も存在、著者はこの戦略論を完全に無視)
- 国際的文脈(米国の台湾関係法、日米同盟の文脈、QUADなど地域安全保障の枠組み、これらを考慮せず日本だけが突出しているかのように描いている)
■ 4. 中国側の反応の正当化
- 駐大阪総領事の「汚い首を斬ってやる」という暴力的言辞を「中国中央の反発を代弁したもの」として扱い、日本側の反応を「失礼だという雰囲気」と矮小化している
- 論理的欠陥:
- 外交慣例の無視(外交官の暴力的言辞は外交特権の濫用、ペルソナ・ノン・グラータの宣告は正当な外交的対応、これを「失礼だという雰囲気」と表現するのは不適切)
- 非対称な評価基準(高市発言(抽象的な法的見解)→「不用意」と厳しく批判、中国総領事(具体的な暴力的脅迫)→「代弁」と軽く扱う、明らかなダブルスタンダード)
- 中国の威圧行動の軽視(日本への観光・留学自粛呼びかけ、水産物輸入停止、文化交流停止、これらは経済的・文化的威圧であり「スッキリ感」への批判と同様に批判されるべき)
■ 5. 因果関係の逆転
- 「日本側が不用意な発言をしたから中国が反発した」という因果関係の設定
- 論理的欠陥:
- 時系列の無視(中国は数年前から台湾周辺での軍事演習を激化、防空識別圏への侵入を常態化、台湾への軍事的圧力を増大、高市発言はこれらへの「反応」でもある)
- 主体性の剥奪(台湾侵攻を検討しているのは中国、日本は被侵略への対応を議論している、この順序を逆転させている)
■ 6. スッキリ感の質の違いを無視
- 1933年、1941年、2025年の「スッキリ感」を同質のものとして扱っている
- 論理的欠陥:
- 1933年の「スッキリ感」(国際的孤立への道、侵略の継続への支持、軍部独走への追認)
- 1941年の「スッキリ感」(戦争開始への安堵、じり貧状態からの「解放」感、実際に戦争に突入)
- 2025年の「スッキリ感」(中国の威圧的外交への不満の表出、主権国家としての主張の支持、実際の軍事行動は起きていない)
- 根本的相違:前二者は侵略戦争への支持、後者は防衛的立場の支持。この質的差異を無視している
■ 7. 選択的な引用
- 開戦時の「スッキリ感」を示す引用は豊富だが現代の「スッキリ感」の実態を示すデータが不足
- 論理的欠陥:
- 「SNSで『スッキリした』という声が流れてきた」→量的データなし
- どれだけの割合の国民がそう感じているのか不明
- SNSは声の大きい少数派を過大に見せる特性がある
- 世論調査データへの言及なし
- 必要な検証:実際の世論調査で高市発言や中国との対立をどう評価しているか、「スッキリ」派と「懸念」派の比率、年齢・政治的立場による差異
■ 8. 石橋湛山の引用の文脈
- 石橋湛山の警告を引用しているがその主張の全体像を示していない
- 論理的欠陥:
- 石橋湛山は「小日本主義」を唱え植民地放棄を主張した稀有なリベラリスト
- しかし彼の立場は当時も現在も少数派
- 彼の警告が正しかったことは歴史が証明したがそれは「結果論」でもある
- 当時の多数派の論理(アジアの解放、自存自衛など)を検証せずに石橋だけを引用するのはバランスを欠く
■ 9. 対案の欠如
- 批判はするがでは日本はどうすべきかの具体的提案がない
- 論理的欠陥:
- 台湾有事に日本は関与しないと宣言すべきか?(それは中国の侵攻を促進する可能性、日米同盟への影響、地域の不安定化)
- 中国との対話を続けるべきか?(具体的な対話の内容は?中国が台湾侵攻準備を続ける中で対話は有効か?)
- 著者は問題提起はしているが現実的な代替政策を示していない
■ 10. 冷静さの定義が不明確
- 「より冷静であるべき」と結論づけているが何が「冷静」なのか定義されていない
- 論理的欠陥:
- 「冷静」=中国との対立を避ける?
- 「冷静」=台湾問題に関与しない?
- 「冷静」=高市発言のような明確化を避ける?
- これらは「冷静」というより「特定の政策選択」でありそれ自体が議論の対象である
■ 11. 説得力を損なう要素
- 感情的な語彙(「汚い首を斬ってやる」を「代弁」と表現、「挑発するような発言」、「無謀な排外思想」、分析というより価値判断が先行)
- 一方的な因果関係(日本の発言→中国の反発という単純な図式、中国の軍事的圧力→日本の懸念という逆の因果関係を無視)
- 歴史決定論(「過去と同じ『スッキリ感』があるから同じ結果になる」という歴史決定論的思考、歴史は反復しない)
- 代替案の不在(批判はあるが建設的提案がない)
■ 12. 欠けている視点
- 台湾住民の意思(2300万人の台湾住民が中国の統治を望んでいないという現実への言及なし)
- 地政学的現実(台湾海峡は日本のシーレーン、沖縄との距離110km、尖閣諸島問題、これらの戦略的重要性を無視)
- 抑止理論(曖昧さによる抑止vs明確化による抑止、両方にメリット・デメリットがある、学術的議論を完全に欠いている)
- 中国の視点の検証不足(中国が台湾統一を「核心的利益」とする理由その正当性の検証がない、著者は中国の立場を所与の前提としている)
- 国際法の視点(台湾の法的地位、自決権、武力不行使原則、これらの国際法的検討が皆無)
- 民主主義vs権威主義(冷戦後の世界で民主主義体制と権威主義体制の対立という文脈が欠落)
■ 13. 構造上の問題
- 論理展開の弱さ(高市発言の紹介→中国の反応→日本の「スッキリ感」批判→歴史的事例→警告という流れで現代の状況の詳細な分析が欠けている)
- 歴史部分の冗長さ(国際連盟脱退から太平洋戦争開戦までの記述が詳しいが現代との比較分析が浅い)
- 結論の弱さ(「冷静であれ」という一般論で終わり具体的な政策提言がない)
■ 14. 肯定的評価
- 良い点:
- 警鐘としての価値(ナショナリズムの高揚への警戒は重要)
- 歴史的知識(1930-40年代の詳細な記述は参考になる)
- 一次資料の引用(伊藤聖、古川ロッパ、徳川夢声など当時の証言)
- 問題提起(感情的な外交政策への警告)
- 評価できる指摘:
- SNSによる感情の伝播への懸念
- マスコミの責任
- 「スッキリ感」に流されることの危険性
■ 15. 改善提案
- 現代の文脈の徹底分析(台湾海峡の戦略的重要性、日米同盟の役割、中国の軍事的圧力の実態、地域安全保障の枠組み)
- 歴史的アナロジーの限界の明示(「1930年代と類似点はあるが決定的な違いもある」という両面の提示)
- 複数の視点の提示(抑止力重視派の論理、対話重視派の論理、リアリズム・リベラリズム・構成主義など国際関係論の視点)
- 具体的な政策提言(日本はどうすべきか、対話と抑止のバランスは、台湾との関係は)
- 中国の行動の批判的検証(日本の反応だけでなく中国の威圧的行動も同様に批判すべき)
■ 16. 結論
- この文章は歴史的教訓を現代に適用しようとする試みとしては評価できるが歴史的アナロジーの限界を超えていない
- 主な問題点:
- 時代背景の根本的相違を軽視
- 高市発言の法的・戦略的文脈を検証していない
- 中国の威圧的行動を軽視
- 「スッキリ感」の質的差異を無視
- 対案の不在
- 一方的な因果関係の設定
- 地政学的現実の無視
- 格付け:論理的説得力★★☆☆☆(5点満点中2点)
- 歴史的警告としては一定の価値があるが現代の複雑な安全保障環境を分析するには不十分
- 「過去に学ぶ」ことは重要だがそれは「過去と現在を同一視する」ことではない
- より多角的で現実的な分析が必要である
- 最大の弱点:批判はあるが建設的な提案がないこと。「冷静であれ」だけでは政策にならない。具体的にどうすべきかを示さない限り説得力は限定的である
パワハラ上司がどんどん撲滅されるのは喜ばしいことだけど、その結果『無能もやる気のない人間も笑顔で肯定し笑顔で見捨てる上司』が令和の上層部を占めつつあるのはもう止められない
高市の台湾関連の発言周りの反応を見る限り、そういう結論にならざるを得ない。
はじめに言っておくと今回の高市の発言は明確に失敗だったと思う。曖昧戦略を貫いていた方が良かった、という点でリベラルや左派の意見に同意する。
一方で根本的により悪いのは軍事力等によって台湾を手にしようとしている中国であると思っている。高市のミスはそういう「超強い悪」への対応をミスった、という誤りだと考えている。(卑近な例に置き換えると、街の不良への対応をミスった、に近い)
ここについてはリベラルや左派の人も同意しない人は居そうだ、あくまで悪いのは高市の方である、という立場だ。
勿論意見の違いというのはいつでも有り得る、意見が違うから非難したい、という訳ではない。ただすこしおもしろい思考実験(?)を思い付いた。
もし日本が中国を遥かに凌駕する軍事力を持っていたら、高市の発言は失敗だっただろうか?
否である。(と、私は考える)
もしそうなら立場は逆転する、慎重な対応を迫られるのは中国の方であり、対応次第では「超強い」日本のしっぽを踏む、今回の高市のような「失敗」につながりうる。
高市の失敗の大元を辿っていくと、「中国と日本の軍事力の差を考慮しなかった」に行きつく、要するに「(軍事的な)身の程を知らない」ことこそが悪かった訳だ。(今回のリベラルや左派の反応も意訳すればそういう意味に翻訳できるコメントも少なくない)
もし日本の方が遥かに軍事力を持っていれば台湾に関する中国の姿勢を気にする必要もないし、むしろ自由や人権等を考えるなら積極的に台湾への侵攻を牽制する事は正義に適うとさえ言える場合もあるだろう。
要するに「日本に十分な軍事力があるか」によって、高市の発言は悪いものにも、善いものにもなりうるのである。
(このおもしろさにみんな気付いているのだろうか?)
日本は現在台湾を国として承認していないが、個人的にはこれは好ましくないと思っている。
そんな風に台湾を国と認められないのも、中国の顔色を伺ったり曖昧戦略をとることが正しくなるのも、すべて日本が十分な軍事力を持たないからであって、
もし十分な軍事力を持っていればそれらは逆にひっくり返ると言える。
これは中国側の言動にも言える。
現在私の見る限り、リベラルや左派で中国の強硬的な姿勢や言動に批判的なコメントは少ない。(ただ飽くまで私に見えている範囲の話なので、実際はそうでもないかもしれない、「自分は違うよー」という人がいたら知らせて欲しい)
「首を斬る」発言然り、台湾に関する口出しを拒絶する姿勢然り、非難や威嚇のコメント然り、渡航への注意喚起、Xでの例の画像や、水産物輸入停止等々然り、
そうした幾つもの言動が「失敗」ではない理由は、シンプルに中国が軍事的に強く、また好戦的な外交をすると言う前提が既に共有されているからだ。同じ事を日本がやればお笑い草にしかならない。日本がやれば失敗、中国がやれば失敗ではない、その違いを生んでいるのはひとえに軍事力だ。
もし中国がろくに軍事力もない小国だったら、同じ言動もただちに「失敗」になる、高市の発言と同じ意味において。
ここでもロジックは全く同じだ、失敗とそうでないものを分けるのは彼我の相対的な軍事力である。
このように、リベラルや左派のコメントを真に受ければ、失敗とそれ以外、悪と善を分けるのは「軍事力」の差である。
同じ言動も、力を持つ者が行うのと持たないものが行うのでは意味が違う。台湾への実力行使を伴う侵攻を抑止するような発言も、力を持つ者が発すれば正義になるが、力を持たないものが発すれば失敗や悪になる。それが彼らの信念である。
そしてそのことを非難するつもりも無い、「同じ言動も、力を持つ者が行うのと持たないものが行うのでは意味が違う」、確かにその通りだ、正しい。
これまでの語り方で誤解されているかもしれないが、彼らは別に変な事を言っている訳ではない、むしろ至極普通のことを言っている。
そしてその普通を辿れば、結局のところ失敗や悪と正義を分かつのは「軍事力」であり、「正義とは軍事力である」という結論が普通に出るのだ。
こういう事を言っていると、過激な右翼や軍国主義者のように思われているかもしれない。
一応、それは誤解であると言っておきたい、少なくとも自己認識としては違う、「正義とは軍事力である」とかあぶねーなーと思う一般的な感性は持っているし、日本が軍事的に拡大することをあまり好ましいとも思っていない。あとついでに、政府与党や高市も支持していない。
ただ、今回のリベラルや左派のコメントや反応を敷衍すればそうなる、というだけだ。(まぁでもそういう言い方が責任転嫁臭いのは認める)
ただ、今回の一連の流れは個人的にもなかなかショッキングだったなとは思う、自分自身のリアリズムを書き換えられたような感覚もある、
実際、台湾の現状を改善できるとしたら、軍事的な力を持った国なんだろうな、とは思った。軍事的な力を持たない国は、仮に正義を行おうとしても結構無力であり、同じ行動も失敗や、悪になり得る。(「リベラル・左派にとっての」とか言いつつ考えてる事は自分も変わらない、そもそもある程度自分もリベラルで左派だし)
かといって、日本に軍事力を持って欲しいとも、なかなか思えないのだけども・・・・。
「俺は財務省のポチじゃねえ!」
と、必死になっている、一部のインフルエンサーたちよ。
俺はなにも、財務省が自ら、お前らごときに、直接指令を下しているなんて、全く思ってないぞ。
そもそもな。政治家になる野心を抱いていたり、補助金事業を営んでいるお前らには、SNSで財務省に忖度した発信をする動機が、十分過ぎるくらい、あるんだよ。
そんな背景があるお前らが、散々っぱら財務省擁護発言を、これまで繰り返してきた。
お前らの何倍も財務省に詳しい、元職員の俺から見ても、苦しいなあと思う擁護が、数多くあったよ。
一代で財をなし、当然頭脳明晰のはずのお前らが、こと財務省の話題においては、不自然なまでに、アクロバティック財務省擁護を、展開してきたってわけ。
これらの要件でもって、あなた方は、自分たちの利益のために、自主的に財務省擁護を繰り返している、事実上「財務省のポチ」だと、私は認定しているわけです。
■ 1. 人類の多様性と現在の状況
- 人類はホモ・サピエンス以外にも、ホモ・ネアンデルタール、ホモ・エレクトスなど多数存在していた
- 現在生き残っているのはホモ・サピエンスだけである
- ホモ・サピエンスが他の人類を大体殺し尽くしてしまったため、唯一生き残った
- 教科書に載っている人類の進化の絵(猿から順に進化した図)は誤りである
- 実際には約250万年前に様々な人類が同時多発的に地球上のいろんな場所で生まれた
- 人類学はこの15-20年でものすごく進歩したが、教科書にはまだ反映されていない
■ 2. 人類の初期の特徴(250万年前)
- 約250万年前に人類(ホモ属)が誕生した
- 全ての人類に共通する特徴:
- 脳が大きかった
- 道具が使えた
- 複雑な社会機構を持っていた
- 脳が大きいため出産が大変で、未熟児のまま生まれてくる
- そのため2-3年は母親が世話をしなければならない
- 本能が中途半端に生まれてくるため、親や仲間がいろんなことを教える必要がある
- 結果として社会性がすごい豊富な種族になった
- これらの特徴はホモ・サピエンスだけでなく人類全ての特徴である
■ 3. 200万年間の停滞期
- 250万年前に人類が誕生してから約200万年間、ほとんど何もしなかった
- 食物連鎖では中の下、真ん中あたりの、ものすごく地味な生物だった
- 主に虫や木の実、動物の死体などを食べていた
- 脳が大きく道具が使えたが、200万年間ダラダラ生きていた
- ホモ・サピエンスは生まれてすぐに地球を制覇したわけではなく、200万年間地味な種族だった
■ 4. 火の発見(約30万年前)
- 約80万年前から一部の種族が火を使うようになった痕跡がある
- 約30万年前にはホモ・エレクトス、ネアンデルタール、ホモ・サピエンスなど多くの人類が日常的に火を使うようになった
- 火の発見の重要性:
- ライオンなどの捕食者を追い払うことができる
- 森を焼き払って環境を変化させることができる
- 食べられなかったり食べにくかったりする食物が食べれるようになった
- 噛む時間と消化時間が大幅に短縮された(チンパンジーは1日5時間噛む必要があるが、火で調理すれば極端に短くなる)
- 火で調理すると腸が短くなり、エネルギー消費が減る
- 火を使う前の人類は毎日5時間獲物を探し、5時間噛み、5時間消化するために休む必要があった(合計15時間)
- 火によって武器と防具、土地と時間を手に入れることが可能になった
■ 5. 火の発見後も続く停滞
- 30万年前に火を使えるようになったが、やっぱりサピエンスは雑魚キャラだった
- 基本的には虫や木の実を食べるのが当たり前だった
- そんな暮らしを20万年ぐらい続けた
- ネアンデルタール人はホモ・サピエンスより大きな脳、すごい運動能力、体力が与えられた
- 単体で勝負したらホモ・サピエンスは勝てない
- ネアンデルタール人はホモ・サピエンスより賢くて強かった
■ 6. 人間の本能について
- 火の発見から高々30万年しか経っていない
- それまでの250万年間は火がない食事をしていた
- 人間のDNAに完全に組み込まれている本能は火がない時代のもの
- だから食べたら5時間ぐらい寝なきゃいけないという本能が組み込まれている
- 人間がだらするのは当たり前である
- 怠け者は人類史的に言えば正しい
■ 7. 認知革命(約7万年前)
- 10万年前、ホモ・サピエンスの集団がネアンデルタール人の縄張りを襲ったがボロ負けだった
- しかし7万年前に同じネアンデルタール人の集落を襲った時は今度勝った
- 7万年前からホモ・サピエンスの快進撃が始まった
- 地中海どころか中東からアジアまでネアンデルタール人を全部追い払った
- 4万年前には太平洋を渡ってオーストラリアに行き、船やランプ、弓矢、針などを全部発明して使いこなすようになっていた
■ 8. 認知革命の正体
- 脳が大きくなったわけではない(他の人類種もみんな脳が大きかった)
- 道具が使えるからでもない(100万年前にはほとんどの人類種は道具を使っていた)
- 火を使いこなしたからでもない(30万年前からいろんな人類種が火を使っていた)
- 言葉も人類だけのものではない(蜂もイルカも言葉を持っている)
- サバンナモンキーの例:
- 「気をつけろライオンだ」という言語を持っている
- 「気をつけろワシだ」という言語も持っている
- この2つの鳴き声が別で、録音して聞かせると適切に反応する
■ 9. 言語の使い方の変化
- 7万年前に起きたのは遺伝子の突然変異によって脳内の配線が変わった
- 言葉の使い方が変わった(言語自体は他の動物も持っている)
- これを認知革命と呼ぶ
- サバンナモンキーは「気をつけろライオンだ」とは言えるが「もう大丈夫だ。ライオンはもういない」とは言えない
- しかしホモ・サピエンスは:
- 「ライオンはもういない」と言える
- 「朝ライオンがいたけどもう今はもういない」と言える
- 「川には今ライオンがいるということは森は今大丈夫だ」と言える
- 言葉を繋いでいって論理的な構造がつくれる
■ 10. 噂話の重要性
- 「あいつはライオンを倒した」という噂話ができる
- それを見たものや近くにいたものしか知らなかったことが、噂話で広められる
- 倒してもないのに「俺ライオン倒したよ」と言うこともできる
- 「あんなこと言ってるけど本当か」と言うこともできる
- 人類学者の間では、ホモ・サピエンスが認知革命以降話してきた言葉の大半は噂話らしい
- SNSで噂話をしたりしょうもない話を拡散するのは人類の根幹にかかる行動であって当たり前である
- 噂話が実は人類を人間たらしめてる要因だと言われている
■ 11. 虚構の力
- さらにすごいのは「ライオンは我が部族の守護神だ」という虚構である
- 虚構はホモ・サピエンスの群れのサイズを大きくすることができる
- チンパンジーの群れのサイズは大体20頭から50頭で、それを超えると秩序が不安定になる
- 100頭を超える群れはチンパンジーではほぼ野生では確認されていない
- ネアンデルタール人ですら群れの数は150が限界であった
- この150をダンバー数という(類人猿が脳のサイズから石統一がなんとかできるギリギリの数)
- これを超えると集団は分裂して近くにいる集団同士は殺し合ってしまう
■ 12. ダンバー数を超える組織
- 虚構(我々の守護神だとか我々は神に守られてるという概念)を入れることによってダンバー数を超える、150を超える組織が可能になった
- よその部族であっても聖なる誓いという約束や神の啓示によって手を組むことができる
- ライオンが守護神の部族とワシが守護神の部族が共闘して共に戦ったりもできる
- お互いの守護神(トーテム)を褒め合ったり互いの娘を交換して嫁にやったりできる
- ダンバー数を超える数の集団は生理的には本来受けられないはずだが、虚構を入れることによって大きい集団が可能になった
- 現代でも野球チームのファンであったり日本人であったり県民であったりという連帯感を感じることができる
- しかし日本人という物理的なものは何もない、県民もない
- 全部そこで生まれたという現象なだけだが、連帯感を感じることができるのは虚構の力である
■ 13. ホモ・サピエンスの勝因
- 噂話によって実力以上の力がホモ・サピエンスは出せるようになった
- 例:「守護神に選ばれたものがこの戦いで死んだら地上よりもっと素晴らしい場所に生まれ変わることができる」と言えば、それを信じて死ぬまで戦うことができる
- 「戦いに負けたらお前の家族はみんな敵に皆殺しにされる」という未来のこと(わからないこと)でも、その言葉を信じて戦うことができる
- これがネアンデルタール人に勝てた理由である
- ネアンデルタール人は力が強くて運動能力が高くて手先も器用だが、知ってるもの同士しか信頼できない
- 群れの数の限界は150程度で、それ以上になるとお互い反発してしまう
- 守護神やあの世を信じてないので負けそうになるとネアンデルタール人は撤退してしまう
- 種族の誇りとか家族のために命を落とすようなバカは1人もいない
- 結果としてネアンデルタール人たちが撤退して撤退して撤退して、それを効果的に追跡していったホモ・サピエンスたちにやられてしまった
■ 14. 他の人類の絶滅
- インドネシアにいたホモ・ソロエンシスは5万年前に突然姿を消した
- オーストラリアにいたデニソア人(ホモ・デニソア)もサピエンスが大洋を渡ると同時になぜか姿を消した
- ネアンデルタール人も3万年前に全部絶滅した
- 最後に残ったホモ・フローレシエンシスは1万3000年前にホモ・サピエンスがジャワ島を発見して移民した瞬間になぜか消えてしまった
- 以後1万年以上、人類といえばホモ・サピエンスだけになった
- ホモ・サピエンスが行ったところで他の人類は全部絶滅している
- ホモ・サピエンスが行ったところでは他の人類は全て大体1000年もかからず滅んでいる
■ 15. 絶滅の理由
- 人類学者の中でも様々な説がある:
- ホモ・サピエンスたちの豊かな社会で文明のショックを受けて生活力を失って死んだ
- ホモ・サピエンスに滅ぼされた
- ホモ・サピエンスに食われた
- 様々な化石が見つかっており、戦闘して死んだ化石もあれば衰弱して栄養不足で死んだものもある
- 殺人の動機は、おそらくホモ・サピエンスが気の荒い種族で他の種族の匂いを気に入らなかったからではないか
- 「彼らは殺して構わない、殺さないといけない」という虚構や神話を無理やり作ったのではないか
- かつて自分たちより強くて賢かった他の人類を殺し尽くしてしまったという罪悪感や思い出がそんな伝説(暗闇の恐怖、化け物の伝説など)を作ったのではないか
■ 16. 貨幣経済の力(風の谷のナウシカの例)
- 風の谷のナウシカの2巻に、トルメキアの同盟国のセムの町が出てくる
- その町では宇宙船を解体して売っている
- トルメキアとドルクが戦争してくれたおかげで町が豊かになってきた
- 虫使いたちが来て金貨で酒を買う
- その金貨はドルク(敵国)の金貨だが、店の親父は「金の質はトルメキアのよりいいくらいだ」と言って受け取る
- どの国であろうが関係なく金の質さえ良ければ受け取る
- 貨幣経済が伸びてくると宗教的・思想的な対立よりもどちらの国が豊かにするのかという経済力による差になってくる
- 虫使いたちも文明に接して貨幣を使うようになるとどんどんその貨幣経済に侵されてトルメキアの一部になってしまう
- 貨幣、宗教、帝国という概念が人類を統一する普遍的な力である
■ 1. ドイツの総選挙結果(2025年2月23日)
- 第一党:キリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)で得票率28.6%(2021年前回は24.2%)
- 第二党:ドイツのための選択肢(AfD)で20.8%(同10.4%)
- この政党は移民排斥をうたう極右政党である
- 第三党:与党の社会民主党(SPD)で16.4%(同25.7%)
- 第四党:連立与党・緑の党で11.6%(同14.7%)
- 与党の自由民主党(FDP)は4.3%(同11.4%)しか得票できず、5%条項をクリアしなかったために議席を獲得できなかった
- 左派党が8.8%(同4.9%)
- 2024年1月に設立された左派ポピュリスト政党の「ザーラ・ワーゲンクネヒト同盟(BSW)」は4.9%にとどまった
- 5%に届いていれば議席を獲得できたはずである
- その他が9.5%(同8.7%)
■ 2. ドイツの難民・移民問題
- ドイツには現在300万人を超える難民がおり、それが大きな財政負担となっている
- 犯罪も増加し反移民感情が高まっている
- それがAfDの勢力拡大につながっている
■ 3. BSW(ザーラ・ワーゲンクネヒト同盟)の特徴
- 党首ザーラ・ワーゲンクネヒトは東ドイツ出身の女性政治家で共産主義である
- ドイツ統一で資本主義への道を歩んだことが間違いだとする
- 極左であるがAfDと同様に移民規制を主張する
- ウクライナ支援に対しても批判的な点もAfDと似ている
- 西欧諸国の軍拡にも反対する
- 総選挙で与党の一角を占めるFDPよりも多くの票を獲得したことは注目に値する
■ 4. AfDとBSWの関係
- AfDもBSWもポピュリスト政党であり両者はライバル関係にある
- AfDは地方自治体で権力の座についているところもある
■ 5. ドイツの現状
- 6月になってCDU/CSUはSPDとの連立で何とかショルツ政権の発足に漕ぎ着けた
- 現在のドイツは経済が低迷し失業者が300万人にのぼり国民の不満は高まっている
- ショルツ首相はトランプの関税攻勢への対応、ウクライナを巡る防衛力強化、移民規制の強化など厳しい財政事情の下で難しい政権運営を迫られている
■ 6. イギリスの伝統的政治構造
- イギリスは保守党と労働党という二大政党が拮抗し定期的に政権交代が行われる議会制民主主義の典型例とされてきた
- しかし最近は状況が大きく異なっている
■ 7. イギリスの政党支持率(2025年10月・ユーガブ調査)
- 1位:右派ポピュリスト政党の改革党(リフォームUK)で26%
- 2位:労働党で19%
- 3位:保守党で18%
- 4位:左派ポピュリスト政党の緑の党で15%
■ 8. 改革党(リフォームUK)の概要
- EUからの離脱(Brexit)を主導したイギリス独立党の党首であったナイジェル・ファラージが2018年に結党した政党である
- 2020年に党名をリフォームUKに変更した
- 2024年7月の下院総選挙では14.29%の票を獲得しファラージ党首を含め5人が当選した
- 2025年5月の地方選挙では1641議席中677議席を獲得した
- 保守党は317議席(676議席減)
- 労働党は99議席(186議席減)
- 国政では第3党の自由民主党が370議席と躍進した
- 市長選でも改革党は6つの市のうち2つで勝利した
- イングランド西部の下院補選では改革党の候補が労働党候補に勝っている
■ 9. 改革党の政策
- 反移民
- 温室効果ガス排出ゼロ(脱炭素)に反対
- 福祉予算削減に反対
- トランプ流に「イギリスを再び偉大に」というスローガンも採用している
- 保守党や労働党から移籍する議員も増えている
- 14年間続いた保守党政権は昨年の総選挙で大敗しており党の再建の道を模索中である
- 多くの保守党支持者が改革党に乗り換えているようである
■ 10. イギリスの緑の党
- 左派ではザック・ポランスキー党首が率いる緑の党がSNSを駆使して若者の間で支持を拡大している
- 政策は急進左翼的:
- 気候変動対策の強化
- 富裕層への課税強化
- ベーシックインカムの導入
- 保育費の無償化
- 家賃や公共料金の抑制
- LGBTの権利拡大を訴えており党首もLGBTである
■ 11. イギリスの若者の政党支持率(ITV調査・18-25歳)
- 1位:緑の党で32%
- 2位:労働党で25%
- 3位:改革党で20%
- 4位:保守党で11%
■ 12. 結論
- イギリスもまた左右のポピュリズム勢力が国民の支持を拡大している
■ 1. ナンシー・フレイザー氏のインタビュー内容
- ジェンダー論を専門とするナンシー・フレイザー氏へのインタビュー記事が2025年11月12日に朝日新聞で公開された
- フレイザー氏の主張:
- フェミニストとして女性が首相になったという事実だけをもってフェミニズムが前進したとは言えない
- 英国のサッチャー元首相のケースを例にあげ、彼女は女性だったが労働者や福祉に厳しい政策を進め、多くの女性や弱い立場の人々の生活を損なった
- 象徴だけでは人々の暮らしはよくならない
- 政治学者アン・フィリップスは「誰がそこに『いる』か」を重視する「プレゼンスの政治」と「どんな政策や価値を代表しているか」を重視する「アイデアの政治」を区別した
- フレイザー氏は「1%」の女性が象徴的な立場になっても「99%」の女性の問題が解消されなければ平等ではないと主張している
■ 2. 反論としてのジェンダーギャップ指数の不適切な使用
- フレイザー氏への反論のつもりでジェンダーギャップ指数を持ちだしているらしい反応を複数見かけた
- はてなブックマークのコメントの問題点:
- rag_en氏のコメント「じゃあまず、なんちゃら指数をありがたがってた事を反省しなよ…という話で。あと、その『99%』って正確には『×0.5』だよね。/結局、『Woke左派政治家しか支持したくない』と言っているだけ」
- 「×0.5」が何を指しているのか不明
- タイトルだけを読んで「99%」が男性を含むと誤読している可能性がある
- ジェンダーギャップ指数に言及する複数のコメント:
- gimonfu_usr氏:「例のジェンダーキャップ指数で高く評価されるのは、左派の女性の社会進出のみ」説
- wxitizi氏:「ジェンダー指数とかを振りかざしてきた人たちがけっこういるからなあ」
- wakuwakuojisan氏:「なら女性政治家の数なんかジェンダーギャップ指数に組み込んでんじゃねえよ」
- dongurimanz氏:「ジェンダーギャップ指数?別に使いやすかったから使ってただけで、その意味なんてどうでもいいのよ」
- irukutukusan氏:「ジェンダーギャップ指数とか言う都合の悪いものを今更使える訳ないよな」
- richest21氏:「GG指数が低い時『日本はダメ!』→GG指数が上がる『日本はダメ!』」
■ 3. ジェンダーギャップ指数の理解不足
- ジェンダーギャップ指数をもちだすこととフレイザー氏の意見をきちんと区別できているのはwxitizi氏くらいである
- しかしそれも実はジェンダーギャップ指数がフレイザー氏の指摘と必ずしも矛盾しないことを理解できていない
- ジェンダーギャップ指数の改善が政治家を評価する充分条件とフレイザー氏が主張した過去を指摘できているコメントはひとつもない
■ 4. ジェンダーギャップ指数の実態
- ジェンダーギャップ指数は少数のフェミニストのみが使用しているわけではなく、日本政府も参照する指標のひとつである
- 他にジェンダー開発指数やジェンダー不平等指数があげられているように、あくまで問題の程度をはかるための数字であって、数字が良くなればそれで問題がなくなるわけではない
- 現時点では高市政権でジェンダーギャップ指数がおおきく改善するとは思いがたい
■ 5. ジェンダーギャップ指数の政治参画分野の算出基準
- ジェンダーギャップ指数において政治参画は四分野のひとつにすぎない
- 首相のような行政府の長の性別も三つある算出基準のひとつにすぎない
- 三つの算出基準:
- 国会議員の男女比
- 閣僚の男女比
- 最近50年における行政府の長の在任年数の男女比
- 半世紀における在任年数の比率から出すので、首相になったばかりの高市氏が1年目に改善できる数字は2%くらいである
- 安倍政権くらいの長期にでもならなければひとりの首相がおおきく改善できる基準ではない
■ 6. 高市政権の女性閣僚数
- 閣僚の男女比が算出基準にふくまれているが、高市政権の女性閣僚はけして多くない
- 高市首相をふくめても3人で、過去に何度か5人の女性閣僚がいた時代と比べると、高市政権そのものは数字が悪化してもおかしくない
- 政府は2003年、指導的地位の女性比率を2020年までに30%にする「2030」を掲げたが、2003年以降で女性が最も多かったのは2014年に発足した第2次安倍改造内閣の5人である
- 最近は1~3人となっている
■ 7. 女性議員数の改善
- 議員数の男女比率は改善している
- しかしこれは高市政権の成果ではもちろんなく、どちらかといえば野党第一党の成果である
- 2025年10月27日投開票の総選挙で女性の当選者は73人、15.7%と過去最多となった
- 女性当選者73人のうち小選挙区は35人、比例区は38人である
- 党別に見ると最多は立憲民主党の30人で次に自民党の19人である
- 当選者数が多い両党が押し上げたとみられる
- 躍進した立憲民主党は全候補者237人のうち53人、22.4%の女性を擁立した
- 自民党が擁立したのは55人、16.1%と2割未満だが、2021年の前回総選挙の33人、9.8%からおよそ7割増で同党としては過去最多だった
- 石破茂首相が派閥裏金事件に関係した議員の公認や比例代表への重複立候補を見送る一方、女性や若者を積極的に擁立した結果のようである
■ 8. 女性候補者比率
- 女性の候補者を実際に議員として送りこむことができたのは立憲民主党で、衆参ともに全体よりも女性議員の比率が上回っている
- 自民党が過去よりは改善したのも石破政権の選択である
- 女性候補者は314人、23.4%と過去最多ながら3割にも満たない
- 候補者の女性比率をあげて日本政府の数値目標にほぼ達したのは参政党37.9%(女性候補者数36人)、日本共産党37.3%(同88人)、れいわ新選組34.3%(同12人)くらいだった
- 母性に聖性を見いだすタイプのフェミニズムもあるようなので、その意味では参政党のような右派ナショナリズムからジェンダーギャップ指数だけは改善される未来もあるのかもしれない
■ 9. ジェンダーギャップ指数批判の適切な対象
- 「2030」という具体的な目標をかかげたのは自民党政権の日本政府で、実はジェンダーギャップ指数の誕生よりも早い
- もし政界で女性比率をあげることだけを目標とすることを批判したいなら、その対象は日本政府こそがふさわしい
- 逆にジェンダーギャップ指数はとりこぼす要素の多さなどからフェミニストからも批判されているくらいだが、ずっと広い範囲を見て算出されている
- きちんと「99%」の女性が平等であるかをたしかめるためである
■ 1. 総合評価
- この文章は論理的整合性が高く、実証的根拠に基づいた説得力のある批判である
- ジェンダーギャップ指数に関する誤解を指摘し、データで裏付けている点は評価できる
- ただし一部に論理の飛躍があり、著者の政治的立場が透けて見える箇所もある
■ 2. 肯定的評価
- 明確な問題提起:
- フレイザー氏の主張とジェンダーギャップ指数批判の混同を指摘している
- はてなブックマークの具体的コメントを引用し批判対象を明確化している
- 問題の所在が分かりやすい
- 実証的データの提示:
- ジェンダーギャップ指数の算出方法を具体的に説明している
- 女性閣僚数、女性議員数の推移を数字で示している
- 党派別の女性候補者比率を比較している
- これらは検証可能で説得力がある
- 誤解の指摘が的確:
- 「行政府の長の性別」が50年の在任年数比率で算出されることの説明が正確
- 高市首相1年目では2%程度しか改善できないという計算が論理的
- 歴史的文脈の提供:
- 2003年の「2030」目標がジェンダーギャップ指数誕生より早いという指摘
- 過去の女性閣僚数の推移(第2次安倍改造内閣の5人など)
- 時系列の整理が適切
■ 3. フレイザー氏の主張の不完全な整理
- フレイザー氏の「プレゼンスの政治」vs「アイデアの政治」という区別を紹介しているが、その関係性の説明が不十分である
- 論理的欠陥:
- フレイザー氏がジェンダーギャップ指数のような量的指標を否定しているのか、それとも「指標だけでは不十分」と言っているのかが不明確
- 「象徴だけでは不十分」と「女性政治家の増加が無意味」は異なる主張だが区別が曖昧
- フレイザー氏自身が過去にジェンダーギャップ指数的な指標をどう評価してきたのかの検証がない
■ 4. 批判対象の選択的引用
- はてなブックマークのコメントを批判しているが、これらは匿名の短文コメントであり学術的・政治的に影響力のある意見ではない
- 論理的欠陥:
- ストローマン論法の危険性:最も弱い批判者を選んで論破している可能性
- より洗練された保守派やリベラル派の批判に応答していない
- 「複数見かけた」という主観的な量的表現(実際に何件あったのか不明)
- 公平性の問題:本当に批判すべきは政治家や有識者の発言ではないのか。匿名コメントを批判対象にすることで議論の質が下がっている
■ 5. ×0.5の解釈についての推測
- rag_en氏の「×0.5」について「男性を含むと誤読している可能性」と推測しているが確証がない
- 論理的欠陥:
- 「×0.5」は単に「99%の半分は女性、残り半分は男性」という意味かもしれない(実際、人口比は約50%)
- 著者の解釈が正しいという根拠が示されていない
- 相手の意図を推測して批判するのは不誠実
■ 6. ジェンダーギャップ指数の限界への言及不足
- 「フェミニストからも批判されている」と一言触れるだけで具体的な批判内容を説明していない
- 論理的欠陥:
- どんな「とりこぼす要素」があるのか不明
- 例えば経済分野では賃金格差を見ているが、非正規雇用率や貧困率は考慮されない
- 教育分野では逆転現象(女性の大学進学率が高い国)が低評価になる矛盾
- こうした限界を正直に示さないと著者も指標を無批判に擁護しているように見える
■ 7. 政治的バイアスの混入
- 「どちらかといえば野党第一党の成果」「石破政権の選択」という表現に問題がある
- 論理的欠陥:
- 立憲民主党を暗に評価し、自民党(特に安倍政権以降)を批判する意図が透ける
- これ自体は事実に基づいているが著者の政治的立場が分析に影響している印象を与える
- より中立的な表現にすべき
■ 8. 参政党への言及の不適切さ
- 「母性に聖性を見いだすタイプのフェミニズムもあるようなので、その意味では参政党のような右派ナショナリズムからジェンダーギャップ指数だけは改善される未来もあるのかもしれない」という表現に問題がある
- 論理的欠陥:
- 皮肉めいた表現で分析の客観性を損なっている
- 参政党が実際に女性候補者比率37.9%を達成したという事実は認めるべき
- 「母性に聖性を見いだす」フェミニズムと参政党の関係を実証していない(推測に過ぎない)
- 右派ナショナリズムが女性の政治参加を促進する可能性を軽視している
- より適切な指摘:女性候補者比率だけでなく、その候補者が当選後にどのような政策を推進するかが重要という点を強調すべき
■ 9. 因果関係の曖昧さ
- 「きちんと『99%』の女性が平等であるかをたしかめるためである」という結論に問題がある
- 論理的欠陥:
- ジェンダーギャップ指数が「99%の女性の平等」を測定できているという根拠が不十分
- 実際には経済・教育・健康・政治の4分野のマクロ指標であり、個々の女性の生活実態を直接測定しているわけではない
- 例えばシングルマザーの貧困率、性暴力の被害率、家事労働の偏りなどは指数に含まれない
- 著者は指数の限界を認めつつも過度に擁護している印象
■ 10. 構造上の問題
- タイトルと内容の不一致:
- もし「ジェンダーギャップ指数の擁護」のような題なら、実際には「はてなブックマークコメントへの反論」が中心で焦点がずれている
- 結論の弱さ:
- 最後の段落は唐突で論理的帰結として導かれていない
- ジェンダーギャップ指数が「99%の女性の平等」を確かめるための指標だという主張は前段の分析から自然に導かれていない
- フレイザー氏への回帰の欠如:
- 冒頭でフレイザー氏の主張を紹介したのに最終的にフレイザー氏の視点に戻って結論を出していない
- 「プレゼンスの政治」と「アイデアの政治」の両方が必要だという統合的な結論にすべきだった
■ 11. 欠けている視点
- 保守派の真っ当な批判への応答:
- ジェンダーギャップ指数への保守派からの批判には一定の妥当性を持つものもある(男女の生物学的差異や選好の違いを無視している、結果の平等を過度に重視し機会の平等をおろそかにしている、文化的多様性を考慮していない等)
- こうした批判に正面から応答していない
- 「質」の評価の欠如:
- 著者もフレイザー氏も女性政治家の「質」や「政策内容」が重要だと主張するが、それをどう測定するのかの具体案がない
- これは非常に難しい問題だが議論を避けている
- 男性の問題:
- 「99%の女性」に焦点を当てるのは良いがジェンダー平等は男性の問題でもある(例:父親の育児参加、男性の自殺率、男性の教育達成度低下など)
- この視点が完全に欠落している
- 階級・人種・障害との交差性:
- フレイザー氏は階級的視点を強調しているが著者はそれを十分に展開していない
- 日本の文脈では非正規雇用の女性、外国人女性、障害を持つ女性などの複合的差別が重要だが言及なし
■ 12. 改善提案
- より強固な論証構造:
- フレイザー氏の主張→ジェンダーギャップ指数の役割→両者の補完性という流れにすべき
- 「プレゼンスの政治」(量的指標)と「アイデアの政治」(質的評価)の両方が必要だという結論を明確にする
- 批判対象の格上げ:
- 匿名コメントではなく政治家や学者の発言を批判対象にすることで議論の質を上げる
- 指標の限界の正直な提示:
- ジェンダーギャップ指数の具体的な限界を列挙しそれでもなお有用である理由を説明する
- 代替案の提示:
- 「では女性政治家の質をどう評価するか?」という難問に何らかの試案を示す
■ 13. 結論
- この文章はジェンダーギャップ指数に関する誤解を正す点では成功しているが、より深い議論には至っていない
- 強み:
- データに基づいた実証的分析
- ジェンダーギャップ指数の算出方法の正確な説明
- 誤解の指摘
- 弱み:
- 批判対象が弱すぎる(匿名コメント)
- 指標の限界への言及不足
- 政治的バイアスの混入
- フレイザー氏の主張との統合的結論の欠如
- 「質」の評価方法への提案なし
- 格付け:論理的説得力★★★☆☆(5点満点中3点)
- 基本的な論理は成立しているがより深い分析と公平な視点があれば説得力は大幅に向上する
- 現状では「特定の誤解を正す」という限定的な目的は達成しているがジェンダー平等をめぐる本質的な議論には貢献していない
■ 1. 導入:戦力回復の重要性
- 桃野泰徳氏がbooks&appsで「娯楽も遊びも休息も、仕事の一部」という記事を執筆した
- 機械にメンテナンスが必要なのと同じく、人間には娯楽や遊びや休息、つまり「戦力回復」のフェーズが必要になる
- それを怠っていれば仕事能力は次第に低下し、ときには健康を損ねてしまうかもしれない
- マトモな組織や指揮官は「戦力回復」に十分な注意を払い、メンバーの福利厚生に努める
- 2004-2006年の陸上自衛隊イラク派遣に際し、厚生センターが現地に設営されたのもそのためである
■ 2. 牟田口廉也とインパール作戦
- 戦史を振り返ると「戦力回復」に注意を払っていないリーダーや指揮官が案外いる
- 太平洋戦争における旧日本軍は全体的にそうだが、海上補給ルートが寸断されてしまった太平洋戦争後半にはむごい話が多い
- 旧日本軍のなかでも特別にひどい人物と言われがちなのが牟田口廉也である
- 牟田口廉也の経歴:
- 佐賀市の士族の家に生まれ、陸軍士官学校を平凡な成績で卒業した
- 尉官時代には与えられた仕事をよくこなした
- 佐官時代には軍内の政治遊泳にも部下の統率にも優れていたようだ
- その後も出世を重ねて、運命のインパール作戦においては中将の職に就いた
- 後世に「無能なリーダー」として後ろ指を指される人物も、そう評されるエピソードが巡ってくるまでは優秀であることが多い
- なんらかの優秀さがなければリーダーや指揮官の地位を獲得できない
- 人には最適な器のサイズというものがあり、平社員の時が一番輝く人、係長の時に一番輝く人、課長の時に一番輝く人、部長の時に一番輝く人がいる
- 自分の器をこえた役職はその人自身にも周囲の人や組織にも不幸な転帰をもたらす
- 牟田口廉也という人物と旧日本軍という組織にとって、中将という彼の階級、さらにビルマ方面の司令官という彼の役職が好ましい結果をもたらしたようには見えない
■ 3. インパール作戦の実態
- 牟田口廉也が立案・指揮したのがインパール作戦だった
- 牟田口は戦局を打開するといってインドとビルマの国境地帯に侵攻した
- 補給困難な熱帯雨林を通り抜ける作戦は失敗し、大量の餓死者や病死者を出す結果で終わった
- インパール作戦を象徴する言葉:
- 「皇軍は食う物がなくても戦いをしなければならないのだ。兵器がない、やれ弾丸がない、食う物がないなどは、戦いを放棄する理由にならぬ。弾丸がなかったら銃剣があるじゃないか。銃剣がなくなれば、腕でいくんじゃ。腕もなくなったら足で蹴れ。足もやられたら口で噛みついて行け。日本男子には大和魂があるということを忘れちゃいかん」
- この発言の真偽は不明だが、「牟田口廉也は補給や戦力回復について考えの足りない将官だった」という世評を象徴しているセンテンスである
■ 4. 牟田口廉也みたいな親の存在
- 世の中には牟田口廉也みたいな親がいっぱいいる
- 子どもを逆境にさらす親にもいろいろあり、狭義の虐待やネグレクトをやってしまう親はその典型である
- それとは別に子どもに熱心すぎる親、子どもにあれこれさせ過ぎる親もいる(やれ勉強しろ、やれヴァイオリンを練習しろ、やれ英会話を経験しろ等)
- 伸び盛りの子どもにさまざまな経験を提供すること、それ自体は悪くない
- 勉強だってできるにこしたことはない
- しかし子どもには娯楽や遊びや休息が、つまり「戦力回復」のフェーズも必要である
■ 5. 子どもにとっての遊びの重要性
- なかでも遊びは軽視できない
- 本来子どもは遊ぶのが仕事みたいなものであって、そこからも技能を習得し、自律性や自発性をも獲得していく
- 子どもにとってのそれらは「戦力回復」という言葉以上の重要性を含んでいる
- 子育てをうまくやるにあたっては「戦力回復」や補給やメンテナンスに相当するもの、それから「遊び」に相当するものへの目配りはどうしたって必要である
- それらを軽視して子どもに勉強や稽古事を強いているなら、それは牟田口廉也のインパール作戦に似たことを我が子に強いているも同然である
- 餓死者や病死者は出ないかもしれないが、子どもの心身の健康な発達にも影を落とすだろう
■ 6. 子育てのインパール作戦の実態
- 実際には多くの親がインパール作戦のごとき、牟田口廉也のごとき子育てをやってしまっている
- やれ有名私立学校だ、SAPIXだと高みを目指す一方で、補給や戦力回復を軽視し、子どもから「遊び」の機会を剥奪することが効率的なことだと思いこんでいる親は未だ多い
- そうした親は「我が子のためを思って」と思い込んでおり、自分のやっていることは虐待やネグレクトの正反対であるとも確信している
■ 7. 親権による介入の困難さ
- 問題はそうした戦力回復や補給や「遊び」を軽視しきった親でも親権があり、そうそう誰も口出し・手出しできないということである
- 食事を与えない・身体的虐待を行っているといった狭義のネグレクトや虐待が行われているなら児童相談所が動くこともできる
- しかしそうでない場合、どんなに子育て指揮官としての親が無能でも、子育てがインパール作戦じみていても、それをどうにかすることはできない
- 誰かの子育てを無能であるとかインパール作戦であるとじかに指摘することは、現代社会のシステム下では不可能なことである
■ 8. 受験うつとTMS療法の問題
- 最近「子育てのインパール作戦」に戦力回復を提供する体裁をとった新しい商売も生まれている
- それは「『受験うつ』にはTMS療法を」といったものである
- TMSとは正式名は経頭蓋磁気刺激法といい、脳の左背外側前頭前野をターゲットとして磁気刺激を生じさせるような療法である
- この療法の進化版であるrTMS療法は厚労省からうつ病に対する保険適用のお墨付きももらっている
- うつ病に対して新しい療法が提供されるようになったのはいい
- だが子どもを受験勉強漬けにして元気がなくなってきたら「受験うつ」と称して脳に磁気刺激をおくるというのはディストピアめいている
- そもそも「受験うつ」とは一体何なのか、そんな病名や概念は精神医学の世界のいったいどこにあるのか
- 厚生労働省の委託を受けて日本精神神経学会が作成したrTMS療法に関する資料によれば:
- この治療法の対象者は中等度以上のうつ病の患者さんである
- 十分に薬物療法を実施しても効果が認められない患者さんである
- 機材とプロトコルも定められている
- 「受験うつ」に対して行われるそれはそうした資料内容から逸脱しているようにみえる
- 自由診療の領域だからはみ出していて構わないということだろうが、それで本当に補給や戦力回復が期待できるのか、ましてや「遊び」の代用品になるのかよくわからない
■ 9. 自己モニタリングの重要性
- 誰の指図も受けなくて構わないかわりに、誰からも忠告や警告をもらえなくなった今日の子育てにおいて、自分の子育てがどこまで間違っているのか、どう間違っているのかを自己モニタリングするのはとても難しい
- 牟田口廉也とて尉官時代や佐官時代には無能ではなかったことを思い出すべきである
- 人には向き不向きや器の大小がある
- たとえば職場では最優秀とみなされている人が子育てでは最低であることはよくあることである
- 子育てにおいて「インパール作戦」をやってしまうこと、親として牟田口廉也になってしまうこと、それ自体が恐ろしい
- それについて誰からも指図を受けないで済むかわりに誰からも忠告や警告をもらえなくなっていることが、また恐ろしい
■ 10. 親への提言
- 親はたえず自己モニタリングを試みなければならない
- そうしてもなお自分はそんなにうまくやれるものじゃないと自戒したほうがいい
- 何事も極端に走りすぎないこと
- 少なくとも「過ぎたるは猶及ばざるがごとし」という言葉は子育てにおいても金言である
- そうしたうえで自分の子どもに必要な「補給」や「戦力回復」について常に考えておくことが大切である
■ 1. 導入:スパイの定義と本動画の焦点
- 昨今の日本ではスパイ防止法の制定など、中国やロシアなど国家による日本への陰謀という文脈でスパイが語られることが多い
- しかし本動画は日本の警察と日本という国家に対し、その転覆を企む革命を志向する左翼の反体制勢力、つまり共産主義者との関係に焦点を当てる
- 現代日本において最も多くの人員を擁したスパイはこの2者の間に置けるものである
- 本動画は共産党の秘密党員が官僚機構に工作をかけたり大企業の役員にスパイを送り込むといった左翼から国家に対するスパイ行為を取り扱うものではない
- あくまで本題は公安のスパイになった男の話であり、スパイになるとどうなるのかという内容である
■ 2. 公安警察の概要
- 公安は日本では秘密警察と同義である
- 警視庁公安部に代表される日本の公安警察は予算から人員までそのほとんどの情報が不明である
- 最初期から明確に共産主義革命の阻止を目的として作り上げられた最強の秘密警察である
- 今日に至るまで共産党、革マル派、中核派、その他数々の革命を標榜する勢力はこの公安警察と水面下の戦いを繰り広げてきた
- 最も明確に戦えていたと表現できるのは、実際に警察の方にも秘密党員を送り込んでいた革マル派くらいである
- それ以外の多くの極左は公安警察の一挙手一投足に対して基本的には防戦するのみである
■ 3. 公安調査庁とS工作
- 国家におけるいわゆる秘密工作機関は公安警察以外に2つある:
- 内閣情報調査室
- 公安調査庁
- 公安警察は戦前の特高警察がその由来だが、公安調査庁は同じく戦前の旧内務省の調査局を起源としている
- 戦後それは法務特別審査局と名を変えたが、1950年代からの共産党の武装闘争に対処するため、共産党をスパイによって内から食い破るために法務省の外局として秘密工作を担当する公安調査庁として拡大された
- この過程で1952年に制定されたのが破壊活動防止法(破防法)である
- 公安調査庁の活動はもっぱら情報収集のみで、逮捕や捜索などの司法警察権を持たない
- 公安調査庁最大の特徴は対象組織に対するスパイ工作による諜報活動である
■ 4. スパイの種類と規模
- 権力が革命等破壊組織の内部へスパイ工作を行う時、スパイには3つの区分がある:
- その組織の構成員になっているものを協力者として獲得する
- 適当な時にはホームレスなどの民間人をスカウトして組織に入れさせる、関わらせる
- 公安警察官自身が身分を偽装し、公式記録からその存在自体を抹消して年単位の時間をかけて組織の中枢に潜入する
- 最も多いのは1と2のケースである
- 2のケースのスパイは公安用語ではSと呼ばれる協力者である
- 1960年頃の国会答弁でSの数を推定させるデータが示された:
- 警察庁から支払われたSへの謝礼金が2億6200万円
- 公安調査庁から支払われた謝礼金が約2億円
- 合わせて4億6200万円(1960年大卒初任給が1万円台の時代)
- 1987年の公安調査官の総数は1639人であった
- 1992年度の予算総額は166億円、うち公安調査官の活動費が25億円であった
- このうち大部分はSへの報酬として現金で用意されるものである
- 公安調査官当たり3人のSを雇っているとすると、全国に権力のスパイは5000人近く存在することになる
- 公安警察のSとも合わせれば当時のスパイは1万2万という数の規模になる
- これだけの数の人間が金のためにあるいは何らかの弱みを握られて国家の目となり耳となって極左だけでなく政党や労働組合の中にさえ根を張っていた
■ 5. S工作の歴史的背景
- 国家がスパイという存在に固執する理由は、これこそが革命勢力を内側から破壊する最も有効で最も安上がりな手段だからである
- S工作を初めて近代的に活用したのは19世紀中頃、帝政ロシアの秘密警察オフラーナであると言われている
- ロシア革命以前最大の社会主義政党であったエスエル(社会革命党)はオフラーナが差し向けたスパイ、エヴノ・アゼフによって壊滅的な打撃を受けた
- 日本でも特高警察によるスパイMが戦前共産党の中枢を支配し、その下で赤色ギャング、戦闘的技術部などあらゆる計画を立てて人民の間に共産党は怖いというイメージを定着させることに成功した
- 戦前の共産党はスパイ以外の頭が悪かったのでスパイを差し込むまでもなく既に壊滅していたが、権力にとって共産党がなくなるのは都合が悪かった
- そのためボロボロの状態で形だけ再建されていた党にSを内部に潜り込ませて手取り足取り育てさせ、ガリ版刷りを活版印刷に改めさせて現在の価値で月数億円の常時収入を得るというにまで導いた
- エヴノ・アゼフは社会革命党戦闘団というテロ組織の指導者となり、内務大臣やモスクワ総督のセルゲイ大公から皇帝ニコライ2世の叔父に至るまで数多くの暗殺を手掛けた
- 日本共産党で天才と呼ばれた男も、ロシア革命で最も革命的と評されたテロリストも、その両方が権力機関の秘密工作で送り込まれたSによるものであった
- 日露戦争において明石元二郎がロシアの不満分子を糾合し第一次ロシア革命を誘発させた際、エヴノ・アゼフにも接触し資金援助を行っていた
- 1970年代には日本共産党民青の愛知県委員長が10数年に渡り2000万円以上を警察からもらっていたというスパイ摘発事件もあった
- 最も有名な例はマリノフスキーである
- 後にロシア革命を成功させたレーニンが率いたボルシェヴィキの最高指導部にさえスパイはいた
- しかも国会議員という立場でレーニンは最後の最後までマリノフスキーというスパイを信頼のおける男だと評価していた
- 革命が成功しオフラーナの秘密文書が公開され、ついに彼が自白するその最後の瞬間までレーニンですらスパイの事実に気づけなかった
■ 6. Mの経歴:英雄への道
- 男(M)は1947年に生まれた
- Mは日本の新左翼において紛れもない英雄だった
- Mの戦いの起源は1960年代高崎経済大学から始まる
- この大学は元々マルクス経済学を軸とする中央開の一流大学だったが、指導局はそれを嫌い、わずか5年で学生募集を停止したという経緯がある
- 戦後最大の労働争議と呼ばれた後方闘争で鎮圧のために米軍を投入したような人物らを教授陣に招いた筋金入りの反共大学として再出発した
- 指導局と地方ブルジョアジーによる定員を倍増させるほどの不正入学とこれを基盤とした右翼的な学内支配に対し左翼青年たちは怒り行動を開始した
- 1962年にはまだ成立間もない組織の機関紙の読者が学生の中に現れた
- 1966年4月、Mはストライキに突入した闘争再生期に高崎経済大学に入学した
- いわゆる全共闘時代の出来事で、高崎は全国でも1番を争うほどに早く学生運動が巻き起こった
- 1967年時点で「挨拶の森」という映画にさえなっている
- Mは生半可な学生運動が正義心に燃えてスクラム組むだけでは勝てないと悟り、革命党となる強固な組織にしか自分の未来は託せないと決意し、一早く組織とある革命党の構成員となった
- 1967年の10・8羽田闘争から始まり、組織がその動員力を2倍3倍10倍へと増やしていく激動の7ヶ月、彼は各地を転戦し続けた
- 1968年、彼は再び高崎経済大学の闘争に戻り、党の人間となって破壊された自治会の再建に注力した
- 党とMとの対立はすでにこの頃から始まっており、実行委員と党の指導方針がぶつかった時、彼は党席を一時離脱してなお自分の方針を貫くというある種敵対的な行動を取った
- 1971年、国鉄高崎地方の戦闘員初期の誘いに応募しようと相談したら当時の地区委員長に反革命と罵倒されたという記録を彼は残している
■ 7. 渋谷暴動事件と投獄
- 1971年11月14日、渋谷暴動事件が起こった
- 組織が指導する内乱を起こした東京大暴動闘争で、21歳の巡査がここで殺害された
- Mはこの時、我々の教科書で指折り数にも匹敵する戦果をあげた
- この闘争に参加し、その上で1975年闘争の現場部隊責任者として巡査殺しの暴力行為等処罰法違反共同正犯で逮捕された
- 殺人罪で起訴されたのは彼以外にも7人、さらに16人が起訴された
- 実際に参加した人数から検挙されたものの数、そこでギルティがたった23人という数字に収まったのは組織があるからこそである
- 最も重要な問題は彼は現場不在、実行行為なしである
- そもそも参加していないし、自らが担ってもいない渋谷の現場部隊責任者としての罪を着せられ、公判途中でも思ったようなことを言えず組織に振り回された
- 渋谷闘争をやり切って懲役13年という勲章をもらって獄に入ったことは、極左からすれば英雄と認められる闘争戦士以外の何者でもない
- しかしそれらは全て嘘っぱちで、そもそもやり切ってもやってもいないのに、組織は戦いのシンボルとして自分を祭り上げた
- 捕まっている間に自分の原点でもあった群馬の学生運動は壊滅した
- 1991年7月、未決を差し引いて満期出所を果たし戦列に復帰した彼は43歳になっていた
■ 8. 出所後の困窮と組織の堕落
- アイデンティティも壊れた
- ある意味では無実の罪で獄に入ることで本来担わされていたであろう対革命戦争(いわゆる極左の内ゲバ、毎日のようにリンチや爆弾闘争、火炎瓶を大量生産した二重革命戦争)の参加を回避できたという見方もできる
- 若者はおっさんになってしまった
- 出所するなりMはいきなり生活に困窮した
- 家賃を援助したのは彼の兄だった
- その兄とは後に自民党総裁となる谷垣禎一の親友でもあった
- 大学時代の同期同級生同士で、財務大臣在職時にはなんと極左であるその弟Mとも谷垣は会ったことがあるそうである
- 本来であれば勲章同然、組織に厚遇されて学生からは尊敬されて、精神的な楽や必要な苦労はともかく金銭面で革命戦士が困ることなどはあってはならないはずだった
- しかしMが目にしたのはある種の組織の堕落した姿だった
- ソビエト連邦が崩壊した1991年、組織もその情勢判断、路線方針を巡って激しい混乱をきたしていた
- 70年代から長く続いてきた内ゲバ(同じ左翼から分かれ、そして全人民の敵へと突然変化した革命を裏切った双子の兄弟ファシスト革マルを骨すら残さず完全殲滅するための革命戦争)は、両組織の指導者トップによる秘密会談で手打ちとなった
- 組織は大衆路線に舵を切り、革命軍は縮小され、銃を握った戦士たちはPTAや労組を追いながらも続々と復員していった
- 武装闘争を放棄するための一時の時間稼ぎ、財政破綻こそが新路線最大の理由、労働組合の利権を避ける以上は仕方ない、など指導部の説明は各々言うことが異なった
- 出所してばかりの浦島太郎状態のMを気にかけるものは少なかった
- 一方Mは少ない援助から家庭を持ちアパートを借りて新しい生活を始めた
- 子が生まれると途端に家計は破綻寸前、援助も次第に亡くなり、組織は組織で新路線を巡る内部闘争で機能不全に陥っていた
- 最高指導部が贅沢の限りを尽くしていたことも後に彼を裏切らせた原因である
- 数年前の天皇決戦時から組織に集められたカンパは1度に4億を数えることもあった
- 最高指導部の1人はそのうち1億を中抜きし、九州に別荘を作り、愛人を囲わせて新幹線で何十回も往復した
- そういう事実もあくまで当時は噂に過ぎなかったがMの耳に入るところとなった
- 彼は7年間娘と妻との3人で困窮という地獄を味わった
■ 9. 公安調査庁との接触
- 2001年という21世紀に入っても状況は変わらなかった
- Mはある日、いつものように集会から帰宅する帰り道、電車の中で何者かにつけられていることに気づいた
- 即座に隣駅のホームで交差し、誰だと尾行者に向けて問いただした
- 男は「恐れ入りました。機関紙の読み方をお尋ねしたいのです」と言った
- Mは「権力か」と答え、男はそれに頷いた
- このくらいの接触はよくある話で、公安は組織の中で不満な環境に置かれているものを見つけ出し手懐ける
- 自らがそういう対象だとされたことに腹立たしさを覚えたMは尾行するなと言ってその場を立ち去った
- しかし生活には困窮している
- 程なく2度目の接触があり、「お嬢様に何か買ってあげてください」と無理やり握らされた封筒には10万円が入っていた
- それからしばらくしてMの自宅である都営住宅の一室で新聞を読んでいるとインターフォンが鳴った
- 覗き穴の向こうの男は小さくしかし伝わる声でMに喋った:「警察ではありません。法務省のものです」
- 彼に接触したのは公安調査庁だった
- 彼は自分のアポなし訪問からいつの間にか定期的に公安調査庁と密会する仲になってしまった
- 品川プリンスホテル、高輪プリンスホテル、京王プラザホテル、個室のある高級食堂でその都度場所を買えながら毎月金をもらった
- 基本は1回に月10万円、たまに一時金と称して5万円から10万円さらに上乗せされることもあれば、誕生日娘の入学祝などで2つの封筒をもらう日もあった
- Mは途端に人間的な生活を取り戻すようになった
- 公安調査庁から渡された総額は実に2500万円である
- しかしそれは10年という期間を通してのもので、もちろん非課税だが年で割ればそれしか収入がないのなら市民社会では大した額ではない
- それでも左翼社会では信じられないほどの大金だった
■ 10. スパイ活動の深化
- 最初は必要に迫られて重要な情報は話さず、むしろ利用してやると思ったかもしれない
- しかし極左は権力とのいかなる会話も、取り調べでの世間話でさえ同志への裏切り、階級的犯罪として厳しく取り締まる
- 金銭の授受がバレれば終わる、引き返せない状況で公安調査庁は会うたびに封筒を厚くさせていった
- こうして英雄は存在論的に転落した
- 裏切りは蜜の味でもあった
- スパイ活動は常態化し、Mが公安調査庁にとって最も価値のある情報源として認められるまでにそう時間はかからなかった
- 彼は自分の持つ情報量の豊富さに担当者が目を白黒させながら目を取る姿に酔っていたのかもしれない
- 一回りも2回りも年の離れた若造がスーツを着てありがたがって話を聞いてくれるどころか質問さえ止まらない
- 後輩を指導して謝礼を受け取るという感覚に近かった
- 獄中で失った自尊心、出所後に組織の中で感じた疎外感、それら全てを埋め合わせるかのように、彼は権力の前で先生を演じ、その役割に没入していった
- 当時公安調査庁が最も知りたがっていたのは組織は本当に労働運動1本で行くのかそれともゲリラに戻るのかという路線方針だった
- Mは彼らが欲しがる情報を資料と共に的確に提供した
- 三里塚闘争や11月集会の正確な動員数、中央による内部総括、そして労働運動の動向
- 特に韓国の民主労総との国際連帯の進捗には異常な注目が示されたらしい
- 疎外感を感じてはいても彼自身組織の指導部トップオブトップではないにせよ最高級の機密を共有する1人であった
- 日本最大級の極左暴力集団の内部情報はこの頃からMを通して権力に筒抜けとなっていた
■ 11. 関係継続の試みと限界
- 2005年、Mは大動脈瘤という大病で倒れた
- 党の活動の第一線から引かざるを得なくなった
- 普通ならここでスパイとしての価値はなくなるはずだが、権力は彼を手放さなかった
- 公安調査庁の担当者はなんと彼が入院している病院の外来まで姿を表し見舞いと称して接触を続けた
- 活動の現場から離れた彼に公安調査庁は組織から分裂した対立党派のウェブサイトのコピーなどを渡し、次回会う時にその感想を述べさせるという形で関係を維持した
- 権力御用達のコメンテーター、適当な感想でも何も知らなくても関係なく会うたびに10万円が渡され続けた
- しかし裏切るストレスというのがあった
- 2011年には重大な癌が発覚し、3度の手術を受ける
- Mはさすがに療養期間に関係を断ち切ろうとした
- 自分の持っている情報量の豊かさと分析が世論、そして国家権力をも動かしているという実感に酔いしれつつも、若僧が質問する際鞄のように覗くファイルをちらりと見ると酔いは覚めた
- 議長副議長書記長政治局員に始まり地方委員会書記、専従本部員に至るまで氏名経歴本籍現住所など多くの秘密はすでに権力の手元にあった
- 自分がしていることの重さ、その裏切りに彼自身が心身ともに耐えられなくなっていた
- だからもう今回限りにしたいとMは担当者に切り出した
- しかし答えは上に相談するから待ってくれというだけ
- 当時の公安調査庁は内部の不正経理問題で揺れており、担当者も身動きが取れなかった
- 権力側の都合が彼の引退を許さなかった
- Mは当面の間会うだけで十分だからという具合で結局最後の最後まで毎月の密会を続けてしまう
■ 12. スパイの露見
- 2012年の秋、終わりの始まりは最も身近なところからやってきた
- 彼の妻が隠していたはずの預金通帳を突きつけ、なぜこんなにお金があるのかとその不自然な金の出所を厳しく追求し始めた
- 65年の人生が音を立てて崩れる瞬間、彼は適当な嘘をついてその場をしのいだが、生涯家庭をしのぎ切ることまではできなかった
- 2013年3月末、Mは改めて終わりにしてほしいと懇願した
- 公安調査庁はあっさりと許可した
- 2013年4月24日、英雄と呼ばれた男の長期に渡るスパイ活動の最後の仕事が終わった
- Mのスパイ活動は即座に露見した
- 2013年5月8日、彼は組織が派遣した4人の男により確保され、以後28日間に渡り、反革命分子として監禁下に置かれた
- 4度目の癌摘出手術を直前に控えながら彼は革命党によって逮捕された
- 逮捕の数日前には組織の公然拠点本社に警察からのガサ入れがあった
- 家宅捜索の間、組織のトップ書記長同士は例によってあの英雄スパイMの名前を出して仲間と共に小さい声で彼の健康問題を案じていた
- そこで公安は振り向いて言った:「なんだお前ら?Mがスパイだって知らないのか?」
- 暴露の発端は意外なところから来るものである
- 要は公安にとってはもうMからの情報は出尽くしていてスパイとしては様詰みになった
- だから後の処理はあなた方のお好きにお任せしますよと、そういう意味で丸投げした
- 権力自らのゴミ捨て、そして素早い不良品回収としての革命党によるMの逮捕である
■ 13. Mの冤罪主張
- ここまでの内容は全て組織の内部で秘密に回覧されていた文書に記載されているもので、スパイM自身の自白調書である
- M自身は公安調査庁から28日後に隙を見て逃亡し、命が惜しくて警察に駆け込んだという風に組織は記している
- スパイMの冤罪説が巷間噂されるのはそれから約1年半後のことだった
- 2014年12月逃亡中のスパイMは本人の名義の声明を発行した
- その中で彼は「私は断じてスパイではない」と革命党による弾劾を全面否認し、党中央の発表は完全な捏造であると主張した
- 事態の経過は彼によれば次の通り:
- 2013年5月8日突然私の杉並区内にある自宅に4人の男が押しかけ組織の高円寺事務所に連行された
- その後査問が始まった(査問というのは反革命分子の取り調べを意味する左翼社会の言葉)
- 自白に関してMは警察同然の作文だとその文書の列を糾弾した
- どうやら査問中机の下に隠しマイクが仕込まれていたようで、音声を録音しただけの署名すらないものだったようである
- 逃走の経緯について彼が脱獄したのは6月4日、公安調査庁から28日目の出来事らしいが、場所は組織の事務所ではなく三井住友銀行西荻窪店らしい
- JR西荻窪駅南側の繁華街のど真ん中にある場所である
- Mの全財産を党が接収するために企図された当初のスパイ行為という換金目的からも激しく逸脱した略奪行為だが、組織はこれに失敗した
- 「貯金庫の解約手続きを取って庫内にあるものを全部取り、西荻窪、荻窪、吉祥寺の金融機関で解約と送金手続きを取る。明日はできるところまでやる。明後日以降も継続する。7日は早朝に車で名古屋に向かい、名古屋にある貸金庫から登記謄本など取り出してその日のうちに帰京する」と前日Mに指導部はそのように決定を伝えたらしい
- Mは素直に投降したと思っての決定だったが、貯金庫なんて逃げようと思えばすぐ逃げられる
- 銀行は独自判断で警察を呼び、Mはその隙に逃げ延びた
- 直ちに組織政治局は直轄の追跡の専門部隊を動員し、Mを追った
- 自宅、兄弟姉妹親戚から全ての銀行、病院知人に至るまで90歳の老人にまでMが1mmでも関係するところの全てに追跡行動がなされた
- もちろんここでMの娘なども人質に取られた
■ 14. 組織の弾劾とその問題点
- 実際Mの言う通りこのスパイ摘発事件には公安警察の密告、そして彼個人の不審な財政という状況証拠くらいしかなく、物的証拠は1つも上げられていない
- 根拠となるのは自白調書だが、法的には組織のようなやり方では証拠と認められない
- なお正確には公安の密告はその後夫の堕落を嘆じた同じ党員である妻の証言に変化した
- Mが白なのか黒なのかということは組織声明文のその後半部を読めばある程度は判断できる
- 組織の声明では「の革命に敵対したK・YI(これは仮名)、F・S最悪の分裂主義者である塩川一派の塩川M・O(過去これは仮名)、さらに女性分子などと陰に陽に結託し権力の意を挺して彼らを先導しつつ党の分裂解体を策動、反党分子につるむ反党分子とも新たな党破壊工作に乗り込んでいった」と記されている
- 「今なお党破壊のために蠢いているやからは己の行動がどれほど権力を利するおぞましい反階級的な犯罪行為であるかを今こそ思い知るべきである」
- スパイそれ自体というよりもスパイが女性分子とつるんで反党行動したことをより強く糾弾しているのである
- 当時党内にはまるで昔の共産党と同じようにスパイと粛清の嵐が吹き荒れた
- 中央の指導部は新たに3人組と称される勢力に掌握され、反発するものは党の革命に反対するものとして次々摘発されていった
- 私もまたその例外に漏れることはなかったという風にMは自らの冤罪を主張した
- 党査問の目的は明確に政治的なものであった
- そしてその追及が行き詰まり、Mが党中央への失望を明確に表明する意見書を出した後、事態は大きく転換した
- 3人組の1人A書記長はこれは再生不可能だなと言って党内政治活動の問題からM個人の不可解な財産問題へと移行したというわけである
- 元々当事の真偽チェックは行わない
- しかし組織に常に敵を作り出し、反対意見を反党行為やスパイと短絡的に結びつけて粛清する手法はかつての日本共産党、そしてスターリンのソビエトと全く変わらない話である
- そういう左翼スターリニズムの病を批判して現れた極左でもその宿痾には勝つことはできなかった
- また面白いのが労働者階級出身の妻が夫のスパイを見抜いたという話を組織は美談としている点である
- 革命のためならもちろん非を捨てて反動に堕ちた家族は攻撃の対象にしなければならない
- そのために非を捨てたというところを偉いと褒めまくるのである
■ 15. 総括:スパイと組織防衛
- どこから始まった話でどっちが黒なのかどっちが白なのかということは分かりかねる
- ただ1つ言えるのは帝政ロシアの秘密警察オフラーナという権力によるスパイは同志レーニンのボルシェヴィキにも確かにいた
- 例えば彼がプラハで開催したとある秘密幹部会議では28人の出席者のうちなんと4人が秘密警察のスパイであったことが後に判明している
- 最初の合法的な機関紙「ナチャーロ」の出版社にしても当局提供の資金でそれを賄っていた
- 何より最も重要なその組織の最高指導部にさえもマリノフスキーというSがいた
- しかしレーニンは最後まで疑心暗鬼に陥ることなく組織の中枢にスパイを抱えたまま革命を成功させた
- レーニンが大規模なスパイ狩りをもし革命前に起こしていたならば歴史は大きく変わっていたのではないか
- 確かに噂は流れていた
- 公安警察が組織の面前でMをスパイと言い放ったようにマリノフスキーがスパイであるということは何よりも帝政の秘密警察自体からさあ殺してくれと言わんばかりに流布されていた
- ストレスから異常行動を繰り返すようになっていたマリノフスキーを当局が切り捨て解雇させたその直後からレーニンの党内にはスパイ情報が流され続けていた
- しかしレーニンはそれを鼻で笑い、「そういう弾劾は全く馬鹿げている」と言った
- 実際にはマリノフスキーは本当にスパイだったが、もしそうではなかったらというのを考えるとこれは本当に怖い話である
- 公安警察の言うことに少しでも反応してしまえば組織内部は疑心暗鬼に陥る
- さらにそこに権力闘争みたいな進行中の別の問題が並立していれば不安に駆られて嘘の証言をするものだって現れるかもしれない
- しまいには無実の同志にスパイ分子という死刑相当の濡れ衣を着せている革命党という最悪の状態が出現する
- レーニンはおそらくそういうような状況を回避したかったのだろう
- スパイもスパイで時には金以上の利益を得ることだってある
- スパイ候補となる対象はまさにMのような組織の中で不遇な立場に置かれていることが多い
- もし黒説に基づくなら要するにMは組織内における精神的な証人の枯渇から唯一得意げに物を話し教え人に自慢できる瞬間を求めて公安との内通を続けた
- おそらく金をもらうことよりもそれは楽しいものだったのではないか
- しかしこれでは悲しい
- 実際には公安警察と裏で内通し続けることによりただのヒラだった存在が権力からの指示や資金提供などで急激に組織の中で成り上がっていく、そういう育成ゲームのような図式も成立することがたまにあるなんて噂されていたりもする
- 公安からの謝礼金は組織によって異なり、中核派外郭やノンセクトに対しては飲み食いだけというのも普通で、大体1回1万から3万というのが平均的なのではないか
- それも超のつく大企業の超のつく幹部でもない限り毎月2回もあったりなんていうことはない
- Sの報酬は話にならないくらい安い
- だってSになるようなやつはほとんどは報酬もらわなくても自ら警察に話し出すようなやつばかりだから
- また基本的に打ち筋は萌えというのは特に組織の内部の粛清というのは、洞窟が全部折れてるのに心臓発作で倒れたみたいな話も有名だが、人手に出てもまともな捜査はされない
- Sが絡む事件の場合その真偽はSへの公判査問に関して直接の逮捕者が出たかどうかというのである程度推測できる
- 結論としてこれは一般論でもあるが身内にスパイがいない前提で動く組織は潰れる
- 高度な秘密組織、日本で最も水準の高い公安警察で伝統、その情報は革マル派という極左に筒抜けであった
- 自衛隊に共産党員が普通にいたりするのもあえて公然に入れることで管理している
- 自衛隊内部での情報流通経路を把握できるから、弾圧せず公然化することで危険な雰囲気のやつはすぐに見つかる
- 出世させなければ何の心配もない
- こういう守口合理的な取り扱いを権力よりも強くそして深くできていたからこそレーニンのロシア革命は成功した
- 自分が組織を信じきれるか、そして組織が己を信じきれるかどうかが全てであるという至極普通の話でもある
■ 1. コメ騒動と戦後日本の農業政策
- 今回のコメ騒動は戦後から一貫して続いた流れの最終段階である
- 戦後日本は主食米であるコメの消費を次第に減らしていった
- 日本はアメリカの思惑を活用し、自動車で儲けて農業を犠牲にしてきた
- この流れがいよいよ最終段階に入ってしまった
■ 2. ザイム真理教による農業破壊
- 故・森永卓郎氏は緊縮財政が不可欠と信じ込ませる財務省の洗脳を「ザイム真理教」と揶揄した
- ザイム真理教が発信するメッセージを誰も疑わず、多くの人々がマインドコントロールされてしまった
- 本来であれば農家の疲弊を緩和する政策を日本政府はどんどん打ち出さなければならなかった
- にもかかわらず無為無策の日本は十分な手立てをこれまで講じてこなかった
- 日本の農業はますます疲弊していった
■ 3. 稲作ビジョンの欠如
- 米価が下がった結果農家が生活していけなくなれば、主食のコメさえも国内で作れなくなってしまう
- 国内の農家を支え、コメの生産を国内で継続できるようにするための「稲作ビジョン」を政府はなぜ打ち出さないのか
- コメ騒動への手当てとして備蓄米の価格破壊と輸入米の流通増加を進めても、それで終わりではいけない
- 今こそ国内の稲作をどう位置づけ、どういう政策でコメ作りを支えるのか政府が発表するべきときである
- 日本はいつまで経ってもそうしたメッセージを国民に発表しない
- 理由は財務省が「カネを出さない」と突っぱねているからである
- 農業は財源を切っていくためのバッファー(緩衝領域)となり、他に回すための予算の源泉になっている
■ 4. アメリカの占領政策の帰結
- コメをめぐる現下の状況はアメリカによる日本の占領政策の行き着く先である
- 国内の自動車産業を守るため、アメリカから迫られれば何でも買い入れてあげる姿勢である
- 日本が緊縮財政に陥ったとき、一番の切りどころが農水予算である
- 歴史的にこうした状況が続き、日本の農業は苦しくなっていった
- 稲作ビジョンを打ち出さずこのまま放っておいたらますます絶望的になる
- 今の財務省のやり方に誰も歯向かえず、アメリカにも歯向かえない
- こうした日本の現状が「令和のコメ騒動」を通じてますますはっきり見えてきた
■ 5. 農協悪玉論の強化
- コメ騒動を利用して農協悪玉論を強化しようとするストーリーが見えてくる
- 小泉氏が自民党の農林部会長として過去に取り組んだ「農協改革」が頓挫したことに対するリベンジだとも指摘されている
■ 6. 農協改革の本丸
- 農協改革の本丸は以下のプロセスで進められようとしている:
- 農林中金の貯金100兆円とJA共済連の共済55兆円の運用資金を外資に差し出す
- 日本の農産物流通の要である全農をグローバル穀物商社に差し出す
- 独禁法の「違法」適用で農協の共同販売と共同購入を潰す
■ 7. 大臣発言の誤り
- 「農協は共販でなく買い取りに」「農協が金融をやる必要はない」といった大臣発言は間違いである
- 歴史的経緯:
- 個々の農家が大きな買い手と個別取引することで農産物は買い叩かれた
- 個々の農家が大きな生産資材の売り手と個別取引することで資材価格は吊り上げられ、苦しんだ
- それに対抗するため農家が農協を作って結集し、共同販売と共同購入が開始された
- 歴史に逆行する共販潰しは農協を協同組合でなくし、全農を株式会社化して穀物メジャーに差し出し、農産物の買い叩きを助長することにつながる
■ 8. 農協の金融・共済事業の必要性
- 歴史的に農家は高利貸しに苦しめられ、いざというときの生活保証も不十分だった
- そのため農家自らで貯金・貸し付けを行い、相互扶助の共済事業が展開されてきた
- 地域の皆に信用事業や共済事業を利用してもらい、その利益を営農指導(持ち出しの赤字事業)に回すことで農業振興が可能になる
- 経済事業も多くが赤字だが、中間マージンを減らして農家と消費者に還元しているからである
- 農協を核にして地域の農と食と暮らしが循環する
- 信用・共済事業がないと農業振興ができなくなるため、「農協は信用・共済を切り離して農業振興を」という論理は成立しない
- 信用・共済の分離は、農林中金の100兆円と全共連の55兆円の運用資金を外資に差し出す流れにつながる
■ 1. 池田清彦氏による高市首相批判
- 早稲田大学名誉教授で生物学者の池田清彦氏が11月18日までにXを更新し、高市早苗首相の台湾有事をめぐる発言について言及した
- 池田氏はフジテレビ系「ホンマでっか!?TV」のコメンテーターとしても知られる人物である
■ 2. 高市発言と中国の反応の経緯
- 高市早苗首相は11月7日の衆院予算委員会で、台湾有事が集団的自衛権行使の対象となる「存立危機事態になり得る」と答弁した
- これに対し中国の薛剣駐大阪総領事がXで「その汚い首は一瞬の躊躇もなく斬ってやるしかない」などと投稿した(現在は削除済み)
- 木原稔官房長官が中国に抗議したことを明らかにした
- 一方、中国も外務省などを通じ高市首相の発言について反発するなど波紋が広がっている
■ 3. 池田氏の11月16日の指摘
- 地政学的理解の欠如:
- 「勇ましいことを言ってネトウヨに拍手喝采されて、いっときのエクスタシーに酔っても、何も得することはない」
- 「高市には東アジアの地政学的なバランスが全くわかっていないようだ」
- 中台双方の反応:
- 「中台関係は両者に任せておけばいいのに、中国が怒っているばかりでなく、台湾も迷惑だと言っている」
- 「何で、関係ない日本が口を出すの」
- 経済的リスクへの懸念:
- 「中国をこれ以上刺激して、交易がストップすると、日本はやばいことになる」
- 「中国から日本への輸入は世界一、日本から中国への輸出は世界二位」
- 「中国を見捨てて、他の国と交易すればいいと簡単に言うネトウヨもいるが、他の国との交易を開拓する前に日本の経済はクラッシュする」
- 軍事的リスクへの警告:
- 「頭きて戦争を始めると、アメリカは助けてくれないので、100%日本が負けます」
- 「その後どうなるかはわかるよね」
■ 4. 池田氏の11月17日の助言
- 「高市、早く謝らないと事態は悪化するばかりだよ」と指摘した
■ 1. 記事の総評と根本的問題点
- 本記事が取り上げているのは生物学者である池田清彦氏の政治・外交に関する見解である
- その主張は一貫して「リスクの回避」と「経済的実利」に重点を置いている
- しかし論理展開は極めて粗く、複雑な安全保障問題を単線的な結果論で断じている点で、鋭い外交論評としての価値に乏しい
■ 2. 地政学的な議論の欠如と感情論への傾倒
- 池田氏の主張:
- 「高市には東アジアの地政学的なバランスが全くわかっていないようだ」
- 「勇ましいことを言ってネトウヨに拍手喝采されて、いっときのエクスタシーに酔っても、何も得することはない」
- 批判:政治的主張を「ネトウヨ」と断じる安易さ
- 池田氏の批判は高市氏の具体的な外交戦略や国際法解釈に対する学術的な反論ではない
- 「勇ましいことを言って喜んでいる」という政治的動機への人格攻撃から始まっている
- 地政学的バランスの理解不足を指摘するならば、高市発言が具体的にどのようなバランスを崩し、どのような外交的コストをもたらすかを論じるべきである
- 「ネトウヨ」というレッテルを貼ることで、発言を支持する層の意見を安易に排斥し、議論を感情論のレベルに引き下げている
■ 3. 台湾も迷惑だという主張の根拠不足
- 池田氏の主張:
- 「中国が怒っているばかりでなく、台湾も迷惑だと言っている」
- 「何で、関係ない日本が口を出すの」
- 批判:台湾の多様な声を無視した独断
- 台湾の世論は多様であり、日本や米国による抑止力の強化(すなわち明確な介入姿勢)を歓迎する声は少なくない
- 特に中国の軍事的威嚇が日常化する中で、日本の明確なコミットメントを求める層も存在する
- 池田氏が「台湾も迷惑だ」と断言する具体的な台湾側の情報源や統計は示されていない
- これは台湾の安全保障上の懸念を軽視し、「日本が動かなければ平和だ」という願望を台湾の総意であるかのように偽装している危険性がある
■ 4. 経済的リスク評価の単一化
- 池田氏の主張:
- 「中国をこれ以上刺激して、交易がストップすると、日本はやばいことになる」
- 「他の国との交易を開拓する前に日本の経済はクラッシュする」
- 批判:外交政策における「トレードオフ」を無視
- 中国との経済関係の重要性を指摘するのは当然だが、これは「安全保障上のリスク」と「経済的実利」のどちらを優先するかという国家の根幹に関わるトレードオフの問題である
- 中国による経済的な威嚇(レアアース供給停止など)は、中国自身が国際的な信頼を失い、かえってサプライチェーンの「脱中国化」を加速させるリスクも伴う
- 池田氏は外交上の発言をすべて経済リスク増大の要因としてのみ捉えている
- 抑止力を失った結果、軍事衝突に至るという最悪のリスクを無視している
- 経済クラッシュを避けることが唯一の「正解」であるという単線的な思考に囚われている
■ 5. 軍事的リスクの非現実的な単純化
- 池田氏の主張:
- 「頭きて戦争を始めると、アメリカは助けてくれないので、100%日本が負けます」
- 批判:「助けてくれない」という断定の根拠不足
- 日米安全保障条約が存在する中で、日本の「存立危機事態」が認定された場合に米国が「100%助けてくれない」と断言する根拠が示されていない
- これは集団的自衛権の行使が日米同盟の信頼性向上にもつながるという議論や、米国のインド太平洋戦略における台湾の地政学的な重要性を完全に無視している
- この論法は国民の不安を煽り、外交発言を萎縮させるための脅迫的なレトリックであり、国際安全保障の専門的な議論とはかけ離れている
■ 6. 謝罪要求という結論の軽薄さ
- 生物学者が本業とは異なる外交・安全保障分野で感情的な論評を行うこと自体は自由である
- しかしその主張が「高市、早く謝らないと事態は悪化するばかりだよ」という極めて個人的かつ内向きな結論で終わっている点は論考の浅さを示している
- 国家の首相が国際的な懸念について公式の場で答弁したことに対して、「謝罪」によって事態を収束させようという提案は、外交上の信認を著しく損なう
- 今後日本が外交的な圧力を受けた際に安易に譲歩するという前例を作ることを意味する
- これは長期的な国益を損なう軽薄な提案である
■ 1. 高市首相の発言と中国の反応
- 中国の薛剣駐大阪総領事が2024年11月8日にXで「勝手に突っ込んできたその汚い首は一瞬の躊躇もなく斬ってやるしかない。覚悟が出来ているのか」とポストした
- 高市早苗首相は11月7日の衆院予算委員会で、台湾有事について「戦艦を使って武力の行使も伴うものであれば、これはどう考えても存立危機事態になり得るケースだ」と答弁した
- この発言は、台湾有事が存立危機事態に該当するかについて抽象的な説明にとどめてきた従来の政府の立場から大きく踏み出したものである
- 11月10日の衆院予算委員会で高市首相は答弁を撤回しない考えを示したが、政府の従来の見解を変更するものではないと釈明した
- 高市首相は「反省点としましては、特定のケースを想定したことにつきまして、この場で明言することは慎もうと思っております」と「反省」の言葉を表明した
■ 2. 高市発言への二種類の批判
- 戦争回避の観点からの批判:
- 戦争を始めるかどうかという極めて重大な判断について軽々に断定するような言い方をすべきではない
- 戦争前提の観点からの批判:
- あらかじめどういう事態が存立危機事態に当たるのかを具体的に説明することは敵に手の内を晒すことになり、日本側が不利になる
- いずれの批判も日本側の視点でのみ語られている
■ 3. 日本政府と自民党の対応
- 薛総領事の「斬首」発言に対してネット上では「国外追放しろ」という反応が溢れた
- 小林鷹之政調会長や自民党外交部会・外交調査会は「ペルソナ・ノン・グラータを含むしかるべき毅然とした対応を強く求める」と気勢を上げた
- 木原稔官房長官は11月10日の記者会見で、薛総領事の国外退去について聞かれると、中国側には適切な対応と明確な説明を求めていると述べるにとどめた
- 木原官房長官の対応はかなり抑えたものだった
- 中国外務省の報道官は11月10日の記者会見で、高市発言が「台湾海峡への武力介入の可能性を示唆している」と批判し、薛総領事の投稿についても謝罪などあり得ないという態度だった
- 木原官房長官は11月11日の記者会見で「台湾を巡る問題が対話により平和的に解決されることを希望するというのが、わが国政府の一貫した立場だ」と述べた
- 日本政府の台湾に関する立場は1972年の日中共同声明のとおりで変更はないと述べ、中国との意思疎通を強化する方針を表明した
■ 4. 台湾の国際的地位
- 台湾を国家承認しているのは12カ国にとどまり、その他の世界のほとんどの国は台湾を国家として認めていない
- 国連も1971年の決議により、中国(中華人民共和国)を唯一の代表とした
- 日本も米国も国連も含めてほぼ世界中が、過去に台湾を見捨てて中国をとった
■ 5. 日中共同声明における台湾の位置づけ
- 1972年の日中共同声明第3項の内容:
- 第1文:中華人民共和国政府は台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であることを重ねて表明する
- 第2文前半:日本国政府はこの中華人民共和国政府の立場を十分理解し尊重する
- 第2文後半:ポツダム宣言第八項に基づく立場を堅持する
- 第2文前半の解釈:
- 中国の立場を「理解し尊重」はするが、完全に認めたとは書いていない
- あくまで「尊重する」までである
- 第2文後半の解釈:
- 日本が植民地支配していた台湾を中華人民共和国に返還することを認める内容である
- これにより日本は台湾について一切の権益を失い、台湾は中国に帰属することを認めた
- 第1文の中国の立場をより強める内容である
- 総合的解釈:
- 台湾が中国の領土の一部であるとする中国側の主張を日本側は無条件ではないものの、事実上認めたと外形的に見える
- 米国の立場(上海コミュニケ1972年):
- 米国は台湾海峡の両岸のすべての中国人が「中国は一つであり、台湾は中国の一部である」と主張していることを認知(acknowledge)している
- 米国政府はその立場に異議を唱えない
- 日本の「尊重する」という表現はacknowledgeに比べて一歩前に出ている印象を与える
■ 6. 台湾への武力行使と国際法
- 台湾が中国の領土であることを日本が完全に「認めた」となると、台湾に対する中国の武力行使は国際法上内戦の一環(正統政府による反乱政権に対する制圧行動)として正当化される
- その場合、他国が干渉することは中国の国内問題への違法な干渉となり認められない
- 日本政府は単に「理解し尊重する」と言っただけで認めるとは言っていないので、この主張は正しくないと主張する
- 大平正芳外務大臣(当時)の1972年衆院予算委員会における答弁:
- 「中華人民共和国政府と台湾との間の対立の問題は『基本的には』中国の国内問題であると考えます」
- 日本政府の解釈では「基本的には」と述べているとおり、将来中国が武力により台湾を統一しようとした場合は例外であり、わが国の対応については立場を留保せざるを得ない
- しかしこの解釈は中国に対しては有効ではない(それを認めたら台湾が完全に中国の領土であるとは言えなくなるため)
- 日本の立場のまとめ:
- 日本が植民地支配していた台湾を中国に返還すべきだという約束に日本は同意した
- 台湾が中国の領土の一部であることについても理解し尊重すると約束した
- 台湾が平和的に中国に統合されることも認めると言ってきた
- 中国が武力を行使して台湾を統一する場合についてまで認めるとは言ったことはないが、これに介入することを正当化する根拠は見つからない
■ 7. 高市発言の問題点
- 高市発言はこれまでの日本側の立場から大きく逸脱している
- 台湾有事を具体的に想定し、戦艦などが出てきた場合は「どう考えても存立危機事態になり得るケースだ」と明言したことは大変な失言である
- 存立危機事態とは日本と密接な関係にある他国が武力攻撃を受け、日本の存立が脅かされ、国民の生命に明白な危険がある状況を指す
- 問題点の整理:
- 日本が中国と戦争する事態について具体例を挙げて公に示した
- それが「中国の領土である」台湾に関する事態である
- 日本が攻撃されなくても中国を攻撃できると示唆した
- 日中共同声明の趣旨を根本から覆すものだと中国が受け取っても仕方ない
- 発言の仕方も尋常ではなく「どう考えても」存立危機事態になり得るケースだと断言し、戦争に前のめりだという印象を与えた
■ 8. 中国の強硬な反応
- 中国が非常に強い抗議の「姿勢」を示したのは当然である
- 外務省は非常に深刻に受け止め、高市首相の言葉に「反省」の意思を盛り込んだ
- 木原官房長官が1972年の日中共同声明を再確認したのも中国側の批判に応えた格好である
- 中国側はその後も日本の駐中国大使を呼び出して抗議し、高市発言の撤回を求めた
- 中国は非常に派手な言葉で日本に警告を重ねて発した
- 中国国民に日本渡航を控えることや日本への留学を慎重に検討するように呼びかけるなど、実際に両国関係に影響を与える行動にまで踏み込んだ
■ 9. マスコミの問題
- 筆者はマスコミの対応に非常に強い不信感を抱いた
- マスコミは台湾問題についての本質論をほとんど解説せず、薛総領事の発言を「とんでもない」と単に国民の反感を煽ることに終始した
- 高市首相の発言の真の問題を掘り下げることはほとんどしていない
- その結果、日中間における台湾問題の歴史やこの問題の国際的な意味合いなどを国民は理解できていない
- トランプ大統領が薛総領事の発言について一切中国批判をしなかったことの意味もまともに伝えなかった
- トランプ大統領は今中国と戦っても勝ち目がないことをこれまでのディールで思い知り、今は戦うのではなくうまく折り合っていくしかないという判断で台湾問題に「首を突っ込む」ことを避けた
■ 10. 筆者の懸念
- 高市首相が台湾有事=日本有事と言い続けた場合、中国は日本に対するレアアースの供給を止める可能性がある
- そうなれば日本経済全体が大混乱に陥る
- 中国から見れば日本による事実上の宣戦布告の予告みたいなものだから十分に大義はある
- より本質的な問題は本当に台湾有事が起きるのかということである
- 台湾有事を起こすのも止めるのも日本の決断次第である
- 台湾有事は日本が起こさないと決めれば起きない
- 台湾有事が起きると叫ぶ人たちは本当に中国との戦争になったらどうするのかということを誰も本気で考えていない
- 本当に中国と戦うなら武器弾薬よりも兵士の確保が最優先だが、徴兵制の議論はされていない
- 無謀な戦争でも一度始めたらやめられないことは歴史が証明している
■ 11. 日本の世論と国際社会の乖離
- 日本の世論は今や中国悪玉論で盛り上がっているが、そんな国は日本とアメリカだけである
- 台湾でさえそんな考えで固まっているわけではない
- 現在のトランプ政権は台湾有事から一歩引いて構えている
- 国民が洗脳された最大の原因はマスコミにある
- テレビでは中国を止めるには抑止力が大事で、そのために台湾有事に日本が参戦するということを中国に知らせなければならないなどという短絡的な議論が平然と行われている
- これは中国と戦うことを前提にした議論である
■ 12. 最悪のシナリオ
- 台湾有事参戦論が盛り上がる日本に乗せられて、台湾の頼清徳政権がさらに台湾有事の危機を煽り、米国の国会議員の支援を求める動きが強まる可能性がある
- 米国政府は台湾への先端武器の売却を遅らせることなどで頼政権に自重を促すメッセージを発しているが、高市首相の台湾支援の姿勢はこれを打ち消す効果を持っている
- 日本と台湾が共振して台湾有事を日台が引き起こすという最悪のシナリオが見えてきた
- まだ可能性は低い今のうちにこの芽を摘んでおくことが死活的に重要である
■ 1. 総合評価
- この文章は重大な論理的欠陥を複数含んでおり、説得力に著しく欠ける
- 著者の政治的立場が分析を歪めており、客観的な国際法・外交史の検証というよりも、特定の結論に誘導するための恣意的な解釈が目立つ
■ 2. 日中共同声明の解釈における致命的な誤り
- 著者の主張:
- 日中共同声明第3項の「ポツダム宣言第八項に基づく立場を堅持する」を「日本が植民地支配していた台湾を中華人民共和国に返還することを認める内容」と断定している
- 論理的欠陥:
- ポツダム宣言第8項は「カイロ宣言の条項は履行されるべき」と規定している
- カイロ宣言は台湾を「中華民国」に返還するとしており、「中華人民共和国」とは明記していない
- 1945年時点で中華人民共和国は存在していない(建国は1949年)
- 著者の解釈は歴史的事実を無視した強引な読み替えである
- 正しい理解:
- 日本は台湾の主権を放棄したが、それが中華人民共和国に帰属すると「認めた」わけではない
- これは国際法学者の通説的見解である
■ 3. 理解し尊重すると承認するの混同
- 著者の主張:
- 「理解し尊重する」という表現を「事実上認めた」と解釈している
- 論理的欠陥:
- 「理解し尊重する(understand and respect)」と「承認する(recognize)」は国際法上明確に異なる
- 日本政府が意図的に「承認」を避けた事実を無視している
- 米国の「acknowledge(認知する)」と比較して「一歩前に出ている」という主張も根拠薄弱である
- むしろ「理解し尊重する」は「acknowledge」よりも慎重な表現である
■ 4. 存立危機事態に関する法的理解の欠如
- 著者の主張:
- 高市発言を「中国の領土である台湾」への干渉として批判している
- 論理的欠陥:
- 存立危機事態は「日本の存立が脅かされる」場合に発動される
- 台湾海峡での武力衝突が日本の海上交通路(シーレーン)に与える影響は客観的に存在する
- 中国が台湾を「内戦」と主張しても、それが日本の安全保障に影響する場合、日本は独自の判断権を持つ
- 著者は「内戦だから干渉できない」という中国の論理を無批判に受け入れている
■ 5. 因果関係の逆転
- 著者の主張:
- 「台湾有事を起こすのも止めるのも日本の決断次第」
- 「台湾有事は日本が起こさないと決めれば起きない」
- 論理的欠陥:
- 台湾海峡の軍事的緊張を引き起こす主体は中国である(軍事演習、防空識別圏侵入の頻度等)
- 日本の発言が原因で中国が台湾侵攻を決断するという因果関係は実証されていない
- この論理では侵略の責任が被侵略側や同盟国に転嫁される
- 「日本が黙っていれば戦争は起きない」というwishful thinkingに過ぎない
■ 6. 選択的な事実の提示
- 問題点:
- 中国の軍事的威嚇や台湾周辺での挑発行為について一切言及がない
- 論理的欠陥:
- 中国の空母艦隊の台湾周辺展開を無視している
- 頻繁な防空識別圏侵入を無視している
- 台湾への経済的・政治的圧力を無視している
- これらを完全に無視して「日本と台湾が台湾有事を引き起こす」と結論づけるのは不誠実である
■ 7. 二重基準の適用
- ダブルスタンダード:
- 高市首相の「戦艦を使った武力行使」という抽象的言及を「具体的すぎる」と批判
- 薛総領事の「汚い首を斬る」という具体的脅迫を「姿勢を示しただけ」と擁護
- 論理的欠陥:
- 外交官の公式な暴力的言辞を軽視し、首相の国会答弁を過度に問題視する明らかなダブルスタンダードである
■ 8. 経済的威嚇の正当化
- 著者の主張:
- 「中国から見れば事実上の宣戦布告の予告だから、レアアース供給停止は十分に大義がある」
- 論理的欠陥:
- 言論(国会答弁)に対する経済制裁を正当化している
- これは経済的威圧を容認する危険な論理である
- WTOルール違反の可能性がある措置を「大義がある」と擁護するのは不適切である
■ 9. 論証の循環
- 著者の論理展開:
- 「台湾は中国の領土→だから日本は干渉できない→高市発言は不当」
- 論理的欠陥:
- 前提(台湾は中国の領土)が証明されていない
- 日本政府は台湾が中国領であると「承認」していない
- 証明されていない前提から結論を導いている
■ 10. 説得力を損なう要素
- 感情的表現の多用:
- 「とんでもない失言」「無謀な戦争」「洗脳された」など、分析というより扇動的である
- 根拠のない断定:
- 「トランプは中国と戦っても勝ち目がないと思い知った」など、推測を事実として提示している
- 陰謀論的思考:
- マスコミが国民を「洗脳」しているという主張
- 代替案の欠如:
- 批判するだけで、では日本はどうすべきかの現実的提案がない
■ 11. 欠けている視点
- 台湾住民の意思:
- 2300万人の台湾住民の自己決定権への言及が皆無である
- 地域の安全保障構造:
- 日米同盟、QUAD、AUKUSなど多国間の文脈を無視している
- 中国の軍事的拡張:
- 南シナ海、東シナ海での中国の行動を考慮していない
- 国際法の多様な解釈:
- 一つの解釈のみを「正しい」として他を排除している
■ 12. 結論
- この文章は学術的分析の体裁を取っているが、実際には中国の立場を無批判に受け入れ、日本の防衛政策を批判するための政治的文書である
- 日中共同声明の解釈は恣意的であり、存立危機事態の法的要件を無視し、台湾有事の責任を日本に転嫁する論理は説得力に欠ける
- 客観的な国際法・外交史分析としては不合格である
- 政治的主張としても論理的整合性の欠如により説得力は極めて低い
■ 1. 二人の哲学者の出会いと背景
- 出口康夫教授とマルクス・ガブリエル教授は2024年2月に初めて対面した
- 出口教授は2023年夏にNTTと共同で「京都哲学研究所(KIP)」の設立に参画し、現在は日立製作所、博報堂、読売新聞も理事会社として参画している
- KIPの重要なミッションの一つは国際的ネットワークの構築であり、その一環としてドイツのハンブルクのThe New Institute(TNI)とボン大学を訪問した際にガブリエル教授と会った
- 近年、哲学に対する社会的ニーズが再び高まっており、産業界、公共機関、NGOやNPOなど多くのプレーヤーが哲学的な知や言葉を必要としている
- ガブリエル教授はアンドレイ・ツヴィッター氏から出口教授のWEターンに関する活動を紹介された
- ボンでの夕食は偶然実現した(ガブリエル教授がフランス科学大臣との面会予定がキャンセルになったため)
- その夜の対話で二人の研究が非常に近いことを実感した
■ 2. WEターンの概要と価値多層性
- WEターンの構想は2016年12月に着手され、道元の自己観と西田幾多郎の後期自己論が重要な着想源となった
- WEターンは自らの主張を絶対的なもの、誰もが採用すべき考え、どの社会にも通用するアイデアとは見なしていない
- WEターンはワン・オブ・ゼムの人間観、世界観、社会観、価値観の提案にすぎない
- WEターンは「なんでもあり」という相対主義とは一線を画し、相対主義との差異化を図る際に道徳的実在論が重要な役割を果たす
- 社会がWEターンしても直ちにユートピアやパラダイスが実現するわけではなく、「善いWE」も「悪いWE」も存在する
- 重要なのは何が善いWEで何が悪いWEかを見定めることである
- WEターンはWEの善さと悪さを定義するが、非WEターナーは必ずしもその定義に賛成するとは限らない
- 複数の異なった「善いWE」「悪いWE」の定義が並び立ちうるとWEターンは考える
■ 3. WEターンの譲れない一線
- WEターンにも「譲れない一線」が存在する
- それは「WE」ですらない、「悪いWE」ですらない、「WE」そのものを自己破壊し自己解体するような「WE」、すなわち「ゼロWE」は断じて許されないという点である
- これが相対主義とWEターンを画する一線である
- WEとは共同の身体行為の主体としてのマルチエージェントシステムである
- ゼロWEとは共同行為自体を自己否定する行為である
- ゼロWEの具体例:
- WEの多くのメンバーの生存の基盤である自然環境を破壊する行為
- WEのメンバー間の対話やコラボレーションを拒絶する行為
- WEのメンバーの存在意義を否定し、その存在自体を「駆除」しようとする行為
- これらの「WEをゼロ化する行為」に対する「譲歩なき禁則」の背後には、「してはならない」ことを指し示す「否定的な道徳的事実」がある
■ 4. 道徳的事実とエチケットの区別
- ガブリエル教授は道徳的事実の例として「溺れる子どもを助けるべきか」といった明白で極端な例を挙げる
- これは議論の前提となる「共通の道徳的直観」を確認するためである
- 道徳的な問題とそうでない問題を混同することがあり、その一つが「エチケット」である
- エチケットは倫理のように受け取られることもあるが、実際は単に文化的なもので深い道徳的意味は特にない
- エチケットの例:
- 箸の使い方やお茶碗の持ち方は、その文化共同体に属していない限り通常は道徳的な問題ではない
- ドイツ人がうまく箸を使えなくても非道徳的だと責める人はいない
- 文化共同体内部では作法を通じて道徳的な立場が示されることもあり得る
- 人々は単なる文化的な慣習を道徳的なものと感じてしまうことがあるが、実際にはそうではない場合もある
- 文化を超えて共有される明白な道徳的事実も存在する
- 例えば、東京の駅で誰かが車椅子の人を階段から突き落としたら、文化的背景にかかわらず誰もが衝撃を受け「これは悪いことだ」と言う
■ 5. WEターンと道徳実在論の統合可能性
- 明白な道徳的事例には何らかの共通のパターンがあるはずである
- WEターンはマルチエージェントシステムにおける要素間の調和や不調和、配置といった観点から、この問いに答えるための概念的フレームワークを提供できる
- 車椅子の例には階段を下りる多くの人々、車椅子に乗っている人、その人の脆弱性、車椅子の製造者、障害の歴史など無数の要因が絡み合っている
- WEターンの視点を用いれば、そのネットワークのどの配置が「善」であり、どれが「悪」であるかを分析できる
- 出口教授が描くWE(現実のWE、可能性としてのWE、ゼロWE、最大限安定したWE)はすべて客観的な事実として存在する
- 出口教授は明らかにWEに関する実在論者である
- ガブリエル教授の道徳実在論と出口教授のWEターンを組み合わせることで、道徳的状況を分析するための新しいプロジェクトが生まれる可能性がある
- AIシステムの導入も考えられる:
- 異なる文化の人々に様々な事例について「善い」「悪い」「中立」といった判断をしてもらいデータベースを構築する
- AIを用いてどの事例が普遍的な道徳に関わるもので、どれが単なる文化的慣習なのかを識別する
- WEターンを概念的ツールとして装備したAIにWEマップのようなものを作らせれば、価値の空間における発見につながる
■ 6. 具体的倫理の必要性
- ガブリエル教授の「具体的倫理(Concrete Ethics)」という考え方は、WEターンと親和性が高い
- WEは常に特定の状況の中に置かれており、状況から切り離されたWEは存在しない
- WEの普遍的な構造や特徴について抽象的に考えることは可能だが、現実のWEは常に具体的な文脈の中にある
- WEは社会的、経済的、歴史的な文脈における身体的な行為を取り巻く環境に深く根ざしている
- あらゆる道徳的判断はその特定の文脈の中で考慮されなければ意味をなさない
- 概念的レベルでは「原則」と「適用」を区別することは可能だが、それはあくまで思考上の整理であり現実的な区別ではない
- 「上にある原則から下にある適用へ」という一方的な関係ではなく、原則と適用の間の相互的、双方向的な関係が重要である
- 普遍的な意味を持つガイドラインから始めることは概念的な道具として有用だが、その道具は常に具体的な文脈の中で問い直されなければならない
- 原則と適用の関係は常に双方向的であるべきである
■ 7. 抽象的原則の限界
- 倫理に関する規則を定式化しようとすると、その規則が抽象的すぎたり普遍的すぎたりして、実際には何をすべきかを教えてくれないことがよくある
- 功利主義の限界:
- 「できるだけ多くの人々の幸福を最大化する行為が善いこと」という原則は、車椅子の人以外の全員がその人を突き落とすことに喜びを感じる場合、「突き落とせ」と命じることになる
- 「他者に危害を加えない限りにおいて幸福を最大化する」といった修正を加えても、常に新しい状況が現れ原則の修正を迫られる
- カントの定言命法の限界:
- 「汝の人格や他のあらゆる人の人格における人間性を、常に同時に目的として扱い、決して単に手段としてのみ扱ってはならない」という原則では、パンデミック下の学校閉鎖やソーシャルディスタンスが人々を手段として扱っているのか目的として扱っているのか判断できない
- 黄金律の限界:
- 「自分がされたくないことを他人にするな」という原則は、人によって他人に何をしてもらいたいかが異なるため機能しない
- 「大きな原則があり、それを具体的な状況に適用する」というモデルは機能しない
■ 8. 中レベルの原則と状況依存性
- 具体的な状況から「中レベルの原則」を導き出すべきだが、それらは科学における仮説のようなものである
- 「殺人は常に悪い」ように見えるが、戦争の場合はどうかと問われれば状況が異なると答えることになる
- 戦争においては敵を殺すことが道徳的に許容される、あるいは推奨されることさえある
- 「殺すことは悪い」という中レベルの原則は特定の文脈においては適用されない
- ウクライナでの戦争における具体的倫理は、ガザでのイスラエル軍の具体的倫理とは異なる
- 単一の「戦争倫理」さえ存在しない
- すべては状況に全面的に依存しており、判断を下す前にその状況を理解しなければならない
- そのためには状況の現実に真摯に向き合う開かれた姿勢が必要である
- 倫理的な判断を深めるためにはイデオロギー批判や人文社会科学の知見を加えることが求められる
- 原則は存在するが、それらは状況の中で生じる「中レベルの一般化」のようなものであり、常に具体的な状況との往復の中で導き出され修正されていく
■ 1. リベラルの意味のねじれ
- 本来リベラルとは権力から個人の自由を守る思想である
- 欧米ではリベラルが中道の自由主義を指すのに対し、日本では左翼と同義に扱われるようになった
- 日本ではリベラルが反体制の立場を示す政治ラベルとして機能している
- この意味のねじれは戦後から始まった
■ 2. 戦後GHQによる民主主義の再定義
- GHQは日本を再設計する中で民主主義をリベラルと定義した
- 教育、報道、憲法を通じて国家よりも個人の自由を優先する仕組みを植えつけた
- 国家主義を否定する立場が体制批判こそ正義という空気を生み出した
- 当時の日本では戦争責任を問う声が強く、国家という言葉そのものがタブー視された
- 国家より個人が正しいという構図が教育の常識となった
- 自由の理念は責任の放棄と混同されていった
■ 3. 冷戦期の構図の固定化
- 冷戦期に構図はさらに固定化された
- 平和と人権を掲げた運動は反米反自民の象徴として広がった
- 冷戦構造の影響で「反戦が善、軍事が悪」という単純な図式が社会に定着した
- リベラルは思想ではなく政治的ポジションを示す言葉へと変化した
- 安全保障や同盟の議論が戦争賛成と同一視され、現実的な防衛論まで封じられた
- 理想を語る側だけが道徳的優位に立つ構図が定着した
- 戦後の報道機関と大学もこの価値観を繰り返し再生産してきた
- 「保守=軍国主義」「左派=平和主義」という物語がすり込まれ、立場が先に決まる社会が完成した
■ 4. カタカナ用語の曖昧性
- 日本ではカタカナになると意味が曖昧になる用語が多い
- リベラルという言葉はその典型的な犠牲者である
- このような歴史と事実を知るべきである
■ 5. SNSにおける言論封殺
- SNSにおいて自由の名を借りた言論を封じる運動が存在する
- 賛同が多い意見ほど正解として拡散され、少数派の声は可視化されても共感されにくい
- この傾向は左派に限らず右派にも同じく存在する
- 数の論理が正義を作る構造そのものが自由な議論を奪っている
- 正義を掲げる人々は他者の意見を排除し、異なる価値観を持つ人を敵とみなす
- これは本来のリベラルの意義に即していない
- かつて大学や新聞が担った言論空間が、今ではSNS上の同調圧力として再生している
■ 6. 日本型リベラルの変質
- 日本型リベラルは自由を守るどころか統制の道具へと変わった
- 戦争の罪悪感から優しさを政治思想にした世代にとって、善意が正義化し他者を縛る結果は想定外だった
- 自由を語る者ほど他人の自由を奪い、寛容を語る者ほど攻撃的になった実感がある
- 言葉の意味をねじ曲げてまで正しさを証明したい社会に本当の自由は根付かない
- 自由という言葉を歪めたのは権力ではなく、今を生きる私たち自身である
- 自分たちが自由な国の国民だと信じているならば、その思い込みこそ最大の不自由である
爆サイ.comは、筑波大学ビジネスサイエンス系の吉田光男准教授と共同で、サイト内に投稿された膨大なデータを対象に、高度な世情分析を行う新たな研究プロジェクトを開始しました。
本研究では、累計十億件を超える地域スレッドおよび政治・社会関連投稿を機械学習モデルで解析し、選挙に関する言説の動向、世論形成過程におけるプロパガンダの有無を検証します。匿名掲示板特有の自発的コミュニケーションデータを通じて、オンライン上の言論空間が社会や政治に与える影響を明らかにすることを目的としています。
吉田准教授は次のように述べています。
「匿名性の高い環境下で生じる世論形成のメカニズムの解明は、現代の民主主義を理解するうえで極めて重要です。自然言語処理や計算社会科学の技術を用い、現代のインターネットにおける世論形成メカニズムを明らかにしたいと考えています。」
研究成果は、学術論文や学会発表およびオープンデータの形で公開予定です。また、地方自治体や報道機関が健全な情報流通を設計するためのリファレンスとしての活用も目指しています。
■ 1. 負債返済道徳の問題提起
- 現代社会では「借りたカネは返す」ことを絶対視する規範(負債返済道徳)が支配的である
- ブレイディみかこ氏は借金によって身内が人間性を失う体験から、この道徳を"呪い"として捉えている
- 日本の多重債務者は2025年3月末時点で約147万人に達し、コロナ禍以降増加傾向が続いている
- 2006年の貸金業法改正でサラ金地獄は収束したが、債務問題は「見えない借金」や「潜在的生活債務」へと広がっている
- 借金の理由が複合化し、キャッシュレス化によるデジタル信用の拡大により、気づかぬうちに多額の借金を負う人が続出している
■ 2. 欧州債務危機における負債返済道徳の顕在化
- 2009年頃から始まった欧州債務危機において、EUやIMF、特にドイツがギリシャに見せた強硬姿勢に負債返済道徳が顕著に表れた
- ギリシャは対外債務の返済のために極端な緊縮財政を強いられ、経済が崩壊した
- 若年層の失業率が6割に達し、学校閉鎖、医療崩壊により死者が増加する悲惨な状況が発生した
- シリザ所属の経済学者ヤニス・バルファキスが財務大臣としてEUに交渉したが、ドイツ首相メルケルから「借りたものは返さなければいけない」と冷たくあしらわれた
- ドイツとEUの姿勢は「たとえ国内が混乱して死者が出ても、債務があるのだからしかたがない」というものであった
- この姿勢は英国で「血も涙もない」と批判され、後のイギリスのEU離脱の一因となった
- 反緊縮左派(ジェレミー・コービン、パブロ・イグレシアスなど)は、財政の規律を緩めて国債を発行し、苦しむ人々を救うべきだと主張した
- この運動は借金で人間の生活や命が犠牲にされる倒錯への抵抗であり、ある種の拝金主義への抵抗であった
■ 3. デヴィッド・グレーバーの『負債論』
- グレーバーの基本思想:
- 人類学者でアナキストのグレーバー(1961-2020)は、人が人を支配する構造が人を不幸にすると考えた
- マルセル・モースの贈与論からの影響:
- モース(1872-1950)は経済の起源を物々交換ではなく贈与に見出した
- 贈与は単なる物の交換ではなく、人間関係が深く関わるものである
- 日本のお中元・お歳暮のように、もらった側には返礼の義務が生まれる
- 返礼の義務は対等な付き合いを支配の構図に変える可能性を持つ
- 返礼が道徳的義務化しルール化されると、与えた側が受け取った側を支配できるようになる
- 返礼の義務があるところでは、返し終わるまで人間関係は対等ではなくなる
- 貨幣と負債の関係:
- グレーバーは貨幣の起源を借用証書、つまり「負債の記録装置」であると指摘した
- 借用証書が流通するようになって貨幣になったという
- 貨幣制度は借用証書を保証できる力と信用を持つ存在(国家)がなければ成り立たない
- 国家が貨幣を独占し、税徴収と軍事力のために利用するようになった
- 貨幣が権力と暴力と結びついた瞬間、貨幣は「信頼」ではなく「服従」によって支えられるようになった
- 現在の貨幣経済は借用証書の機能にあふれ、借用証書を売り買いする市場まで存在する
- 借りたものを返すことが個人の信用を膨らませ、返さない人の信用は摩滅する
- 「借金は何があっても返さないといけない」という負債返済道徳が人々の信用情報の基準となり、鉄壁のモラルになる
- この"呪い"によって貨幣は人々を支配し、逃れられなくしている
- 『負債論』執筆のきっかけ:
- グレーバーはマラリア撲滅活動のためにマダガスカルに滞在した
- IMFに緊縮財政を強いられて活動プログラムが打ち切られ、1万人(半数は子ども)が亡くなった
- ロンドンの弁護士に訴えたが、人道派を称する弁護士ですら「でも、借りたものは返さなくちゃいけませんよね」と冷たく言い放った
- 人命よりも重視される負債という呪縛への疑問から『負債論』に取り組んだ
- 負債返済道徳という名の拝金主義は排外主義にも強く結びついている
■ 4. 排外主義と市場経済の関係
- イギリスのアジアン・フュージョンレストラン:
- かつてはオリエンタリズムを感じさせるレストランとして受け入れられていた
- 店員の大半がアジア系移民に変わると"侵略"と解釈されるようになった
- リフォームUKの政策:
- 欧州の右派ポピュリズム政党の台頭が著しく、イギリスではリフォームUKが高い支持率を得ている
- リフォームUKは「移民の永住権をなくす」と発表し、既に付与されている永住権も剥奪すると主張した
- 日本は二重国籍が認められないため、永住権で居住する日本人が多く、在留日本人社会は不安に駆られている
- 一方で「年収6万ポンド(約1200万円)以上の人には5年毎にビザを出す」としている
- この年収はイギリスの年収中央値の2倍以上である
- 真の外国人排除が目的なら所得に関わらず永住権を取り上げるはずだが、富裕層だけは受け入れるという矛盾がある
- アメリカの事例:
- 白人至上主義のトランプ政権下でも、海外の富裕層にビザを高額で販売すると報道された
- 移民そのものが問題なのではなく、お金がない人たちは負担になるから要らないという論理である
- エコノミック・アパルトヘイト:
- イギリスでは格差が拡大し、所得によって住む地域が完全に分断されている
- この状況は「エコノミック・アパルトヘイト」と呼ばれている
- リフォームUKはこれをグローバルに展開し、「我が国には金持ちだけが住めばいい」という政策を推進している
- EU離脱の影響:
- リフォームUK党首ナイジェル・ファラージは英国のEU離脱を主導した
- EU離脱でEU圏からの移民が帰国し、エッセンシャルワーカーの人手不足が発生した
- EU以外からの移民を入れざるを得なくなると、「肌の色の違う移民が増えていかん」「我が国の文化が」と言い出し、以前より差別的になった
■ 5. 社会的通念への疑いの重要性
- 人々が自分を追い詰める原因は、周りから押し付けられた道徳や社会的通念に支配されているためである
- 本来そのような権利もない人たちが人々を責めている可能性がある
- 「こうあるべきなんだ」という一般的通念を疑うことが大切である
- 負債返済道徳の再考:
- 「返さない人はろくでなし」という世間一般の見方を疑い、深く考察すると見えなかったことが見えてくる
- 「貨幣は物々交換から生まれた」という通説を疑う必要がある
- 「借金は何があろうと絶対に返さないといけない」というモラルは常に絶対なのか再考すべきである
- 「外国人が増えると征服される」という不安はそもそも誰が何のために言い始めたのか考えるべきである
- 真の問題の隠蔽:
- 世界のたった1%の人だけに富が集まっていることが深刻な問題である
- それから目をそらさせるために、様々なことを吹き込まれ信じ込まされている可能性がある
- 「ア・ピンチ・オブ・ソルト」(ひとつまみの塩):
- イギリスの言葉で、何でも鵜呑みにせず少しばかりの猜疑心を持って物事を考えろという意味である
- この姿勢があれば、悩まされていたことが根拠のない不条理なことだったと見えてくる
- 同調圧力の強い日本では嫌われる言葉かもしれないが、世間的通念に押しつぶされないために必要である
- 自分を責めるより「ア・ピンチ・オブ・ソルト」の姿勢が重要である
■ 1. ターナー日記の概要と世界観
- 作品の形式と性質:
- 主人公の日記という体裁で物語が進行するディストピア小説である。
- 作者はウィリアム・ルーサー・ピアース(物理学博士号を持つインテリ)である。
- 国によっては発禁処分を受けている、現代の過激派極右の行動に大きな影響を与えたとされる作品である。
- 物語の舞台と時代設定:
- 著者が執筆した当時から見て近未来にあたる1990年代初頭のアメリカである。
- 物語は、白人至上主義者による世界的大革命が成功した100年後の未来社会を前提に、革命の殉教者とされる人物「ターナー」の日記が発見されるところから始まる。
- 腐敗した社会体制「システム」:
- アメリカ政府は「システム」と呼ばれる体制に完全に支配されている。
- システムとは、議会、メディア、教育、司法といった統治機構が腐敗し、思想統制と情報操作を通じて白人社会を抑圧する巨大な仕組みである。
- システムの裏側にはユダヤ人支配層がおり、有色人種官僚がその手先として働くという設定である。
- 白人社会の抑圧と崩壊:
- システムは表向きは人権・平等・民主主義を掲げながら、実際は徹底した思想統制社会であり、人種主義的思想は弾圧される。
- 法律の運用は人種によって歪められ、非白人による犯罪行為は擁護される一方、白人の自衛行動は人種差別として糾弾される。
- 銃器没収を定めた「公園法」により、アメリカ人は自衛および権力に抗う最後の手段を奪われる。
- 社会は多文化強制の名のもとに性的快楽や無秩序が蔓延し、家族、節度、信仰、愛国といった伝統的価値観は崩壊する。
■ 2. 革命の勃発と結末
- 抵抗組織「ザ・オーダー」の設立とテロ活動:
- 主人公ターナーは、国家の再生は革命と破壊によってのみ可能だと確信し、「組織」と呼ばれる地下グループに属し抵抗を準備する。
- 組織の活動は、連邦政府の施設、電力系統、メディア施設の襲撃、要人の暗殺といった本格的なテロ戦争へと発展する。
- ヒューストン爆破事件(2日間で14件の大規模爆破、4000人以上死亡)が革命の転機となる。
- 組織は軍基地を襲撃して核弾頭を奪い、米国内で核爆弾を起爆することで内戦を白人革命戦争へと変貌させる。
- 世界規模の戦争と浄化:
- 組織の謀略によりソ連やイスラエルを巻き込む国家間戦争が勃発し、米ソ間で全面的な核の応酬が起こり大都市が壊滅する。
- 組織は混乱に乗じて支配地域を拡大し、「ロープの日」と呼ばれる一連の処刑を実行する:
- 政治家、官僚、報道関係者、教育者などが標的となり絞首刑にされる。
- 有色人種との関係を持った白人女性も「人種の裏切り者」として処刑される。
- 遺伝子的に価値のない白人も人種的選別を受ける。
- ターナーは革命を宗教的次元に高めた秘密組織「ザ・オーダー」に加入する。
- ターナーの最期と革命の完成:
- ターナーはペンタゴン攻撃の特攻任務に志願し、作戦を決行して命を落とす。
- エピローグでは、ターナーの死から100年後、白人による世界支配が確立した未来が描かれる:
- 組織はユダヤ人支配体制を打破し、北米に白人支配を確立する。
- 白人の中から残存していた望ましからぬ人種的要素の最終的な粛清が行われる。
- ユーラシア大陸では組織による科学・生物・核兵器を用いた大規模な殲滅作戦により中国軍が完全に殲滅される。
- 最終的に白人が全人類を支配し、白人文明以外のすべてが排除された真の白い世界が到来する。
- ターナーは革命を導いた殉教者として神格化され、その日記は最重要の歴史的文献として崇拝される。
■ 3. 現実社会への影響とテロ事件
- 「革命の設計図」としての評価:
- ターナー日記は推定で数十万部を売り上げ、現代では「革命の設計図」あるいは「白人過激派のバイブル」と評価されている。
- 著者のピアースは、当初「娯楽を通じて思想を吸収させる実験」として執筆し、特定の暴力行為を扇動する意図はなかったと主張していた。
- しかし、その内容は暴力革命の手引きのような役割を果たし、模倣犯を生み出している。
- FBIの報告書「プロジェクト・メギド」では、右翼テロ組織にとって「行動の動機付けの源泉であり続ける」と評価された。
- 影響を受けた主な事件:
- 出版以来、この本の影響を受けた人物によって少なくとも200人がヘイトクライムやテロ攻撃で殺害されている。
- ザ・オーダー(ロバート・マシューズ)事件(1983年~1984年):
- ターナー日記に登場する組織と同じ名を名乗り、人種革命と白人分離主義拠点の設立を目標とした。
- 資金調達のために連続銀行強盗、シナゴーグの爆破、複数の殺人などの極悪行為に手を染めた。
- マシューズは日記を「我々のバイブル」と呼び、新メンバーに読むように強く勧めていた。
- オクラホマシティ連邦政府ビル爆破事件(ティモシー・マクベイ)(1995年):
- 米国内で9/11テロ以前で最悪の犠牲者(168人死亡)を出した事件である。
- 犯人のマクベイはターナー日記の熱心な愛読者であり、「聖書のように信じ、爆破テロ計画の青写真にした」とされ、特に「人々の安心感と政府の無敵性に対する信念を破壊することによって動揺を生み出すのだ」という部分を切り抜いて所持していた。
- その他の事件:
- ジェームズ・バード・ジュニア殺害事件(1998年、テキサス州):加害者が「俺たちはターナー日記を前倒しで始める」と口にした。
- ロンドン爆破テロ事件(1999年、イギリス):犯人が「ターナー日記を読んでいれば2000年には人種戦争が展開されると分かる」と供述した。
というわけで、「嫌われ者の役割が父親から母親に移った」という説はそれほど支持的ではなく、「ただでさえ好かれやすい状況が整っているのに嫌われている異常な個体が(自分の異常性や帰責性を自覚せず)SNSで被害者ぶって悪目立ちしている」というのが実情に近いのではないでしょうか。
[...]いまどきの子どもたちの「幼体化」に拍車がかかっているその最大の要因はこの「子どもに対する母親のプレゼンスの増大」であると考えているからです。
母親の影響力の増大と子どもたちの「幼体化」「ペット化」とでもいうべき形質変化はそれぞれ別個の事象ではなく軌を一にして、もっといえば表裏一体に生じているものだと考えられます。
■ 1. 中国外務省の反発
- 11月13日の会見で中国外務省の林剣副報道局長が強い反発を表明
- 発言内容:
- 悪質な発言を撤回しない場合、一切の責任は日本側が負うことになる
- 日本が台湾海峡情勢に武力介入すれば侵略行為となり中国側は必ず正面から痛撃を加える
■ 2. 高市首相の答弁
- 11月7日の衆院予算委員会で高市早苗首相が存立危機事態に関する見解を表明
- 立憲民主党の岡田克也議員が集団的自衛権行使の要件となる存立危機事態について台湾を念頭にどのようなケースを想定しているか質問
- 高市氏の答弁:
- 中国が戦艦を使って武力の行使も伴うものであればどう考えても存立危機事態になりうる
- 台湾の状況によっては日本が武力行使に踏み切る可能性を示唆
■ 3. 中国の駐大阪総領事の反応
- 中国の薛剣駐大阪総領事が11月8日にXで反発
- 投稿内容:勝手に突っ込んできたその汚い首は一瞬の躊躇もなく斬ってやるしかない(現在削除済み)
■ 4. 歴代政権との違い
- 歴代政権では台湾が武力攻撃を受けた場合それが存立危機事態にあたるかは明言を避ける曖昧路線を取ってきた
- 高市氏はそれより一歩踏み込んだ見解を述べた
- 11月10日の予算委員会で発言を撤回しない方針を示した
■ 5. 岡田氏への批判
- SNS上では岡田氏に責任があるという指摘が噴出
- 批判の内容:
- 立憲民主党の岡田克也がしつこく聞くから悪い
- 存立危機事態についてしつこく聞いて高市氏から無理やり聞き出した
- 高市氏は質疑に答えただけ
- 中国は高市氏ではなく岡田氏を名指しで責めるべき
- 11月12日放送の関西テレビ番組でタレントの眞鍋かをりも野党が追及しすぎた結果として高市氏の見解が引き出されたと指摘しやってはいけないとコメント
- 政治ジャーナリストの青山和弘氏も岡田氏は引き出せば問題になるとわかってやっていると指摘
■ 6. 高市氏への批判と岡田氏擁護
- 独自路線を打ち出した高市氏に責任があるとし岡田氏批判への反論も多数
- 反論の内容:
- 高市氏の発言そのものが問題視されているのにどうして立憲のせいになるのか
- なぜ高市氏の尻拭いを野党がやらなければいけないのか
- これを立憲のせいにするのは責任転嫁
- 歴代の首相は中国との外交問題に気を使って答弁してきた
■ 7. 質疑の経緯
- 岡田氏の質問は高市氏が昨年の自民党総裁選で中国による台湾の海上封鎖が発生した場合は存立危機事態になるかもしれないと発言していたことを念頭に置いたもの
- 高市氏は質問に対する答弁で最初は歴代政権の見解を引き継いでいた:
- いかなる事態が存立危機事態に該当するかは実際に発生した事態の個別具体的な状況に即して全ての情報を総合して判断する
- 岡田氏からより具体的なケースについての説明を求められたところで一線を越えた見解を発した
■ 8. 評価と分析
- 岡田氏の重箱の隅をつつくような質問が意地悪・誘導的だとする批判がSNSで多く上がっている
- 岡田氏としては存立危機事態の想定をめぐって高市氏が本当に歴代政権の見解を引き継いでいるのかを慎重に確かめたかった可能性
- 首相でもある高市氏には冷静な判断が求められる
- 本音はあるにせよ歴代政権の見解を述べるにとどめ煙に巻いておけばよかっただけの話ではないかという指摘
(以下はブクマカ曰くネトウヨで外国人で頭の病気でお花畑で平和ボケで中露の工作員な増田によるエントリです)
台湾なんて見殺しにしろ!中国にひれ伏せ!と言ってる人たちは
ウクライナなんて見殺しにしろ!ロシアにひれ伏せ!とか
パレスチナなんて見殺しにしろ!イスラエルにひれ伏せ!とは言わなくていいんですか
watasiHaKamome 自国の安全保障に想像力も知識も現実感もない人の言動に見える(論理的に反論はしない)。戦争はあなたの頭の中で起こっているわけでもなくデジタル世界感覚で感情に任せてはならない。リアルの話なのだ
https://b.hatena.ne.jp/entry/s/anond.hatelabo.jp/20251114103017
ウクライナ連帯だとかパレスチナ連帯だとかは、日本から遠く離れた場所で起こっている他人事に過ぎないから威勢のいいことが言えていただけということですか?
中国の内政問題だ、関わるな、とする意見はXやはてなブックマークを少し探せば見つかるんですけど
誰も見殺しにしろとは言っていないという指摘をされている方々は
それが台湾を見殺しにすることだとしても「見殺しにしろ」という文言さえ用いなければ見殺しにしろと主張したことにはならない
・・・といった安倍政権の答弁を彷彿とさせるコメントをしている自覚はありますか?
nanamino それこそ自国の安全を第一に考えるべきでは?日本人ファーストは何処行った
jrjrjp 日本ファースト日本人ファーストなら台湾なんか見捨てるべきだと思うのだけど…台湾のために日本人は犠牲になるべき?
参政党の支持者?からのコメントでしょうか
日本ファースト、日本人ファーストは差別だと思うし、はてなブックマークでも差別だとして批判するコメントが多数付いて、正当化する人間はネトウヨという扱いだった記憶があるんですけど・・・
あくまで台湾は中国の内政問題であり、日本が関わってはならないのだ。
https://x.com/hatoyamayukio/status/1986998583552622810
だから台湾に対して何かしらかあった時に日本が出るぞっていうのは完全な内政干渉だってことです
https://x.com/chokichokireiwa/status/1988967206038958320
ロシアを中国に置き換え、ウクライナを台湾に置き換えて台湾有事を語り危機を煽ってはなりません。「台湾有事は日本有事」ではありません。
中国の一国二制度を認めている我が国としては「台湾問題は中国の内政問題」との立場を堅持すべきです。米英の戦争屋の口車に加担してはなりません。
https://x.com/ktsujino/status/1835620635399319660
この人はいつも正しいですね。このレベルの人が、今の与野党にいるでしょうか。小沢一郎さんくらいしか思い浮かばない。
「鳩山由紀夫氏「台湾有事」巡り持論「あくまで台湾は中国の内政問題、日本が関わってはならない」
https://x.com/knife900/status/1987849184079495593
※これらのポストを追記した後もそんな奴いないというコメントが複数付いており、はてなブックマークには文章を読まずにコメントする人が多くいるというのは本当なんだなと思いました
立場を明確にする高市発言は如何なものか、曖昧戦略が云々・・・という増田の内容と関係ない話をするコメントに困惑しています
表向きには曖昧な立場を崩すべきでないという考えは、中国の内政問題だ、関わるな、という主張と全く異なりますよね?
■ 1. 裁判と文書開示の経緯
- 3年以上裁判で争った結果、公約の海苔弁(黒塗り)をやめますを削除して黒塗りにして出していた小池百合子の書面の下が1件開示された
- 開示理由は東京都情報公開条例第11条第1号の規定によりとなっている
- 裁判に負けたからとは書いていない
- 裁判に負けたから開示する場合の運用が明確でない可能性
- 開示された書類は全てシェルターが襲われる等の理由で非公開になっていたもの
■ 2. 弁護士による代理人対応
- 10代の家出少女には弁護士が代理人についていた
- 全ての対応を弁護士が行っていた(警察や児童相談所との対応)
- この着年被害女性等支援事業を行っていたのはColaboや大丸駆け込み等の団体
■ 3. 警察との連携問題
- Colaboや大丸駆け込みは警察と連携するどころか警察をシャットアウトするような運用
- 大丸駆け込みは警察は入れないと言っている
- 捜索願が出ていても絶対に入れないという方針
- Colaboでは親や警察に連絡することは基本的にはないと公言
- 虐待等を受けているから親族から居場所を隠しているとの説明だが、それならなおさら警察との連携が必要なはず
- 公金で弁護士をつけて親や警察からシャットアウトしているという構図
■ 4. 弁護士の常駐と公金支出
- 弁護士が常駐している
- 年間で弁護士が必要な案件は数名しか保護していない
- 弁護士常駐の費用は公金
- Colaboに弁護士が常駐している理由の説明が不明
- 左翼弁護士に公金を垂れ流している事業の会計に疑問
- 一般人が追及したら弁護士を並べて津田やマス子にNHK含む4局でパワーハラスメント会見を開催
- 代理人をやっている弁護士の中にこの公金が流されている弁護士がいるとしか思えない
■ 5. 左翼による利権構造の疑惑
- これこそが日本が衰退している理由
- 左翼がNPOや一般社団法人等と癒着になって利権を生み出している疑惑
■ 6. 弁護士による法的支援の内容
- 弁護士がやっている法的支援の内容はずっと連絡調整しているだけ
- 弁護士である必要があるのか疑問
- Colaboの相談員がいるならそちらがやればよく、法的なアドバイスだけ弁護士に依頼すべき
- こういう活動を弁護士がしてタイムチャージで合計何百万円を公金から支払い
- 公金を左翼活動弁護士へ垂れ流しするスキームにしか見えない
- やっていることは辺野古座り込みツアー旅行に家出少女を招待
■ 7. 保護対象者の不透明性
- ここまで弁護士が手厚く電話を全てしているような女の子が誰だったのか、本当に存在したのかも東京都にすら見せていない
- Colaboは個人情報だから出せないと主張
- 東京都にも見せていない
■ 8. 研修費用の問題
- Colaboは研修費用も公金で行っている
- 研修を受けたとして68万円を支払っている
- 以前黒塗り忘れがあってそこに仁藤の名前があった
- 仁藤でなくても内輪のような団体
- きちんとした公的機関に研修を受けに行っているわけではなく身内で研修費を払っている疑惑
- 受けた研修内容に関係機関への連絡を学んだとある
- しかし実際には弁護士が電話連絡対応をしている矛盾
■ 9. 総括
- これが困難女性支援法の正体
- 弁護士を並べてパワーハラスメント会見をした真相
- この国が腐敗している病巣そのもの
- 小池と東京都の海苔弁をめくったら大変なものが見つかった
- 一般人が手に負える闇ではない
- 支援事業は全部見直すべき
- 一般社団法人やNPO等は全部一回潰すくらいの勢いで精査するべき
■ 1. メディアへの不信感
- 昔は家に帰るとテレビをつけていたが今はつけなくなった
- 家に帰るとYouTubeを見る生活に変化
- テレビのYouTubeボタンを押してYouTubeを視聴する老人のやり方と同じ
- テレビは軽々しく見られないものになった
- テレビの情報を鵜呑みにせず自分が正しかったかを確認するためにテレビを見る
- やっぱり違った、やっぱりおかしい、やっぱり情報操作していたという確認のためにテレビがある
■ 2. 高市ブームの背景
- 高市ブームはトランプがアメリカ大統領になった流れと似ている
- トランプ大統領誕生は政治的なものというよりリベラル系の新聞やメディアが言うことが信じられなかった結果
- アメリカの右派ではなく普通の人々がメディアを信じなくなった結果トランプに票が集まった
- 高市騒動もメディアが信用できなかったという点で非常に似ている
- 投票権がないのにみんな小泉ではなく高市を支持
- 自民党の人たちもなんとなくその流れに乗っかっている
■ 3. 日本の食料問題への懸念
- 農業をまた減らすという話がある
- 何を食べるのかという不安
- 米がなくなって小麦だけ食えと言われても困る
- 食料問題が一番の心配事
■ 4. アメリカのポチ問題
- アメリカのポチなのは認識している
- ポチが次のポチに変わっただけ
- 小泉ポチと高市ポチのどちらのポチにするかという話
- どちらもアメリカのポチであることに変わりはない
- この植民地でいかにご機嫌に生きていくかという問題
■ 5. 配信業の視点
- 配信業をやっていると何を言えば数年後もしくは半年後に恥をかかないだろうかという視点で考える
- トランプを軽く評価していてあまり悪くないような気がしている
- 自分がちょっと騙されているかもしれないという懸念もある
- 後で恥をかかないかという観点が重要
■ 6. 小泉と高市の比較
- 小泉薄らバカと高市右翼のどちらがマシかという選択
- バイデンとトランプのどちらがマシかという状況に非常に似ている
- 本来はアルゴアのような選択肢が欲しい
- 状況が変わった方がマシだと思っているため破壊する政治家の方がまだ良いと考える
- 今の状況ならまともな政治家よりは破壊する政治家の方がマシ
■ 7. 日本の外交戦略の失敗
- うまくいけば日本はアメリカと中国の間を取ってうまく立ち回れるチャンスがあった
- しかし中国を切りますとパーンと切ってアメリカのポチになった
- その判断が正しかったのかどうか全然分からない
■ 8. 中国に関する認識
- 中国の情報が入ってこないようになっているが中国はすごい
- 日本人は中国がすごいという話が大嫌い
- 中国は古い中国でいて欲しい人たちが多い
- ネットはその辺が偏っている
- 中国の人口減少の仕方がすごいため15年後の中国はえげつないほど疲弊している可能性
- そのためアメリカの方がまだマシかなという気がする
■ 9. 中国の国際的孤立
- 中国が世界的な好感度の低さにビビっている
- こんなに友達が少なかったのかと気づいた
- 国の数としては多いがよくよくカウントすると金づるになるような国ばかりが友達
- アメリカのような信頼のある同盟国がいない
- アメリカはその信頼ある同盟国を切り崩してもっとビジネスライクな関係で行こうとしている
- この戦国時代が混乱している
■ 10. 中国の変化
- 昔の中華思想では世界の中心は我々で外国は遠く遠いところの田舎だと思っていた
- 世界にどう思われているかを気にするようになったことはグローバル世界に中国がしっかり入っているということ
- 人にどう見られるかを気にするのは中国っぽくない
■ 11. オタク文化とアメリカびいき
- 中国で感動することはない
- SFやおもちゃなどオタク文化で中国の貢献が少なすぎる
- ロシオ平戦記は明らかにジブリ
- アメリカのオタク文化やそういうものに対する神話性が高い
- 自分の寿命内はアメリカびいきが続くと思う
- 80年代ぐらいのアメリカが良かった
- あの頃のアメリカにはもう戻らない
- 自分しか見えていない中国がもう来ないのと同じように話の分かるアメリカももう来ない
- リトルショップ・オブ・ホラーズの頃のアメリカが好きだった
■ 12. 発言の自制
- この話題は本来話してはダメな話だった
- 後で偉いことになる可能性がある
- これ以上話すと炎上する危険性がある
■ 1. 立花孝志氏の逮捕
- 2025年11月9日、「NHKから国民を守る党」(N国党)党首の立花孝志容疑者が名誉毀損の疑いで兵庫県警に逮捕
- 兵庫県知事をめぐる内部告発に関して竹内英明前県議(2025年1月に死去)の名誉を傷つけた容疑
- 逮捕については様々なメディアで議論が続いている
■ 2. 逮捕をめぐる議論
- テレビ朝日「羽鳥慎一モーニングショー」でのコメンテーター玉川徹氏:
- 「政治活動の自由、表現の自由は最大限守られなければならないというのは大前提」
- 「その過程で誰かを傷つけたり虚偽の犬笛を吹いて多くの人から攻撃をさせることをやった。そういうことがいいはずがない」と批判
- 堀江貴文氏:
- 「典型的な人質司法的な」案件
- 「『逮捕されたら犯罪者である』みたいな言動が行われている」とYouTubeで疑問を呈する
- 兵庫県の斎藤元彦知事:
- 「捜査中でありコメントは差し控えさせていただく」
- 本稿執筆時点(2025年11月12日)では起訴もされておらず裁判になるかどうかも分からない
■ 3. 筆者の立場
- 元関西テレビ記者で神戸学院大学の鈴木洋仁准教授
- 立花氏やN国党について批判をしたいわけでも擁護したいわけでもない
- あらためて「立花孝志」とは何なのかを考えるきっかけにしたい
- なぜ私たちはここまで彼について語るのかを問う
■ 4. 立花孝志氏の経歴
- 1967年、大阪府泉大津市生まれ
- 府立信太高校卒業後にNHKに入る
- 最初に世間に知られたのは2005年の週刊文春での内部告発
- 記事:「NHK現役経理職員立花孝志氏懺悔実名告白 私が手を染めた裏金作りを全てお話しします」(週刊文春2005年4月14日号)
- 当時、「紅白歌合戦」のプロデューサーによる巨額の横領事件をはじめNHKの不祥事が相次いでいた
- 立花氏の告発はNHKの組織としての不健全さを明らかにし大きなインパクトを与えた
■ 5. NHK退職までの経緯
- 「スポーツ放映権料の秘密を公開したため懲戒停職1カ月」
- 「オリンピックで裏金を作ったとして懲戒出勤停止7日間」の処分
- 2005年7月末日で退職
- 内部告発の動機:
- 「自分のために生きるな。公のために尽くせ。人のために働くことは美しいことなんだ。嘘はつくな。曲がったことはするな」
- 立花家に脈々と受け継がれてきた教え
- 「心の底からこみ上げてくる正義感が僕を突き動かす」
- この「正義感」こそ「立花孝志」とは何かを考えるキーワード
■ 6. 政治家になったきっかけ
- NHK退局後は「2ちゃんねらー」「パチプロ」「ジャーナリスト」「革命家」として活動
- 当時の大阪市長・橋下徹氏の「一言」がきっかけ
- 「在日特権を許さない市民の会」初代会長・桜井誠氏との公開対談での橋下氏の発言:
- 「そんなに言うなら市民活動ではなくて自分で政党立ち上げてやれよ」
- 「無名の自称ジャーナリスト」として橋下市長の記者会見で質問した際:
- 「NHKの受信料問題に大阪市長として取り組むつもりはありません」との返答
- この「一言」で「政治家を志すことにしました。自分でやろう、と」
■ 7. 橋下徹氏との類似性
- 橋下氏:「大阪維新の会」をつくりその後に国政政党「日本維新の会」につなげた
- 立花氏:「NHKをぶっ壊す!」のワンイシューで政党要件を満たすまでに勢力を広げた
- 両者には似ているところがある
■ 8. N国党と維新の共通点
- 選挙ウォッチャーちだい氏の分析:
- 「維新は『ホワイトカラーに狙いを定めたN国党』」
- 「N国党は『下層・旧中間層に狙いを定めた維新』」
- N国党の政治活動の本質は「ハラスメントの連鎖」
- 「精神的暴力」であり「暴力の連鎖」
- 立花氏の選挙手法:
- 「毎日のように駅頭に立ち続ける」
- 「典型的な『ドブ板選挙』」
- 類似点はそのターゲットとそれに伴う選挙のやり方
■ 9. 既得権益層への憎しみ
- 「ドブ板選挙」が少なくない人の心をつかんできた
- 既製政党への忌避感
- ここ数回の国政選挙での参政党やれいわ新選組といった「新しい」政党への支持にもつながる
- 大きな政党に所属している人たちは「既得権益」を持っているように見える
- 立花氏が標的としたNHKが典型
- 橋下氏が批判してきた大阪の自民党や民主党(当時)も同じ
- いかにも甘い汁を吸っていそうな人たち、情報を隠していそうな人たち
■ 10. 目に見える「成果」
- NHKは立花氏の内部告発により不正がただされ立花氏自身が処分された
- 大阪府と大阪市の「改革」:
- 賛否の声があるとはいえ府立大学と市立大学の統合をはじめとして「目に見える」かたちでの「成果」が出た
- 選挙結果:
- 2019年の参議院選挙でN国党は議席を獲得
- 2024年の衆議院選挙では日本維新の会がすべての小選挙区で議席を得た
- 自民党は発足以来初めて衆議院でも参議院でも過半数を割り込み日本維新の会と連立を組まねばならなくなった
- 与党だった公明党は比例代表での得票数を大きく減らし続けている
- この流れは既得権益層(だと思われている政党や人たち)への憎しみと言えるほどの感情に基づいている
■ 11. N国党の戦術
- 選挙ウォッチャーちだい氏:
- 「N国党は一般に『ネットを使った先鋭的な選挙戦術』で勝ってきたイメージがあるかもしれない」
- 「しかし実際は地方議会への進出にあたり最も古典的な戦術をとっている」
- この点は参政党にも通じる
- 逆に自民党や公明党、共産党といった古くからある政党が最も弱くなっているところ
■ 12. 「第二の立花孝志」の可能性
- 仮に今回「立花孝志」を糾弾したり罰したりしたところで第二、第三の「立花孝志」が出てくる可能性
- 参政党の勢力拡大を見ればすでに登場しているどころか日本中に広がっている
■ 13. 立花孝志は「踏み絵」
- 「立花孝志」をどう見るのかは私たちにとって「踏み絵」
- 既得権を持っている層と持たざる層を分ける「踏み絵」
- 立花孝志を批判する人たちには:
- 支持者が逆恨みしているというか狂信者のように見える
- 立花孝志を支持する人たちには:
- 批判者が既得権益をむさぼっているように見える
- 既得権益を持つ層は情報を隠蔽しており、それに関して真実を教えてくれるのが「立花孝志」であるという構図
■ 14. マスコミの見落とし
- N国党も参政党も「ドブ板選挙」を徹底
- 既得権益を持たない人たちの声を聞いてくれていると印象づけている
- れいわ新撰組や国民民主党の街頭演説も聴衆にマイクを渡して質問を受け付ける時間を多く取っている
- これまで聞いてもらえなかった声を確実に聞いてもらえているそう実感させる
- ときには罵声を浴びたりヤジで演説が掻き消されたりする場面をくぐり抜けて「立花孝志」は活動してきた
- 重要な指摘:
- 「なぜ『立花孝志』が求められたのか」をNHKをはじめとするマスメディアは理解していないし理解しようとすらしていないのではないか
- 今回の逮捕報道にあたっても「立花孝志」が是なのか非なのかその功罪というよりも「罪」が確定したかのように報じている
■ 15. 筆者の主張
- 「踏み絵」だから踏むべきだとも踏まないべきだとも言いたいわけではない
- なぜ「踏み絵」になっているのかそのきっかけを分かろうとしなければならないと主張
- 「立花孝志」が「踏み絵」である限りにおいて踏む人たちと踏まない人たちの間の溝やズレは埋まらないどころか広がるばかり
- 私たちに求められるのは「踏み絵」を避けその理由を考えようとする謙虚な姿勢ではないのか
【北京共同】中国外務省の報道官は13日、高市早苗首相が台湾有事は存立危機事態になり得るとした国会答弁について「直ちに撤回しなければならない。さもなければ日本は全ての責任を負うことになる」と述べた。
【北京共同】中国外務省の報道官は13日「日本が台湾海峡情勢に武力介入すれば侵略行為となる」と主張し「中国は必ず真正面から痛撃を加える」と警告した。
日本周辺などで武力衝突が起きた場合、自衛隊を出動させるかどうか。政府がその判断基準や手順を明らかにして手の内をさらせば、相手国を利するだけだろう。
立憲民主党の岡田克也氏が衆院予算委員会の審議で、集団的自衛権を限定的に行使することが認められる存立危機事態について、政府の見解をただした。
岡田氏は、高市首相が昨年の自民党総裁選で、中国による台湾の海上封鎖を存立危機事態の例に挙げていたことに触れた上で、どのようなケースがあてはまるか、首相に繰り返し答弁を求めた。
首相は、台湾の海上封鎖を解くために米軍が来援すれば何らかの武力行使があり得ると語り、「戦艦を使って武力の行使を伴うものであれば、どう考えても存立危機事態になり得る」と述べた。
存立危機事態は、2015年に成立した安全保障関連法で新設された。日本が直接攻撃されなくても、密接な関係にある他国への攻撃が日本の存立を脅かした、などと判断した場合に認定する。
10年前の審議で政府は、朝鮮半島有事と、原油の重要な輸送路であるホルムズ海峡の危機を例に挙げていた。首相の今回の答弁は台湾に言及した点で、これまでより踏み込んだ印象を与えた。
安保関連法の成立当時に比べ、台湾情勢は緊迫化している。中国軍機は、台湾海峡の中間線を越えて何度も台湾側に進入するなど圧力を強めている。中国は武力による台湾統一を否定していない。
米国は戦略的に台湾有事への対応を曖昧にしているが、台湾海峡が封鎖される事態となれば米国の安全にも影響を及ぼそう。台湾有事が存立危機事態になり得る、という首相の認識は理解できる。
ただ、危機に際しての意思決定に関する発言には慎重さが求められよう。首相がその後、「具体的な事態に言及したのは反省点だ」と釈明したのは適切と言える。
立民は首相の答弁に「危険性を感じた」として撤回を求めている。だが、しつこく首相に見解をただしたのは立民自身だ。答弁を迫った上で、答弁したら撤回を迫るとは、何が目的なのか。
とにもかくにも批判の材料を作りたいということだとしても、安保政策を政局に利用しようとするなどもってのほかだ。
首相の答弁を巡り、中国の駐大阪総領事はSNSに「汚い首は斬ってやる」と投稿した。外交官として不適切極まりない。日本政府が抗議したのは当然だ。
松本人志、完全大勝利だね
登録者10万人想定って言われてたのに、蓋を開けたら50万人だし
テレビからは拒否られてるって言われてたのに、フジも日テレも映像提供してるし、TBSだって過去映像で何度も“復帰”してるじゃん
要はさ、「松本を性犯罪者扱いしよう」とか騒いでたクレーマーがいるからテレビ露出が抑えられてただけで、実際にはテレビ側もバリバリ協力してたってハッキリ露出したんだよな
もうこの登録者数+冠プラットフォームある時点で、テレビ出る必要すらないんじゃね?
クレームでは風が起きるけど、数字と現実が全部ひっくり返した瞬間って感じ
■ 1. クマ被害の深刻化
- 今年度のクマ被害による死者数は全国で13人と2006年以降の統計で過去最悪
- 人を食べる目的で襲った食害のケースも複数報告
- 人身被害とともに駆除への抗議活動が深刻な問題となっている
■ 2. 過激な動物愛護派の投稿
- 実際の投稿例:
- クマの住処と食べ物を奪ったのは人間
- 母熊と幼い子熊は空腹のまま鬼に惨殺された
- 猟友会は犯罪者集団
- 一番絶滅すべきは人間
- 熊殺しは神殺し
- クマ被害が深刻な地域を名指しして地域差別をあおる投稿:
- どうせ消滅する地域
- 県民の民度も残念
- 不買運動の呼びかけ
- クマに襲われ亡くなった人やその遺族に対する自業自得という誹謗中傷
■ 3. 動物愛護の本質は人間憎悪
- 精神科医香山リカ氏の分析:
- 行き過ぎた動物愛護の根底には人間不信や人間憎悪がある
- 人間は利己的で金儲けのために環境破壊したり動物を殺したりしていると思い込む
- 動物はピュアで神聖な存在として理想化・神格化する
- 動物が言葉を持たないことが理由:
- 人間社会で批判されたり理解されない環境でも動物だけは自分を分かってくれて否定せず寄り添ってくれるはずというファンタジー
- 実際には動物が何を考えているか分からず餌がもらえるから懐くという本能に根ざした行動かもしれない
- 猫は甘えん坊、クマは優しいなど擬人化して感情移入
- 実生活でうまくいっていない、心に何らかの傷を抱えている人ほど過度な動物愛護に陥りやすい
■ 4. クマが感情移入されやすい理由
- 魚や昆虫の命に比較的関心を持たないのは擬人化により感情移入できる要素が少ないため
- クマは哺乳類の中でも感情移入しやすい動物:
- かわいいから
- モフモフした手触り、ずんぐりとした体型
- 子育ての習慣
- 立ち上がった際のユーモラスな姿
- テディベアやプーさんなど古今東西多くの国でデフォルメされたキャラクター
■ 5. 日本特有の「かわいい」文化
- かわいいという価値が日本では大きな意味を持つ
- 議論によるコミュニケーションよりも同調圧力を重視する日本文化:
- 成熟したものは怖い、未成熟なものほどかわいい、優れているという価値観が強い
- 環境問題に根差した欧米のアニマルライツ活動とは異なる:
- 日本の動物愛護ではかわいいことがすごく重要
- 理屈よりもあんなかわいいものが殺されるなんてという感情が先に来る
■ 6. 香山氏自身の経験
- 幼い頃から動物が好きで犬・猫・小鳥などさまざまなペットを飼育
- 過去に動物愛護に傾倒しそうになった時期があった
- 現在は北海道で猟銃免許の取得・更新に必要な診断書を書くこともある
- ハンターに「なぜ犬を大事に飼っているのにクマやタヌキは殺すのですか」と質問した経験:
- 同じ動物でもペットと害獣は全然違うと言われてハッとした
- なぜ見ず知らずのクマには感情移入するのに目の前の住民の生活には目が向かないのかと気づいた
- それからは意識的に理性を働かせ自分に言い聞かせるようにしている
■ 7. 分断の深刻化
- 被害者の心情を逆なでするような動物愛護の言説に対しネット上では極端な反論:
- クマは絶滅させるべき
- 擁護派がクマに食われればいい
- 両者の分断が深刻化
■ 8. 対策と今後の課題
- センセーショナルな報道の逆効果:
- クマへの恐怖心をあおりすぎるのは逆効果
- 動物愛護の人たちは人間不信が根底にあるためマスコミがクマを悪者にして利用していると裏を読んで反発
- 感情や情緒を刺激しすぎない客観的な報道が必要
- 動物愛護の暴走は日本に限らず欧米ではより過激な抗議活動が破壊行為や暗殺などのテロ事件に発展した事例もある
- 人と人のいさかいがクマ以上の脅威とならないよう冷静な議論が求められる
■ 1. ウクライナ戦争の現状認識
- NATO全体の兵器生産能力がロシアの3ヶ月分に満たない
- ウクライナ側の状況:
- 反攻作戦とクルスク侵攻で兵力を無駄遣いし戦力が枯渇気味
- 兵力差はロシアの3倍以上、砲弾量も10倍近く、人的損耗率もウクライナが上回る
- 航空優勢も得られておらず各国義勇兵も撤退または戦死
- 損害はすでに200万人程度に達したという説
- 逃亡兵の数が30万人を超えているという説
- ウクライナ人口の激減が懸念される
- ロシア側の兵力調達:
- 犯罪者、少数民族、アフガン難民、雇われ外国人、北朝鮮・中国系兵士を投入
- 損害の多い任務には治安上都合の良い人的資源を使用
- 反乱防止目的で反乱予備勢力の余剰人材を削減している側面
- インド、アフリカ、ネパール(数万人)から兵力調達
- 戸籍のない人間が多数送り込まれ実質的な人的被害は不明
■ 2. ロシアの長期展望
- 人口問題により2030年までに何らかの破綻が期待できるという見方
- 政治経済が悪化し軍事力が上昇した戦体への移行は終わり
- 人口がネックなのでそこを叩くしかない状況
- ウクライナはテロ行為以外では抗うことが難しい
■ 3. アメリカの衰退
- ウクライナ戦争でアメリカ自身が力の根源である国民と産業の多くを喪失したことが判明
- トランプ大統領は産業回復を目指すがドル覇権に支えられたアメリカでは産業復活の見込みがない
- ドル覇権維持にはアメリカには産業力がない
- 政府閉鎖が1ヶ月超え、フードスタンプ停止、航空管制官の給料未払い
- 刑務所の収容人数が世界一
- アメリカが世界で最も積んでいる可能性
■ 4. アメリカの構造的問題
- 産業力と人材教育が破綻している
- 2000年代に教育者への報酬不足や社会的地位低下が悪化
- 医療関係者の報酬が保険で1/10に
- 豊かな土壌が長年の乾燥・連作・化学肥料・薬剤により破壊
- 地下水もシェール革命で汚染、凍結防止剤の巻きすぎで危険な状態
- AIの登場による過剰な水と電力消費
- 海上輸送の増産を減らした兵器産業の生産面での躓き
■ 5. 中国の状況と今後5年間のリスク
- 抱える問題:
- 不動産政策による少子化
- 経済制裁による経済問題
- 内陸と沿岸部の極端な経済格差
- 朝鮮有事や台湾問題が発火点になりかねない
- 中国が動きやすい環境:
- ロシアはウクライナ戦争で欧米と対立し中国の支援を切れない
- イスラム勢力はイスラエル問題で中国に接近
- インドはパキスタンとの航空戦でほぼ負けている
- 中国の債務の罠問題とメンツの文化による国家的危機
- 中国が安全になるには人口問題を鑑みてあと5〜15年必要
- 台湾は2026年が正念場
- 今後5年間が危険極まる時期
■ 6. 日本の戦略と課題
- 最低でも5年間はこの状態を維持する必要
- 取るには面倒であった方が便利という立ち位置を目指す
- 米中を行き来して双方を利用し混乱させる
- 人的資源の回復が最優先課題
- 内的要因と外的要因に同時対処が必要
- 小泉政権頃と似た空気が漂う
- 円安により物を売るのは便利だが買うのは不便
- トランプ政権の中国への大豆販売成功により日本の大豆製品値上げが想定される
■ 7. 日本の危機的状況
- 農業を完全に捨ててしまい食品の価格変動に悩まされる
- SNSの暴走で悪化する脳に栄養が足りない状態
- スタグフレーションにすでになっている
- 極端から極端な意見に移動していく危険性
- 政権倒閣の流れになる可能性
- 熱狂という狂気の渦に飲み込まれ戦争に突き進みかねない
■ 8. 日本の構造的問題
- 人口動態的に維持拡大は選べない
- 現状の移民政策では日本の自己消滅しかありえない
- どこまで縮小を選択できるか厳しい撤退戦
- 民力の弱体化が著しい
- 中国に寄りすぎてアメリカに寄りかかりすぎてバランスが崩れた
- 出産・子育て・教育・社会インフラの根本的整備が必要
- 社会格差の是正と子供が資産になる社会構造への転換が必須
■ 9. インフレと経済政策
- 別次元のインフレが米以外でも起きる可能性
- 食品インフレに対する懸念
- インフレで政権が揺らぐのは先進国あるある
- インフレターゲット系の経済政策が不可能になった
- 大規模な財政出動が難しい
- 通貨供給量を増やし続けた結果通貨価値が下がった
- 市場から円を減らさないと大変なことになる
- 失われた30年でインフレ対策の経験を持つ人材不足
- 政府と日銀の意見が一致していない
■ 10. 戦前との類似性
- 日本の世論が戦前の空気になってきている
- 戦前と異なる点:
- 日中の国力・経済力・軍事力が完全に逆転
- アメリカが想定以上に弱体化
- 日本国民が病んでいる
- 物流も生産も中国に握られている
- 薬剤系は原料段階でほぼ積んでいる
- 立て直すエンジニアが見当たらない
- 戦争に耐えられる国内状況ではない
- 日本を破壊するにも発展させるにも空気が決める
■ 11. 核武装の可能性
- トランプ政権内でアジア諸国を核武装させる意見
- 日本には核実験データを渡すだけで十分
- アメリカの保証内で核武装できるなら日本も安全に核武装可能
- 中国も軍事的冒険をしなくなり緊張的な平和が実現する可能性
- 日本の航空戦力はとっくに中国軍を下回っている
- 核武装により情勢を平衡化し時間稼ぎの手段に使う選択肢
■ 12. 外交の現実
- 大国と小国が1対1では一方的な隷属契約になる
- 大国が複数になれば競争を始め属国にも利益がある内容になる
- 利益と安全の最大化のバランスを保ちながら生き残りを図る
- 米中露の動向を注視しながら選択していくしかない
■ 1. ロシアの地理的宿命
- 地政学者ピーター・ゼイハンの見解:
- ロシアの人口動態は深刻でウクライナ戦争も失敗している
- 生きているうちにロシアの崩壊を必ず目にすると確信
- ロシアの地形的特徴:
- 守るための壁がほとんど存在しない
- 北は氷原、南は乾いた草原、西はヨーロッパ平原、東はシベリアの大森林とツンドラ
- 山岳や河川は防衛線として機能する障壁ではない
- 広大すぎて統治を困難にする
- 攻撃が最大の防御という思想:
- 受け身の防御だけでは生き残れないという認識
- 脅威を国境の外へ遠ざけることが安全確保の唯一の手段
- 前方防衛の思想がウクライナ侵攻の裏側にある
■ 2. 主要都市の脆弱性
- 主要都市の約7割が国境から500km以内に位置
- モスクワは国境からわずか450km、サンクトペテルブルクは150km
- 国境を破られれば数日でモスクワが危険圏に入る
- 帝政ロシア時代から変わらない構造的脆弱性
■ 3. ハートランド理論
- 20世紀初頭のイギリス地政学者ハルフォード・マッキンダーの理論:
- ハートランドを制する者が世界を制する
- 1904年発表、日露戦争の最中
- ハートランドの定義:
- ユーラシア大陸の中心部(ロシア、カザフスタン、モンゴル、中央アジア)
- 海から最も遠く海洋国家の干渉を受けにくい地域
- かつては世界の心臓部と呼ばれた
- 当時の脅威:
- シベリア鉄道完成によりロシアがハートランド支配を確立する可能性
- イギリスの海洋覇権を脅かす構図
■ 4. 現代における海へのアクセス問題
- ピーター・ゼイハンの分析:
- ロシアは貿易に適さず軍事でしか影響力を保てない国
- 海への出口をほとんど持たない
- 海へのアクセス制限:
- 北は氷に閉ざされた北極海
- 西のバルト海はNATO諸国に囲まれる
- 南の黒海はトルコが支配するボスポラス海峡で封鎖
- 極東のウラジオストクは冬に凍結
- 不凍港は実質4つのみ:
- 北のムルマンスク、南のノヴォロシースク、黒海のセバストポリ、バルト海のカリーニングラード
- いずれも軍事色が強く自由貿易港とは言い難い
- 海上貿易比率:
- ロシアは全体の15%前後で世界平均の70%を大きく下回る
- エネルギー輸出の約8割がパイプライン経由
- 陸上輸送コストは海上輸送の約10倍
■ 5. 海を求める歴史
- 18世紀ピョートル大帝:
- 首都をモスクワからサンクトペテルブルクに移転
- 大北方戦争(1700-1721年)でスウェーデンを破りバルト海沿岸を獲得
- 19世紀の南下政策:
- 黒海とボスポラス海峡を狙う
- クリミア半島のセバストポリが年間通して港湾使用可能な唯一の港
- 21世紀:
- ソ連崩壊により黒海・バルト海の多くの港を喪失
- プーチン政権下でシリアのタルトゥース港を軍事拠点として強化
■ 6. 過剰な国境線の問題
- 国境線の長さ:約2万2000km(世界最長級)
- 14カ国と陸上国境を接する:
- 西はNATO諸国(ノルウェー、エストニア、ラトビア、リトアニア、ポーランド)
- 南はジョージア、アゼルバイジャン、カザフスタン
- 東はモンゴル、中国、北朝鮮
- 日本とは海を隔てて向き合う
- 防衛上の課題:
- 広大な平原のため敵がどこからでも侵入可能
- 軍を永遠に分散せざるを得ない
- GDPの6〜7%を国防に費やす(アメリカの約2倍)
■ 7. 歴史的トラウマ
- 1812年ナポレオンのロシア侵攻
- 1941年ヒトラーのソ連侵攻
- いずれも平原を抜けて直進する同じルート
- この2度の侵攻体験がロシアの地政学的心理を永久に変えた
- プーチンの発言「NATOが国境に迫っておりロシアそのものを守っている」は地理的記憶から生まれた本能
■ 8. 人口動態の危機
- 総人口は2020年代をピークに減少へ転じ2050年までに約3000万人が消失する予測
- 特に深刻な兵士・労働者・納税者を担う若年層の激減
- ウクライナ侵攻による影響:
- 18〜35歳の男性人口が推計で68%減少
- 戦死者と徴兵を避けて国外へ逃れた若者を含め約200万人が労働力・軍事基盤から消失
- 地方では村が消滅しつつあり、モスクワの出生率は1.3を下回る
■ 9. 資源依存経済の限界
- 連邦政府収入の4〜5割を石油・天然ガス関連で得る
- 脱炭素化の進展により石油・天然ガスの需要は確実に減少
- 2025年トランプ政権がインドに対しロシア産原油購入を控えるよう圧力
- 輸出パイプラインの大半がウクライナ、ベラルーシ、ポーランドなど敵対関係にある地域を通過
- 経済の動脈が敵の領土に依存する地政学的脆弱性
■ 10. 崩壊のシナリオ
- 戦争ではなく国の構造そのものが崩れることで崩壊が始まる
- 第1段階:中央集権の崩壊:
- 人口減少と独裁者の不在によりモスクワの支配力が地方へ届かなくなる
- 極東とシベリアが最初に動く
- 地方知事や指導者たちが自立を模索
- 第2段階:資源国家への分裂:
- エカテリンブルク、チュメニ、ノボシビルスクなど資源を持つ地域が経済主導権を握る
- モスクワへの税の還流が止まり中央政府は資金を喪失
- 富が一部に集中し他地域は急速に疲弊
- 第3段階:軍閥国家への転化:
- 正規軍が弱体化し民間軍事組織や地方治安部隊が台頭
- 領土と資源を奪い合い国家が複数の武装勢力により分断
- 2023年ワグネルのモスクワ進軍事件が予兆
■ 11. 核兵器管理の危機
- 世界最大規模の核戦力を保有
- 国家分裂時には指揮系統も分裂
- 弾頭は中央の倉庫に、運搬手段は地方の軍や艦隊に分散
- 通信や命令系統が途絶えれば管理を失った核が最大のリスクとなる
- ソ連崩壊時のような制御された回収・解体ができない可能性
■ 12. ポストロシア時代の地政学
- ユーラシア大陸中心に巨大な空白が発生
- ハートランドが突然誰のものでもない地帯になる
- 各国の動き:
- 西:ポーランドとルーマニアが防衛線を伸ばす
- 東:中国が極東地域へ経済的に侵入
- 南:トルコとイランがカスピ海周辺のエネルギー回廊を巡り競争
- 日本の役割:
- 極東のシーレーンと北方航路を安定的に維持できる唯一の海洋国家
- 日本列島が最後の防衛線となる
- 海洋防衛、エネルギー輸送、通信ケーブルの全経路が日本を経由する時代